奴隷先輩のクリスマス
――くしゅん!
可愛らしいくしゃみが横から聞こえてきた。
「……寒くなったですね」
ぶるるっと体を震わせて小日向は言った。
そのちっちゃな体は紺色のコートに包まれており、首には白いマフラー、桃色の手袋と女の子らしい防寒着で完全武装している。
「もう12月だもんな~」
現在俺達は、北風が吹き抜ける通学路をいつもと同じように歩いていた。
俺と小日向が恋人になってから約半年。その間に季節は夏になり秋が来てついに冬がやってきた。
だが俺と小日向の関係は最初のデート以来、ほとんど進展していなかった。
勿論半年間ずっと、俺は毎日彼女の椅子か足置きとなり、常にくっつかれ、射精を制限されている。それ自体はとても嬉しい事なのであるが……
ちらりと真横の小日向を見る。
寒さからか頬を少しだけ上気させているものの、いつも通りの無表情でまるで精巧に創られた人形のようだ。
さらさらした黒髪は短めに整えられ、北風が吹くたびに小さく揺れる。処女雪のように真っ白な肌は、寒さからかほのかに赤く染まり、可愛らしい童顔を引き立たせている。
……こんなに可愛い小日向が俺の彼女になってくれただけ、よく考えたらスゴイことだ。今は俺にべったりしてくれるが、もしも俺に愛想を尽かしてしまったら……そんな考えが一瞬頭を過ぎってしまう。
そんな時だった。
「……先輩、もう少しでクリスマスですね」
「あっ……」
小日向の一言で俺はクリスマスの存在を思い出した。今まで自分には関係ないイベントだったんで、すっかり忘れていた。
でも今、俺には小日向という恋人がいる。そしてクリスマスといえば恋人と過ごすのに適したイベントだ。
この期を逃すわけにはいかない。クリスマスに小日向との仲を深めなければ。
「な、なあ、こひな……」
「先輩」
俺が小日向を誘う前に、小日向から言葉が投げかけれれた。
小日向は俺を真っ直ぐ見据えていた。澄んだ瞳が不安と期待に揺れている。
「……クリスマス、デートしませんか?」
白い息を吐きながら、小日向は消え入りそうな声を絞り出した。
常に無表情で冷たい美しさすら感じた顔は、耳まで真っ赤に染まり、唇をもにゅもにゅと動かしていた。
それは初めて小日向に告白された時に似ていた。嬉しさと恥ずかしさが混じった、甘酸っぱい笑顔だ。
俺は最初、その小日向の可憐さに見惚れてしまっていた。いつまでも見ていたい。そんな気持ちさえわいてくる表情だった。
でもそれでは駄目だ。あの小日向が勇気を出して俺をデートに誘ってくれたのだ。ここで止まっていては男が廃る。
「小日向……ありがとう。俺、すっげー嬉しい」
「――ッ」
俺のその言葉に小日向は息を呑んだ。
「俺でいいなら、クリスマスに小日向とデートしたい」
小日向の顔がぱあっと輝いた。
「……はい」
走して小日向は、はにかむように微笑しながら、コクンと頷いた。
そして、
「……それまで、射精は禁止ですよ」
俺の耳元で、そう妖艶に呟いたのだった。
そして数週間後、迎えたクリスマス・イヴの当日の昼過ぎ。待ち合わせ場所である駅前で、俺は小日向を待っていた。
町はクリスマス一色に染まり、派手なイルミネーションがあちこちに飾り付けられている。
「う……寒いな」
かじかんだ両手に息を吹きかける。
約束の時間まであと10分ほどある。小日向は時間に正確な方で、待ち合わせ時間きっかりに来ることが多い。時間より俺が少し早く来るのは、万が一小日向が早く着いてしまった時に、彼女を待たせないためだ。
「小日向、まだかな……」
自然とそんな弱音が出てしまぅ。去年まで町行くカップルに呪詛を吐いていただけだったクリスマスが、今回は恋人と過ごす聖夜になるのだ。いつも以上に緊張もしてしまう。
そして、
「お待たせしましたです、先輩」
約束の時間。背後から声がかけられる。振り返るとそこに天使がいた。
息せき切って胸を弾ませた小日向が、頬を上気させながらこちらを見上げていた。
恰好は通学時と同じコートとマフラー姿だ。いつもと違うのは茶色のブーツくらいだ。
だけども俺はその柔和な微笑みに、目を奪われてしまっていた。こういう所で、あらためて小日向の可愛らしさを再確認してしまう。
「さ、行きましょうか先輩」
はにかみながら小日向は俺の腕の自分の腕を絡ませた。柔らかく暖かい感触が腕に宿る。
今までのデートは、俺が主導していた。だが今回は違う。初めての小日向主導のデートだ。
……今までにない高揚感を抱き、しんしんと雪の降る中、俺は小日向と共に歩いていった。
小日向のデートプランはシンプルだった。
昼過ぎに駅前に集合し、そのまま二人できらびやかな街を歩く。いつもと違う町はただ歩いてまわるだけでも楽しかった。
本屋に寄ったり、服屋に寄ったり、喫茶店で一休みしたり……何気ないことなのにそれはとても幸福に感じられた。
もっとも俺は小日向と一緒にクリスマスを過ごせればそれで満足のなので、不満など一欠片もなかったが。
夢中で遊び、やがて日が沈み、町もイルミネーションの光に包まれ始めた頃。
「もう夜ですね」
小日向はそう呟いた。
「お、おう。そうだな。とりあえずどこかで夕飯食うか?」
「……家に行きましょうか、先輩」
「え……」
小日向は俺の腕から離れ、真正面で振り返ると、頬を染め微笑した。
「私の家で、ご飯にするですよ」
ぎゅ、と手を握られる。俺はそのまま手を引かれ、小日向の家へと向かっていった。
小日向邸には例によって誰もいなかった。
玄関のカギを小日向が開け、俺はその後ろについてゆく。
リビングに入ると、小日向はコートを脱いで暖房のスイッチを入れた。
「座って待ってて下さいです」
そう言うと小日向はキッチンに移動した。しばらくした後、ダイニングのテーブルに料理を並び始めた。
「す、すげえ豪華な料理……これ、全部、小日向が?」
「はいです」
ほんのちょっとだけ誇らしげに胸を逸らす。その可愛らしさに思わず、笑みがこぼれてします。
小日向は二つのワイングラスにジュースを注ぐと、俺の正面に座った。
「今日はクリスマス・イヴです。だから恋人らしくいくですよ」
小日向はほんのり頬を染めると、そう言ってグラスを掲げた。俺も顔が熱くなるのを感じながら、グラスを掲げた。
「メリー・クリスマス、小日向」
「メリー・クリスマスです、先輩」
カシャン、とグラスが重なった。
「そうだ、小日向。渡したいものがあったんだ」
食事が一通り落着き(小日向の手作りだけあって全部旨かった)、デザートのケーキをつまみ始めた頃、俺は前々から用意していたモノを鞄から取り出した。
「?」
小日向は頬張っていたケーキを飲み込むと、首を傾げる。
俺はそんな小動物チックな小日向を愛でつつ、贈答用の紙で梱包された掌ほどの小さな箱を小日向の目の前に差し出した。
「……その、クリスマスプレゼント。こういうの初めてだから、喜んでもらえるかはわからないけど……」
そう。俺はこの日のために。小日向にクリスマスプレゼントを渡すために、前から準備していたのだ。
間宮さんや穂乃花ちゃんにどんなプレゼントを貰ったら嬉しいかを聞いたり、そういう系統の雑誌を読んだり……
小日向が喜びそうなものは何かを考えて、時間をかけて選んだつもりだ。
それでも小日向が喜んでくれるかどうか、不安はある。
「…………」
小日向はまんまるな瞳を見開くと、顔を一瞬で赤くする。そして震える両手でプレゼントを受け取った。
「……開けてもいいですか?」
「……おう」
丁寧に梱包紙を剥がすと、小日向は箱を開けた。
「わあ……」
小日向の口から、そんな声が漏れる。
俺が贈ったのは首にかけるアクセサリーだった。
最初は小日向が好きな本にしようかと思ったが、どんな本を渡せばいいか分からなかったので、女の子が好みそうな装飾品を選ばせてもらった。
小日向は俺のプレゼントを手に取ると、愛おしそうにそれを眺める。
「ありがとうございます。先輩」
そして満面の笑みで、俺に向かって言った。
「大切にします……」
「……………」
その小日向の笑顔は。あまりにも美しいと、俺は思った。
「……私からも、先輩にプレゼントがあるです」
食事の後片付けが終わった後、小日向は言った。
「え、ほ、本当に?」
「はいです。だから……」
「だから?」
「今日は……このまま泊まっていってほしいです」
「ッ! それって」
「……先に部屋で、待っててください」
俺はすぐに頷くと、二回へ続く階段へと向かって行った。
小日向の部屋でいつものように正座する。もうこの体勢になるのに慣れてしまっている自分がいる。
さらに小日向の命令で、もう数週間射精していないので、嫌でも興奮してしまう。
そんな中、
「おまたせです」
しばらくして、小日向が部屋に入ってきた。
小日向はそのまま、ベッドに腰掛けると、正座する俺を見下ろした。
「先輩、今日は付き合ってくれてありがとうございます」
頭上から降り注ぐ小日向の声。
「嬉しかったです。先輩とクリスマスデート出来て……だから、ご褒美です」
小日向のつま先が俺の顎を捉え、上に向かせる。
ほのかに臭ってくる小日向の体臭、もとい足の臭い。
しかし今日はいつもより香りが強いな……と思っていると、いきなり視界が黒いモノに覆われた。
顔面を覆うほのかに暖かい布の感触と強烈な臭い。それは小日向の足に相違なかった。
しかもいつもより臭いがきつい。毎日小日向の体臭を嗅いでいる俺だからこそ分かるのであろうが、今日の小日向の足は湿っていて脳まで到達しそうな程の激臭だった。
「ふふふ、どうですか、先輩? 先輩のために三日同じ靴下を履いてたですよ」
「――ッ」
だ、だからいつもより臭かったのか……!
「どうしたですか、先輩? いつもより必死にくんかくんかしてるですよ?」
足をぐりぐりと動かしながら嘲る小日向。でもそれは事実なのでしょうがない。
熟成された小日向の足の臭い。それは酸っぱいような、むせかえるような香りだった。
もはや鼻が痛くなるほどの悪臭だったが、俺にとってそれは最高の嗜好品に違いなかった。
一心不乱に空気を吸い込んでゆく。あまりの臭いに頭がくらくらし、全身に小日向の香りが行き渡っていく錯覚に駆られてしまう。
「そんなに気に入ったですか、先輩」
「ああ……」
「そうですか……では、この靴下、あげるですよ」
「!! ほ、ほんとか!?」
「はい。先輩へのクリスマスプレゼントです」
な!、なんて素晴らしいプレゼントなんだ。俺は何度も深呼吸を繰り返しながら、自分からも顔を動かす。顔面全体に小日向の臭いを染みつけるためだ。
一生嗅いでいたい……そう感じられるほどのこの靴下を小日向は俺にくれるというのか……!
「……いつものように脱がせるですよ」
「ッ! ああ……」
小日向の靴下は俺の口で脱がす。それが俺達の関係だ。
俺は目の前の黒い塊に齧り付く。
途端、湿った布の感触が唇に触れ、染み込んでいた汗が溢れだし、俺の唾液と混ざりながら口いっぱいに広がってゆく。
そのあまりにも不味い味と香りで、俺の意識は飛びかける。それは拒絶からではなく、最高の快楽に酔ってしまっているが故であった。
思わず射精してしまいそうになる。が、
「まだ射精しちゃだめですよ」
小日向の命令無しでの射精は厳禁なのでぐっと堪える。
俺はそのまま頭を動かし、小日向の靴下を脱がしてゆく。
するすると汚れた靴下が脱がされ、中からちっちゃな小日向の白い足が姿を現した。
その足は汗まみれで、少し熱で朱に染まっていた。
「ふふ、すーすーします」
露わになった素足の指を上下に動かす小日向。その度に指の合間に溜まった汗で、くちゅくちゅという卑猥な音が漏れる。
汗だらけの小日向の両足は、蠱惑的で淫猥で、俺にはとても眩しく見えた。
「どうぞ、好きなだけ味わって下さい」
素足で靴下を押し付けられる。靴下と足の裏から汗が滲み出し、しっとりと顔の表面を覆ってゆく。
まるで小日向に踏みつぶされ、消えていくような感覚。
そのあまりにも壮大な快楽は、俺の意識を一気に刈り取っていく。
だが。
「まだですよ、先輩」
小日向は一旦足をどかすと、俺の頭を両足で挟み込むと、一気に彼女の方へと引き寄せた。
「んむっ!!」
俺の目の前に小日向の下着が一瞬だけ映り、すぐに湿り気を帯びた布地に顔が押し付けられる。
それが小日向の股部であることに気が付くのに、時間はかからなかった。
ねっとりと濡れた感触と、発酵したような香りが鼻先に密着する。少しでも息をすれば、下着から染み出した愛液が、呼吸器官に侵入してくる。
その堪らなく淫靡な香料は、俺の精神を酔わせてしまうのに十分だった。足や靴下とは違う官能的な香りに、体中の力が抜けてゆく。
「先輩のせいで……ここがこんなふうになっちゃったですよ」
小日向はそのまま俺の髪を掴んで、自身の股間から引き離す。
今まで妨げられていたため、ぼやけていた視界が徐々にくっきり見えてくる。
「――ッ」
そこには。俺を見下ろす小日向の顔があった。
精巧に創られたアンティーク・ドールのような怜悧な顔が、恥ずかしそうに朱く染まっている。
普段涼しげな双眸が切なげに潤み、桜色の唇が微かに揺れた。
「先輩には、まだプレゼントがあるです……」
小日向のいつもと違う表情に目を奪われている俺を、小日向は襟を掴んで無理やり立たせた。
そしてそのまま俺を、自身が腰を降ろしていたベッドに押し倒す。そして小日向は馬乗りになると、顔を近づける。
背中に柔らかいベッドの感触と、腰に小日向の重みを感じながら、俺は彼女と見つめ合った。
「……小日向」
「先輩……」
ほんの数㎝先に小日向の可憐な容姿が迫る。
「もう一つのプレゼントは……私の処女です」
「ッ!」
思わず鼓動が跳ね上がる。
あまりの衝撃に一瞬、思考が追い付かず、一気に喉がカラカラになる。
「う、嘘だろ……?」
「……嫌ですか?」
小日向の宝石のような瞳が不安に揺れる。
「そ、そんなことない! そんなことあるわけない!」
辛そうに俯き始める小日向に俺は力強く宣言する。
「嬉しい。嬉しいよ、小日向……」
小日向の瞳が見開かれる。
「おれはむぐっ!?」
そこまで言った所で、俺の口が小日向の唇に塞がれた。
柔らかく、どこか甘い感触が俺の脳を一撃で蕩けさせる。
やがて唇が離されると、そこには満足げに微笑する小日向が眼前にあった。
「先輩……いくですよ」
そう言うと小日向は吐いていたパンツをするすると脱いだ。傍目からでもわかるほど、愛液でぐっちょりと濡れた下着を、小日向は手にする。
そしてそれを丸めると、間髪入れず俺の口にねじ入れた。
ぬるく、とろっとした感触と、何とも言えない味が口いっぱいに広がる。
「んぐっ!」
「欲しいならこれもあげるですよ」
欲しい! そう思ったが、勃起した俺のペニスに生暖かい感触が触れるのを感じると、そんな言葉は吹っ飛んだ。
「ふふふ、ぐちゅぐちゅですね」
嬉しそうにそう言いながら、溢れ出たガマン汁まみれの俺の肉棒に、とろとろになった女性器を擦りつけられる。
ぬちゅり、ぬちゅりと俺と小日向の分泌物が混ざり合い、卑猥な音を奏でる。柔らかい感触が、擦れる度に股間を濡らし、一層快感を引き立てる。
やがて段々と腰の動きが早くなってゆく。下腹部が熱くなってゆき、まるで溶けてゆくような錯覚に陥る。
これだけでも十分気持ちいい。
だが俺が絶頂に向かいかけた所で、小日向は動きを止めた。
「……いくですよ、先輩」
そう言うと、小日向は俺の亀頭に自身の女性器を重ねる。
「んっ……」
小日向は小さくイクを絞り出すと、そのまま一気に腰を降ろした。
何か薄いモノが破れる感触と共に、暖かい肉の感触が俺のペニスを一気に包み込んだ。
たちまち一気に肉棒が圧迫され、未知の快楽が全身を蹂躙する。
「ッ……」
普段は無表情な小日向の顔が苦痛に歪む。
思わず結合部の方に目をやると、そこにはうっすらと赤いモノが流れていた。
「……ふふ、初めての、んっ……証拠です」
涙を堪えながら切ない笑顔を浮かべる小日向。
そのあまりのいじらしさに俺は小日向を抱きしめたい衝動に駆られたが、彼女がそのまま腰を動かし始めたことで、一気に身動きが取れなくなってしまう。
「あ……んっ……」
ぎこちなく小日向は腰を振る。一振りするごとに俺の性器に、未知の快楽が直撃し、理性を削り取ってゆく。
小日向の繋がっている。
彼女の体温と性器の感触を一身に受けながら、俺はそのことを実感する。
「先輩……」
息を荒くしながら小日向は俺の首に手を回すと、体を密着させる。同時に腰の動きが早くなる。
破瓜の血と互いの愛液が溶けあい、ピストン運動が徐々に勢いを増してゆく。
「いっしょに……一緒に、ですよ、先輩……」
小日向が耳元で呟く。それと共に腰の振動が苛烈になってゆく。避妊もせずにお互いの粘膜を擦り合わせ、性交の悦びに溺れてゆく。
一つになった俺達に、理性も本能も関係ない。
ただ、大好きな小日向と一緒にイキたい。俺はただ、それだけだった。
小日向の締め付けがどんどん強くなってゆく。
そしてついに小日向の体が反り返り、肉棒が急激に絞られる。
「んんんんんんんんんんッッッ!!」
俺のペニスが限界を迎え、一気に精液を噴き出した。放たれた俺の子種は、ドクンドクンと脈動するように小日向の膣内に流れ込んでゆく。
そして俺は強烈な快感と共に、頭が真っ白になってゆく。手足がピンの伸び、そして力が抜けていくのを感じる。
溜まっていた精液が小日向の破瓜の血をピンク色に染め上げてゆく。それは幼く、小動物のようだった小日向が女になった証だった。
「……先輩、大好きです」
小日向の声が微かに聞こえる。俺の体にもたれかかってくる。
「ずっと。ずっと……先輩……」
小日向のそんな言葉を聞きながら。
俺は彼女を抱きしめて、堕ちていった……
奴隷先輩のエピローグ
事実上の最終回です
「先輩、私を……お嫁さんにしてください」
小日向の突然な逆プロポーズは、今でも鮮明に思い出せる。
恥ずかしそうに服の裾を掴みながら、上目遣いで尋ねてくる小日向に俺は悶え死にしそうになったもんだ。
だがその光景も真っ白な視界に塗りつぶされる。
はにかむ小日向の顔はたちまち布の感触に変わり、酸っぱくてどこか甘いような香りが鼻孔を突いた。
「こんな時でも臭いを嗅ぎたいなんて……先輩は本当に変態さんですね」
呆れたような小日向の声が聞こえてくる。それと同時に小日向の足に力が加わり、俺の顔面を踏みつぶす。そのままぐりぐりと俺の顔面は蹂躙され、独特の臭気が鼻先に擦りつけられた。
「ちんちんも大きくなってるですね……本当に気持ち悪いです」
そう言うと小日向はもう片方の足で、俺の股間を踏みつけた。衣装が汚れないようにと露出させていた肉棒は、ヒールの着いた小日向の足で地面に縫い付けれ、ビクンビクンと痙攣する。
「んんんんんんんッ!!」
あまりの激痛に呻く俺を小日向は鼻で笑った後、足の指で俺の鼻を摘まむ。
視界が開け、上の方に視線をやると、そこには薄化粧した小日向の可憐な顔がベール越しに俺を見下ろしていた。椅子に腰かけるその小柄な体躯は、白百合のような美しいドレスに包まれている。
「全く……こんな変態がパパだなんて……この子が可哀そうです」
そう言って小日向は愛しそうに自身のお腹を撫でた。細い肢体からは考えられない程大きくなった、そのボテ腹を。
聖夜に初めて一線を越えた俺と小日向だったが、まさか一発で彼女を懐妊させるとは思わなかった。
まあ確かに安全日かどうかも分からないのに、避妊無しで数週間分貯めた精液を膣内で発射したのだから当然といえば当然なのかもしれない。
問題はまだ学生である若造が、年下の少女を孕ませてしまったとこいう事実だ。
結果、俺は責任を取って小日向と結婚することとなり、今こうして式場の控え室で小日向から臭い責めを受けているという次第である。
「早くしないとお義父さんとお義母さんが来ちゃうですよ。早く射精しないと、駄目です」
開始の時刻は迫っている。俺はそれを思い出し、一気に小日向の体臭を吸引する。このまま射精した後は、その後始末も残っているのだ。
小日向もそれを分かっているのか、鼻から指を離して再び足の裏を顔に押し付ける。
幾たびの調教により、俺は小日向の体臭無しでは射精できない体になっていた。だが、裏を返せば小日向の臭いさえあれば、俺は何処でも絶頂に至れる。
俺は思いっきり深呼吸し、小日向の足臭を吸い込んだ。
小日向の逆プロポーズを受け入れた俺が最初に行ったことは、両親への挨拶だった。
未成年の分際で娘を妊娠させたのだから、俺は小日向の両親からどんなことをされても仕方がないと思っていた。しかし、小日向のお父さんの態度はあまりにも淡白だった。
――よかったな、凪。
小日向にそれだけ言うと、俺の肩を叩き、
――娘を頼んだよ省吾君。
とだけ言って、さっさと出ていってしまった。
あまりの軽薄さに俺は立場も忘れてキレかけたが、小日向に止められて、何とか理性を保つことが出来た。
「いいんですよ、先輩……父は……あの人はそういう人です」
悲しげに俯く小日向を、俺は黙って抱きしめた。
離婚した後、行方知らずとなった彼女の母親とも結局連絡が取れず、親戚付き合いもなかったため、結婚式に参加する小日向の血縁者は父親一人だった。
一方、小日向を自分の娘のように溺愛し始めていた俺の両親は、娘たる後輩を妊娠させた実の息子に激怒。ぼっこぼこの鉄拳制裁が喰らわされることとなった。
顔面が変形する位殴った挙句、俺の肩をガッチリと親父は掴むと、
「出来てしまったものは仕方がない。当然責任を取らんといけんが、お前はまだ高校生だ。働けとは言わん。このまま大学に行け。子育てを手伝いながら勉強して、それで凪さんと子供をしっかりと養っていけるだけの職につけ。いいな?」
と息子である俺が今まで見たことも無いような強面で、結婚を許してくれた。
「凪ちゃん、子育ては私達も手伝うから安心して産みなさい。貴方は私たちの家族同然なんだから」
ついさっきまで実子を鬼の形相で叱っていたお袋は、仏のような慈愛の笑みで小日向の頭を撫でた。
「……ありがとうございます、お義父さん、お義母さん……省吾さんの子ども、生ませていただきます」
俺の両親の言葉に感動したのか、小日向は目を潤ませながら、俺と一緒に頭を下げた。
クラスメイト達は俺達の突然の婚約宣言に、ほとんど驚いていなかった。
後から一馬に聞いて分かったことだが、どうやら俺と小日向は変わり者同士のカップルということで、微笑ましく見られていたらしい。それと同時に何故か性欲の塊として見られていた俺が、小日向に手を出すのは時間の問題、というのが殆どの者の意見だったそうだ。
釈然としないが、俺達を祝福してくれるのは素直に嬉しかった。今日も彼らは会場で待ってくれている。
ちなみに小日向は出産のために高校を中退する。俺や親父たちは高校卒業までいったほうがいいと言ったが、小日向曰く子育てに集中したいらしい。
「先輩、そろそろイって下さい」
そんな言葉と共に片方の足が顔に、もう片方の足が股間を圧迫した。
「――ッ!!」
たちまち俺は絶頂を迎え、快楽と共に精液を床にぶちまけた。
「……靴に飛んだです。先輩が綺麗にして下さいね」
精液のかかった白いハイヒールが目の前に突き出される。これから披露宴なのだ。綺麗にしなければいけない。その後は床も掃除しなければ。
「……そろそろ時間ですよ」
小日向に言われ、顔を上げる。
はにかみ笑いを浮かべた小日向が俺に手を差し伸べる。白薔薇のようなドレスに身を包んだ小日向は、まるで女神のように見えた。
処理を済ませ、俺は小日向の手を取る。これから長い結婚式が二人をまっているのだ。
「小日向」
「? 何ですか?」
でもその前に。これだけは言っておかないと。
俺は小日向の瞳を真っ直ぐ見据えながら、抑えられない想いを口に出す。
「好きだ。一生、傍にいてくれ」
まんまるの瞳が見開かれる。だがそれがすぐに潤んで宝石のように輝いた。
「……はい」
思えば、あの日。屋上で彼女に会わなければ、このようなことにはならなかっただろう。
でも出会ってしまった。
そして俺は彼女の椅子になり、足置きになり、便器になり、抱き枕になり……そして今、夫になろうとしている。
「行きましょう、先輩」
「……おう」
手を取り合って、俺達は歩いてゆく。
この先、何があるか分からない。辛い事や壁にぶち当たることだってあるだろう。
それでも、俺には小日向がいる。
彼女さえいれば、俺はどんなことだって乗り越えていける。
そんな確信が俺にはあった。
何故なら俺は小日向の奴隷で、家族だから……
ちっちゃく温かい手を握る。
俺と小日向が向かう先は、儚げにきらきらと輝いていた。
小日向凪の奴隷先輩
小日向視点での最終回です。
――女性が男を支配するのに、鞭や首輪は必要ない。
これは私、小日向凪が……いえこれからは山崎凪ですね。私、山崎凪が先輩と一緒にいて分かった事です。
勿論、首輪や鞭が駄目ということではありません。首輪や鞭で男を嬲るのは楽しいでしょうし、そういうプレイはむしろどんどんするべきだと思います。
ですが、男の人を……好きな男性を支配し、自分だけの奴隷にするために必要なものではありません。
では何が必要なのか? 答えは簡単です。
奴隷に必要なのは、被虐の飴。体ではなく、心を犯すことが大事なのです。
眩い光がステンドグラスから降り注ぐ中、私はバージンロードを歩んでいきます。
お義父さんやお義母さん。クラスメイトや父に見送られながら、祭壇の前にいる愛しの彼の元へ辿り着きます。
そして神父さんの厳かな言葉と共に結婚式が始まりました。
厳粛に式は行われていきます。聖書が読まれ、指輪が交換されそして……
「それでは、誓いの口づけを」
神父さんの宣言と共に、私のベールが上げられます。
眼前には緊張しきった先輩の顔がありました。その様子は微笑ましく、私は思わず破顔してしまいます。
静かに私は瞳を閉じます。
静寂の中、一息の間が後に、柔らかい感触が唇に触れました。
たちまち歓声が上がり、私たちは離れます。目を開くと、そこには柔和な笑みを浮かべる先輩の姿がありました。
私は先輩を自分のモノにするために、様々な調教を行いました。
まずは上履きを。さらに靴下や腋、お尻の臭いなどでじわじわと洗脳し、私の匂い無しでは興奮できない体に調教していきました。
人間椅子や拘束、失禁や言葉責めなどで恥辱を与え尊厳を破壊してから、料理やお風呂そして射精で餌付けします。
その結果先輩は、私無しでは射精できない体になりました。
おそらく先輩はもう私以外の女性からでは性的興奮を得ることは出来ないでしょう。マニアックな変態さんに先輩は気づかぬ改造されていったのですからね。
これが心を犯すことだと、私は考えています。
ですがこの方法には大きな対価があります。
それは度重なる調教の中で女性もその男性無しでは生きられなくなってしまうという点です。
私もそうです。最初は玩具としか見ていなかった先輩が、気になる存在になり、気がついた時には大好きになっていました。
私たちはそのまま恋人同士になり、そして今日、結婚するです。
お腹には私たちの愛の結晶が胎動しています。生まれてくるまでに、まだ少しかかりそうですが、立派に育てていきたいと考えています。
そんなお腹を擦りながら私は横の先輩に微笑みます。一緒に手を繋いで参列者の方へ歩いてゆく先輩は、ぎこちない笑顔で返してくれました。やっぱりまだ緊張してるですね。
大丈夫ですよ、先輩。結婚式もそんなに長くはありません。それに結婚式が終わったら初夜ですよ。
すでに初夜のプランは考えてあります。
最初は久々に腋を嗅がせてあげましょう。
ウエディングドレスって結構蒸すので、いっぱい汗を掻いてすごく臭うんでしょうね。きっと先輩は犬みたいにくんくんしてくるでしょう。舐めて貰ってもいいかもしれませんね。
勿論、射精は禁止です。
必死に勃起させた肉棒を振って懇願するのでしょうが、絶対に射精の許可は出しませんし、触ってもあげません。たっぷりと焦らしてじわじわと苦しめてあげます。
その後は仰向けにさせて、人間座布団にしてあげます。
私だけでなく赤ちゃんの分の重さもあるので、相当苦しいでしょうが、先輩にとってはご褒美でしょう? 結婚の準備のせいで読めないままの本があるので、久しぶりに先輩の顔の上でゆっくり読書を楽しむ予定です。たまにおならやおしっこを恵んであげますから、先輩も楽しめると思いますよ。
そして最後に、先輩の大好きな脚でおちんちんをしごいてあげますよ。
お口には今日履いたパンツを、顔には靴下をプレゼントしてあげます。それにこの時は射精を解禁してあげるですよ。だからいっぱい射精して、無様なアヘ顔を晒してくださいね。
ふふふ、子供がいるために普通のえっちは出来ませんが、こんなにも妄想が膨らんでしまうですよ。
やっぱり先輩と私は結ばれるべくして結ばれたですね。
……大好きですよ、先輩。
これからも、ずっと、ずっと……
私の。
私だけの、奴隷先輩。
感谢楼主分享!非常精彩的文章,有空我来翻译下。唯一缺点是女主长门有希式的人设并不是特别喜欢。
作者:墓荒芜
目录:
奴隶前辈的职业
奴隶前辈的日常风景
奴隶前辈的失态
奴隶前辈的拖鞋
奴隶前辈的首次调教
奴隶前辈的腋下
奴隶前辈的立场
奴隶前辈的人椅子
奴隶前辈的责备
小日向凪的前辈观察日记
奴隶前辈的审问
奴隶前辈的午餐风景
奴隶前辈的放任游戏
奴隶前辈的入浴时间
奴隶前辈的住宿
小日向凪的前辈观察日记2
奴隶前辈的转机
奴隶前辈的夙愿
奴隶前辈的初次约会
奴隶前辈的圣诞节
奴隶前辈的结尾
小日向凪的奴隶前辈