基於版上有人要求M格鬥 先發一篇
內容大概是幼驯染(青梅竹馬)想跟主角去看電影 主角卻以要參加大學拳擊大賽為由拒絕 她不高興 就說要參加
而她小時候練過拳擊還擊敗過主角 主角因為心理創傷+大意+憤怒 結果最後把主角打個半死(都翻白眼了) 我最喜歡的一篇
如果有人看完喜歡 我會再發(要回覆我才知道) 個人喜歡格鬥佔多數 而且討厭血腥 多謝指教 有大神願意翻譯的話 在此跪求
とあるボクシングの盛んな街での話。
ボクサー達の熱気が渦巻くボクシングジム、
ひと際鋭い音を響かせてサンドバッグを叩く男の姿があった。
彼の名前は戸崎竜一、この街の大学の2年生。
身長は178cm、体重65kgのウェルター級。
プロのライセンスはまだ取得していないが、アマチュアとして圧倒的な実績を持ち、将来世界を狙える逸材、このジムのホープと目されるボクサーであった。
「ハァハァ・・・フゥ・・・」
小一時間ほどサンドバッグにパンチを打ち込むと、手を止め近くに掛けてあるタオルを手に取る。
汗を拭いつつ、ミネラルウォーターの入ったペットボトルに口をつけようとした時、
「おーい!・・・竜一ぃ~・・・」
背後から自身の名前を呼ぶ声が聞こえ、竜一が振り返ると、そこには一人の女の子。
長めの栗色の髪をポニーテールでまとめ、切れ長の目で整った顔立ち、白い肌にすらりとした身体つきで身長は165cmほど、くびれたウエストの割に大きめのバスト。
「おぉ・・・なんだよ?・・・明菜・・・」
街角ですれ違えばたいていの男は振り返ってしまう程の美人。
ただ竜一にとっては見慣れた顔だった。
彼女の名前は北山明菜、竜一の幼馴染であり同じ大学に通う女子大生だ。
明菜もこのジムの会員だが、竜一のようにプロを目指すトレーニングはせず、
ボクササイズコースの会員であった。
二人は竜一の父がアマチュアボクサーだった影響で小学生の頃からこのボクシングジムに通っていた。
明菜も中学生までは、竜一と同様、子どもながらに本格的にボクシングの指導を受け、
小中学生を対象としたボクシング大会等に出場していた。
しかし、高校生になってからは、遊びたい盛りの女子高生とあって、本格的なボクシングからは離れ、今のようにエクササイズ目的でジムに通うようになっていた。
「竜一、ねぇ今度の土曜日はオフだったよね?映画見に行こうよ!」
「土曜日か・・・悪い、俺都合悪いんだわ。」
弾むような声で問いかけた明菜とは対照的に、素っ気なく答える竜一。
「えー・・・なんでよ。竜一その日はオフだってトレーナーさんに確認したんだけど。」
「あぁ、確かにオフだけど。その日ジムに柏原さん来るらしいんだわ。色々と聞いておきたいことがあってな・・・わりぃな。」
柏原とは、竜一と同じウェルター級の世界ランカーで、竜一の憧れの存在だった。
元々はこのジムに所属しており、今は別のジムに移籍してしまったが、今でもちょくちょく顔を出している。
竜一は柏原がジムに訪れる度に、色々と教えを請うていた。
「別に柏原さん、その日しか来ないわけじゃないでしょ?練習の日と来る日が被った時に話聞けば良くない?」
少し不満そうな表情を浮かべる明菜。
「はぁ?そんなの俺の自由だろ。早く強くなってプロになりたいんだよ、俺は。」
相変わらず素っ気ない態度で淡々と答える竜一。
「ふん・・・なんかさ・・・最近、竜一付き合い悪くない?」
「いいだろ別に・・・幼馴染ってだけで、付き合ってるわけでもねーんだから・・・」
「う、うん・・・まーそうなんだけどさ・・・」
言葉が詰まり俯く明菜。
「私は、竜一はもうちょっと息抜きした方がいいと思うけどな・・・トレーニングばっかじゃなくてさ。ほら!メリハリって大切じゃん。遊ぶ時は思い切って遊んでさ!」
笑顔を作り、軽い口調で明菜が提案する。
「は・・・?知ったような口聞くなよ。お前は俺のトレーナーでもなんでもないだろ・・・しかもお前はもう本格的にボクシングやってないし、俺と違ってプロ目指しているわけでもないだろ?ボクササイズ女子大生に指示される筋合いはないっつの。」
明菜の軽い調子の言葉に面倒臭さを感じた竜一は、突き放すような言い方をする。
「なにそれー・・・なんかムカつく。」
頬を膨らまし不満げな表情の明菜。
「あー、はいはい・・・お前がムカつこうが何しようが、俺がボクサーとして成長する過程には無関係なんだよ。」
「何・・・その言い方・・・」
竜一の嫌味な台詞に、明菜は少し寂しそうな表情。
「フン・・・でも、竜一も偉くなったよねー。昔は私に負けてばっかだったクセに・・・小6の時のボクシング大会だっけ?竜一、私のパンチで失神しちゃったんだよね?フフ・・」
一転して不敵な笑みを浮かべた明菜が、お返しとばかりに嫌味な口調で言う。
「はぁッ!?なんで昔の話が出てくるんだよ、関係ねーだろッ!あの時はお前の方が体格良かっただけだ。」
竜一にとってあまり触れられたくない過去の思い出。これまで冷静に会話をしていた竜一の語気が荒くなる。
小学生の頃は女の子の方が、成長が早く、体格が良いということはよくある話で、
中学生になるまでは明菜が竜一の体格を上回っていた。
小学生のボクシング大会は、男女混合で行われることも多く、竜一が明菜に負かされていたことも事実であった。
「ふーん・・そうかな・・・。竜一ってさ、癖があってさ・・それを私は知ってて・・」
「いいからもう練習戻れよ。ボクササイズのコース、もう休憩終わってるんだろ?じゃあな!」
これ以上話を広げたくない竜一は、無理矢理に話を遮ってリングの方に向かう。
「フン・・・なんなの、その態度?・・・ほんとムカつく・・・」
再び頬を膨らまし、むくれた表情で呟く明菜。
「ねぇ!?竜一ッ!!」
リングのロープに手を掛けた竜一に呼びかける明菜。
「今、私たちが試合したら、どっちが勝つと思うーッ?」
「あぁ!?そんなの俺に決まってんだろ!馬鹿なこと言ってんなよ!」
「ふーん・・・」
「万が一、お前に負けるようなことがあったら、俺もうボクシングやめるわ!!
そんで映画でも何でも行ってやるよ!」
嘲笑うような表情を浮かべ背を向ける竜一。
「そっか・・・」
少し考え込んだ表情を浮かべると、口元に笑みを浮かべて明菜もその場を離れる。
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それから数週間後、竜一と明菜の通う大学の校内。
休講情報を確認しようと掲示板を見た竜一の目に一つのチラシが目に入る。
「そういえば・・・もうこんな時期だったな。」
『第12回校内統一ボクシング大会』というタイトルがデカデカと書かれたチラシ、
それを目にして竜一が呟く。
竜一達の通う大学はボクシングが盛んで、男女それぞれボクシング部が1つずつ、そしてボクシング同好会が3つ、その他、竜一のように校外のボクシングジムの通っている学生など、多数のアマチュアボクサーが在籍していた。
そして、校内のボクサーの中でナンバーワンを決める大会が年一回秋に開催される『校内統一ボクシング大会』だった。
毎年100名前後の生徒が参加しトーナメントで競い合うこの統一大会。
特徴は男女を問わず参加自由であり、階級は無差別で、文字通り校内統一でナンバーワンボクサーを決める大会であった。
出場者の男女比は7:3といったところ。
女子については、女子ボクシング部の部員に加え、数名の女子学生がエントリーをしていた。
しかし、例年、男女の体格差に打ち勝てず、女子のほとんどは2回戦までで姿を消すという状況であった。
「竜一!もうエントリーは済ませたのか?今年は期待してるぞ!」
気がつくと竜一の隣には、屈託のない笑顔を浮かべる小柄な男子学生がいた。
彼の名前は市村と言い、竜一と同じ学科の友人でありボクシング部に所属していた。
「おぉ・・・エントリーはこれからだよ・・・まぁ見てろって、今年こそ優勝してやんよ」
「ハハッ・・・できる男は言うことが違うねぇ~」
陽気で人懐っこい性格の市村、いつものようにおどけた調子ではやし立てる。
竜一は昨年、1年生ながら準優勝していた。
アマチュアとはいえ、全国トップクラスのレベルを誇るボクシング部の部員たちを蹴散らし、快進撃を見せていた。
最終的にボクシング部の主将に決勝戦で敗れるも、その主将は当時4年生ですでに卒業済み、竜一は今大会の優勝候補筆頭であった。
「まあ、新しい1年も入ったわけだし、去年の俺の例もあるから、予想外の強敵が登場なんて展開もあるかもな・・・とりあえず気を抜かずに行くよ・・・」
「優等生ぶったこと言いやがって・・・本当は余裕なんだろ?」
「まーな!ハハッ・・・」
冗談めかした物言いだが、実際に竜一にはこの大会で優勝することに関して、確信に近い自信があった。
たとえ全国トップクラスのアマチュア大学生が集まったボクシング部があるとはいえ、限りなくプロに近い実力を有し、去年からレベルアップを遂げた竜一にはライバルと思しき存在はなかった。
また、近くプロテストを受ける予定の竜一にとって、この大会に出るのは今年で最後にしようという思いもあった。
数週間後、大会開催を約1ヶ月前に控えて、大会のトーナメント表と詳細な試合日程が公表された。
実力に自信がある竜一はあまりくじ運を気にせず、その日のうちにトーナメント表を確認しなかった。
そして翌日、
「おッ、戸崎。久しぶり!・・・お前トーナメント表見たか?」
男子ボクシング部所属で顔見知りの先輩・柿田に、廊下で声をかけられる竜一。
「あ・・お久しぶりです。トーナメント表っすか?もう発表されてたんでしたっけ?」
「まったく・・・腹が立つくらい余裕だな・・・お前の1回戦の相手、うちの1年生の吉川って奴なんだわ。トーナメント表見た瞬間、青い顔しちゃってさ・・・お前が相手でビビってんの。だからあんまりいじめないでくれよ。」
「まあ、ほどほどにしておきますよ・・・」
一方的に、まくし立てるように話す柿田に対し、苦笑いを浮かべながら竜一が答える。
「それから2回戦は女子だぞ・・・隣の山は女子同士だからな。お前くじ運いいな・・・」
「女子は女子でやりづらいんですけどね・・・ちなみになんていう子ですか?」
「えーと・・・一人は女子ボクシング部の1年生だったかな、名前忘れちゃったけど。もう一人は部活とか同好会で見ない名前だったな・・・えーと・・・なんだっけ・・・北山なんとかって言う子・・・」
「えッ!?・・・北山ですかッ!?・・・も、もしかして下の名前は明菜ですか・・・?」
予想外の名前が飛び出し、竜一は驚きを隠せない表情で、思わず声が上ずる。
「な、なんだよ、急に・・・確か・・・そうだったかもな・・・つーか気になるなら自分で確認してこいよ・・・」
「そ、そうですね・・・」
「まさかあの明菜が大会に出るなんてことありえない・・・
あいつはもうボクシングをやってない、今はボクササイズだけだ。大会なんてありえない・・・」
竜一はその足で掲示板に向かった。
次の講義の時間が迫っていることもお構いなしに。
「えーと・・・これが今年のトーナメント表か・・・あった!俺がここで・・・」
トーナメント表の張り出された掲示板の前に立ち、緊張した面持ちでゆっくりと自分の隣の山に目をやる。
「えーと・・・うわッ!・・・・マ、マジかよ・・・なにしてんだよ、あいつ・・・」
確かにそこにあった名前は「北山明菜」
幼地味であり同じジムに通う明菜だった。
その日の夜、ジムでトレーニングを行う竜一の頭の中は『校内統一ボクシング大会』のことで頭がいっぱいだった。
「なんであいつが・・・そういえば最近忙しくてあいつとほとんど話してなかったな・・・なんかあったのか・・・」
気もそぞろな状態でトレーニングを続ける竜一、
20時を過ぎた頃、トレーナーを引き連れてミット打ちを始める明菜の姿が目に入った。
「そういえば・・・最近あいつボクササイズコースの後、ミット打ちしてたな・・・まさか・・・大会のために・・・?」
今までは全く気にも止めていなかった明菜の行動、よくよく考えればエクササイズ目的であんなに真剣にミット打ちをするわけがない。
大会のトーナメント表を見て初めて、竜一の頭の中で話がつながり始めた。
「おい・・・明菜・・・」
ミット打ちを終えた明菜に竜一が話しかける。
「ん・・・どしたの?」
タオルで汗を拭いながら振り返る明菜。
「お前・・・統一大会出るんだって?・・・どうしたんだよ・・・?急に・・・」
「うーん・・・私も一人のボクサーとして上を目指したいって思ってね。」
少し考えこむ仕草を見せた後、明菜は誇らしげな表情で答える。
「はぁ?・・・何言ってんだよ・・・まさかそれでミット打ちなんてやってんのか?」
「そう!最近、ボクササイズコースが終わった後にトレーナーさんに付き合ってもらってるんだ!ミット打ちだけじゃなくスパーもやってるんだよ。竜一は知らないだろうけど。」
平然と、さも当たり前のような口調で答える明菜。
「お前、何考えてんだ?・・・あの大会はお遊びで出るもんじゃねーぞ・・・やめとけよ。」
「ふーん・・・私は遊んでるつもりはないけど・・・」
「でもあの大会は当然、男子も出るんだぞ・・・お前なんかが出たら怪我するぞ・・・」
「別にいーじゃん、竜一には関係ないでしょ?そういえば最初に対戦する可能性がある男子は竜一だったね、よろしく。」
特に表情を変えず淡々と答える明菜。
「いや・・・まぁ、関係ないっていうか・・・とにかく出るなって・・・今お前がやってんのはボクシングじゃなくてボクササイズだろ?」
「え~?なんで?・・・なんで出ちゃダメなの?別にボクササイズだって大会出れるでしょ?フフッ・・・もしかして・・・」
クスリと笑い、明菜はそう言うと満面の笑みを浮かべて、竜一の方に体を寄せる。
「もしかして、竜一は・・・昔ボコボコにされた強敵が怖いのかな・・・?」
赤いグローブに包まれた右の拳をフックのようなモーションで竜一の顎にぐいと押し付ける。
「なッ!?・・・ふ、ふざけんなッ!」
竜一は予想外の挑発に思わず声が大きくなり、明菜の拳を払いのける。
そしてすぐに、平静を装うように声のトーンを落とす。
「・・・そんなわけ・・・ねーだろ・・・」
「あれ?冗談のつもりだったけど・・・図星だったかな・・・?
そういえば結構派手にKOしたもんね・・・失神させちゃったり・・・」
「フン・・・いつまでそんな古い話してんだ?
まぁ・・・お前は過去の話しか自慢できねーもんな・・・」
「フフ・・・そうだね・・・」
「もう好きにしろよ・・・怪我しても俺は知らねーからな・・・」
明菜の挑発に乗らずあくまで冷静さを保とうと努める竜一。
「竜一もまた私のパンチで怪我しないように気をつけてね!フフフ・・」
「チッ・・・」
度重なる屈辱的な台詞に我慢しきれず、思わず舌打ちが出る。
「まぁ・・・頑張れよ・・・」
落ち着いた表情を作り直しその場を去る竜一。
「変わってないな・・・竜一は・・・」
その背中を見つめて意味深な笑みを浮かべる明菜。
ジムでのトレーニングを終えた帰り道、
内心は腸が煮えくり返るほどの怒りが湧き上がっていた竜一。
「クソッ・・・明菜の奴、ふざけたこと言いやがって・・・」
今の自分と明菜では実力は雲泥の差、はるかに実力の劣る明菜の妄言にイラつくのも大人気ない。
そう思ってジムでは冷静な対応に努めた竜一だが、ついつい愚痴が出る。
もやもやした腹立たしさを抱えたまま、竜一は大会までの日程を過ごすことになった。
そして大会の初日。
午前中に第1回戦の試合を終えた竜一は、ロッカールームで一息ついていた。
今頃、リングでは明菜が第1回戦を戦っている頃だろう。
内心かなり気にはなっていたが、なんとなく見に行く気にはなれなかった。
明菜とは絶対に戦いたくない。正直、竜一はそう考えていた。
もちろん100%、天地がひっくり返っても勝てる自信はあった。
178cm、体重65kg、ウェルター級の竜一に対して、明菜は身長165cm程度、体重は50kg前後。
そもそも階級が違う上、男女の体格差、さらにプロを目指しここ数年、必死に鍛錬してきた竜一と明菜では体の鍛え方が違う。
ただ、女の子と試合、しかも気心知れた幼馴染と公衆の面前で試合をするということを考えると、なんとなく気恥かしさがあり、やりにくさがある。
もともと女子との試合はやりづらいと考えていた竜一には、最悪のシチュエーションだった。
とりあえず飲みものでも買ってくるか、そう思い廊下に出たところで柿田と出くわした。
「おう!1回戦お疲れ様・・・見てたぞ。1ラウンド2分ちょっとでTKO勝ち・・・お前、全然手加減する気なかったな・・・」
少し嫌味っぽい口調で柿田が言う。
「手加減・・・?・・・はぁ?・・・すみません・・・ちょっと考えごとしてたもんで・・・」
「なんだそれ?・・・まぁいいや、吉川も怪我はないみたいだし・・・」
竜一の的外れな答えに対し、怪訝そうな表情を浮かべた柿田だが、後輩が無事に試合を終え安心している様子。
「柿田さんも1回戦突破みたいですね。」
「1回戦はな・・・相手も弱かったし・・・そういえばお前の次に当たる対戦相手の試合、ちょうどさっき終わったところだぞ・・・」
「ど、どうだったんですか?」
食い気味に竜一が質問を投げかける。
「な、なんだよ・・・どうせ女子なんだし、お前の眼中にはねーだろ・・・」
「そ、そうですけど・・・」
「北山さんだっけ・・・ボクシング部じゃない方、その子が勝ったよ。判定でね。」
「ま、マジですか・・・」
明菜との試合は避けたいという竜一の淡い願いは打ち破られ、あからさまに残念そうな声を漏らす。
「なんだ?もう一人の方と試合したかったのか・・・?
ビジュアルなら北山さんの方がいいぞー、顔可愛いし、胸も大きいし、俺だったら北山さんと試合したいな・・・」
いやらしい表情を浮かべる柿田。
「・・・えぇ・・・」
それに対して竜一は心ここにあらずといった反応。
「な、なんだよ、その薄っすい反応は・・・とにかく俺らは準決勝までは当たらないし、それまでお互い頑張ろうな・・・じゃあな!」
「あぁ・・・はい・・・」
完全に上の空といった様子で竜一は答えた。
そして、次の日。ついに迎えた大会2日目、第2回戦。
青字に白いラインの入ったトランクス、同色のリングシューズ、青いグローブをはめてリング下に現れた竜一。
前日までは明菜の意図を知ろうと思考を巡らせていたが、考えても結論が出ないと諦め、半ば開き直っていた。
「おはよッ・・・調子はどうかな?竜一。」
ふと後ろから呼びかけられ振り返ると、試合用の衣装を身にまとい、ボクサーらしい格好の明菜。
赤のグローブに、蛍光系のピンクのトランクス、白を基調としたリングシューズ。
薄いピンクのスポーツブラからは豊満な胸の谷間がくっきり見える。
ポニーテールで一つにまとめた髪が、凛とした顔立ちの明菜の美しさを際立たせる。
明菜の姿を見慣れている竜一でも一瞬息を飲んでしまうような、女らしい魅力が詰まった格好だった。
「お、おう・・・上々だよ・・・なんだ?対戦相手の偵察か?お前のコーナーはあっちだろ?」
一瞬言葉に詰まったが、いつもの素っ気ない態度に変わる竜一。
「偵察なんて要らないよ~、そんなことしなくても私勝てるし・・・」
「あーはいはい・・・挑発もその辺にしとけよ・・・」
呆れた様子で答える竜一。
「それにしても・・・」
明菜がリングの周りを見渡す。
「強そうな人いっぱい見に来てるね・・・あの人達ってみんな竜一のライバルかな?
みんな竜一の試合を研究しに来てるんだろうね・・・」
「そうかもな・・・でも、相手がお前じゃ何の参考にもならねーけどな。」
「フフ・・・さすが優勝候補だね・・・でもさ、あの人たちの前で、女の子相手に無様にKO負けしたら、とんだ恥さらしになっちゃうね・・・」
ニヤニヤと笑みを浮かべる明菜。
「チッ・・・負けるわけねーだろ・・・ホントそのくらいにしとけよ・・・あんまり俺を怒らせると痛い目に会うのはお前だからな・・・」
冷静な対応に努めてきた竜一だが、試合直前になってもしつこく続く挑発で怒りが表情に浮かんでしまう。
元来、かなりの負けず嫌いな性格であった竜一。
そして特に明菜に対しては昔から対抗心を燃やし、勝負事ではムキになることが多かった。
それは幼馴染であり、しかも女である明菜に負けたくない、そういう意識が働いていたからだ。
たとえボクシングであろうと他のスポーツ、勉強であろうと。
そしてそのことを明菜はよく知っていた。
大人になり竜一もちょっとしたことではムキにならなくなった。
精神的に成長し、ある程度自分の感情をコントロールできるようになったからだ。
しかし竜一の心の根底、深層心理では変わっていなかった。
これまでの明菜の挑発に対する竜一の言葉の端々にそれが垣間見えていた。
おそらく自分の本性が露見してしまっていることに竜一本人は気がついていない。
しかし明菜にはすべてお見通しだった。
「あッ・・・そういえばさ・・・竜一と私が真剣勝負した試合の戦績って・・・私の6勝0敗でいいんだっけ?」
「はぁッ!?また昔の話かよ!いいかげん、うるせぇぞッ!・・・もう自分のコーナーに戻れって・・・そろそろ開始の時間だろ?」
険しい表情で、口調が荒くなる竜一。
明菜には我慢の限界を迎えた様子が手に取るように分かった。
「はいはい・・・分かりましたよ・・・お互い頑張ろうね~」
そう言って赤いグローブをひらひらとさせて手を振ると自分のコーナーに戻る明菜。
「アハ・・・やっぱり竜一は変わってないな・・・」
その表情には不敵な笑み浮かべられていた。
「青コーナー・・・・経済学部2年、戸崎竜一」
リング上で紹介のアナウンスが行われると、少数だがパチパチと拍手が上がる。
優勝候補の試合を見ようとリング外には、ライバルになると予想されるボクサー、そして単純に竜一の試合を見たいと集まった学生など、他の試合と比べ物にならないほどのギャラリーが集まっていた。
「赤コーナー・・・・商学部2年、北山明菜」
「頑張りま~す!」
「がんばれ明菜~」
リング外に集まった人々の少数派、明菜を見に来た友人たちからささやかな歓声。
「あの子可愛いいよな?」
「北山さんか、商学部にあんな子いたんだ・・・後で声かけてみよ・・・」
そして、明菜の魅力に心奪われた男のコソコソ話が湧き上がる。
レフリーによってリング中央に集められる竜一と明菜。
3分4ラウンド制、1ラウンドは3ノックダウン制・・・等など、レフリーが事務的にルール説明を行う。
その間も竜一をあざ笑うかのように、終始ニヤニヤとした表情を浮かべる明菜。
一方で険しい表情を崩さず鋭い眼光で睨みつける竜一。
「そうそう・・・その調子だよ・・・竜一・・・」
自分のコーナーに戻りセコンド役の友人にマウスピースをはめてもらう。
試合開始のゴングを待つ間、自分の期待した通りの反応を見せる竜一に対し、嬉々とした顔で思わず呟く明菜。
一方、竜一側のコーナーでは、早々に敗退した市村がセコンドとして付いていた。
「お~い・・・どうしたん?そんなに怖い顔してるとイケメンが台無しだぞ。」
竜一の肩を揉みながら、市村はおどけた口調で竜一に話しかける。
「・・・いや、何でもねーよ・・・」
竜一は市村の方を向くこともなく、険しい表情を崩さないまま答える。
「お、おう・・・何でもないならいいんだけどさ・・・」
市村はいつもと違う雰囲気を感じ取り、少し戸惑った表情を浮かべる。
「とりあえず俺の分まで頑張ってくれよ!期待してるぜッ!」
しかし、すぐにいつも通りの明るい表情を取り戻し、竜一の肩を軽く叩いて送り出す。
「おぅ・・・分かってるよ・・・」
そして、「カーン!!!」
試合開始のゴングが鳴る。
ゆっくりとしたフットワークでコーナーから離れていく明菜。
それに対して、キュッと鋭くリングをける音を響かせ勢いよくコーナーを飛び出した竜一。
「フンッ!!」
鬼気迫る表情で一気に接近すると鋭いジャブを放つ。
「おっと!・・・フフ・・・」
それをギリギリスウェーでかわす明菜。
「どしたの?・・・何を焦ってるのかな?」
軽快なフットワークで距離をとり、小馬鹿にしたような表情を浮かべながらリングを回る。
「うるせぇ・・・黙ってろ」
明菜の動きを追ってさらにジャブを連打、そして右フックを放つ。
「わわッ!!っとと・・・」
少し焦った表情を浮かべるも、またも竜一のパンチをかわした明菜。
「フフ・・・また避けちゃった・・・竜一、小学生の頃とあんまり変わらないね。」
挑発を続けながらフットワークで逃げ回る明菜。
(やっぱり・・・相変わらず癖は治ってないみたいね・・・)
次々と繰り出される竜一の鋭いパンチ。
数々のボクサーを葬ってきた強力なパンチを的確にかわしていく明菜。
明菜は、竜一に癖があることを知っていた。
明菜だけが知っている、明菜だけが引き出せる癖。
それは明菜と対戦しムキになっている時に現れる、パンチを打つときの予備動作が大きくなってしまうという癖だった。
優秀なボクサーであれば、相手に読まれないようパンチを打つため、予備動作を極限まで小さくし、ノーモーションに近い形でパンチを打つことができる。
もちろん竜一も普段はそれに近いパンチを放つことができる。
しかし明菜と試合をする時だけは違った。
『こいつには負けたくない』
その思いが強すぎて異様な力みが生じ、予備動作が大きくなってしまう。
「クソッ・・・フンッ!!フッ!!フッ!!」
再び接近し、左ジャブ、右フック、左アッパーと連打を放つがやはり明菜の顔面にはヒットしない。
「ハハ・・・ちゃんと狙ってるの?」
竜一が明菜に力めば力むほど予備動作が大きくなる。
明菜はそれを狙って散々挑発を行い、対抗心を燃え上がらせていた。
そして、まさに狙い通りの展開になっていた。
「私もそろそろ反撃しちゃうよッ!」
竜一の右ストレートに対し、体半個分左側にずらしてかわすと左のジャブを顔面に返す。
パンッ!!
リングに乾いた音が響く。
「ブッ!!」明菜の赤い拳が竜一の鼻柱を捉える。
普通の人間であれば気がつかない予備動作のわずかな差。
もしも相手は他の人間であれば、この程度の予備動作でパンチを予測することが難しいだろう。
しかし、以前から散々竜一のパンチを見てきた明菜にとっては、肩から上腕の筋肉の動き、上体の緊張、目線、ステップ等などの予備動作で、完全にどのパンチが来るかが予想できた。
「グッ・・・」
女の子の腕力で放たれたパンチではあるが、的確に鼻柱を捉えられ痛みが走り顔をしかめる竜一。
「調子にのんなよッ!」
顔を赤らめ怒り心頭といった表情の竜一。
(ちくしょう・・・明菜なんかに・・・あいつなんかのパンチをもらうなんて・・・)
頭に血が上ってさらに力みが増す。
「シッ!シッ!シッ!おらッ!」
左ジャブから右ストレート、左フックをボディと顔面へのダブルで、得意のコンビネーションを放つ。
「フフッ・・・」
(ますます力入っちゃって・・・バカみたい・・・)
ジャブ、ストレートをスウェーでかわし、フックをブロッキングできっちり弾く。
「なっ・・・クソッ・・・」
さらに竜一は力任せにジャブから右ストレートを放つ
「隙ができてるよッ!!」
右ストレートをかわして竜一の左サイドに回り込んだ明菜が脇腹目掛けて左フックを打ち込む。
「グッ!・・・クッ・・・シッ!!」
脇腹に浅くヒットし、さらに熱くなった竜一は力任せに左右のフックを振り回す。
「だから、そんなパンチ当たらないって」
明菜はスウェーでかわすと左ジャブを2発打ち込んでバックステップで距離を取る。
「ブッ!ブフッ!・・・ハァハァ・・・」
「ねぇ?・・・さっきから私のパンチばかりヒットしてるね・・・大丈夫?」
「ハァハァ・・・無駄口はその辺にしとけよッ!!」
(ちくしょう・・・調子に乗りやがって・・・)
再び素早いフットワークで接近して次々とコンビネーションを放つが一向に命中せず、逆に明菜の軽いジャブがリズムよく顔面に決まっていく。
「ブッ!!ブゥッ!!」
(なんでだ・・・今のこいつが俺のパンチを避けられるわけないのに・・・なんとかして動きを止めるか・・・)
竜一は明菜の退避行動を予測して、俊敏なフットワークと左ジャブを駆使し、逃げ場を奪っていく。
そして、そのままコーナーに追い詰め、まずは明菜の動きを止めようという算段だった。
次々の放たれる強烈な左ジャブ、その勢いに押され後退を余儀なくされた明菜はついにコーナーに背をつける状態に・・・
「ハァハァ・・・フンッ・・・これで終わりだな・・・」
「カーン!!」
逃げ場のない状況で明菜に連打を打ち込む、竜一がそう考えた瞬間、1ラウンド終了を告げるゴングが鳴る。
「フフ・・・ボクサーの癖に時間の管理もできてないなんて、まだまだね。」
そう言ってぽんと竜一の肩を叩き自分のコーナーに戻っていく明菜。
「グッ・・・ちきしょうッ!!」
まんまと明菜にハメられた竜一。
行き場のない憤りが体内に湧き上がってくる。
マウスピースがちぎれそうな程噛み締め、自分のコーナーに戻って行く。
「おい・・・どうした竜一、体調でも悪いのか?」
「大丈夫だよッ!」
予想外の劣勢に戸惑い気味の市村が心配そうに話しかけると、竜一はぶっきらぼうに返す。
「相手の子・・・そんなに強そうには見えないけど、まさか手加減とかしてないよね。」
「んなわけねーだろッ!・・・いいんだよ、次のラウンドで仕留めるから。」
「そ、そうか・・・」
「カーン!」
そして第2ラウンド開始のゴングがなる。
相変わらず憎たらしい笑みを浮かべて、ゆっくりとしたフットワークでリング中央に向かって歩み出る明菜。
それに対して第1ラウンド同様、素早く接近し、ジャブからコンビネーションにつなげる竜一。
挑発に対する怒りで力みが生じていた上に、第1ラウンドの判定のポイントを取られた焦りが竜一には生まれていた。
(竜一って本当に単純で可愛いね・・・)
明菜はその様子を見て、ほくそ笑みながら、第1ラウンド同様、竜一のパンチをかわし続ける。
無駄な力みと焦りよって、身体の筋肉の緊張は増し、普段よりも体力を消費する。
第2ラウンド終盤にもなると竜一は肩で息をし始めていた。
リング外のギャラリーたちも、初めは竜一が手を抜いているのだろうと思っていた。
「おいおい・・・戸崎の奴、何遊んでんだ?可愛い子ちゃん相手だから手加減してんのか?」
「いやでも、あいつの表情ガチじゃねーか?」
しかし、徐々に竜一が苦戦している様子が見て取れ、ざわめき始めていた。
「ブッ・・・・クッ・・・」
ジャブの連打が再び竜一の鼻柱を捉える。
明菜の細腕から放たれたジャブとは言え、竜一の顔は鼻を中心に徐々に赤くなり始めていた。
「ハァハァ・・・クソ・・・こうなったら・・・フンッ」
竜一は素早い踏み込みからジャブ、右フックを放ったところで、さらに体を寄せて強引にクリンチを仕掛けた。
自分の上がりきった息を整えるため、そしてこれ以上パンチをもらわないための苦肉の策だった。
「ちょッ・・・なッ!ご、強引ね・・・」
これには明菜も少し焦った表情を浮かべる。
「ハァハァ・・・うるせぇ・・・ハァハァ・・・」
竜一の荒い息遣いに自分の作戦が功を奏していることを確信し、明菜の顔は勝ち誇った笑みに変わる。
「フフ・・・強引な男って嫌われるよ・・・」
クリンチをした状態で、明菜はふざけた口調で囁く。
「ハァハァ・・・うるせぇよ・・・」
「それにしても大丈夫?かなり息上がってるけど・・・なんかがっかりだなぁ・・・これじゃあ1回戦の子の方が強かったよ・・・」
「クッ・・・ハァハァ・・・うるせぇ・・・」
「フフ・・・何?それしか言えないの?」
鬼気迫る表情で明菜を睨みつける竜一。
「ハァハァ・・・ちょこちょこ逃げ回りやがって・・・お前・・・どうせ判定狙いで勝とうと思ってんだろ・・・?」
「ん~・・・どうだろうね・・・過去の結果は全部私のKO勝ちだけどね・・・」
「また昔の話かよ・・・ハァハァ・・・お前みたいなただの女子大生のパンチなんか効くわけねーだろ・・・」
「ん~・・・それもどうだろうね・・・?」
意味ありげな笑みを浮かべて答える明菜。
「ブレイクッ!!」
ここで膠着状態に入ったと判断したレフリーからクリンチを解くよう指示が入る。
(なんなんだよ・・・あの態度・・・まぁいいや、あいつのハッタリにいつまでも付き合ってられるか)
明菜の態度の意図を探ろうとしても答えが出ないし、意味もない、そう考えた竜一。
レフリーが試合再開を宣言するとともに一気に距離を詰め再び連打を浴びせる。
「ハァハァ・・・シッ!!」
「当たらないよ・・・それッ!!」
竜一が左フックの打ち終わりを狙い左側に素早く回り込んだ明菜が竜一の顔に左フックを返す。
息が上がり大きく息を吸い込むために竜一が口を開いた瞬間、明菜の左フックを口元に直撃する。
バシンッ!!
「ブフッ!!」
竜一の口からマウスピースが外れリングにこぼれ落ちる。
「アハッ・・・マウスピース取れちゃったね・・これで少しは私が判定狙いじゃないって分かってくれたかな・・・」
「カーン!!」
そこで第2ラウンド終了のゴングが鳴る。
「クッ・・・クソッ!!」
竜一は怒りを露わにしてリングに転がったマウスピースを乱暴に拾い上げる。
一方的にパンチをヒットさせられた上に、マウスピースを飛ばされる。
この上ない屈辱に竜一の怒りの炎は異常なほど燃え上がっていた。
「ハァハァ・・・ちくしょう・・・」
フックのダメージは深刻ではないが、焦りと怒りをさらに促すという面では有効打になった。
「お、おい・・・本当に大丈夫かよ・・・竜一・・・」
明らかに苛立った様子で戻ってくる竜一に対し、不安げな表情の市村が恐る恐る問いかける。
「大丈夫だって言ってるだろッ!・・・ハァハァ・・・黙って見てろってッ!」
先ほどよりもさらに怒気と疲労感が増した様子の竜一。
「明菜すごいじゃん!このラウンドもとったよ!あと半分、2ラウンド凌げば逃げ切れるよ!」
対照的に明るい雰囲気の明菜側のコーナー、セコンド役の友人が弾むような声で話しかける。
「ハァハァ・・・そうね・・・次のラウンドがチャンスだから、攻めていこうと思う。」
「えぇッ!?・・・このまま逃げ切ればいいんじゃないの?この前みたいに判定勝ちできるのに・・・」
まさかの宣言に唖然とした表情の友人。
「この試合はしっかり決着つけたいんだよね・・・」
「そ、そう・・・・」
「おいおい・・・第2ラウンドも女の子の方がとったぞ・・・戸崎の奴ヤバイんじゃね・・・」
「まさか・・・戸崎が女の子に負けるわけねーだろ・・・」
「でも残り2ラウンドだぞ・・・」
リング外のザワつきもさらに広がり始めていた。
「カーン!!」
第3ラウンド開始のゴングが鳴る。
このラウンドもやはり竜一から距離を詰めジャブからコンビネーションを放つ。
左ジャブからの脇腹に目掛けて左フック、そして右アッパーをボディへ。
これを冷静に射程圏外に逃れてかわす明菜。
(ふーん・・・ボディで私の動きを止めようとってことね・・・でも疲れて来てるのが丸見え・・・さっきよりモーション大きくなってる・・・ぜーんぶ見えてるんだからね・・)
再び距離を詰めて来る竜一。
(ボディが来る・・・)
ボディブローを予見した明菜は、逆に踏み込んで接近、
竜一が脇腹目掛けて放った左フックの軌道の内側に入り、右アッパーをカウンターで放つ。
ガツンッ!!
「ガッ!!」
明菜の拳が竜一の顎に命中し鈍い音が響く。
「クッ・・・」
カウンターのクリーンヒットをもらい、バックステップで一旦距離をとる竜一。
「あれ?・・・カウンター当たっちゃった・・・ラッキーパンチかな・・・」
嘘くさいセリフで挑発する明菜。
「クソ・・・ふざけんなッ!」
再び射程圏内に入ると左ジャブから右ストレート、左フック。
そしてそれを明菜がかわすと、ワンツーから右へ移動して右ストレート。
コンビネーションに変化をつけつつ狙いを顔面に戻す竜一。
(意味ないのになぁ・・・全部打つ前に見えてるし・・・)
続けて左ジャブから右ストレートが来ることを予見した明菜。
竜一の放った右ストレートを顔面スレスレでかわすと外側から左フックをカウンターで打ち込む。
スパン!!
「グァッ!!」
明菜の拳が頬にめり込み顔面を弾かれる。
「フフ・・・ラッキーラッキー・・・」
弾むような声でフットワークをとり、竜一の射程圏外に逃れる明菜。
「クソォ・・・」
(なんでだ?・・・なんであいつは俺のパンチをよけられる・・・なんでだ?・・・しかもカウンターまで・・・)
竜一は必死に考えるが答えはまったく見当たらない。
疲労と焦りが増す一方だった。
「・・・この・・・グッ!!」
竜一の右ストレートを明菜はダッキングでかわしながら右ストレートをボディに。
「クソ・・・・ブハッ!!」
左ジャブに対し左にヘッドスリップでかわしながら右フックを顎に。
「クッ・・・ブハッッ!!」
右ストレートのうち終わりに合わせて被せるように左ストレートを頬に。
パンチを打てば打つほど、明菜に次々とカウンターを決められる竜一。
「フフ・・・何遊んでんの?・・・ねぇッ!」
手が止まった竜一の懐に潜り込み、明菜が右フックで竜一の顎を打ち抜く。
パンッ!!
「グァッ・・・」
すると、竜一の膝がかくんと折れかける。
「あれぇ~・・・今のパンチ効いちゃったの?・・・脳みそ揺れちゃったかな?」
憎たらしい口調で煽る明菜。
「くそ・・・」
1発1発に威力はないが、カウンターで決められることで徐々に竜一の体は蝕まれ始めていた。
さすがにこれ以上カウンターをもらうわけにはいかない。
そう考え一旦距離をとる竜一。
「ふ~ん・・・そっちが来ないから私から行くよ・・・」
ゆっくりと近づき左ジャブ、そして右ストレート。
「ハァハァ・・・なめんな・・・この程度のパンチ。」
あっさりとパンチを弾く竜一。
さらに左ジャブ、右ストレート、左フックとパンチを続ける明菜。
何度かコンビネーションを続け、
(そろそろ狙ってくるかな・・・)
そして明菜が左ジャブ、そして右ストレートを放った瞬間。
竜一がそれをかわして左フックをカウンターで合わせることを察知した明菜。
「来た・・・」
竜一が明菜の左側に回り込んで左フックを返すその瞬間。
右の拳を素早く戻しつつ、体をかがませてパンチをかわしながら、体を回転させ同じように左フックを放つ。
スパーン!!
「ブフッッッ!!?」
明菜の拳が直撃し、体が回転する動きと反対方向に弾かれる竜一の顎先。
汗と涎が飛び散り、目線が宙を舞う。
今までにない最高のタイミングで急所に命中した一撃。
さすがの竜一もこのカウンターの一撃で脳を揺さぶられてしまった。
「あァ・・・」
力ない声を漏らし、膝がリングに落ちると、遅れて両方の拳をついてしまう。
「ダ、ダウン!!」
レフリーからこの試合初めてのダウンが宣告される。
「ハハ・・・変わってないね~・・・竜一。できもしないのにカウンター狙って・・・私のカウンターもらってたよねぇ~?」
土下座のような姿勢となった竜一に対し、明菜は身をかがませて顔を近づけて言う。
「それにしても・・・どうしたの?女子大生のパンチなんて効かないんじゃなかったのかな~?」
さらに屈辱的な言葉を続けながらニュートラルコーナーに向かう。
「ハァハァ・・・う・・・嘘だろ・・・」
相手はプロを目指しているようなボクサーではない、ボクササイズ教室に通っているただの女子大生。
体つきも日々の鍛錬で鋼のように鍛え上げられた竜一よりも、一回りもふた回りも小さくスレンダー。
そんな相手にダウンを奪われ竜一は数秒呆然とした表情。
「ファイブ、シックス・・・」
「ク・・・ふざけんなッ!!」
レフリーのカウントが耳に響き我を取り戻す。
リングに右の拳を叩きつけて立ち上がるとすぐにファイティングポーズを取りレフリーに再開を促す。
「ボックスッ!!」
ダウンを奪われたものの幸い下半身の感覚は残っており、致命傷ではない。
しかし、このダウンで完全にポイントで劣勢に立たされた竜一。
第3ラウンドも残り時間が少なくなってきおり、攻めていくしかない状況に立たされた。
「ほら・・・そろそろ竜一もパンチ当てないと本当に負けちゃうよ・・・?」
それを知っていて敢えて焦りを誘うような台詞を放つ明菜。
「わかってるんだよ!・・・そんなことッ!」
竜一は飛びかかるように接近し左ジャブ、右ストレート、
軽快なフットワークで難なくかわす明菜。
「クソォ!・・・シッ!」
リング内を広く使って逃げ回る明菜、それを追い立てるようにパンチを振るっていく竜一。
ふいに明菜の背後の赤いコーナーが目に入る竜一。
(この距離なら・・・行ける・・・)
鋭いジャブ2発を放つと明菜の背中とコーナーポストが近づいていく。
(よし・・・今だッ!!)
明菜の背中がコーナーポストに接触した瞬間、
竜一は飛び込むよう接近し、明菜の顔面に右ストレートを打ち込んだ。
(え・・・??)
パンチ打ち込んだと同時に明菜の顔は竜一の視界から消え、次の瞬間には視界いっぱいに真っ赤な物体が広がっていた。
バンッッッ!!
「ブフッッッ!!!」
爆発音のような音が響くリング。
明菜の赤いグローブが竜一の顔面のど真ん中に打ち込まれていた。
明菜は竜一が右ストレートを放つ瞬間に体を左側にスライドさせながらカウンターの右フックを打ち込んでいた。
自分の突進した勢いに押され、そのままコーナーポストに激突し、
ロープを伝わってリングに仰向けに倒れこむ竜一。
「ウゥ・・・あァ・・・」
虚ろな表情で、鼻からは鮮血が滴っている。
よっぽどの衝撃であったのであろう、女の子の細腕のパンチとは言え、竜一は完全にグロッキー状態にされてしまった。
「竜一ッ!!立てッ!立てよッ!!」
竜一の危機的な状況を目の当たりにして、コーナーに控える市村がリングに乗り出すような姿勢で声を上げる。
「フフ・・・なんか懐かしい・・・昔はこんな光景よく見たね・・・」
腰に手を当てて、ダウンした竜一のそばに仁王立ちし、顔をのぞき見ながら呟く明菜。
レフリーがコーナーに行くよう指示をする。
「ワン、ツー・・・」
「ウ・・・ウグ・・・」
カウントが始まると、僅かに竜一の顔に生気が戻る。
しばし宙を彷徨っていた左腕がロープに絡みつく。
(ちくしょう・・・嘘だろ・・・こんなこと・・・ありえない・・・俺があいつに負けるなんて・・・)
ほとんど脱力状態の下半身に力を込め、竜一はロープに縋りながら、なんとかカウント8で立ち上がった。
(明菜に・・・明菜に負けるなんて・・・)
ぼんやりとした表情のまま、かろうじてファイティングポーズをとる。
「カーン!!!」
ここで第3ラウンド終了のゴングが鳴った。
「ちょっとは成長したかな・・・小学生の頃だったら今のでKOだったよね・・・」
お互いのコーナーに戻る際、フラつきながら歩く竜一に、明菜が嫌味を言うが、竜一には言葉を返す余裕はなかった。
心もとない足取りでフラフラとコーナーに戻る竜一。
もはや優勝候補の面影もなかった。
「よく立ったぞ!!」
市村が感極まったような表情を浮かべ、大声を張り上げて迎える。
「ちくしょう・・・あんな奴に・・・」
「とりあえず喋らなくていいから・・・この時間でできるだけ体力を回復しよう。次のラウンドが勝負だ・・・」
励ましの言葉を続けながらてきぱきと処置を済ませる。
「クソ・・・なんでだ・・・」
気持ちが落ちかけている様子の竜一。
これまで青春の多くを捨て、ただひたすらトレーニングに励んできた。
それにも関わらず、片手間でボクササイズをやっている幼馴染、体格がはるかに劣る女のの子相手に劣勢に立たされている。
竜一の自信は砕かれかけていた。
「おい!竜一ッ!・・・もうお前は相手がどうとか考える必要ねーんだ・・・周りの目も関係ねー、多少手こずっても最終的に優勝してやりゃ、周りも黙るさ!」
市村が竜一の目の前に立ち真っ直ぐに顔を見つめ、いつにない真剣な表情で鼓舞する。
「お・・・おう・・・」
「いいか?お前のパンチはうちの大学でナンバー1だ。まともに入れば立ち上がれる奴なんて、いやしない。1発だ・・・3分で1発決めればお前の勝ち・・・チャンスなんかいくらでもある・・・」
「1発・・・?」
「そうだ!1発だけでいいんだッ!!」
熱のこもった口調で市村が宣言する。
「1発か・・・そ、そうだな・・・」
市村の言葉に呼応ように、徐々に自信が湧き上がってくる竜一。
「足は動くか?」
「おう・・・なんとかなりそうだ・・・」
「そうか!なら大丈夫だ・・・お前の実力見せつけてくれよ!なッ!!」
そう言って市村は竜一の背中をバシッと叩く。
「痛ッ!!てめー、強く殴りすぎだ・・・まぁ、でも目が覚めたわ・・・1発決めてくるぜ・・・」
口元には裂傷がチラホラ、鼻からは鮮血が滴る。左目は少し赤くなり、顔はボロボロの状態だ。
しかし、満身創痍ながら竜一の闘志にもう一度火がつく。
「ふ~ん・・・なんかやる気出てきちゃったみたいじゃん・・・それなら・・」
明菜は企みを孕んだ目でその様子を見つめる。
「セコンドアウト!」
時間の終了が告げられる。
「かましてこいッ!!」
「おうッ!!」
市村の威勢の良い声に押されて竜一が立ち上がる。
自信に満ちた表情、市村にはその顔がこの日一番輝いて見え、市村が知っている本来の竜一の表情だった。
「カーン!!」
そして最終、第4ラウンドのゴングが鳴る。
両者がゆっくりとリング中央に歩み出る。
そして竜一が素早いフットワークで接近、ジャブのモーションに入った瞬間だった。
ボコッ!!!
鈍い打撃音がリングに響く。
ジャブで接近してくることを予見していた明菜がジャブを弾きつつ懐に入り右ストレートを打ち込んでいた。
「ブェェェェッ!!」
明菜の赤いグローブが竜一の頬にめり込み醜く歪んだ口から血の混じった涎が飛び散る。
「なッ!?・・・竜一ッッ!!」
市村が悲鳴のような声を上げる。
「フフ・・・バカだね・・・気合でなんとかなると思ったの・・・?」
速攻でカウンターを仕掛け出鼻を挫く、それが明菜の企みだった。
右の拳を竜一の頬にねじ込みながらほくそ笑む。
「うぐ・・・あぁ・・・」
ラウンド開始早々、完璧なカウンターで出鼻を挫かれ、完全に脳を揺さぶられてしまった竜一。
だらし無い声を漏らし、たたらを踏んでその場に立ち尽くしてしまう。
「まだまだ、これからだよ・・・」
そんな竜一の体をクリンチで確保する明菜。
そのままロープ際まで押していく。
竜一の背中がロープに到達したことを確認すると
「サンドバッグになって・・・ねッ!」
力が抜け緩んだ状態の竜一の腹筋目掛けて、右アッパーをめり込ませる。
ドスンッ!!
「グェェェッッ!!!??」
鈍く重い音が響くと、明菜の小さな拳が深々と竜一の鳩尾にめり込む。
激しい痛みと湧き上がる吐き気によって竜一は目を大きく見開き、口からはマウスピースがはみ出て涎が滴る。
脳髄まで響くような激痛で意識が強制的に呼び戻される。
「ほらッ!!ほらッ!!どうしたの?抵抗もできないのッ?」
自分の体を上手く竜一の体に寄せ、ロープとの間に固定しながら右アッパーを次々めり込ませる。
「グェッ!!ウッ!!ウゥッ!!・・・ング・・・ウェェ・・・」
湧き上がる胃液を抑え、必死にマウスピースがこぼれ落ちるのを耐えることしかできない竜一。
「フフ・・・簡単には終わらせてあげないよ・・・ねぇ、竜一?・・・私を怒らせると怖いってこと思い出した・・・?ねぇッ!」
密着したまま右のショートアッパーで竜一の顎を突き上げ、左フックで竜一の顔面を弾き飛ばす明菜。
ガツンッ!!バスンッッ!!
「ガハ!!・・・ガハッッ!!・・・あァ・・・・」
パンチが命中するたびに涎が激しく飛び散り、竜一の目線が再び宙を彷徨う。
「アハ・・・やっぱいつ見てもいいね、竜一のこの顔・・・表情・・・フフ・・・」
顔が落ちてきたところに覆いかぶせるように右フック、
下がった顔面に左アッパー・・・さらに顔面を正面から打ち抜くよう右ストレートを叩き込む。
バクンッ!!ドゴッッ!!ドガンッッ!!
「ブェェェッ!!!ガハッッッ!!!ブフッッッッ!!」
無抵抗の竜一に次々とパンチが叩き込まれる。
口元、鼻からの出血の勢いが増し、竜一の顎先から滴り始める。
下半身の力が抜け、崩れ落ちそうになる竜一の体に対し、上手く自分の体を当て、ロープとの間に挟み、それを許さない明菜。
「フフ・・・やっぱり・・・何年経っても私の方が強いね・・・ねぇッ?」
体の捻りを利用して、再び鳩尾に右アッパーをねじ込む。
「ウブシュッ!!・・・ウゥ・・・」
竜一の口から血と胃液、涎の混じった液体が、口とマウスピースの隙間を縫って飛び散る。
「フフ・・・もう降参・・・かな?・・・ねぇ?竜一?」
「ウゥ・・・ク・・・ソ・・・」
「え!?・・・聞こえないよッ!!」
口角を吊り上げ意地悪そうな表情を浮かべつつ、再び右の拳を鳩尾に抉りこませる明菜。
「ウブシュッッ!!」
激しさを増して竜一の口から液体が飛び散る。
「ウグ・・・お、お前・・・お前なんかに・・・」
「えッ?・・・な~に?」
「お前なんかに・・・負けるかよ・・・」
表情はぼんやりとしているが、目の奥に宿した闘志は完全には消えていなかった。
「ウフ・・・そういう負けず嫌いなところも変わってないね・・・それじゃあ・・・」
そう言うと、右アッパーで竜一の顎を突き上げる明菜。
ガツンッ!!
「ウァ・・・」
竜一が小さい声を漏らして、体から力が抜ける。
そして、完全に無抵抗となった竜一をロープの方に突き飛ばし、ゆっくりと跳ね返って差し出された顎先に大振りの左右のフックを炸裂させる。
スパンッ!!スパンッ!!
「ブゥゥゥッッッ!!ブハッッッッ!!」
明菜の拳が竜一の顎を打ち抜くと、てこの原理で頭部が激震し、汗が飛び散る。
「フフ・・・これで私の7勝目だねッ!!!」
さらに右腕を思いっきり引き絞り、全身の力を乗せた右フックを打ち込む。
バゴンッッッッ!!!
「ブェェェェェッッッ!!!」
明菜の右の拳が竜一の頬を潰すとグチュという気味の悪い音が響き、血まみれのマウスピースがリング外に飛び出す。
コーナーに控える市村は、もはや声を失い茫然自失といった表情。
リング外の竜一のライバル達も酷い惨劇を目の当たりにして、完全な傍観者と化していた。
そのうちの一人のトランクスにマウスピースがへばりつくと、ねっとりと血と涎の糸を引いて落ちていく。
「ヒィッ・・・ウワァッ!!」
竜一の体は不自然にピンと伸びた状態のままゆっくりと左側に傾き、リングに叩きつけられるようにうつ伏せに倒れこむ。
「ダウンッ!!」
レフリーがダウンを宣告し、竜一の顔の近くでカウントを始めようと指を差し出す。
「ワン!ツー!・・・うわ・・・」
しかし、白目を剥き、鼻から下は血まみれ、小刻みに痙攣する竜一の様子を見てカウントを取りやめる。
「カンカンカーン!!!」
試合続行不能と判断したレフリーが両腕を大きく振り、ゴングが高々と打ち鳴らされる。
「勝者!!北山明菜ッ!!」
「イエーイ!」
レフリーに右腕を掲げられ弾けるような笑顔を振りまく明菜。
「おいッ!!竜一ッ!!」
我を取り戻した市村が慌てた様子で駆け寄る。
それに続いて救護班が大挙してリングに上がる。
「ウフフ・・・あ~気持ち良かった・・・あッ・・そうだッ!」
何かを思いついた様子の明菜は救護の処置を施されている竜一のそばに歩み寄る。
「お疲れ様、竜一・・・映画ッ!楽しみにしてるよ~・・・またねッ!・・・」
意識を取り戻す様子のない竜一に対して、明菜は可愛らしい声でそう告げ、手を振りながらその場を離れる。
その場にいた誰もその言葉を理解できなかったが、明菜はその一言を言うと満足した表情を浮かべてリングを降りていった。
【校内統一ボクシング大会 2回戦】
優勝候補 ボクササイズ女子大生
●戸崎竜一 第4ラウンド 〇北山明菜
0:50
失神KO
請問M格鬥的文章如何去找?很喜歡但是感覺此類文章很少。
"modushanyu":請問出處和作者,很棒的故事!
由於很多是以前看到就複製下來的 許多出處跟作者忘了
這篇是p站的 你搜下就有了
为毛不自己改写呢?有剧情,有情节,自己改篇一下就好,求人不如求己。
我最喜欢格斗类啦哈哈!人体沙包啥的,被打的血尿精到处喷射哈哈!