日文小说求翻译【地下竞技场的体臭娘】

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日文小说求翻译【地下竞技场的体臭娘】
地下プロレス――それは血湧き肉躍る壮絶な闘いをパフォーマンスとして提供する、地下遊技場きってのエンターテイメントである。

 ルールは簡単明瞭で、とにかく相手を屈服させた者が勝者となる。それ以外に細かいルールはほとんどない。刃物、銃火器等の禁止という縛りはあるものの、それ以外には基本的に何をしても構わない。試合前に下剤を服用させて本番中に相手の集中力を削いだり、爪の先に神経毒を塗ってそれで攻撃したり、言葉責めによって心理的に追い詰めたり、如何なる奸策を弄そうが、卑怯千万を働こうが、地下プロレスにおいては何の問題もない。むしろ、そういった手段の方が観客には好まれる。

 なにせ、観客はただの格闘技を見に来ているわけではないのだ。普通の格闘技が観戦したいのならば、地上で開催されている味気ないもので十分だ。この地下プロレスにおいて観客が求めるのは、矮小なる体躯の男が筋骨隆々のグリズリーのような巨漢に呆気無く勝利をおさめてしまうようなジャイアント・キリング、もしくは、最強を冠する男同士による、ダーティプレイも常套の壮絶な殴り合い、あるいは、緻密な戦略が交錯する、究極的に高度な心理戦、つまり、通常の格闘技ではおよそ見られないような、ある種非現実的な光景なのだ。

 観客はそれらを目に焼き付けて、日々の安穏とした生活からの解放、それによって得られるカタルシスを熱狂の中で享受する。そのために高額の料金を支払って、地下闘技場へと足を運ぶのだ。

 そして、今日も地下闘技場での一線が幕を開ける。

 まだ何も始まっていないというのに、すでに観客席は異様な熱狂に包まれていた。それもそのはず。今日の試合は地下プロレスの中でも異色のカードであったからだ。観客がヒートアップするのも無理からぬ話であった。

「皆様、お待たせいたしました! それでは、選手の入場です!」

 観客の興奮をさらに煽る実況と共に、まるでそれ自体が生き物であるかのように観客席が大きく揺らぐ。そして、悲鳴のような歓声が共鳴し、地下闘技場を包み込んだ。

 実況はより一層声を張り上げて選手を紹介する。

「まずは赤コーナー。地下プロレスの王者となってから未だ不敗! 神速の拳を持つ男! 獅子神龍之介(ししがみりゅうのすけ)ぇぇぇ~~~~~~~!!」

 もうもうとした煙幕から現れたその男、獅子神 龍之介。洗練された体躯に無駄な肉付きは微塵もなく、想像を絶するようなトレーニングによって培った筋肉は、すでに芸術の域に達しているほどに美しく、艶めかしく、かつ、雄々しい。中性的で一見優男にも伺えるような顔貌であるが、その瞳の奥に宿る光には人間離れした野性味が潜んでおり、それが一度表出すれば、百獣を葬り去った歴戦の獣であろうとも一目散に逃げ出すことだろう。相棒とも言うべき両手のグローブには幾度と無く葬った対戦相手の返り血がこびりついている。彼は地下闘技場にて最強のボクサーなのだ。

 龍之介はリングに入ると、両腕を上げて観客にアピールする。観客もそれに答えるかのように、轟音の歓声を返した。

「次に青コーナー。なんと初参戦の新人格闘家だぁ! しかも齢十六の現役JK! 果たしてどんなファイトスタイルでチャンピオンと渡り合うのか! 窮鼠猫噛め! 白井玲奈(しらいれいな)ぁぁぁ~~~~~~~!!」

 待ってましたとばかりに飛び出したショートカットの可愛らしい女の子。豊満な胸と臀部を揺らしながら観客に手を振っている。純白のタンクトップに紺色のスパッツ、そして、学校指定らしき黒ソックスにスニーカーを履いている。獅子神と反してまるで野性味がなく、むしろ飼い慣らされた猫のような、人畜無害な空気を纏っている。小動物的な可愛らしさを振りまく、およそこんなところにいてはいけないような、一般的なJKであった。

 ぎこちなくリングに上がると、観客の声援に対し、投げキッスで答える。その可愛らしい仕草に、観客はメロメロであった。特に男たちの熱狂具合は常軌を逸していた。

 歴戦不敗のチャンピオンVS正体不明の新人JK。普通の格闘技ではあり得ない組み合わせだが、地下プロレスではいとも容易くまかり通る。平等に無差別な地下プロレス界では、何よりも『面白さ』が最優先される。例え倫理的にも法的にも問題があろうとも、主催者が面白いと判断すれば、地下プロレスは些かの滞りもなく決行される。以前にも、力士と熊による相撲合戦だったり、離婚調停を兼ねた、夫婦同士による暴力合戦だったり、面白さの追求による悪ふざけが度々地下プロレスでは繰り広げられていた。

 そして、今日も主催者側の悪ふざけの類に相違なかった。普通に考えれば、どこにでもいそうなJKが数々の強豪を打ち破ってきたチャンピオンに勝てるはずがない。おそらく、JKが凄惨に打ちのめされる姿を観客に楽しんでもらおうという主催者側の下衆な考えが決行の後押しとなったのだろう。そうでなければ、こんな無茶なカードが組まれるはずもない。

 大いなる歓声の中、リングに上がった両者は向き合った。両者とも、顔に緊張の色は見られず、むしろ余裕が伺える。

「……悪ふざけはよしといた方がいいな、お嬢ちゃん」龍之介が口火を切る。「ここはラウンドワンのスポッチャじゃないんだぜ? 卑怯千万大怪我常套な男共の集う戦場だ。興味本位での出場なんだったら、今すぐに棄権した方がいい。俺もお嬢ちゃんの可愛らしい顔をブルドッグみてーにするのは忍びないぜ」

 やれやれといった表情で、龍之介は言った。

「あはは、ダイジョブダイジョブ♪」と満面の笑みで玲奈が答える。「それって要するに、あなたのパンチ食らわなければいいって話でしょ? じゃあ簡単よ。だってあなたの攻撃って眠っちゃいそうになるくらい、すごぉくゆっくりなんだもの」

「……なに?」

 龍之介は眉間をヒクつかせる。

「本当だもん。だって私、あなたの試合見て、この地下プロレスに参加しようと思ったんだよ? あなたがチャンピオンになれるくらいなら、私でもなれちゃうかもって! えへへ。あなたのおかげで大きな一歩を踏み出せたって感じ? だから、あなたには本当に感謝してるの。ありがとね。ん~~まっ」

 玲奈はそう言って龍之介に投げキッスをした。露骨過ぎるほどの挑発行為であった。

「そうか……なるほどね…………」龍之介はグローブをぐりぐりと擦り合わせながら言う。「気持ちは分かるぜ、お嬢ちゃん。思春期の子供ってのには、そういう時期があるもんだからな。管を以て天を窺う、ってやつか? お子様目線でしか物を見れねぇから、どうしても勘違いしちまうんだよな。自分は何でも出来るスゴイ奴って具合に……まぁ安心しろよ。いい機会だ。俺がお灸を据えて、お嬢ちゃんの勘違いを矯正してやる。なぁにちょっとした社会勉強だと思えばいい。多少痛い目見るだろうけど、何事も経験だ。この歳で挫折を味わっとくのも悪くはないだろ? なぁお嬢ちゃん」

「ごちゃごちゃうるさいよ、童貞クン♪」玲奈は笑みを浮かべたまま言った。「あなたこそ偏見に凝り固まってるんじゃないの? さっきから自分の勝ちを確信してるって言い草だけど、果たしていつも通りに勝てるかな? てか社会がどうとか井の中がどうとか、女のアソコの形も知らないチェリーボーイになんか言われたくないんだけど?」

「……は?」

「あなた童貞でしょう? 分かるよ。さっきからくっさい童貞臭がぷんぷん臭ってくるもん。もう虚勢はやめたら? 私の体に興味津々なんでしょ? ね?」

 玲奈はそう言って、タンクトップの首元を少々引き下げた。元からダボついたタンクトップであったため、胸元がさらに大きくはだけた。

 ぷるん、と魅惑の谷間が顔を覗かせる――

「っ!!」

 玲奈の大胆な行為に、龍之介は目を背けて顔を赤らめた。反射的な行動であった。その仕草から彼が女性に不慣れだということが丸分かりであった。

「ほらやっぱり」
 玲奈は蠱惑的な笑みを浮かべる。

「こ、この…………」

 龍之介は冷静さを失い、癇癪筋を額に走らせた。彼はこの時点ですでに、玲奈の術中に嵌っていた。冷静に敵を分析し、弱点に渾身の一撃を食らわせるという彼のファイトスタイルは崩されたも同然であった。

「それでは試合を始めます。両者、定位置についてください」

 体格の良いレフェリーが二人に告げる。玲奈は如何にも余裕そうに、龍之介は怒りに体を震わせながら定位置についた。

 大丈夫、俺が負けるはずがない――龍之介はそう自分の心を落ち着けようとした。実際、玲奈の発言は図星であった。彼は童貞だった。婦女と付き合ったこともなかった。なにせ、来る日も来る日もボクシングの鍛錬に明け暮れていたため、その中性的な顔貌からファンも多い彼であったが、女性と交流する機会など全くなかったのだ。

 故に、龍之介には女性の体に対する耐性がまるでなかった。玲奈の豊満な胸を垣間見た時の胸の高鳴りようは、成人男性とは思えぬほどであった。

 しかし、だからといって、妖艶な魅力を発散する玲奈に屈するわけにはいかなかった。龍之介にも王者としての矜持がある。愚弄嘲笑によって負った精神的ダメージは、己の拳で丸ごと返そう。そして、世間知らずの小娘に自分の強さを思い知らせてやるのだ。彼はそう固く決意した。

 龍之介は拳を構え、玲奈を見据えた。彼女は魅せつけるかのように大きく胸を張っていた。どうやらブラジャーをつけていないらしく、ピンク色の乳首が少しだけ透けて見えた。

 やはり直視はできなかった。
 龍之介は玲奈の足元を見るように心がけた。

 そして――

「レディー…………ファイト!」

 レフェリーの声によって決戦の火蓋が切って落とされる!

先に動いたのはチャンピオンの龍之介であった。

「……シッ!」

 龍之介は得意の俊敏さで、まさに弾丸の如く玲奈の元へ接近すると、容赦なく攻撃を開始した。肉迫の勢いを利用して強烈無比な一撃を玲奈の体に叩き込もうとする。神速のボディーブローだ。理性的なファイトスタイルを一貫してきた彼らしからぬ超速攻であった。どうやら、玲奈の挑発行為は驚くほどに効果的だったようだ。

 玲奈にとってその攻撃は非常に単調であった。

「おっとぉっ!」

 玲奈はヒュルリとその身を翻すと、龍之介のボディーブローをいとも簡単にかわした。神速を誇る拳だとはいえ、動きが読めれば大した脅威に成り得なかった。龍之介が速攻を仕掛けてくることは、すでに彼女の計算の内であったのだ。

 龍之介の拳が空を切る――

「っ!!」

 勢いに任せたボディーブローは空発に終わった。彼の拳は玲奈の服を掠めさえもしなかった。まるで無意味な攻撃。地下プロレスのチャンピオンとは思えぬほどの、情けない空振りであった。

 加えて、玲奈を一撃で沈めんとするためのパンチであったため、龍之介は全体重を前方に預けており、結果、極端に前のめりな状態となってしまった。このままでは攻撃の勢いのままに転倒してしまう。

「くっ!」

 しかし、問題はない。龍之介の体幹は極限にまで鍛錬されており、彼はどんな不利な体勢であっても、起き上がり小法師のように元の状態へと戻ることが可能であった。彼は瞬時に右足を前に伸ばし、それを支えとして体勢を立て直そうとする――が、しかし。

「それっ」

「っ!?」

 支えとして利用するはずの右足が突然、後方へと投げ出された。
 玲奈が龍之介に足払いを仕掛けたのである。
 支えを失った龍之介は事態を飲み込めぬままに、一瞬宙に浮く。いくら卓越した体幹を有する彼であっても、地に足がつかなければ話にならない。彼はどうすることもできず――そのままリング上に落下した。

「ぐあぁっ!」

 両腕を前に投げ出したまま、龍之介は腹と胸を地面に思いきり打ちつけた。強烈な衝撃に横隔膜の動きが瞬間的に停止し、彼はわずかに呼吸困難に陥った。痛みと苦しみに、彼は咳き込みながらリング上で悶える。

「あっはは! ダッサ! 勢い余ってずっこけてやんの!」

 いやらしい笑みを湛えながら余裕綽々といった風に、玲奈は龍之介を詰った。彼女の目にはすでに勝利の色が浮かんでいた。龍之介の実力をすでに見切った様子であった。

 まさかの事態に、観客は困惑しているようであった。なにせ開始早々チャンピオンがリングに突っ伏して悶えているのだ。どうせJKがこっ酷く倒されてしまうのだろうという観客の予想を裏切る展開模様であった。熱狂はざわめきに変わり、会場全体を包んでいく。

「ほらほら、いつまで寝てるつもり? 地面にチューするのはちょっと早いんじゃない? ねぇ、チャンピオンさん?」

 玲奈はあくまで挑発行為に徹する。

「く……くそ、が…………」

 なんとか呼吸を整えた龍之介はゆっくりと立ち上がり、再び拳を構えて玲奈と向き合った。鋭い眼光で彼女を睨む龍之介であったが、その色にはどこか不安や焦燥が混じっていた。拳を避けられるだけでなく、そのまま玲奈に転ばされたことが、彼の心理的負荷に拍車を掛けていたのだ。

「う、うおぉぉぉっ!!」

 負の感情を誤魔化すかのように咆哮を上げると、龍之介は再び玲奈に迫る。やはり、普段の彼らしからぬ直情径行の無策な突進であった。その姿は、肉食獣に一矢報いんと自棄になった草食動物を彷彿とさせた。

 射程距離まで近寄った龍之介はすかさずパンチを繰り出す。先刻のような勢いはなかったが、それでも、百キロを超える巨漢を瞬殺するほどの威力を持った強烈な一撃であることは間違いない。

 だが、それも当たらなければ意味がない。

「ほいっと」

 玲奈はまるでゲームでも楽しんでいるかのような余裕の笑みを湛えながら、軽やかなステップを踏み、再び龍之介の拳をかわしてしまった。彼のパンチをまるで恐れぬ立ち回り。自身の動体視力と反射神経に相当な自信を持っているのだろう。

 結局、龍之介の一撃は空気中に消え去ってしまった。

 また避けられた――と龍之介は冷や汗を垂らした。彼の中の焦燥と動揺はさらに膨れ上がっていく。玲奈の清純な笑みに恐怖を覚える。

「うあ、あぁぁぁぁっ!」

 内に湧き上がる恐怖を振り払うかのようにひたすら拳を振るう。機関銃の連射をも凌駕するパンチラッシュ。目にも留まらぬスピードで、ただ闇雲に殴る、殴る、殴る――

 しかし、そのどれもがヒットしない。玲奈は少しずつ後退しながらも、余裕を持って回避する。玲奈の常人離れした身のこなしは、明らかにJKのそれではなかった。歴戦の格闘家ですらも難しい動きを、彼女は軽々とやってのけた。

「ほらほら~全然当たんないよ~~?」

 次から次へと降り注ぐラッシュを次から次へと避けていく。爛々とした笑みを輝かせながら、美しく、可憐に立ち回り、翻弄し、妖艶な体躯を揺らす。その姿はまさにリング上を舞う妖精のよう。爽やかな汗の結晶を煌めかせながら、龍之介のラッシュを避ける彼女の姿は、女神のように神々しく、非現実的に美しかった。

 その姿に観客も魅了されていた。誰もが玲奈の美しさに嘆息した。彼女は知らず知らずの内に、リング上だけではなく、この会場全体を支配していたのだ。特に男性は完全に釘付けであった。中には股間を膨らませて、恍惚とした表情を浮かべる者もいた。彼らは皆、玲奈の蠱惑的な色香にあてられてしまったのだ。

 そして、その魔力はリング上の龍之介にも迫っていた。

(ああ、ああぁぁぁ…………)

 攻撃が全く当たらないことに絶望しながらも、龍之介は玲奈に見惚れてしまっていた。強烈な色香を放ちながら、まるで官能的な踊りを披露するかのようにラッシュを避ける彼女の姿。惚れ惚れするほどに美しく、どうしても体が反応してしまう。邪念を捨て去ろうと努めるが、その間隙を縫うかのように汗とシャンプーの混じった芳醇な香りが鼻に届く。JKらしい爽やかな香りに、どうしても頬が緩んでしまう。

「く、くそぉ……くっそぉ…………」

 気を引き締めるべく、龍之介はラッシュを続ける。しかし、そのパンチにはもう大した威力はない。彼の中では様々な感情が鬩ぎ合っていた。チャンピオンとしての地位や尊厳を守るため、男としての屈辱を晴らすためにも、玲奈を打ち倒さねばならないのだが、女神のように美しい彼女を傷つけたくはない。だから、ラッシュなどしたくもないのだが、しかし、自分のラッシュを避ける華麗な彼女を見ていたい。大きな躊躇いや自尊心が彼の中で怒涛の討論を繰り広げ、結果、彼は無意識的に、出来るだけ弱く、それでいて玲奈の避けっぷりが栄えるような速度でラッシュを続けるようにしていた。彼の攻撃はとても吐露できないような打算に満ちていた。

 それに気づかない振りをしながら、龍之介は生温い攻撃を続けた。それが一番楽であった。自分の気持ちに上手く折り合いをつけることができるためだ。だから、彼はラッシュとは程遠いラッシュを放ちながら、相手の動きを観察するという体で、目の前で揺れる豊満な果実をじっくりと鑑賞した。驚異的な動体視力でタンクトップから透ける乳首すらも楽しんだ。玲奈のいやらしい肉体に、龍之介はメロメロであった。

 いつしか、龍之介の攻撃は玲奈の胸に集中するようになっていた。ほとんどヒットもしないのだが、たまに掠って、彼女の胸が大きく揺れると、それだけで彼の心は大きく高鳴った。一度だけ拳が玲奈の乳首を掠め、彼女が少し恥ずかしそうにはにかんだ時は、頭が沸騰しそうになった。龍之介の股間はますます膨らんだ。鼻息も荒くなる。

 やがて、間断なき攻撃の果てに龍之介は玲奈をリングの端へと追い詰めた。彼にとって最大のチャンスであった。この状態ならば易々と逃げられることもないからだ。

 勝利は目前であった。龍之介お得意の神速ストレートを放てば、全ての屈辱を晴らせるはずだった。
 しかし、龍之介は身動き一つとれなかった。
 上目遣いをする玲奈があまりに可愛かったせいだ。

 追い詰められた玲奈は目に涙を溜めながら、じっと龍之介のことを見つめていた。ロープに体を預けて、「お願い。虐めないで」と祈るかのように胸の前で手を合わせている。先ほどまでの生意気な玲奈はもうそこにはなかった。彼女はいかにも大人しそうな、かよわき乙女に変わっていた。恐怖に体を震わせながら、縋るように瞳を潤ませるのだ。

「あぁ……あぁあぁぁぁ…………」

 その姿もまた目眩がするほど美しく、その小動物的可愛さに、龍之介は瞬く間に籠絡されてしまった。こんな可愛らしい女の子を傷つけることなど、できるはずもなかった。本来ならば絶好のチャンスであるというのに、よろよろと体が後ろに下がってしまう。

 その隙に――

「……ば~か」

 玲奈は急に顔をにやつかせて悪態をつくと、身を屈ませて、龍之介の脇から逃げ出してしまった。彼女は俊敏な動作で龍之介から大きく距離をとった。

 龍之介は全く反応することができなかった。手を伸ばして脱出を阻害することもできなかった。玲奈が逃げていく姿をただ眺めているしかなかった。飼っていた鳥が大空へと羽ばたいていく様を見て途方に暮れるかのように。

 龍之介はやっとのことで振り向いた。玲奈は楽しそうに笑っていた。

「あははっ、まんまと逃げられてやんの。これだから童貞は扱いやすいんだよね~~~」
「う……うぅ」
「ほらほらこっちだぞ。お尻ぺんぺ~~ん♪」

 玲奈はそう言って龍之介にお尻を突き出すと、軽くペシペシと叩いた。スパッツからはち切れんばかりの豊満な臀部。ムッチリとした尻たぶの形が如実に浮かび上がっており、むしろ生尻よりもよりエロティックであった。

 その光景を目の前にして、龍之介はとうとう陥落した。
 彼の肉棒は完全に勃起し、ハーフパンツ越しでも容易に認識できるような剛直と化した。
 龍之介は尻フェチであった。

「あれ~、どうしたの? かかってきなよ。ほら、お尻ふりふり~~」

 挑発するかのように、腰に手を当ててお尻を振る玲奈。悪戯っ子を装いながら、なるだけ官能的に、ゆらぁり…ゆらぁり…と尻を揺らす。すでに籠絡されきった龍之介にさらなる色香をお見舞いする。

 当然、玲奈の挑発行為は龍之介に効果てきめんであった。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 目を血走らせ、息を荒げながら、龍之介は玲奈の尻を凝視し続けた。地下プロレスの真っ最中だということも忘却し、棒立ちになってその淫靡な光景に酔いしれた。振り子のように揺れる彼女の尻からどうしても目を離すことができなかった。まるで一種の催眠術にかけられたかのようだった。強烈な色香を発散しながら一定のペースで揺れる臀部に、彼は前後不覚の状態に陥っていた。戦闘意欲は完全に消失していた。今や彼の頭の中には淫欲しか残されていなかった。

(あぁ……すごい…………なんて、美しい…………あぁ…………)

 龍之介は恍惚としながら心の中でそう呟いた。次から次へと甘美な妄想が溢れ出す。玲奈の尻の柔らかさ、香り、肌触りが鮮明に現れては消えていく。そしてまた現れては消えていく。もちろん、そんな架空の体験だけで己の肉欲を満足させられるはずもなく、彼女の尻に埋まり、触り、恣にしたいという欲求だけが次第に積み重なっていく。

 玲奈のエロティックな動作に、観客の熱狂と興奮はさらに高まる。やはり、男性客の興奮具合は常軌を逸していた。中には我慢しきれずにパンツの中に手を突っ込んで自慰行為に耽る男もいた。男にとって玲奈の肉体美は、堪らなく情欲を喚起させられるものであったのだ。

 そんな中、玲奈は尻振りをぴたりと止める。これ以上続ける必要もないと感じたのだろう。

「…………ふふん」

 一つ鼻を鳴らすと、玲奈は正面を向き、龍之介を見据えた。そして、彼が放心状態に陥っていることを認識すると、満面の笑みを浮かべ、まるでスキップするかのような調子で彼に迫った。

 龍之介はこちらに近づいてくる女神を見て、さらに胸を高鳴らせた。彼女の弾けるような笑顔を見ると、自分も嬉しくなってしまう。まるで、美しい花の咲き乱れた花園で妖精と戯れているかのような気分に陥ってしまう。いや、実際に龍之介はその現実離れした光景をその目に焼き付けていた。玲奈の美しさは幻覚を催すほどのものだったのだ。

 しかし、そこは無粋なリング上だ。幾多の戦士の汗や血の染み込んだ、地下プロレスの戦場なのだ。
 龍之介のすぐ目の前にまで来た玲奈はその妖艶な唇を開く。無邪気な笑みを湛えたまま。

「ねぇ、チャンピオンさん。どうしたの? さっきから様子がおかしいよ?」
「な……な、にが…………」
「いや、なにがじゃなくて。さっきのラッシュもへなへなだったしぃ、てかわざとオッパイ触ろうとしてたよね。そんでちょっと触れる度にうれしそ~~な顔してたよね。あとなんか私の匂いもくんくん嗅いでたし。なに? なにがしたいの?」
「い、いや……その…………」 
「ここも……こんなにしちゃってるし」

 玲奈は龍之介の膨らんだ股間の先端を指先でなぞり、スリスリと擦った。

「あっ、あぁぁんっ……」

 刹那に脳天を貫く凄まじい電流。その強烈な快感に為す術も無く、龍之介は甘い声を漏らしてしまう。玲奈の指に吸い付けられるかのように、血液がペニスに凝集してさらに固く勃起するとともに、亀頭から射精に先行する透明なアルカリ性粘液が溢れ出す。

 天にも昇る心地とはまさにこのことだった。濃厚な快楽の海が脳みそをゆっくりと浸す。リング上でありながら、それも年端も行かぬ少女に弄ばれているという背徳感、羞恥心も、龍之介の肉欲をさらに膨張させていた。彼は全てを忘却の彼方に押しやって、貪り尽くすかのように快楽を堪能した。

「んっ、だ、だめぇ……あっ、あんっ」
「まぁまぁ可愛い声出しちゃって……ね~え? どう? おチンポの先、スリスリされるの気持ちいい? もっとJKの指でぐりぐりされたい?」
「い、いや……そんな…………」
「されたいんでしょ? ほら、こんな風に」

 玲奈は少しばかり指先の力を強めた。速度も速めて龍之介のペニスの先を激しく擦った。
 膨らむ快感に、龍之介はさらに悶える。

「ああぁぁぁっ! んひっ、ん、んぅぅぅっ」
「ほら、す~りす~り、す~りす~り。上下したりぃ、円を描いたりぃ、強く押し込んじゃったり。どうかな? さっきからおチンポぶるぶるしてるけど、もしかしておツユいっぱい出ちゃってる? ふふ、いいよ。ぬるぬるの液体、たっぷり出すんだよ♪」
「あっ、あっ、あん、んっ、だ、だめ……うぅっ」
「それにしても……あなたのおチンポおっきいのねぇ。すっごいカチカチで、とっても美味しそう……。やだ、なんか私も……エッチな気分になってきちゃった……。アソコが、熱いかも……」

 玲奈は頬を朱に染めて股間をもじもじと揺すらせた。そして、恍惚としたような細い目で龍之介を見つめた。

 その官能的な仕草に龍之介の興奮は最高潮に達した。強烈な射精欲求が彼の頭を支配した。理性という蓋が完全に鍋から外れ、中から肉欲のスープが溢れ出す。全身を巡るそれに逆らうことはできなかった。

「あぁっ、んっ、んんぅぅぅっ!」
「うわぁ、スゴイ……おチンポぷるぷるしてるよ。どうしたの? そんなに気持ちいい?」
「い、いやぁ……もう……もう……だめぇ…………」
「あ、もしかして、もうお漏らししちゃいそう? 白いのたくさん出ちゃいそう?」いやらしく微笑みながら玲奈は言う。「ねぇそうなんでしょう? おチンポの先ぐりぐりされて、お精子どぴゅどぴゅさせたいんでしょう? イッグゥゥ~~~ってなりたいんでしょう?」
「あ、あぁ…………」
「正直に言った方がいいと思うよ。もし、ちゃんと言ってくれたら…………もっと気持ちいいことしてあげちゃうかもよ♪」

 それはまさに魔法の言葉。これ以上の快楽を貪れるというのならば、嘘を吐いてでも玲奈の言葉に沿った答えを返さねばならないだろう。

「は、は、はい……!」快楽に悶えながら龍之介は言う。「イキたいです……今すぐイキたいです…………! お願いします……イカせてください……お精子どぴゅどぴゅさせてください…………っ!!」

 それはあまりに惨めな姿であった。一回りも下の現役JKに、手も足も出ずにそのまま籠絡され、挙句の果てには射精させてもらえるように必死に懇願している。地下プロレスのチャンピオンとは思えぬほどの情けない醜態を晒している。彼の威厳や尊厳は失墜したに等しかった。

「んふふ、はい、よく言えました」と玲奈は軽くウィンクする。「そんなに気持ち良くなりたいんだね? いいよ。たっぷりたぁ~~~っぷり、気持ちいいことしてア・ゲ・ル」
「あ、あぁぁ…………」
「それじゃ、ちょっとだけ目ぇ瞑ってくれる?」
「は、はい…………」

 龍之介は玲奈の言葉に従順に従い、躊躇うことなく目を瞑った。そして、屹立した股間を彼女に突き出した。彼女に優しく労ってもらうために。

「それじゃあいっくよ~~っ!」と玲奈は元気いっぱいに言う。
「は、はい…………」

 龍之介はごくりと生唾を飲んだ。彼の脳内を巡る甘美な妄想の数々。それは今までに彼が成し得なかったことであり、成し得たかったことだった。AV、成人漫画、エロゲーによって培った情報と様々なシチュエーションが次々と過っては消えていく。玲奈の妖艶な肉体による『気持ちいいこと』とは如何なることなのか。彼は期待に胸を高鳴らせた。

 しかし――

 その期待は見事に裏切られるのだった。

「それぇぇぇぇぇぇっ!!」

 瞬間。

ドゴォッ!

 下半身を穿つような衝撃。
 呼吸が、心臓の音が、血液の流れが、体の表在感覚が、全て停止する。

「…………ェ?」

 龍之介は一瞬、なにをされたのか分からなかった。皆目見当のつかない状態。まるで時が止まったような世界の中、彼は目を開いて自分の股間を見た。

 我が目を疑った。

 玲奈の足が真っ直ぐに伸びていて、スニーカーの爪先の部分が自分の股間に突き刺さっていたのだ。
 そして、玲奈の輝かしい笑顔――

「ェ……ァ…………ェ…………?」

 刹那、冷や汗が溢れ出す。

 なんで? なんで? なんでなんでなんでなんで?

 大量の疑問符が龍之介の頭を埋め尽くす。

 何故自分が玲奈に金的されているのか――彼には遠く理解に及ばなかったのだ。

 しかし、間もなくその疑問符の塊は四散するだろう。

 次第に、乖離した感覚が現実へと回帰する。

 止まっていた時が再び動き出す。

 呼吸が戻る。
 心臓の音が戻る。
 血液の流れも戻る。
 そして、体の感覚も同様に戻ってきて――衝撃による激痛が彼の脳天を貫く。

 ぐるん、と龍之介は白目を剝いて叫んだ――

「ぎゃァあァアアァァああァァあアァァぁぁぁァ~~~~~~~~~~~あァあアアぁぁあ~~~~~~~っ!!!」

 龍之介はその場で倒れてもんどり打った。波際に打ち上げられた魚のように、彼は踊り跳ねまわった。眼前に星が舞って涎のような泡が口から際限なく溢れ出す。玲奈の金的はそれほどの大ダメージであった。尖った槍で内蔵をかき回されるような激痛に、彼は悶え苦しむしかなかったのだ。

 金的を見事成功させた玲奈はしてやったりのしたり顔であった。

「へっへっへ~~ば~かば~~~か! ホントにきもちいいことしてもらえるとでも思ってたの~? ほんっとあまちゃんなんだから。そりゃ無防備に目ぇ瞑ってたら、急所狙うに決まってんじゃぁ~~ん! アッハッハッハ!」

 蹲って悶え苦しむ龍之介を見下しながら、玲奈は高らかに笑った。従順な下僕と成り下がったチャンピオンを躊躇なく文字通り一蹴した気分に酔いしれる。そこには微塵の罪悪感もなかった。

 観客も大盛り上がりだった。徹底した挑発行為からの会心の一撃を見事に決めた玲奈に対し、称賛の歓声と拍手が巻き起こる。会場は完全に玲奈優勢のムードと化していた。誰もが玲奈の虜になっていた。観客に投げキッスをあげ、可愛くお尻を振ってお茶目な一面を見せつつ、隙あらば容赦の無い一撃を浴びせるというそのギャップが、観客を見事に魅了したのだ。

「お、ォおお……か、ぶかぐぇ…………」

 龍之介は耐え難い屈辱と激痛の中で震える。自分が完全にアウェイであることを認識させられる。まるで鬼たちの嘲笑に晒されながら、地獄の業火に焼き尽くされるかのよう。今までになく惨めな気分であった。

 しかし、彼にもチャンピオンとしての意地があった。少し動くだけで股間が痛む状況であったが、このまま玲奈に勝ちを譲るつもりはなかった。彼は猛獣のように息を荒らげながら、なんとか立ち上がろうとした。

 その時であった。
 唐突に股間が疼いた。

「え…………?」

 その感覚は龍之介にも馴染み深いものであった。
 紛れも無く――射精の予兆であった。

「う、う、うそ……そんな、そんな……」

 玲奈の指先がもたらす愛撫によってすでに射精寸前であったために、金的が絶頂への引き金となってしまったらしい。龍之介のペニスは氾濫する大量の精液を排出せんと、小刻みな痙攣を繰り返していた。

 龍之介は顔を青ざめさせながら、射精欲求を堪えるべくひたすら無心に努める。立ち上がることを一旦中止し、股間を押さえるように前屈みになって足を小刻みに震わせる。ゆっくりと深呼吸してリラックス。とにかくこんな状況で射精するわけにはいかないので、寸止めオナニーの際に培った自分なりの射精管理技術をフル活用してなんとか射精を我慢しようと試みる。

 しかし、股間の疼きはますます耐え難いものとなる。彼の意志に反して、熱い精液が亀頭へと奔走している。ペニスがビクンと大きく痙攣するのがよく分かった。

 い、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ――

 龍之介は歯を食いしばって、精液を留めようと己の生理欲求に懸命に抗う。まるで小便を我慢する時のように股をしきりに揺すらせる。チャンピオンとしてあまりに不甲斐なく情けない姿だったが、仕方なかった。リング上で惨めに射精するくらいならば、このまま金的に悶える振りをしながら我慢に徹する方が賢明だと彼は考えていた。金的で無様に射精してしまったら、自分の中の大切なものが本当に壊れてしまうような気がした。今まで培ってきた全てを失くしてしまうような気がした。この状態から這い上がるためにも、それだけは避けねばならなかった。

 龍之介の卓抜した強靭な意志によってか、奇跡的にも射精欲求が治まりつつあった。亀頭付近まで接近したマグマが急速に冷え、元来た道を戻っていくような感覚。次第に収束するペニスの疼き。彼の願いが肉体に届いたのか、彼はなんとかリング上での射精を回避することができそうだった。

 龍之介はホッと息を吐く。
 その時であった。

「ねぇ、いつまでもぞもぞしてんの?」
「っ!!」

 体を大きく震わせて龍之介は顔を上げる。

 そこには天使のように微笑む玲奈がいた。

 龍之介は射精欲求の排除に夢中で、玲奈にまじまじと観察されていることに全く気づかなかったのだ。玲奈は蹲った彼の真ん前にしゃがみ込み、彼の悶える様子を眺めて楽しんでいたのだ。

 楽しそうに笑っている玲奈を見て、龍之介は見えない手によって胸の奥を優しく搾られるような感覚に陥った。

 それから股間も同様に――搾られる。

「あ、あぁぁぁ…………」

 再び再燃する射精欲求。龍之介は甘い吐息を漏らして体を震わせた。壊れかけのダムの中で濃密なスープが氾濫しかけているようなイメージ。

 彼は確信した。
 もう射精を我慢することはできないと――

「そんなにガクガクしちゃってどうしたの? 私の金的、そんなに痛かった? あはは♪」

 無邪気に笑う玲奈は目眩がするほど美しかった。
 龍之介はほとんど無意識に口を開く。

「い、イク……」
「は?」玲奈は怪訝そうな表情で首を傾げる。
「だ、ダメ、イク、イク、イッちゃう……精子、精子出ちゃいますぅ……!」

 龍之介は自ら玲奈に暴露した。自分が金的によって射精しかけているという最低の事実を彼女に話してしまった。射精の際にさらなる背徳感を得るというただそれだけのために。

 龍之介の言葉を聞いて玲奈は目を丸くする。そして、間もなくしてくすくすと笑い始めた。

「え? なに? 私の金的で、白いおしっこ出ちゃいそうなの? やっば。あなた、マジ変態じゃん。いいの? 大切な試合中にぃ、ぴゅっぴゅ~~って無様に射精して、アへ顔みんなに晒しちゃうんだよ? それでもいいの?」
「で、でも、でもぉ……もう、が、我慢できな……あ、あ、あ」

 龍之介は体を強張らせる。絶頂がすぐそこまで迫っているのだ。

「ホントに? ホントに出すの? きゃはははっ、チョ~うけるんだけど。ぷぷっ」玲奈はリングを叩きながら楽しそうに笑う。「ふ、ふへへっ。それじゃさ、それじゃさ、私の目ぇ見ながらイッてよ。絶対に逸しちゃダメだよ? お精子ぴゅるぴゅるしてる時も、目閉じないで私のことずっと見てるの。いい? 分かった?」
「は、はぃぃ……分かりましたぁ…………」

 風船のように膨れ上がる射精欲求をそのままに、龍之介は玲奈の瞳をじっと見つめる。吸い込まれそうになる大きな瞳に、彼の心臓は大きく高鳴って股間の疼きも加速する。彼女の無邪気でありながらも嗜虐的な目つきに身も心も奪われてしまう。

 ああ、なんて美しい――

 このまま軽く拳を振り上げてアッパーカットでも決めれば、龍之介の勝利は確実なはずだった。一時の快楽に身を任せずに、貪欲に勝利を求めれば、彼は己の名誉を回復させる権利を得たはずなのだ。

 しかし、それは不可能だった。龍之介の射精欲求が彼の闘争本能を叩き潰してしまった。今の彼は性欲の奴隷だ。玲奈の瞳を見つめながら屈服の証をハーフパンツの中に撒き散らす――彼は背徳的な快楽を貪ることしか考えていなかった。

「ふふ…………イッて?」玲奈は満面の笑みを浮かべて呟いた。

 玲奈のその一言によって痺れるような電流が全身を巡り、筋肉が一気に張り詰める。濃密なスープが頭から溢れだす。彼のペニスが大きく大きく怒張した。

「あ、あ、で、出る、出ちゃう……」龍之介は縋るような目つきで呟く。「あ……あ……い、イク、イク、精子出る、出る、出ちゃう……!」

 膨れ上がった射精欲求は限度を超えてとうとう破裂する。
 瞬間、視界が白に爆ぜた。

「~~~~~~~~~っ!!」

びゅるっ びゅるるるる~~~ドピュッドピュ! びゅぅうぅ~~~~~っ!

 鍛え上げられた肉体を震わせながら、龍之介は射精した。我慢に我慢を重ねた精液が堰を切ったように鈴口から溢れ出し、彼のハーフパンツに染み込んでいった。彼のペニスの形状に膨らんだ股間部分の先端に、黒い染みが姿を現す。彼が精液を漏らしてしまったというなによりの証拠だった。

「あっ……あっ……あ、あぁ…………」

 しかし、それにも構わず、龍之介は絶頂による快感を堪能していた。顔中の筋肉を弛緩させて情けない絶頂面を晒しながら、それでも玲奈の瞳を見つめて精液を放出した。ハーフパンツの中に濃厚な精液をぶち撒けた。手で扱いてさえいないのに、普段のオナニーの数十倍は気持ち良い射精であった。渦巻く背徳感が射精による快楽をさらに相乗させていたのだ。

「あ、ぷぷっ、ぷぷぷぷっ、出てる出てる。あなたのザーメンがぴゅっぴゅ~~って。おパンツから滲みでて溢れちゃってるよ? とうとうやっちゃったね、チャンピオンさん。リング上でお精子漏らすなんて、あなた本当に変態さんなのね。うふふ♪」

 玲奈は悪い子を優しく叱るお姉さんのような口調で、龍之介を軽く詰った。男の性欲をくすぐるような挑発的な笑みを浮かべていた。

 恍惚とその表情を眺めながら、龍之介は最後の一滴まで精液を搾り出してしまった。全てが幻想なのではないかと錯覚してしまうような夢現の状態だった。観客のざわめきも玲奈の声もどこか遠く離れているように聞こえた。

 あ、ああ、心地いい――

 龍之介は穏やかな表情で射精の余韻を味わった。

 だが、それも長くは続かない。

 ぬるぬるとした生温い感触によって、龍之介は現実に引き戻された。

 フッと彼は我に帰る。ここが闘いの場だということを思い出す。地下プロレスの真っ最中だということを思い出す。

 龍之介は息を荒らげながら自分の股間を見つめた。

 そこには黒い大きな染みがあった。
 お漏らし。
 精液のお漏らし。
 紛れも無い恥辱の証。

 体を少し動かしただけでも、漏らした精液の感触が龍之介の亀頭にへばりつく。夢精した時によく感じる感触だった。それはとてつもなく不快だった。

 俺は、こんなところで、精液を――
 お、お漏らしして――
 ああ――
 ああ――

 龍之介は愕然とした。そして、絶望した。
 それは彼の心が折れた瞬間であった。

「…………」

 龍之介は放心状態のまま動かなくなってしまった。四肢を脱力させて顔を俯むかせたまま電池の切れたロボットのように停止してしまった。今まで快楽として機能していた背徳感や屈辱が今度は彼の心を破壊する兵器として牙を剥いた。いわゆる賢者タイムに突入した彼は、とてつもない背徳感と圧倒的な屈辱に押し潰されそうになっていた。ほとんど抜け殻のようであった。

 すでに戦闘意欲は皆無だった。

 このまま家に帰って酒でも飲んでからさっさと寝てしまいたい気分だった。

 そんな様子の龍之介を玲奈は見下す。

 先刻の優しげな微笑みとは打って変わった冷酷な微笑を浮かべて――

「あははっ、どうしたの? 全然動かなくなっちゃったけど。白いおしっこお漏らししちゃって恥ずかしいのかな? それとも、お精子と一緒に闘う気力もどっかいっちゃった感じかな? ねぇねぇ、まだ闘いの最中だよ? ほら、お客さん大盛り上がりなんだからさ、もっとあなたが私にボコボコにされるとこ見せてあげないと。お客さん、満足して帰ってくれないよ? 分かるでしょ? 元、地下闘技場のチャンピオンさん♪」

 皮肉げな口調で玲奈は言った。

 しかし、それを聞いても、龍之介の中で怒りの感情が湧き立つことはなかった。ただ悲しみだけが募った。彼はすでに牙を全て抜かれた小動物と化していた。玲奈に歯向かう気力などまるでなかった。

 龍之介は俯いたまま、力なく笑って言った。

「は、はは……もういいんだ。許してくれ。俺は負けを認める。降参だ。地下プロレスも今日で引退する。はは、は……まさかこんなことになるなんて、な……はは、ははは…………」

 闘う気力を全て失った龍之介は降参宣言をする。そして、涙を堪えているようなその顔を上げた。最後に玲奈の笑顔を拝もうとでも思ったのだろうか。

 しかし、玲奈は真顔だった。

 喜怒哀楽の感情を全て失くした表情で、龍之介を見つめていた。

 龍之介はそんな彼女に恐怖した。暴力に怯える子供のように、縮こまって震え上がった。

「は? なに言ってんの?」玲奈は威圧的な口調で言う。「降参? え、意味分かんないんだけど。ダメに決まってんじゃん、そんなの。まだ私、ぜんっぜん楽しんでないんだけど。先に言っとくけど、パンツん中射精してチンポぬちゃぬちゃにさせたくらいで解放されると思ったら大間違いだよ? あなたにはもっともっと、もう二度と人前で大手を振って歩けないくらいに恥ずかしい目に遭ってもらうんだから……そう簡単に逃げられると思うなよ?」
「そ、そんな……そんな…………」

 龍之介は顔を引き攣らせて脅えた。無理矢理逃げ出そうにも逃げられなかった。すでに、玲奈に対する恐怖が体の中に染み付いてしまっていたのだ。

「ほら、こっち来なよ。こんなリング上の端じゃあお客さんによく見えないでしょ?」

 そう言うと、玲奈は龍之介の手をとって無理矢理引っ張った。

「い、いや、いやだ……助けてくれ…………」

 おもちゃ屋で駄々をこねる子供のように龍之介は藻掻くが、しかし、玲奈にそのまま引きずられていく。本気を出せば、玲奈の手を振り切ることなど赤子の手を撚るより簡単なはずなのだが、彼はどうすることもできなかった。玲奈に対する根源的な恐怖のために、体が竦んで力がどうしても抜けてしまうのだ。

 結局、龍之介はリングの中央にまで引きずられてしまった。彼はうつ伏せになって寝かされる。

 観客は玲奈の行動に興味津々だった。果たして、これから如何にしてチャンピオンを責めるのか。誰もが生唾を飲んで見守った。

「よっと」

 玲奈は再び楽しげな笑みを浮かべると、うつ伏せになった龍之介の背中に飛び乗った。そして、その豊満な臀部でぐりぐりと彼の肉体を圧迫した。

「ぐえぇ……ええぇぇ…………」

 死にかけの山羊のような悲鳴を漏らす龍之介。彼は降参を示すようにバンバンとマットを叩くが、まだまだ試合は終わらない。レフェリーはリング外から試合の様子を楽しそうに観戦している。どうやら審判としての役目を果たすつもりは毛頭ないらしい。

 龍之介の悲劇はまだ始まったばかりだったのだ。

「いっくよ~~!」

 一体、なにをされるんだ――龍之介は恐々と目を細めて玲奈の行動を待つ。ありとあらゆる最悪のシチュエーションを浮かべてそのための覚悟を決める。

 しかし、玲奈の行動は龍之介の予想のどれにも該当しないものだった。

「それっ!」

 可愛らしい掛け声と共に、
 龍之介の鼻をなにかが覆った。

「ふ、ふぐぅっ!?」

 瞬間、龍之介の鼻腔を突いた濃い匂い。

 仄かな汗の匂いと女性独特の甘い香りが混ざった濃厚な匂いが彼の鼻を通って脳髄を痺れさせた。末端の細胞にまで香りが染み渡っていくような感覚。思わず体が大きく痙攣する。鼻を鳴らすと頭がクラクラする。しかし、嗅ぐことを止められない濃密な香り。

 こ、これは――まさか――

「あはは、私の靴の匂いはどうかな? ど~お? くさい? 結構履きこんじゃってるから、ちょっぴりキツい匂いがするかもね~~♪」

 玲奈は恥ずかしげもなくそう言い放った。

 そう、彼女は自分のスニーカーを脱いで、その内部の匂いを龍之介に嗅がせていたのである。

 こ、これが、彼女の靴の匂い――

 そう思うだけで、龍之介の気持ちは大いに昂った。彼は犬のように鼻を鳴らして玲奈の靴の匂いを嗅いだ。溢れ出す彼女の匂いにただ酔いしれた。鼻に届く匂いは強烈だったが、しかし、臭くはなかった。汗の酸っぱい匂いも仄かに感じられたが、臭いとは思えなかった。玲奈の蒸れた足の匂いは、彼にとっては芳醇な香りであり、極上のフェロモンであったのだ。

 瞬く間に、龍之介の股間に血液が集中した。彼のペニスは勃起を始めた。玲奈の尻によって背中から圧迫されながらも、固い剛直へと姿を変える。まだ射精して間もないというのに、玲奈の足の匂いによって彼の性欲が再びかき立てられてしまったのだ。彼女のフェロモンはそれほどの淫靡な魔力を孕んでいたのだ。

 目に見えずとも、龍之介が勃起したということを腰の動きから感知した玲奈は、わざと尻の圧迫を強める。それから彼に言う。

「ほら、もっと嗅いで嗅いで~~。鼻をたくさん鳴らして、私の匂いで体の中いっぱいにするんだよ~~? ほら吸って~~、吐いて~~、吸って~~、吐いて~~」

 玲奈の合図に合わせて龍之介は呼吸を繰り返す。くぐもった鼻息が靴の中から外部に漏れていたが、そんな些細なことは気にせず、夢中になって彼女の靴の湿った匂いを嗅ぎ惚れる。そして、さらなる濃厚な匂いを求めるかのように、彼は靴の中に顔を埋める。また匂いを嗅いで、強烈な色香に脳みそを浸す。

 もはや屈辱や恥辱といった感情は、龍之介には残されていなかった。ただ玲奈の靴の匂いを嗅ぐことしか頭に残っていなかった。

 靴の匂いの虜となっている龍之介を、玲奈は楽しげに眺める。

「ふふふ、私の言った通りに靴の匂いくんくんするなんて、とってもいい子ねぇチャンピオンさん。そんなあなたにご褒美あげちゃう」

 そう言って、玲奈は両足をさらに前に出して膝を立て、太ももで龍之介の両腕をロックした。

 そして――

「それぇ~~~~っ!」

 龍之介の鼻に当てている靴を両手で掴んでそのまま上に引き上げた。
 サント式キャメルクラッチ――
 相手を海老反り状にさせ、背中、腰、喉にダメージを与えるプロレス技である。

「ふご、ご、ごごごごご~~~~~~っ!!」

 突然のプロレス技に驚く暇もなく、龍之介はその苦痛に悶え苦しんだ。反らされた背筋に体重がかかり、背骨が思いきりしなる。そして、靴ごと顎を後ろに引かれ、首を強く圧迫される。

 脊髄のミシミシミシミシという悲鳴。
 首を襲う鈍い痛み。

 完璧に決まったキャメルクラッチに、龍之介は為す術がなかった。

 そしてなにより、鼻に入り込む噎せ返るような匂いに彼は逆に苦しんだ。

 キャメルクラッチにより著しく呼吸の自由を奪われている上、靴の圧迫によって口も上手く開けない状態であったため、龍之介は鼻でわずかな酸素を供給するしかなかった。

 すると必然的に、呼吸を制限された状態で玲奈の足の匂いを思いきり吸い込むことになる。

 それは、乾きを訴える人間にコーヒーを大量に摂取させるようなものだ。

 呼吸が自由な状態ならば、途中で口呼吸による休憩を挟んで、足の匂いを楽しむこともできるだろう。

 しかし、今はそれどころではなく、龍之介は失神しないように懸命に鼻呼吸を繰り返すしかない。この苦しみを緩和させるために彼が欲するのは添加物のないただの真水、すなわち新鮮な空気に他ならないのだ。

 にもかかわらず、鼻に届くのは玲奈の強烈な足の匂い。

 キツい足の匂いが牙を剥き、さらなる苦しさを招く。

「ふがっががが~~っ! むがぁぁぁあぁぁ~~~~っ!!」

 鼻に入り込む足の濃厚な匂いに目眩がする。しかし、呼吸を止めることはできない。龍之介は靴の中に充満した玲奈の足の匂いを嗅ぎ続けるしかない。

 次第に意識が朦朧とし、視界が淀み始める。観客は完璧に決まったキャメルクラッチに大盛り上がりのようだったが、その声は龍之介には届いていなかった。とにかくこの状況から解放されたい彼はマットを思いきり叩いて降参の意を示す。

 しかし、試合は終わらない。地下プロレスでは『面白さ』こそが最優先される。突如現れた新人JKに地下プロレス界のチャンピオンが蹂躙されているという試合展開が面白くないわけがない。観客の熱狂ぶりを見ればそれは明らかだ。

 だから、この試合は終わらない。龍之介が動かなくなるまで、玲奈の蹂躙はまだまだ続くだろう。

「はい、ちょっと休憩~~」

 玲奈はそう言って顎にかける手の力を弛め、龍之介を苦しみから解放する。キャメルクラッチを一旦解いたのだ。

「ぐ、がはっ、ゲホゲホッ、ぐ、うぅぅ~~…………」

 玲奈から逃げる絶好のチャンスであるにもかかわらず、龍之介の体は動かなかった。靴の中に顔を突っ込んだまま、身動きがとれなかった。頭に充満した足の匂いに、肉体が麻痺しているようだった。

「ほらほら、どうしたの~? しばらく待っててあげるから、頑張って藻掻けば脱出できるかもよ~~?」

 玲奈はそう言ってお尻を揺らし、龍之介を挑発した。彼女は余裕の笑みを浮かべている。彼に脱出する力が残されていないことなど、すでにお見通しであった。

「ぐ、うぅ……うぅぅ…………」

 せめて、靴から顔を離して新鮮な空気を吸い込もうと考える龍之介であったが、それすらも叶わなかった。彼はすでに足の匂いの中毒になっていた。濃厚な足の匂いを発する玲奈の靴から顔を上げることができない。むしろ、さらに前のめりになって匂いを嗅いでいる。なんで? なんで? と自ら疑問を抱きながら、足の匂いを嗅いでしまう。彼は切なげな表情を浮かべながら濃密な香りで頭を満たす。

「え~? うそ~、そんなに私の足の匂い好きなの~?」と半笑いの玲奈。「だってムレムレの足の匂いだよ~? 汗かいてるから結構くさいでしょ? なに? くさいのがいいの? 女の子のくさい香りで興奮しちゃの? んでチンポおったてちゃうの? やっば。あなたって超変態じゃん。だから童貞なのかな? あはは♪」
「ふ、ふぐぅ~……」

 玲奈の嘲笑に対して、龍之介は情けない呻き声を返す。そして、現役JKの彼女に馬鹿にされながらも、それでも靴の匂いを嗅いでいた。先ほど刃を突き立てた背徳感が再び彼を優しく迎えた。背徳と屈辱の中で嗅ぐ足の匂いは格別だった。

 そしてまた、地獄が始まる。

「はい、きゅ~け~しゅ~りょ~~。ぐいいぃぃぃ~~~!」
「ん、んむぅぅぅ~~~~~っ!!」

 玲奈は白魚のような手で靴を掴むと、先ほどのように引き上げる。龍之介の悲痛な叫びを楽しみながら、キャメルクラッチを見事に決める。地下プロレス界のチャンピオンと言われた男を好き勝手に蹂躙し、それを観客に見せつけるという快感に彼女はどっぷりと浸っていた。日常生活では得られない刺激をここぞとばかりに享受するのだ。自然と手にもさらなる力が入る。

「むぎゃっぎゃっがぁ……あ、が…………」

 二度目のキャメルクラッチは一度目のそれよりもさらに強力で、龍之介は苦悶の叫びを上げることさえもできなかった。喉から漏れる掠れ声が、彼の苦しみを物語っていた。

 そして、鼻腔を刺激する足の匂い。

 一斉に牙を剥いた濃厚な足の匂いに、龍之介はひたすら耐え続ける。枯渇した酸素を埋めるために、必死になって靴の中で呼吸を繰り返す。充満した足の匂いが彼の苦しみを倍増させる。どれだけ嗅いでも、玲奈の靴の中の臭気濃度は依然として変わらなかった。

 玲奈の靴の匂いは、長年の彼女の足汗がたっぷりと染み付いて蓄積して発酵した結果醸し出されるようになったものだ。故に一朝一夕の呼吸で薄まるはずはない。

 やはり、龍之介は蒸れた足の匂いをそのまま嗅ぎ続けるしかないのだ。

 苦しい、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい―― 

 そう思いながらも、龍之介のペニスは玲奈の足の匂いに反応して勃起してしまう。その先端からカウパー液を漏らしてしまう。足裏のフェロモンに魅せられて、キャメルクラッチを決められながらも、彼は発情していたのだ。

「ふふ……ほら~苦しいでしょ~? 止めてほしいなら止めてって言えば~~? そしたら私も考えてあげなくもないけど?」

 玲奈は無邪気な笑顔で無茶なことを言う。靴の圧迫によって口を塞がれている上、肺に息がほとんど残されていない状態で、言葉を発するのは不可能だ。彼女もそれを分かって言っているのだから、実に質が悪い。

「んがが…………がが…………」

 段々と体の力が抜け、視界が薄まっていく。意識を失う前の感覚。龍之介はまたしても失神しかけていた。先ほどよりも締め付けの強いキャメルクラッチに、彼の限界が近づいていた。

 そして、そのことを見越したように――

「はい、また休憩っ」

 と玲奈は龍之介をキャメルクラッチから解放した。

「ぷはっ、がはっ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 遠ざかった意識が瞬時に回復し、龍之介は咳き込みながらも、玲奈の靴の中で荒い呼吸を繰り返した。目には涙が浮かんでいた。足の匂いとキャメルクラッチのコンボがあまりに苦し過ぎたためだ。

「ふふ~、ほら、今の内に休憩しておくんだよ? じゃないと後が大変だよ? まだまだ続くんだからね~~あははは♪」

 その言葉に、龍之介は顔を青ざめさせた。

 事実、キャメルクラッチ玲奈ヴァージョンは、何度も何度も繰り返された。

 靴を龍之介の顔面に押し付けたまま、見事なキャメルクラッチを決めて彼を苦しめ、失神寸前になったら解放して休憩させる。そして、またある程度彼の呼吸が整ったらキャメルクラッチを決め、彼を足の匂い地獄に叩き落とす。それからまた休憩させる。

 龍之介はどうすることもできず、玲奈の苛烈な責めを受け続ける。

 鍛え上げられた肉体を活かすこともできず、ただのおもちゃか人形のように玲奈に弄ばれる。失神の瀬戸際で今までにない苦痛に身を窶す。そして、ムレムレの足の匂いを鼻で吸い続ける。

 やがて、十何回目のキャメルクラッチの末、龍之介は玲奈の靴から解放された。 

「はぁ……はぁ……はぁ…………」

 その頃には、龍之介はすでに虫の息であった。鼻に残った足の匂いを嗅ぎながら、ぐったりと横たわって一ミリとも動けなかった。彼は虚ろな目でリングに突っ伏していた。

 それでも、龍之介のペニスは立派に勃起したままだった。

 チャンピオンの無様な様子を見て。玲奈は悦に浸る。

「あははっ、ごめんね、ちょっとやり過ぎちゃった。でも、私の足の匂い、たっぷり嗅げて良かったでしょ? これだけ嗅がせたらきっともう忘れられないよ? よかったね~~。これで、私の足の匂い妄想しながらセンズリこけるね♪」

 玲奈はそう言って楽しそうに笑った。

 しかし、その声も瀕死の龍之介には届いていなかった。

 おわった……これで……これでやっと解放される…………。

 龍之介は突っ伏したまま目を閉じて安堵していた。これだけ自分のことを苦しませたのだから彼女の気も済んだだろう、と彼はそう一人合点していた。

 しかし、龍之介の考えはまだまだ甘かった。

 玲奈の欲求の腹具合はまだ満腹とは程遠かったのだ。

「は~い、おねんねの時間にはまだ早いでちゅよ~~。まだまだお楽しみはこれからでちゅからね~~」

 馬鹿にしたような赤ちゃん言葉で、玲奈はそう言った。

 え――?

 龍之介は玲奈の言葉に耳を疑う。

 それが聞き間違いかなにかであることを願う。

 しかし、事態は龍之介の望まない方向へとますます進展していく。

 玲奈は手際よく龍之介を仰向けにさせた。瀕死の彼をなすがままにひっくり返す。

 そして――

「それ、ご開帳~~~っ」

 と、玲奈は龍之介の腰の方に回って、ハーフパンツを脱がせてしまった。

 龍之介の勃起したペニスが晒されてしまう――

 その瞬間、会場は阿鼻叫喚の渦に。悲鳴にも似た女性の金切り声に、男性の野太い笑い声、ざわめき、口笛が一体となって会場を爆発的に盛り上げていた。頭上のスクリーンには龍之介のペニスがでかでかと映し出されていた。

「い、いやぁ、だめぇ……見ないでぇ…………」

 龍之介は顔を真っ赤にさせてハーフパンツを穿き直そうとするが、鼻に残った足の匂いに力が抜けてしまい、足首にまで下がったハーフパンツを上に戻すことができない。それでも、彼はなんとかペニスを隠そうと身を捩らせるがどうにもならなかった。ただ、彼の剛直が情けなく揺れるだけだった。

「アッハッハッハッハ! よかったねぇチャンピオンさん。あなたのおチンポ、色んな人に見てもらえてるよ。嬉しいでしょ? うぷぷぷぷぷ」
「ら、らめぇ、見ちゃらめぇぇ……いやぁぁぁ…………」

 龍之介は両手で顔を覆って、くねくねと腰を揺すらせる。情けなさの極致とも言うべき姿であった。地下プロレス界のチャンピオンとしての彼は死んだも同然であった。

 しかし、龍之介はそれでもペニスを怒張させたままだった。

 先端から透明な蜜が溢れている。

「さてと……」

 龍之介の恥ずかしがる様子を楽しそうに眺めながら、玲奈は彼の顔の横でしゃがみ込む。

 そして、耳元で囁く。

「どう? おチンポ見られて恥ずかしい?」
「あぁぁ……恥ずかしいぃ……恥ずかしいですぅ…………」

 そう言って龍之介はいやいやと体を震わせる。

「でも、おチンポビンッビンだよ? もしかして、たくさんの人におチンポ見られて興奮してるの?」
「いやぁ……違う……違いますぅ…………」
「じゃあなんで勃起してんのさ。我慢汁もお漏らししちゃってるし」
「うう……ううぅぅ…………」

 龍之介はなんとも言い返すことができなかった。玲奈の言う通り、衆人環視の元で情けなくペニスを晒すという行為に、彼はとてつもなく興奮していたのだ。

「全く、チャンピオンさんは本当に嘘つきだねぇ」玲奈は意地悪い笑みを浮かべる。「あなたみたいな悪い大人は、きっちりお仕置きしてあげなくちゃね♪」

 玲奈はそう言って、もう片方のスニーカーを脱ぐと、横たわった龍之介と地面の間に、まるで蛇のように自らの下半身を滑りこませた。それから両足を持ち上げて胴体を挟んで固定し、足裏をペニスに沿わせた。汗で蒸れてシットリとした足裏が龍之介のペニスを包み込む。

 観客の声が一層轟く。

「あぁ……はぁ…………」 

 蒸れた靴下の感触に、龍之介は息を荒らげて悶えた。それだけで射精してしまいそうになるほどの気持ち良さだった。我慢汁がさらに溢れ出す。

「……ふふっ」

 それを見た玲奈は妖しげに微笑んで、両の足裏をゆっくりと動かした。緩慢なストロークによって龍之介のペニスを優しく刺激する。足裏の汗と我慢汁が撹拌され、粘着質な音が奏でられる。

「あぁあぁぁ……あぁぁぁああぁぁんっ」

 甘い吐息を漏らして龍之介は腰を震わせる。蒸れた足裏に扱かれる快感は得も言われぬものであった。泥の中へと静かに沈んでいくような感覚だ。

 甘い快感に取り憑かれた龍之介は自ら腰を振ってさらなる刺激を求めた。高まる射精欲求が彼の心を蝕んでいたのだ。例え大衆に自分のペニスを見られているという状況であっても、このまま快楽に満たされながら絶頂に達したいと彼は思った。

 しかし、玲奈はそれを許さなかった。

 玲奈は龍之介が腰を振り始めたと同時に、ペニスから足裏を離してしまう。彼のペニスは空を切る。

「あぁ、そ、そんな……」

 龍之介は悲しそうに顔を歪ませて、求めるかのようにさらに腰を振った。しかし、玲奈の足裏にペニスが触れることはなく、しばらくしてから彼は腰の上下運動を止めた。快感を剥奪されたペニスは切なげに痙攣していた。

 そのタイミングを見計らって、玲奈は再び龍之介のペニスに足を沿わせる。

「うふふ……」

 妖しげな微笑を湛えて、玲奈は焦らすように龍之介のペニスを刺激した。五秒間隔のストローク。竿の部分を優しく圧迫し、撫でるように上下する。そして、時には足指の先でくすぐるように裏筋を刺激する。生かさず殺さず、ペニスにわずかな刺激を与え続ける。

「ひ、ひぁぁあぁぁっ」

 再び訪れた足裏の感触に、龍之介は情けなく鳴いた。それから下半身を震わせて歓喜の舞を披露した。あまりの気持ち良さに、腰が抜けたような感覚に陥った。

 だが、玲奈の絶妙な力加減によって射精には至らない。絶頂のためのあと一歩が足りない。龍之介は絶頂を求めて必死に鳴き声を上げるが、玲奈の心には響かない。彼女はひたすら焦らし続ける。生温い快楽責めで彼の心をさらに支配するのだ。

 その上で、玲奈はさらなるお仕置きを与える。

「それっ」 

 可愛らしい掛け声と共に、玲奈は自分の左腋を龍之介の顔面に押し当て、そのまま腕を彼の背中に回して無理矢理固定した。それから腋に力を入れて彼のアゴを無理矢理引くことによって締め上げる。玲奈の体によって胴体が浮いている分上半身が反って圧迫され、ますます息が辛くなる。

 ドラゴンスリーパー――

 時間をかけてゆっくりと体力を消耗させ、相手を夢の世界に誘うという恐ろしい寝技だ。

「むぅぅっ!  んむむぅ~~~っ!」

 甘い快楽責めからの急降下。龍之介は突然のプロレス技に驚く暇もなく、死にかけの虫のように藻掻いた。再び訪れた呼吸の制限、そして、上半身と首の圧迫。力の抜けた彼に脱出の手段はない。

 加えて、その技は快楽責めとしても機能する。

 玲奈の腋から匂い立つ芳醇な香り――

 それは余すところなく龍之介の鼻に吸い込まれていく。

(あぁ……ああぁあぁぁぁ…………)

 ツルツルの腋から醸し出される強烈な匂い。むわぁと鼻を包み込む汗の匂いと甘ったるいような体臭に脳みそが蕩けていく。先ほどのサント式キャメルクラッチと同じように、濃厚で野生的な匂いが呼吸のわずかな隙間にまで入り込む。だから苦しい。しかし、それでいて興奮してしまう。

「ど~お? 私の腋のニ・オ・イ。たっぷり汗かいちゃったから、くっさいでしょ~? 頭ん中染まっちゃうくらいくんくんしてねっ」

 玲奈はそう言ってさらに強く自分の腋を押し付ける。自分の汗ばんだ腋を嗅がれることに些かの羞恥心もないようだ。

「ふむぅぅ~~~っ! むぐぅぅううぅぅ~~~っ!」

 龍之介は否応なく玲奈の腋の匂いを嗅ぐ。鼻に広がる甘酸っぱい香り。腋臭の人間が発するような不潔な悪臭ではなく、健康的な汗の匂いだ。彼は女性の腋がこれほどに芳しいとは思っていなかった。足の匂いに匹敵するほどの濃厚な色香に酔いしれる。

 そして、腋から溢れ出す大量の蜜。腋汗。口に入り込んだそれは濃密な味を龍之介にもたらす。舌が痛くなるような塩っ辛さだったが、妙な中毒性があり、口の中に流れ込む腋汗に彼は歓喜する。

 しかし、やはり苦しい。ドラゴンスリーパーによる締め上げが龍之介の意識を少しずつ刈り取っていく。快楽の中に芽吹く恐怖がゆっくりと彼の中に広がっていく。

「ふ、ふふ……」

 自分の腋を味あわせながら、玲奈は引き続き足裏で龍之介のペニスを扱く。左右の足の動きを意図的にずらしつつ、舐るように蹂躙する。

「うぶぅぅううぅぅ~~~っ! んむぐぅぅあぁぁ~~~っ!」

 湿った足裏の感触に、龍之介は悲鳴にも似た嬌声を上げる。彼の肉体は苦痛と快楽という両極端の感覚によって同時に支配されていた。ドラゴンスリーパーがもたらす苦痛に悶絶する一方で、芳しい腋の匂いと蒸れた靴下による足コキが彼の快楽中枢を満たす。天使と悪魔の鬩ぎ合い。その戦場たる脳内では、細胞が次々と破壊されていく――

 それを見透かしたように、玲奈は龍之介を責め立てる。

「それそれ、もっと強くしてあげちゃうよ? どう? 気持ち良い?」

 玲奈は腋の締め上げを強烈にしながらも、足コキのスピードを速める。苦痛と快楽の要素を同時に強化し、龍之介の頭の中をさらに掻き乱す。

「んんんん~~~~~っ! んぶぶぶぶ~~~~~~っ!!」

 さらに苛烈となる責め。首と上半身がさらに一段階反り上がるが、腋の匂いとペニスの刺激も同様に強烈なものとなる。龍之介は白目を剝いて体を痙攣させる。心身ともに限界が近いのだ。

 もはや、会場で自分の醜態が晒されていることなど、龍之介はすでに忘れていた。氾濫する苦痛と快楽の中、意識を保つだけで精一杯だったのだ。観客の嘲笑や歓声の声も全く聞こえない。息苦しさ、首と背中の痛み、匂いたつ腋、腋汗、蒸れた靴下による足コキ――それらがもたらす感覚で彼の頭は満たされていた。

「ほら、もっと……もっとゴシゴシしてあげる。どう? 気持ちいい? 足でおチンポ扱かれるの気持ちいい?」

 玲奈は恍惚とした表情でさらに激しく足でペニスを扱く。ムレムレのソックスは足コキによる運動でさらに蒸れ、足汗を表面に染み出させながら、龍之介のペニスを蒸し上げる。真っ赤になったペニスからは際限なく我慢汁が溢れ出し、溢れ出した足汗と混ざって淫靡な音色を響かせる。

「腋の匂いもたっぷり嗅いで? ムレムレでくっさいけど、でもそれがいいんでしょう? さっきもそうだったもんね。くさい香りで興奮するんでしょう?」

 そう言って、玲奈は腋の圧迫をさらに強める。搾った果実のように腋汗が溢れ出し、龍之介の顔に染み込んでいく。そして、強烈な匂いが充満する。むわぁと蒸れた汗の濃密な匂いが彼の鼻腔に染み付き、受容器を通って脳みそまで染め上げていく。

 ドラゴンスリーパーの苦痛を味わいながら、龍之介は腋の匂いと塩っ辛い汗を存分に堪能する。そして、鈴口から粘液を垂れ流しながら、足コキによる快楽を貪る。真夏のような熱気が彼の顔面とペニスを覆い尽くす。蒸れた腋と靴下が彼の肉体を蹂躙する――

 そして、とうとう限界が訪れる。

「んぶぁあぁぁぁあ~~~~~っ! むぎゃぁあぁああぁぁ~~~~~~~~っ!」

 湧き上がる強烈な衝動に、龍之介は下半身を大きく痙攣させた。下から突き上げてくるような股間の疼きが彼の肉体を支配する。堰き止められていた濃密なシロップが一気呵成とばかりに尿道を駆け上がる。もはや、それを食い止めることはできない。

「あ、イク? もしかして、イッちゃうの?」玲奈は半笑いを浮かべて言う。「いいよ。このままイッて? 白いおしっこぶちまけて? 会場の皆さんが見ている中で、負け犬お漏らし披露しちゃいなさい?」 

 そう言って、玲奈はさらに激しく足で擦る。両の足裏でペニスの竿部分を強く強く圧迫し、まるで搾り上げるような力強いストロークを繰り返す。グチュグチュグチュグチュ――と粘液がさらに迸る。溢れ出すカウパー液と足汗が強烈な匂いを醸し出していた。

 龍之介は我を忘れて貪るように玲奈の腋を味わう。体を痙攣させながら、染み出す匂いと腋汗を享受する。それらは快楽成分となって彼の肉体を激しく巡る。

「いいよ、イッて? イッて?」玲奈は意地悪い笑みを浮かべて言う。「腋のくっさい匂いくんくんしながら、ぬるぬる足コキで射精して? おチンポから雄汁撒き散らして? ほら、さっさとぴゅっぴゅしちゃいなよ。地下プロレス界のチャンピオンさん♪」

 玲奈は目にハートマークを浮かべながら、万力の如き力で以て足裏でペニスを圧迫する。

 瞬間――

「むあぁぁぁああぁぁぁあ~~~~~~っ!!」

びゅっびゅるるるる~~っ ドピュッ ドピュッ びゅくっ びゅるるっ

 リングの中央で咲き乱れた白い花――無論、それは龍之介の放った精液だ。水鉄砲のような勢いで打ち上がった精液が会場内の照明に照らされて輝く。彼の屈辱の証が会場中に露見する。

 しかし、龍之介に射精を止めることはできない。彼は肉体を反らせて自らペニスを突き上げながら射精する。ペニスを脈打たせながらびゅるびゅると精液を漏らす。あまりの快楽に腰が震え、目の前が真っ白になる。

 スクリーンに映し出される龍之介の射精シーン。会場はさらなる熱気に包まれる。地下プロレス界のチャンピオンが新人の現役JKに射精させられているという前代未聞の事態に、誰もが興奮していた。その様子を撮影する者、チャンピオンに幻滅する者、逆にチャンピオンのやられる姿に興奮する者、チャンピオンに自己投影してパンツの中に精液を漏らす者……龍之介の射精に、会場は大盛り上がりであった。

 その様子を見て、玲奈は大満足なようであった。彼女はソックスを精液に塗れさせながらも、さらに龍之介のペニスを扱き、残った精液を全て搾り取る。彼女の足技に導かれるままに、ペニスはさらなる精液を漏らす。

 やがて、十秒間にも渡る射精の末に、龍之介はやっとドラゴンスリーパーから解放された。彼は下半身を丸出しにしたまま、自らの精液に塗れたまま、ぐったりとリング上で横たわっていた。

「あ、あぇ……あぅあ…………」

 龍之介は屈辱を感じる余裕もなく、ただ無心のまま動けなかった。心身ともに消耗しきっていた。玲奈による快楽責めに、彼の疲労は極限にまで達していた。

 それを見たレフェリーはさすがにもうこれまでだろう、とリング上に立ち入ろうとした。

 しかし、それを制する者がいた。

 玲奈だった。

「もうちょっと遊ばせて。ねっ、お願い♪」

 玲奈はそう言って自分のソックスを脱ぐと、レフェリーに渡した。

 そこから立ち昇る匂いを嗅いだ瞬間、レフェリーは従順な犬と化した。彼はペニスを尻尾のように立てながら「は、はい……」と玲奈に従うと、そのままリングから立ち去ってどこかへと消えていった。おそらく、彼女から頂戴したソックスを使って変態オナニーに興じるのだろう。

「さて……と」

 レフェリーを体よく追い払った玲奈は、意識を朦朧とさせた龍之介に馬乗りになると、スパァンッと彼の頬を思いきり叩いた。優しさの欠片もなく、右から左へと振りぬいた。

「ぶえぇっ!?」

 幾千もの針で刺されたかのような鋭い痛みに、龍之介は意識をはっきりさせた。

 目の前には楽しそうに笑う妖精の姿があった。

「うふふ、まだだよ。まだ、まだ」玲奈はそう言って悪魔に変わる。「まだまだ気絶しちゃダメだよ。もっとぐちゃぐちゃにしてあげるんだから」
「そ、そんな……いやぁ…………」

 体を震わせて涙を滲ませる龍之介。彼は立ち上がってリング上から逃げ出そうと思うが、全身の筋肉が弛緩してしまい、立つことすらままならなかった。

 だから、龍之介はリング上を這ってでも玲奈から逃げようとする。チャンピオンとしての矜持はすでに粉々に砕かれていた。残された恐怖心が彼の体を突き動かす。無様な姿を晒しながらも、龍之介は玲奈から逃げようとする。

 その情けない姿に、会場は大爆笑に包まれる。下半身丸出しで泣きながら逃げ惑うチャンピオンがおかしくて仕方がない様子だった。

「こらこら、逃がさないよ~~」

 玲奈は軽く龍之介に歩み寄ると、彼の片足を掴んで捕まえる。そして、まるで玩具を扱うかのように、ずるずると龍之介を引きずる。

「ああぁ、あぁぁぁあぁ~~…………」

 子供のように手足をバタつかせながら、龍之介は情けない声を上げる。魔の手から必死に逃れようとするが、何の抵抗もできず、されるがままに現役JKに引きずられてしまう。

「ほいっと」

 玲奈はさっさと龍之介をリングの端の方に放り投げる。それから仰向けになって横たわる彼の足を掴んで引き上げると、リングの端のポールを背もたれにして腰を下ろし、彼を無理矢理開脚させて、観客に見せつけるように股間をおっ広げにさせてしまった。それから逆さまの状態を維持できるように、彼の足をロープに引っ掛けて固定した。逆さまになったまま股間を丸出しにした情けない格好だ。乱暴な足コキによって赤く腫れ上がったペニスが衆目に晒されてしまう。

 加えて、玲奈は自分の生足を背後から回して、龍之介の顔面を足裏で覆い尽くす。汗で蒸れた生足の香りが彼の鼻腔を強く刺激した。

 すると、龍之介のペニスは見る見る内に勃起した。

 かような状況下にありながらも、龍之介は玲奈の足の匂いに興奮していたのだ。

 その様子は当然ながら、巨大スクリーンに映し出されていた。龍之介のペニスが玲奈の足の匂いによって花咲くように勃起していく様がドアップで表示されてしまう。会場はやはり大爆笑だ。

 しかし、龍之介はそれどころではない。逆さまの状態で固められているため、首にかかる負担が大きく、故にひどく息がし辛い状態だった。しかも、汗で湿った生足によって顔面を覆われているため、生足の濃厚な匂いをたっぷりと嗅ぐ羽目になる。噎せ返るような汗臭さに、龍之介は悶え苦しんだ。

「そ~れ、ぐちゃぐちゃ~、ぐちゃぐちゃ~。どう? 私の酸っぱ足のお味は。とってもジューシーでしょ~? あははっ」

 玲奈は楽しそうに笑いながら、龍之介の顔面を踏みにじる。にちゅにちゅぐちゅねちゃぁ……と溢れ出す足汗が粘着質な音を奏でる。彼の顔面は玲奈の足汗によって塗れてしまう。酸っぱい匂いに満たされてしまう。

 続けて、玲奈は眼前にある龍之介の尻穴を眺める。筋肉質な臀部からピンク色の肛門が控えめに顔を覗かせていた。

「んっふふ~~、チャンピオンさんのケツ穴、なんかヒクヒクしてる~。かわいい~~」玲奈は馬鹿にしたような口調で言う。「こんだけかわいいケツ穴なんだもん、イジメるっきゃないよね~~♪」

 その言葉に、龍之介は目を見開く。
 イジメるって、ま、まさか――

「ひゃ、ひゃめ……ひゃめてぇ…………!」

 しかし、その声は玲奈に届かず――

「それ~~~っ!」

 ズボッという感触が龍之介の下半身に広がる。
 自分の肛門に、玲奈の指が挿入された瞬間であった。

「んぶっぷぇ、んぐ、んぶぶぅぅ~~~~っ!」

 肛門に指を挿入されたことは初めてで、龍之介は未知なる感触に全身をガクガクと痙攣させた。冷たい指に侵食されていく恐怖が彼の心を支配した。彼女の指に肛門から脳天までを貫かれて操り人形と化したような感覚。抵抗しようにもなにもできなかった。

「ん~ほじほじ~ほじほじ~~。どこかなどこかな?」

 玲奈は岩盤を掘削するように指を回転させながら、龍之介の肛門を掘り進めた。時折金塊を探り当てるかのように指を曲げて腸内を刺激する。白魚のような細い指を縦横無尽に動かして、龍之介の腸内をかき回す。

 そして、ある一点を刺激した瞬間――

「むむがぁぁぁっ! ああぁあぁ~~~っ!」

 ビクンッ、ビクンビクンッ、と龍之介は下半身を痙攣させた。

 その様子に玲奈は目を輝かせた。

「見っけた~~。お射精スイッチはっけぇ~~ん!」

 玲奈は指をぐにぐにと曲げてそのスポットを刺激した。彼女が見つけ出したのは前立腺のふくらみだ。強制射精用のスイッチと言っても過言ではないだろう。この部分を執拗に刺激することによって、やがては男性を無理矢理射精に至らせることが可能だ。

「あっ、あっ、あっ、あああぁぁんっ❤」

 前立腺の刺激によって、龍之介は情けない喘ぎ声を漏らす。玲奈が刺激するそばから、勃起したペニスの先端から透明な液体が溢れ出す。それは滴って自分の顔面に落下した。

「そ~れ、ぐにぐに~~、ぐにぐに~~。あははっ、おもしろ~~い!」

 龍之介の下半身を自在に操っている感覚が楽しく、玲奈はさらに指を動かして前立腺を刺激する。そして、引き続き自分の汗ばんだ生足を彼の顔面に擦り付ける。足の裏から醸される匂いはやはり強烈極まりないものだ。

「やっば。すごいよ、チャンピオンさん。おチンポ汁がだらっだら出ちゃってるよ。なぁ~に? そんなに気持ちいいの?」
「ら、らめぇぇぇ~~おかしくなっちゃぅううぅ~~~あぁぁあぁぁ~~~~~ん❤❤」
「うふっ、可愛く鳴いちゃって。ケツマンコが気持ち良くて気持ち良くてしょうがないんだよね~~。ほら、もっとぐにぐにしてあげる♪」
「あぁぁぁあ~~~ん❤ あんっ❤ い、いやぁぁあぁぁぁ~~~~~~~~❤❤」
「ほら、あんよの匂いもくんくんしてね。あなたの大好きな、ムッレムレに熟成された汗臭ぁ~~い香りだよっ。匂いフェチのあなたにはたまんないよね~」
「んぁああぁ~~ん❤ あっ❤ あっ❤ あぁぁああぁ~~ん❤」

 強烈な足の匂いと前立腺の刺激による快楽が、龍之介の全てを支配する。

 脳みそに巨大な棒を挿入されて、スープのように掻き混ぜられるような快感――

 意志とは無関係にカウパー液が際限なく溢れ出し、何度も何度も滴り落ちる。

 鼻に届く強烈な足の匂いがさらに頭を狂わせる。

 もはや、喘ぎ声を上げて悶えずにはいられないのだ。

 玲奈はそんな様子の龍之介を楽しそうに眺めながら、彼を快楽漬けにしてしまう。汗臭い生足を顔面に擦りつけ、指を抜き差ししつつも前立腺を激しく刺激する。彼女は前立腺刺激による射精ショーを心待ちにしていた。

 しかし、いくら前立腺を弄ってもなかなか射精には至らなかった。

 それもそのはずで、龍之介はもうすでに二度も射精しているために、まだ精液の準備が整っていなかったのだ。カウパー液だけが大量に溢れ出す。

「あれ~~?」玲奈は困ったような顔で首を傾げる。「なかなかおしっこ出ないな~。なんでだろ? こんなぐりぐりしてんのに~もぉ~~」
「あぁぁぁあぁ~~❤ らめぇぇっ❤ らめぇぇええぇぇ~~~❤」

 そう簡単に射精するはずもないのに、玲奈は頬を膨らませてさらに前立腺を刺激する。しかし、龍之介の悶絶とカウパー液の分泌が激しくなるだけで射精には至らない。

 ふと、なにかに気づいたように、玲奈は顔を輝かせた。

「そっか! もしかしたらおかずが足りないのかも」玲奈は納得したように言う。「そうだよね。足の匂いとか腋の匂いとかくさい匂いたっぷり嗅がせちゃったもんね。生足の匂いくらいじゃあもう満足できないんだ。ねっ、そうだよね、チャンピオンさん」
「ああぁぁぁん❤ あっ❤ ああんっ❤ んくっ、いぃいぃぃいぃ~~~~~❤」

 しかし、快楽に頭を溶かした龍之介には玲奈の問いかけなど届かず、生足の強烈な匂いと前立腺の刺激に悶絶しながら喘ぎ声を上げることしかできなかった。

 そして、玲奈はその反応を都合良く捉えた。

「そうだよね~。もっともぉ~~~っと、くっさい匂いが欲しいんだよね~~」玲奈は小悪魔のような笑みを浮かべる。「いいよ、足の匂いより、腋の匂いより、もっともっとくさい匂い、嗅がせてあげるね」

 玲奈はそう言うと、スパッツに覆われた臀部を前に突き出し、龍之介の後頭部に密着させた。

 玲奈の豊満な臀部によって、後頭部のほとんどが覆われてしまった。

 だが、快楽の海に浸る龍之介はそのことに全く気付かなかった。

 そして、さらなる脅威が迫っていることにも――

「えっへへ~、実はメチャクチャ溜まってたんだよね~~」と玲奈はお腹を撫でる。「それじゃあ早速だけどイッちゃうよ~~♪」

 玲奈はそう言ってお腹に力を入れた。
 すると――

ぷぅっ! ぷっぷぅぅ~~~っ!

 突然、壊れた楽器のような甲高い音色が玲奈の尻から響いた。

 尻に密着した龍之介の後頭部に生じた強烈な熱気。まるで、煙で燻されたかのような感覚。

 漂い始める――とてつもない激臭!

 その強烈な臭いは龍之介の鼻腔にも届いた。

「っ!? んあっ、ぐあぁぁあぁぁぁあぁ~~~~ぁあぁぁ~~~~~~~~~~~~っ!!」
 快楽すら吹き飛ぶほどのとてつもない悪臭に、龍之介は悶え苦しんだ。生足の汗臭さを凌駕するほどの激臭だ。ニンニクと硫黄を一ヶ月と熟成させてそこに腐ったチーズやキムチや腐肉を混ぜ合わせたような最悪の臭いだった。

 言うまでもなく、オナラの臭いだった。

 それも人間離れした毒ガスだった。

「あっはっは~~! どぉ~~お? くさぁい?」
 玲奈はお腹を抱えて笑いながら尋ねる。
「今日のために、臭いものばっか食べてたから強烈でしょう? なに食べたか言ったげよっか?」と聞いてもいないのに、玲奈は龍之介に自分の食事内容を伝える。「え~とねぇ、まず一昨日の朝は湯で卵をたらふく食べてぇ、んでお昼はニンニクたっぷりのラーメン、夜は焼き肉とキムチをお腹いっぱいでしょ。昨日の朝はブルーチーズ塗ったパンをたっぷり食べて、昼はガーリックステーキ、夜は臭いの我慢してシュールストレミング食べて、今日の朝と昼はオナラがたくさん出るように、焼き芋食べまくってきたんだぁ。だから、お腹の中オナラでいっぱいだよ? よかったねぇ、チャンピオンさん。これで私のくっさい臭い、もっともっと嗅げるねぇ~~」

 玲奈はそう言って再び放屁した。

ブボッ! ブボボッ! ぶびびっぴぃぃ~~~~~いぃっ!

 今度は逆に限りなく下品な音であった。容赦のない放屁によってさらに濃厚なガスが龍之介の鼻腔に入り込む。

「あぁあぁあああぁぁああぁあぁ~~~~~~ああぁぁっ! ぐぎぁあぁぁあぁああ~~~~あぁぁっ!」

 脳天を拳銃で撃ちぬかれたような感覚に陥る。それほどの臭いだった。かような美少女から発せられるとは思えないような強烈な臭い。腋や靴、生足の匂いならば、嬉々として嗅いで興奮を貪ることのできる龍之介だったが、屁の臭いはあまりに臭すぎた。彼は涙を流して屁臭に悶え苦しんだ。

 そして、臭いに意識を取られていると――

「そらっ、ぐにぐにぐに~~」
「っ! あぁあぁぁあぁ~~~~~~ん❤ だ、だめぇぇええぇぇぇ~~~えぇぇえ❤」

 無理矢理前立腺を刺激されてしまう。腸内から射精のためのスイッチを執拗に弄られてしまう。

 そして、玲奈の強烈な屁の臭いが龍之介の肉体を狂わせたのか――

 龍之介はとうとう射精してしまった。

「あっ! あぁあぁぁぁあぁあ~~~~~~~~ん❤❤❤❤」

どぴゅっ どぴゅっ どぴゅるるぅ~~~~!

 隆起した赤黒いペニスが一段と大きく跳ねると共に白濁流が迸る。前立腺の刺激による強制的な射精。扱かれてもいないのに、龍之介は大量の精液を吐き出してしまう。

「わっ! 出た出た。真っ白おしっこぴゅっぴゅっぴゅ~~~! きゃははっ、おもしろ~~い!」

 まるで理科の実験用モルモットを眺めるかのように、玲奈は目を輝かせて龍之介の射精を楽しむ。そして、腸内から前立腺をさらに刺激する。

 どうやら一度の射精で許すつもりはないらしい。

「やっぱり、オナラの臭いが良かったんだね~~。てか、屁の臭いでイクって、チャンピオンさんマジで変態だね。そんなんじゃ、まともなセックスなんか楽しめないよ? ま、ヤる相手がいるかどうかはまた別問題だけど。ぷぷぷ♪」
 玲奈はそう笑ってから再び放屁する。

ぷおぉぉぉッ! バスッ! ブビビッ! ブッ! 

 豪快な野太い屁を連発する。腸内で熟成された悪臭物質の塊が龍之介の鼻腔で炸裂する。

 その悪臭に、龍之介は悶える。

「むぁあぁぁあぁぁぁあ~~~~~っ! ああぁぁあぁぁ~~~ぁあああ~~~っ!」

 小刻みに体を痙攣させ、あまりの臭さに白目を剥く。屁の塊は後頭部に直撃して、鼻に届くのはほんの残り香に過ぎないわけだが、それでも玲奈の屁は強烈に臭う。彼女の偏食がもたらした驚異的な激臭だ。
 そして、龍之介は堰を切ったように射精を続ける。

どぷっ どぷぷっ びゅるる びゅくびゅくっ! どっぴゅぅ~~!

 まるで壊れた蛇口のように、龍之介のペニスは精液を垂れ流す。鈴口から大量の白濁を漏らし続ける。前立腺の刺激がもたらす肉体の誤作動。もう彼に制御できる状態ではなかった。下半身の暴走は止まらない。

「ああぁぁあぁぁあああぁ~~~~ん❤ あんっ❤ あんっ❤ うあぁぁあぁぁぁっ❤」

 延々と続く絶頂が断続的な快感を与える。肉体が崩壊して溶けてシロップ状になっていくような感覚。体中の穴という穴から体液が噴き出す。著しい体力の消耗によって意識がいよいよ薄れゆく。

 もういっそ、殺してくれ――

 そう思えるほどの快感。反芻される絶頂。そして、鼻がもげるような悪臭。

 助けを求めようにも、玲奈に直接頼むことは論外として、レフェリーはすでにいないし、観客はチャンピオンの凄惨な射精姿を見ておもしろがっている。

 龍之介を救ってくれる者はこの地下闘技場には存在しないのだ。

 延々と強烈な臭いを嗅がされ、絶頂を繰り返すしかない――

ぷぅっ ぷぅっ ブゥ~~~~ッ! ぷすすっ むっすぅぅう~~~~~~~ぅううぅぅ~~~

「あはっ、また出た! やっばぁ、全然止まんない~~」

 際限なく放たれる濃密な激臭放屁。玲奈は遠慮なくお腹に溜まったガスを抜いている。リング上にはすでに鼻の曲がるような放屁臭が渦巻いていて、一般人なら近寄っただけでも卒倒する次元に達していた。その中心で出したての臭いを嗅ぐのは、想像を絶するほどの苦痛だろう。

 しかし、龍之介はその臭いを嗅いで射精する。精液を垂れ流す。

びゅるるっ どぴゅっ! ぶぴゅぴゅっ! びゅるるるっ!

 放たれた精液は自分の顔に落下し、白濁のコーティングを自ら施す。そして、玲奈の足裏がそれをぐちゃぐちゃと顔中に広げる。

「そぉ~れっ、まだまだ出してね~~。玉ん中空っぽになるまで止めてあげないからね~~」
 玲奈は前立腺を刺激しつつ、もう片方の手で龍之介のペニスを扱き始めた。慣れた手つきで上下に激しくストロークを繰り返す。精液を潤滑油代わりにしてちゅこちゅこちゅこちゅこ――さらに精液を搾り出そうとする。

 そして、再び放屁。

ぶぅっ! ぶすすっ! ぶぅっぷぅぅうぅ~~~ぅぅっ!

 薄っすらと黄色く見えるほどの濃厚なガスがスパッツ越しに放たれ、強烈な臭気をむわぁ~んと漂わせる。

「やんっ、また出ちゃった。てかくっさぁ~~い! お鼻がまがっちゃいそ~~」

 と言いながらも、玲奈は自分の屁の臭いを嗅いで悦に浸る。フグが自分の毒で死なないように、彼女も自分の屁の臭いならば何の苦もなく嗅ぐことができるのだ。むしろ、彼女にとっては香ばしいとすら思えるほどの臭いだった。

 しかし、龍之介にとってはそうではない。

 他の追随を許さぬ濃厚さを誇った屁臭が鼻腔から脳天を貫き、脳みその射精回路を痛烈に刺激する。

 龍之介は射精する。

びゅくっ びゅくっ どっぴゅるるるるっ!

「あば、ぶえぇ……え……あぁ…………」

 いよいよ喘ぐ気力もなくなり、龍之介は魚のように口を開閉させながら意味不明な言葉を繰り返すようになった。いよいよ本当に限界のようだった。放たれる精液も色が薄くなり、カウパー液を噴出させているような状態だった。

 玲奈はそれに不満そうな表情を浮かべる。

「ねぇ~、ダメダメ。もっと濃ゆいのピュッピュして。そんなうっすいのじゃお客さんに見えないよ? ほら、オナラの臭いたくさんあげるから頑張って。んっ、んっ」

ぶぉっ! ぶっ ぶっ バッスゥゥウウ~~~! ブビッ! ぶすす ぷっしゅかぁあぁぁ~~~~あぁぁ……

 顔を真っ赤にして力み、玲奈はさらに屁を爆発させた。鋭いスタッカートの音からねっとりとしたすかし音まで、色とりどりの音色を奏でる。龍之介を射精させるべく、濃厚な臭いを次から次へと放出する。スカンクも尻尾を巻いて逃げ出すほどの強烈な臭いが充満する。

「ふ…がっ! ぎゃっ! がっ! あ…っ! くぎゃ! ぐ……ベエあ!」

 玲奈が放屁する度に、龍之介は体を痙攣させる。そして、狂ったように絶頂する。尻尾のようにペニスを震わせて、雄汁を漏らす。

 だが、玲奈の思惑どおりにはいかず、龍之介から放たれる精液は薄いままであった。幾度とない絶頂により、とうとう精液が底を尽きてしまった。資源を使い果たしてしまったのだ。粘ついた透明な汁がトロトロと垂れ落ちる。すでに精液とは言えないだろう。

「もっと、ねぇ! もっともっと出して! 男でしょ! 元気よくピュッピュしてよ!」

バフッ! ぶびっびぴぃ~~っ! ブッ! ブッ! ブゥ~~~~~~~~ッ!

 玲奈は前立腺をさらに激しく刺激し、滅茶苦茶にペニスを手コキし、怒りに任せるように放屁した。そして、足の指で龍之介の鼻を無理矢理広げてさらに屁の臭いを嗅がせようとした。万策を尽くして彼を絶頂に導いた。

 だが、龍之介のペニスからはカウパー液が滴るばかり。

 そして、その汁さえも枯渇する。

「あう……あ…………うぇへ…………」

ビクンッ ビクビクッ ビクンビクンッ

 龍之介は白目を剝いて絶頂するが、ペニスの先端からはカウパー液すらも出なかった。ただ、ペニスに纏わりついた残り汁がポタ……ポタ……と彼の顔面に落下するのみだ。いわゆるドライオーガズムが続く。

 とうとう、龍之介は全ての精液を搾り出した。

 腺液の一滴すら出ないほどに。

 その様子を見て、玲奈はため息を吐く。

「はぁ~あ、もう終わりか~~。意外と早かったな~~」

 玲奈はそう言うと、扱くのを止めて肛門から指を引き抜いた。それからロープに引っかかった龍之介の足をくぐって、正面から、逆さまになって股間を広げた彼をじっくり観察した。

「うわぁ~~ひっでぇ~~~~」

 地下プロレス界のチャンピオンは見るも無惨な姿になっていた。玲奈の足汁と自身の放った大量の精液によって寸分の隙間もなくコーティングされた間抜けな顔をどうしようもなく晒している。半開きになっている口に、少しずつ精液が流れ込んでいるが、全く気づいていない様子だった。満開になった股間に鎮座するペニスは、やっと射精地獄から解放され、眠りにつくように徐々に萎んでいく。絶頂の余韻のためか、体は今だにヒクヒクと痙攣している。

「う、うえぇ…………あびべ………ぶへ…………」

 しかし、そんな状態でありながらもまだ意識が残されているようで、龍之介は精液を口の中で泡立たせながら何事かを呟いた。自分でも何を言っているか分かっていないのだろう。

「げっ、まだ意識あんだ。しぶといなぁ……」少し感心したように玲奈は言う。「う~ん、このまま放置すんのも可哀想だしなぁ。しょうがない。最後に私が天国に連れて行ってあげるね♪」

 玲奈はそう言って再び龍之介に近づくと――彼の顔面に座り込んだ。

 龍之介の鼻に雪崩れ込む屁の残り香――

「――っ! ―っ! ――――っ!」

 身の危険に龍之介の体は大きな痙攣を繰り返すが、玲奈の尻を退かすには至らない。彼はスパッツに染み付いた屁臭を否応なく嗅がされる。

「んん~~、この辺りかな~~~」

 濃厚な屁の残り香をまき散らしながら、龍之介の鼻にジャストフィットするように尻の座標を定める玲奈。まんまるとした柔肉が彼の顔の上で揺れる。玲奈が放屁したという事実を知らぬ観客からすれば、それはご褒美にしか見えないだろうが、龍之介にとっては拷問に他ならない。いや、拷問どころか処刑に等しいだろう――

「よ~し、ここだね」

 やっといい位置を見つけ出したのか、玲奈は鼻の感触に頬を綻ばせる。尻の穴付近を龍之介の鼻にぴったりと密着させる。

 強烈な放屁を余すところなく嗅がせるために。

 そして――

 ついに、全てが終わりを告げる。

「それじゃ、おやすみ♪」

 玲奈はお腹に力を入れた。

むすっしゅぅうぅぅ~~ぅうぅぅ~~ ぷっすぅぅ~~~~うう~~~ぅぅ~~ ぶぶっしゅびびぃいぃいぃ~~~いぃぃ~~ ぷすぅうぅ~~~~~~~~ぅうぅ~~~~ ぶすすぅぅう~~~~~すす~~~~ぅう~~~ぅぅう~~~~~…………

 最悪最低のすかしっ屁が玲奈の尻から放たれる。

 玲奈は腸内に残った全てのガスを凝縮して、それを一息で出しきってしまったのだ。十数秒に渡る特大放屁だ。

 ニンニク、卵、チーズ、キムチ、肉、芋……

 それらの残りカスが腸で腐敗し熟成し発酵した超猛毒ガス。

 当然、その臭いは兵器クラスと言っても過言ではない。

 それらは全て尻と密着した龍之介の鼻に注ぎ込まれる。

 焼き付けるような熱気。

 発狂するほどの臭さ。

 頭の中が玲奈の屁に満たされていく。

 黒のスパッツによって遮られたはずの視界が黄色く染まり始める。黄色く黄色く黄色くなって、真っ黄色の世界には複数に分裂した玲奈がいて、彼女らの放つ黄色い屁によってさらに視界が黄色くなってその奥にまた別の玲奈がいて放屁をされて黄色く染まって――

 その幻覚もやがては潰える。

 全ての感覚がシャットダウンする。まるでブレーカーを落とすように。

 そして、龍之介は――

 やっとのことで気絶した。

「……………………」

 気絶しても尚、龍之介の体は痙攣を繰り返していた。強烈な屁の臭いに肉体が拒絶反応を示していたのだ。

ぷす……ぷすぷす…………ぷっすぅ~~…………ぷす…………

「ふぃ~~、出た出たスッキリ~~」

 わずかなガスまで全て搾り出した玲奈はグリグリと臭いを擦り付けると、やっとのことで立ち上がった。そして、パンパンと尻を叩いて残り香を払う。

「うっわくっさ~~、これ強烈~~~。ちょっとやりすぎちゃったかな。てへへっ」

 玲奈は可愛らしく舌を出してコツンと頭をノックする。今しがた尋常ならざる特大放屁をかました女子とは思えぬほどの可愛らしい仕草だった。

「まぁなにはともあれ」

 と玲奈は手を振り上げる。
 そして、叫ぶ。

「私のかっちぃぃ~~~~~~~っ!!」

『ウオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!』

 観客の大歓声が会場内を包み込む。玲奈の圧倒的な勝利に誰もが熱狂していた。元々チャンピオンのファンであった人も、いつしか彼女の虜になっていた。これほどまでに刺激的な試合が今までにあっただろうか! と観客の人々は歴史的瞬間とも言える光景に立ち会えたことに大満足だった。想像を絶するほどのジャイアント・キリング。これこそ観客の望んでいた刺激に他ならない。

 玲奈は観客の歓声に答えるべく、リング上から飛び出して彼らに手を振る。JKらしいキュートなポーズを決めながら、観客をさらに魅了する。

 その間に救護班がリングに近づいて、完全に意識を失った龍之介を介抱しようとする。

 だが、リング上にはあまりに強烈な臭いが立ち込めていて、救護班の誰もが顔を顰めて鼻を摘んだ。

 言うまでもなく、玲奈の屁の残り香である。

 頭が痛くなるほどの激臭が、まだリング上に残っていたのだ。

 彼らはこれからも幾度と無く玲奈の屁臭に苦しむことになるのだが――それはまだ先の話だ。

「ハッハッハ! 大したことないね。地下プロレスも」

 豊満なその胸を張る玲奈。

「さぁ、どんな奴でもかかってきなさい! 私がボコボコにしてあげるんだから!」

 玲奈はそう言って観客に投げキッスを返した。

 会場内はさらに沸き立った。



 こうして、数々の色香によって巧みに翻弄し、チャンピオンを屈服させた現役JK白井玲奈は一躍地下プロレスの名選手になった。

 彼女の快進撃はまだまだ続く。

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Bi
bisimai12
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