跪求大神翻译

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Li
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跪求大神翻译
行燈の明かりに照らされた薄暗い室内で、男達が何やら話し合っていた。
「御館様は今宵も『御殿』通いか……?全く……。」
「それにしても御館様は何をお考えか……このままでは崎山の国は滅び申すぞ……。」

ここは、畿内よりやや北東に外れた小国、崎山国。
応仁の乱以来、小大名や豪族が乱立し、混乱を極めたこの国も、赤城上総守憲正によって
平定され、束の間の平和が訪れていた。
この頃、畿内周辺の大名達は、こぞって将軍家や朝廷、公家との縁組みを進めていた。
それらの中央の権力との結びつきを深めることで、戦における大義名分を得ようという
わけである。憲正もまた、朝廷と深い関係にある公家、白尾家と交流を深め、昨年末に
蜜姫という姫を迎えたのであるが……。

「白尾家との婚礼が成った折りには、これで当家も安泰じゃと思うておったに……。
 よもや、その蜜姫様がかような傾国の……」
「これ、めったな事を申すでない。」
「しかし……崎山一の豪傑と聞こえた御館様が、かようなまでにお変わりあそばす
 とは……げに、女性(にょしょう)の色香とは恐ろしきものよ……。」

蜜姫は、たいそう美しい姫であった。流れるように艶やかな黒髪、雪のように白い柔肌、
血のように紅い唇、そして、何か不思議な輝きをたたえた、潤んだ瞳……。
憲正は、瞬くうちに蜜姫の虜となった。彼は政治を省みなくなり、蜜姫にねだられる
ままに着物や宝物を与え、果ては城下に『蜜姫御殿』と呼ばれる豪華な屋敷を建てて
そこに蜜姫を住まわせ、夜ごと通うようになった。

国政は筆頭家老の前川義照を中心に、家臣達だけで行うこともできる。
だが、この乱世にあって、国の長が女に狂って腑抜けというのは深刻な事態である。
国境を接する黒部、橘、高桑といった大名達が、この国を虎視眈々と狙っているのだ。
元々赤城家は、憲正個人の武勇と人徳によって支えられてきた大名家であった。
崎山一国の平定が成ったのも、憲正の力によるところが大きかったのだ。その憲正が
骨抜きとなれば、周囲の大名家はこれぞ好機とばかり攻め込んでくるだろう。

「……もはやこれ以上手をこまねいているわけにもいきませぬ……それがしが御館様を
 お諌めいたしましょう。」
そう言って、一人の男が立ち上がった。
まだ若い侍である。二十歳ぐらいであろうか……意志の強そうな真っ直ぐな眉、
凛々しく鋭いまなざし、引き締まった精悍な顔立ち、なかなかの美丈夫だ。

「片山殿……!何をしようというのじゃ!?」
「知れたこと、これから『御殿』へ行って御館様に国の窮状を訴えるのです。」
「!……やめられよ、『御殿』には我ら家臣は立ち入るなとの御館様の仰せじゃ、
 それに今の御館様はまともな話が通じる状態ではござらぬわ。無用な怒りを買って
 下手をすれば手打ちに……」
「もとより、その覚悟で乗り込みまする。それがしの様な青二才であれば、たとえ
 手打ちになったとて国は揺らぎますまい。」
「しかし……!」
心配そうな顔つきの重臣達を真っ直ぐに見据え、片山と呼ばれた男はなおも語る。

「それがし、御館様が全く話が通じぬとは思うておらぬ。誠心誠意訴えれば、
 耳ぐらいは貸してくれましょうぞ。それに、蜜姫様とてこの国が滅べば
 今のような贅沢三昧はできぬのです。むしろ蜜姫様を説得して御館様に
 お口添え頂くという手もありましょう。」
「む……。」
「ともあれ、事態は一刻を争うのです。失礼いたす。お止めだて召さるな。」
そう言って、男は席を立った。

片山正臣……赤城家家臣団の中で、最も若く、最も一本気な男である。
父親の片山重信は崎山国平定の折りに戦死し、母はその時に仏門に入った。
他に家族もなく、よって正臣は今は独りの身である。
元服してすぐに、父と共に戦陣に加わり、数々の武勲を上げてきた男でもある。
その功績と、誠実で真面目な人柄が認められ、若輩ながらも家臣団の中での信頼は篤く、
次代の赤城家を背負って立つ男とまで言われている。

彼にとって、今の崎山国はひとときも捨て置けない状態であった。
実際、黒部家が戦の準備をしているとか、橘家が密偵を放って探りを入れているとか、
不穏な噂は後をたたなかった。もはや一刻の猶予もならぬ。今宵必ず、憲正を説得し、
以前の、崎山平定を成し遂げた強い御館様に戻ってもらわねばならなかった。

日の落ちたばかりの薄闇の中を、正臣の乗る馬が蜜姫御殿に向かって走り抜けていった。



蜜姫御殿は城下の外れにある広大な屋敷である。警護の兵以外は立ち入ることはできず、
特に蜜姫の寝所がある奥の院には、蜜姫と憲正、それに蜜姫の侍女以外は何人たりとも
足を踏み入れることは許されていなかった。

「どう、どう!」
正臣が門の前で馬を止めると、門の前に立っていた警護の兵が歩み寄ってきた。
「これは、片山様……何用でござりますか?」
「御館様がこちらにおわすはずだ。目通り願いたい。」
「!……なりませぬ、御殿には何人も通すなとの御館様の仰せです。
 いかな片山様といえども、お通しするわけには参りません。」
「国の行く末がかかっているのだ。もはや左様な事を言うておる場合ではない!
 通さぬとあれば無理にでも押し通るまで、そこ退けい!!」
正臣の恫喝に、警護の兵にも殺気がにじむ。

その時。

「何事です、騒々しい……。」
鈴の音のような声が門の内側から聞こえてきた。
「!……は、これは、露葉様……!」
振り返った警護の兵が恭しく頭を下げる。
門の中から、薄紫の小袖を身にまとった若い女性が現れた。
蜜姫の侍女頭、露葉であった。


「これはこれは、片山様……ようおいでなさりましたな……。」
そう言って、露葉は柔らかな微笑を正臣に向けた。
「御館様に目通り願いたい。」
正臣は露葉を真っ直ぐに見据え、単刀直入に用件を告げた。
「片山様……!」
慌てる兵を、露葉は手を挙げて抑える。
あくまでも穏やかな応対で、歳に似合わぬ程の落ちつきぶりである。

「片山様……この『御殿』は憲正様と蜜姫様が、他の何事にも煩わされることなく
 愛を育まれるためのものにございます……たとえ片山様といえど、許しの無いまま
 お通しするわけには参りませぬ……。」
穏やかな表情で、しかし露葉は兵と同じ事を言った。
「たしかに許しは得ておらぬ、そればかりか、御館様も蜜姫様も、今宵それがしが
 御殿に参ることなどご存じないはず。無礼は百も千も承知、国の行く末を案じての
 火急の願いなのだ!邪魔だてなさるなら、例え露葉殿といえど、斬り倒して
 押し通りまするぞ!」
烈火のような正臣の言葉にも、露葉は涼しげな微笑を崩さない。

しかし、その次にその口から出た言葉は、正臣の意表をつくものであった。
「……ご心配なさいますな、許しならばございますゆえ……
 どうぞお入りくださいませ……。」
「……何と?」
さすがの正臣も、驚きを隠せず聞き返す。
さらに返ってきた返事は、彼を一層混乱させるものだった。
「今宵、片山様が参られる事は、蜜姫様からお聞き申し上げております……
 そして、今宵だけは特別にお通しせよと……。」

「馬鹿な!」
思わず否定の言葉が、正臣の口をついて出た。御殿に来ると決心してから、すぐに馬を
飛ばして御殿にやってきた。御殿にいる者たちに、その事が伝わっているはずがない。
まして、蜜姫はずっと御殿にこもりっきりなのだ。ここ数カ月、正臣は顔を合わせた
事もない。そんな蜜姫に、どうしてそんな事がわかるのか?
「信じられぬのも無理はありますまい……その事については、御殿を案内する間に
 お話し致しましょう。さ、こちらへ……。」
あくまでも穏やかな物腰で正臣を門の中へと招く露葉。

「つ、露葉殿……。」
そこへ、警護の兵がおずおずと声をかけた。
「何か?」
「困ります、我らは御館様に何人たりとも通すな、命に掛けて通すなと……。」
その途端、露葉の表情は柔らかなまま、その声だけが厳しさを帯びた。
「『御殿』の主は蜜姫様じゃ、その蜜姫様がよいと仰せなのじゃ、
 それともそなたは蜜姫様に刃向かいなさるのか?」
「い、いや……めっそうも……ただ……。」 
叱責された兵はいよいようろたえ、哀れなほどに萎縮してしまう。
そんな兵に、露葉は一転優しい微笑を注いだ。
「心配なさるな、もしこの事でそなたが憲正様に責められたならば、蜜姫様が庇って
 下さいますほどに……そなたはこのまま、警護を続けてくだされ……。」
その言葉に、兵は心底ほっとした様子で胸をなで下ろす。

一連のやりとりに、正臣はすっかり毒気を抜かれてしまった。
彼は、蜜姫のことはほとんど何も知らない。僅かに、城で憲正に寄り添っているのを
何度か見たぐらいで、ただ美しいだけの姫だと思っていたが……
何となく、ただ者ではないのではないかという考えが頭をもたげていた。
「ささ、片山様……。」
露葉が再び、正臣を招く。
正臣は馬を降りて兵に預けると、彼女について門をくぐった。
なぜか、得体の知れない伏魔殿に足を踏み入れたような気がした……。

御殿の中は静かであった。
月明かりに照らされた廊下を、露葉に導かれて正臣は進む。
「……露葉殿、教えて頂きたいのだが……なぜ、蜜姫様はそれがしが参ることを?」
正臣の問いに、露葉は一度振り返り、やはり穏やかな笑みを返しつつ、先へと進む。
「元々、白尾家は占いやまじないを生業(なりわい)とし、朝廷と深い交わりを得た
 一族にござります……特に、白尾家の女子は、かつては生まれつき神通力が
 備わっており、巫女としてたいそう重用されたといいます……。」

静かに歩を進めながら、露葉は語る。
「今は、そのような神通力はほとんど無くなってしまっていたのですが……、
 蜜姫様は、失われたはずの巫女の血を、たいそう濃く受け継いでおいでなのです……。
 今宵の事も、蜜姫様が『お感じになられた』のです……それだけでございます。」
そう言って、露葉は再び振り返り、涼やかな笑みを見せた。
正臣はしかし、その笑みに何か別の涼しさを感じていた。薄ら寒さ、と言った方が
正しいかも知れない……勢い込んでのり込んできたものの、はたして蜜姫や、その
蜜姫の虜となった憲正を説得することができるのか、自信が揺らいできていた。

どうやら、蜜姫は思いのほか容易ならぬ相手のようだ……なるほど、あの意志の強い
御館様が骨抜きにされてしまったのは、蜜姫の持つ妖しの業の成せる所なのかも知れぬ。
もとより死をも覚悟して来たのではあるが、この様な超常の力を持つ女を向こうに
回して、本当に御館様を取り戻せるのだろうか……?
いやいや、ならばなおの事、蜜姫を説得して御館様をお返ししてもらわねば……
いかに神通力を持っていようとも、妖怪ではないのだ、話せば分かっていただけるはず。
蜜姫が今のような御殿暮らしをしていられるのも、この国あっての事なのだから……

「さあ、ここから奥の院でございます……。」
考えにふけっていた正臣は、声を掛けられてはっとする。
目の前に、大きな扉が立ちふさがり、両脇に長刀を持った侍女が控えている。
小袖の上からでも分かる引き締まった体格、一分の隙も見えないたたずまいは、
相当に厳しい訓練を受けていることをうかがわせる。
しかしそれでいて、見目麗しい容姿が、何とも言えぬ艶やかさをも漂わせている……。
「ご苦労様です……。」
露葉が侍女に声を掛けると、侍女達は恭しく一礼し、扉に手をかける。
思いのほか分厚い扉が、グゴゴゴゴ……と重々しい音を立てて開いた。
「……憲正様以外の男子が奥の院に入るのは初めてでございます……
 さ、どうぞ……蜜姫様がお待ちかねですわ……。」
露葉が正臣を招き入れる。
彼女について奥の院に足を踏み入れた正臣の背後で、再びグググゴゴ……ドン、と、
音を立てて扉が閉まった。


奥の院は、意外に質素な造りだった。普通の武家屋敷となんら変わりない。
ごてごてと飾りたてられた豪奢な屋敷を想像していた正臣は、少々拍子抜けした。

しかし……何かが違った。
(何だ……これは……?)
正臣は、何となく胸がざわめくのを感じる。
見た目には、何の変哲もない、むしろ地味な印象さえ受ける廊下の床から、壁から、
何か不思議な気配が漂ってくるような、そんな気がした。
(何だ……落ちつかぬ……これは……この気配は……。)

何というか……そう、これは……女の柔肌が放つ甘やかな雰囲気……
何とも言えずなまめかしい、匂い立つような色香の気配……!

(馬鹿な……!)
正臣は思わずかぶりを振った。
(いかん、いかん、ここに来てから、どうかしている!こんな事では御館様を連れ戻す
 など、ままならぬぞ……しっかりせねば……!)
きっと、自分の心の中に、蜜姫に対して「御館様を色香でたぶらかして骨抜きにした女」
という偏見があるから、奥の院に入った途端にそのような妄想にとらわれるのだ、
正臣はそう思うことで、忍び寄ってくる妖しい気配を振り払おうとした。

その時。

「ふふふ……。」
かすかな笑い声が正臣の鼓膜をくすぐった。
正臣は、思わず足を止めてあたりを見回す。
「どうなさいました?」
露葉が振り返って尋ねる。
「いや……、笑い声が聞こえたような……。」
そう答えつつ正臣は耳をすましたが、何も彼の耳には届いてこなかった。

「きっと、床がうぐいす張りになっているからですわ……。」
露葉が床を指し示す。すっかり日も落ちて暗くなってしまったために気づかなかったが、
言われてみれば確かにうぐいす張りになっている。
「露葉様のお好みに合わせて、あまり大きな音は鳴らぬように作ってありますので、
 聞きようによっては笑い声のようにも聞こえるかも知れませぬね……。」
「そ……そうか……これは失礼……。」
やや顔が熱くなるのを感じながら、正臣は再び歩き出した露葉の後をついて行く。

(いかん、本当にどうかしている……俺はおかしくなってしまったのか?)
再びかぶりを振る正臣。その耳に、
「くすくすくす……。」
再びさっきの笑い声が聞こえてきた。
(違う!これは床の鳴る音だ、決して……!)
しかし、そう思えば思うほど、
「くすくすくす……くすくすくす……。」
「ふふ……ふふふふふ……ふふふ……ふふふふふ……。」
笑い声は鮮明に正臣の耳へと忍び寄ってくる。
(いやっ……!これは床の音などではない!……そうだ、露葉殿はああ言ったが……
 天井裏にくノ一でも忍ばせているのだろう、きっと、悪戯で俺をからかっているのだ
 ……そうだ……きっとそうだ……。)
自らに言い聞かせる正臣。
しかし、奇怪な現象はそれだけでは終わらなかった。

「!!!」
床や柱を覆う木目が、徐々に妖しげな曲線を描き始めてきた……。
そう、女体のそれを思わせるような……目に見えるのはただの床の木目だが、
そこから熱く息づく乳房が、しなやかにくねる腰のくびれが、浮かび上がって来る。
先程から正臣を悩ましていた女体の気配は一層濃厚に彼を包み込み、あたかも女の柔肌に
圧し包まれているかのような錯覚さえも起こさせる。
「ぅ……ぅぅ……ぁ……!」
正臣は、自らを捕らえる異常な感覚に、思わず漏れそうになる呻き声を
必死に飲み込む。
その瞳には男を誘ってゆさ、ゆさ、と揺れる尻が、そして熱く濡れそぼって淫らな蜜を
滴らせる蜜壷の幻影が、はっきりと映っていた。

「あ……ああ……ああん……あああ………。」
「くすくす……くすくすくす……。」
「いあ……ああ、ひぁ……ああん……いい……!」
「ふふふ……くふふふふ……うふふ……ふふふふふふふ……。」
いくつもの悩ましい喘ぎ声が、媚びを含んだ笑い声が、絡み合い、もつれ合って、
正臣の耳から忍び入り、彼の脳髄を愛撫する。
さらに、どこからともなく甘い香りが漂ってきた……
……それはより直接的に男の欲望を刺激する、生々しい女の匂いだった。
正臣の身体に、目に見えぬ女肉の香気が絡み付き、全身をやわやわと撫でくすぐる。
そして、彼の鼻から体内に侵入して、彼の視界を桃色に染めていく……。
女色の霧に煙る視界の中で生白い肢体が淫らに蠢き、正臣を誘う……!!
「う……うわ……あ……くっ、あ……!!」

「こちらでございます……。」
露葉の声に正臣は、はっと我に返った。
いつの間にか、突き当たりの間の、ふすまの前まで来ていた。
「は、……はぁ……はぁ……。」
思わず、大きく胸を喘がせる正臣。
「……どうかなさいまして……?」
「い、いや……なんでも……ござらぬ……。」
先程まで彼を捕らえていた奇怪な女色の幻影は、陰も形もなく消え去っていた。
床の木目は何を連想させることもなく、耳には何の音も届いて来ない。
辺りにはほのかに甘い香りが漂っていたが、それは普通の、香の香りであった。
伽羅であろうか……やや官能的な甘い香りではあるが、先程の淫らな牝臭と比べれば
むしろ清々しいと言っても過言ではなかった。

露葉はふすまの前に膝をつき、そして、ふすまを……叩いた。
コン、コン。
予想外に、硬質な音がした。
見た目はふすまのように見えたが、木製の引き戸であったようだ。
さらに露葉は、中からの返事を待たず、戸を細く開ける。
「蜜姫様……片山様をお連れいたしました。」
露葉の声に、
「ご苦労……。お通ししや。」
艶やかな蜜姫の声が返ってきた。


「では……片山様、どうぞ……。」
そう言って、露葉はゆっくりと戸を開く。
コロコロコロ……と、軽い音を立てながら開いたその戸が、異常に分厚い事に気づいて
正臣は驚いた。八寸ほどもあるだろうか……それでいて、全く重そうな感じがしない
所を見ると、中が空洞にでもなっているのだろうか……?
伽羅の香りが、やや強くなった。少々甘ったるいぐらいに色濃く匂うようになり、
正臣は先程の淫らな幻影の記憶を思い出して、少しばつが悪そうに眉をしかめた。
ともあれ、中に入るしかない。
「失礼いたしまする……。」
入口で膝をついて一礼し、正臣は静かに中へと入った。
背後で再び、コロコロコロ……という音がして、部屋の外にいる露葉の手によって
引き戸が閉じられる。

部屋の中は、昼間のように明るかった。
百匁蝋燭を灯した燭台が立ち並び、奥には金屏風が立てまわされている。
その屏風の前に、露姫がいた。足を崩し、肘掛けにしなだれかかるように座っている。
「よう参られたなぁ、片山殿……。」
部屋を満たす濃厚な伽羅の香りに負けず劣らず甘ったるい声を掛け、蜜姫は正臣に
微笑み掛ける。その笑みも、どこか媚びるような、誘うような甘ったるさを帯びていた。

「蜜姫様におかれましては、御機嫌麗しく、何よりにござりまする……。」
「ほほ、片山殿も、久しく見ぬ間にますます逞しゅうなったのぅ……。」
「は、お褒めにあずかり、恐悦至極に存じまする……。」
そんなやり取りを交わしながら、正臣はどこか違和感を感じていた。
いや、ここに来てから何もかもが不可思議な事ばかりではあるのだが……。

違和感の源は、蜜姫の容姿であった。正臣の記憶にある蜜姫と、今目の前で豪奢な
打ち掛けをしどけなく着崩して微笑む蜜姫とが、微妙に重ならぬ。
同一人物であることは分かるのだが……。

以前見た時も本当に美しいとは思ったが、これほどでは無かったような気がした。
透き通るように白い肌は一層生白く、何かぬめぬめとした様な輝きを帯び、
艶やかな黒髪は、今にもうねうねと蠢き出しそうな生命感が宿っていた。
何となく、今の蜜姫の美しさは不気味な感じすらした。人間離れしているような……
そう、伽羅の香りと共に漂ってくる濃艶な蜜姫の色香は、妖気ともいうべき異様な
雰囲気を含んでいた。

「さて、今宵参られたのは何用かの?」
蜜姫のその言葉に、正臣ははっと我に返った。同時に、自分が今、蜜姫の妖しいまでの
美しさに見とれていたことに気づいて、慌てて一つ咳払いをする。
「は、それは……蜜姫様、御館様はいづこに?」
部屋には憲正の姿はなかった。2人で一緒にいるものと思っていた正臣には、
少々意外な展開だった。
「憲正殿には、お帰りいただいた……そなたが来ると解ったのでのぅ……。」
そう言って、蜜姫は磁器の様に白い顔に、艶然と笑みを浮かべる。
「左様でござりまするか……?しかし、何故……?」
「そなたと憲正殿が顔を合わせれば、ただ事ではすまぬと思うたでの……
 おおかた、憲正殿の御殿通いを諌めに参ったのであろ……?
 妾は、憲正殿とそなたが争うのは見とうないでのぅ……。」
「は、これは……恐れ入りました……お気遣いいただき、申し訳ありませぬ……。」
やや肩すかしを食った形にはなったが、正直、正臣はほっとしていた。

彼は、奥の院で見た淫らな幻覚と、目の前の蜜姫の濃密な色香に呑まれてしまっていた。
今憲正に会っても、まともに説得できる自信は全くなかった。
そればかりか、あまり長居をすれば、自分までおかしくなってしまいそうな気がした。
今日の所は、蜜姫に御館様への口添えをお願いして、早々に帰った方がよさそうだ。
正臣は、まっすぐ蜜姫を見つめて話し始めた。

「それがしが参ったのはご推察の通り、御館様に御殿通いを控えて頂きたいとお願いする
 ためでござりまする。国の主がまつりごとをないがしろにしていては、この乱世に
 おいては命取りになりまする……このままでは、いつ何時か黒部や橘が攻め入って来た
 時に、とても国を守ることができませぬ。」
蜜姫は、相変わらず媚びを含んだ様な笑みを浮かべ、正臣の言葉に耳を傾けている。
「蜜姫様からも、御館様にお口添え頂きたく、お願い申し上げまする……
 御館様に会えぬのは辛うございましょうが……国が滅んでしまえば、左様な事も
 言うてはおられませぬ。どうか、御館様に国の舵取りに励んで頂くよう、蜜姫様からも
 お願いして頂けませぬか?」
正臣の熱のこもった言葉を最後に、部屋に沈黙が落ちる。

正臣の話を静かに聞いていた蜜姫であったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「そうよのぉ……崎の国が他国に滅ぼされれば、
 妾も捕らえられ、何をされるやら……それは嫌じゃ。」
「そうでござりましょう、されば……」
話し出す正臣を遮って、蜜姫は続ける。

「……実は、妾もそなたと同じ事を考えておったのじゃ……
 憲正殿には、やはりまつりごとに精を出してもらわねばのう……。
 そこでの、実は既に憲正殿には言うてあるのじゃ……御殿においでなさるのを
 今少し辛抱して頂くようにの……。」
「は、左様でござりましたか……これは……」
「ほほ、少々間が悪かったかのう……?」
そう言って、蜜姫はにんまりと笑みを深くした。

「……どうやら、その様でござりまするな……いや、蜜姫様の深慮には、何から何まで
 恐れ入りまする……正直、感服致しました。」
「ほほほ、妾もたまには国のためにならねばのう……。」
ころころと笑う蜜姫を見ながら、正臣は安堵に胸をなで下ろした。
同時に、蜜姫に何もかも先を越されて、すっかり呆気に取られてしまった。
「どうやら、心配は杞憂であったようですな……
 そうとは知らず無礼を働き、誠に申し訳ござりませぬ……。」
「ほほほ……よいのじゃ、そなたのそういう所が妾は好きじゃ。」
そう言って笑う蜜姫に、少し気まずさを感じつつ、正臣は立ち上がる。
「では、それがしはこれにて……。」

その時。
「これ、待ちや。」
蜜姫は正臣を呼び止めた。


「……何でございましょう?」
呼び止められて、正臣は蜜姫の方を振り返った。
蜜姫は、媚びを含んだ笑みを一層濃くして、正臣をじっと見つめていた。
「そちの用が済んでも、妾の用が済んでおらぬ。」
「は……、これは、また失礼を……して、いかなご用にござりましょう?」
そう言う正臣を、にいっと逆三日月型に反り返った視線が捕らえる。

「うむ……憲正殿には城にお戻りいただいた……ならば、『代わり』が
 要るであろう……?」
「?」
「今宵は……ふふ、そちが憲正殿の代わりじゃ……
 若い盛りだけあって精気に溢れておるのぅ……ふふふ……。」
「!!……蜜姫様、悪い冗談はおよしなされ!」
蜜姫の言葉の意味を理解して、正臣は激昂した。
「冗談ではないぞえ、妾は一晩たりとも男を喰らわずにはおれぬでの……
 ほほ、若い男の精、たんまりと吸わせてたもれ……。」
「馬鹿な!主君を裏切れと仰せか!不愉快千万、失礼致す!!」
足音も荒く畳を蹴たてて、憤然と正臣は踵を返す。

「待て、と言うておろう……。」
そう言いながら、蜜姫は立ち去る正臣の背に手をかざす。
そして、あたかも正臣の肩に手を置くかのように、空を掴んだ。

「!!」
その途端、出口の扉へ向かっていた正臣の足がぴたりと止まった。
蜜姫の声に反応して立ち止まったのではない。
正臣の身体が、何か巨大な力に捕まえられて、全く動けなくなったのである。

「こ……これは……!」
「ほほほほほ……どうじゃ……?」
楽しそうに笑う蜜姫。宙を掴む白い手と、正臣との間はゆうに三間はある。
しかも、その距離を越えて正臣を捕縛する力は、たおやかな女の手のものではなかった。
「ふふ……さあ、来や……。」
そう言って、蜜姫は正臣を手招く。
すると正臣の足が勝手に動き、彼は蜜姫の方へと振り返った。
そのまま、蜜姫の手招きに応じて、ゆっくりと歩き出す。

「あ……ああ……こ、これは……!」
「くふふふふ……さあ、来や……こっちじゃ……。」
蜜姫はゆっくりと立ち上がり、正臣を手招きながら屏風の裏へと後づさって行く。
正臣は、手招かれるままによたよたと蜜姫の後をついて行った。
「み、蜜姫様、おやめ下され!誰か!誰か!」
「ほほ、無駄じゃ……この部屋は、壁を二重にして、間に綿を詰めてあるのじゃ……
 いくら叫んだところで、せいぜい壁の向こうで微かに聞こえるくらいじゃ、
 奥の院の外までは、とてもとても届きはせぬわ……ほほほほほ……。」
正臣を手招きながら、蜜姫が笑う。その言葉に正臣は、この部屋の壁と扉が異常に
分厚かった事を思い出した。あれは、そういう事だったのか……!
部屋に入る際に、露葉が声をかけるのでなく戸を叩いて合図したのも、中からの声を
待たずに戸を開けたのも、その時は少々無礼に思えたが、それで合点がいった。
この部屋は防音が施されていて、中からの声も、外からの声も、壁を通らないのだ。

そこまで考えて、正臣ははっとした。
という事は、この蜜姫御殿が建てられた時から、この様な防音が必要な行為が行われて
いたという事か……いや、そもそもそういう目的でこの御殿が建てられたのでは……?
だとすると、おそらくは唯一この部屋に足を踏み入れたであろう御館様は、
一体この中でどんな事をされていたのだろうか……?
正臣は、背筋を冷たい物が這い上がってくるのを感じた。
「ほほ……さあ、来やれ……。」
魔力を秘めた繊手で正臣を手招きながら、蜜姫は屏風の向こうのふすまを開いた。
緋毛氈の敷き詰められた部屋の中央に、豪奢な褥(しとね)が延べてあった。

「蜜姫様!どうかお止め下され!奥方に手を出したとあっては、
 この片山正臣、御館様に顔向けできませぬ!どうか、このままお帰し下され!」
自分の体を操る力に抗って、ばたばたともがきながら、正臣は懇願する。
「ほほほ、その様な心配は無用じゃ……。そちは、もう憲正殿に顔向けどころか、
 顔を合わせることもないでの……。」
「なっ……それは、どういう……!」
笑いながら答える蜜姫のその言葉に、正臣は愕然とした表情を見せる。
その様子を見る蜜姫は、ますます楽しげに笑みを深くした。

「そちはの、もうこの部屋からは出られぬのじゃ……。」
「!!!」
「ずっと前から、妾はそちに目を付けておったのじゃ……憲正殿をたぶらかして
 腑抜けにしたのも、そうすれば、いずれそちが御殿に乗り込んでくるであろうと
 踏んだからじゃ……ほほ、これからずっと、そちは妾の贄としてここで暮らすのじゃ
 ……ほほほ……ほほほほほ……!」
笑いながら、蜜姫は打ち掛けの前を開く。
そして、古代紫の地に八重桜を縫い取った、豪華絢爛たる打ち掛けの内側へ
手を差し入れた。打ち掛けの下の、小袖の帯に白い手がかかる。

しゅっ、しゅるっ、するするする……
衣擦れの音と共に金糸銀糸をふんだんに使った綾織りの帯が手早く解かれていく。
さらに何本かの紐が抜かれると、藤色の地の小袖の前がはらりとはだけた。
そしてその下の、淡い桜色の単衣の下衣が露になる。
「み、蜜姫様……!」
「ほほ……もっと見たいであろ……?」

白い手がさらに帯を解いた。
下衣の前が割れ、隙間から雪のような裸身が覗く。
「あ……う、ぁあ……!」
正臣の視線は、下衣の間から僅かに見える蜜姫の素肌に吸い付けられた。
その白い肌から、伽羅の香りと共に渦巻く妖気が流れ出て、正臣の身体に絡み付く。
そして彼の全身にじんわりと染み渡り、正臣の意識を目の前の女体へと誘っていく。
正臣はそのまま、蜜姫の柔肌から目を離せなくなった。
目を背けようとしても、つぶろうとしても、瞳に映る蜜姫の肢体がそれを許さない。
白い肌が、下衣の間から僅かに見える豊かな胸の谷間が、
そして腰布に隠された蜜姫の股間が正臣の視界一杯に拡がってくる……!
「う……ああ、あ……!!」


蜜姫は、妖しい笑みを浮かべて正臣を見つめながら、下衣の中に手を差し入れる。
「ふふふ……ここも、見たいのであろ……?」
「……あ、ぁ……みっ、蜜姫様っ……!お、おやめ……くだされ……!」
蜜姫の魔力に身体を操られ、よたよたと歩み寄りながら、必死に懇願する。
だが、その願いとは裏腹に、正臣の目は一点に吸い付けられている……
わななく視界の中心で、白い手が下衣の中をまさぐっている……蜜姫の秘所を守る
最後の一枚……その、浅葱色の腰布が今、外されようとしている……!
その薄布が取り去られれば、蜜姫の最も女たる部分が露になる……!!

もはや正臣は蜜姫の股間から視線を外せない……身体の奥底から
本能的な欲求がこみ上げて、見てはいけないという理性を、徐々に蕩かしていく……
女色の誘惑が正臣の心をやんわりと包み込んで、あたかも蟻地獄の如く
ずるずると、目の前の女体へと引きずり込んでいく……!
「ほほほ……真っ赤になって、うい事よのぅ……望み通り拝ませてやろうぞ……
 妾の火所(ほと)、とくと見やれ……!」
「み、蜜姫……さま……!あ、あ、……ああ……!」

蜜姫の、白くたおやかな手が下衣の中から出てくる……
それと共に、浅葱色の腰布がするりと解け……
ゆっくりと引き出されてくる……!
「あ……ああ……あああああ……っ……!」
「ふふふ、くふふふふ……。ふふふふふふふふふ……!」
何か、恐ろしい物を見るかのように身体をこわばらせ、目をかっと見開いて
目の前の女体に見入る正臣。
蜜姫は、そんな正臣の様子を楽しげに見つめている。
そして、見せつけるような仕草で自らの腰布を抜き取った。
「ふふ……。」
蜜姫は一度、淫蕩な眼差しで正臣の目を覗き込むようにじっと見つめ、
そして……、腰布をつまんでいる手を離した。

ふぁさ……。

腰布が落ち、蜜姫の足元にわだかまった。
下衣の陰になってまだ秘所は見えないが、もはやそこを覆い隠す物は何もない。
そして、蜜姫の手が打ち掛けの襟にかかる……!
「……それ……見るがよい……妾の火所を……ほぅれ……!」
その声と共に、蜜姫は自らの身体を包む着物の前をゆっくりと開いていった。
孔雀が羽を開くが如く、蜜姫の着物が大きく拡がり、正臣の視界を埋め尽くす。
美しい着物が大きく花開いたその中央に、
白くなまめかしい輝きを放つ蜜姫の裸身があらわになった。

「うあ……ああ……!」
「ほほ……どうじゃ……?」
艶然と微笑む蜜姫。その肢体は不気味なまでに精気をみなぎらせ、
ほのかに光さえ放っているかの様に見える。その光が正臣の瞳を射ると、めまいの様な
感覚が彼を捕らえた。それと共に、正臣の意識は一層強く、抗う術も無い程に
蜜姫の裸体へと引き込まれていく……!

そしてその股間では、充血して紅く染まった女肉の華が、
既にしっとりと蜜を含んで花びらを濡れ光らせていた。
その肉の華から、むせ返りそうな程の甘い香りが漂ってきた……。
それは、この部屋に入る前、淫らな幻覚を見た時に嗅いだ、あの香りだった。
その時よりも一層濃厚に、甘く淫らに匂いたち、正臣の脳髄を蕩けさせる。
充満する香気を一息吸い込む度、女のなまめく色香の気が彼の身体に染み渡り、
じんわり、じんわりと甘美な痺れを与えながら浸食していった。

「ふふふ……さあ……来やれ……妾が、そちの全てを包んでくれようぞ……!」
そう言って、誘うような妖しい笑みを浮かべる蜜姫の元へ、正臣はふらふらと歩み寄る。
何か、自分が妖美な食虫花に捕食される虫になったかのような気がした。
その正臣の視界の中で、蜜姫の媚びを含んだ美しい顔が、徐々に大きくなっていく……
そして、その顔が視界一杯に拡がった次の瞬間、蜜姫のしなやかな腕が正臣の首に
絡み付き、豪奢な打ち掛けが彼の身体をふわりと包み込んだ。

「ふ……ぅ、くぁ……ああ……!」
全身を包む甘美な感触に、正臣は思わず熱い吐息を漏らした。
打ち掛けに炊きしめられた伽羅の芳香と、蜜姫の柔肌から立ち昇る「おんな」の匂いが
混ざりあい、ふんわりと正臣を抱きしめる。
さらに、柔らかな下衣が正臣を包み込み、下衣が含む女の柔肌の温もりが
彼の身体に伝わってくる……温もりだけでなく、柔らかく、しなやかな
蜜姫の肢体の感触も、正臣の全身に悩ましく絡み付いてくる……!
そして……首に巻き付いた蜜姫の腕に力がこもり、正臣は顔を引き寄せられる。
紅く濡れ光る蜜姫の唇が、ねっとりと正臣のそれに重ねられた。

「ん……んん……!」
合わせた唇から、熱い吐息が正臣の口の中に吹き込まれ、その吐息の熱に正臣の頭は
否応なくのぼせさせられてゆく……さらに、吐息に含まれている甘い香りが、その中に
潜んでいる快楽の毒が、正臣の脳髄を侵してゆく……正臣の意識は抗う術もなく
蜜姫の女色の誘惑に絡め取られていった。

彼の身体から力が抜けていき、かくりと膝が折れる。
そして、正臣は羽二重の夜具の上に横たえられ、その上に蜜姫が覆い被さって来た……
夜具の代わりに、縫い取られた満開の八重桜も艶やかな打ち掛けが、
柔らかな蜜姫の肢体が、正臣の身体を覆い隠して行く……!
そして蜜姫は袖から白くしなやかな腕を抜き、正臣の着物の胸元をかき開く。
「うぁ……あ……み……蜜姫……さま……!」
半ば朦朧とした表情で、必死に抵抗しようとする正臣。その身体が、不意に軽くなった。
彼を捕縛していた蜜姫の呪縛が解かれたのだ。
しかし、もはや正臣の身体は呪縛の必要もないほどに力が抜けてしまい、
蜜姫の細腕でもたやすく押さえつけられてしまう……そして、露になった正臣の胸板に、
すべすべと滑らかな蜜姫の柔肌が、ねっとりと重ねられた。


「は……あ……ああ……は、ぁああああ……!」
「くふふふふ……どうじゃ……?こんな快楽を味わうのは生まれて初めてであろ……?
 もう、極楽であろ……?ふふふ、くふふふふ……。」
甘い囁きを聞きながら、正臣は全身を駆けめぐる快感に身を震わせて喘いだ。
蜜姫の言う通り、正臣の身体を包む甘美な感触は、彼がこれまで一度も味わった事の
ないものであった。

彼は、物心ついてから常に、厳格な父の元で武士としての鍛錬に励んでいた。
女人との交わりはおろか、母以外の女性には触れたこともなかった。
そして元服してからは、崎山国平定を進める憲正の軍団の中で、
戦に次ぐ戦の日々を送り、女に縁のない生活をしてきたのだ。
もちろん城内では、年頃の若武者である正臣に対して興味を持ち、近づこうとする女性も
いないではなかったが、彼は努めてそれらの女性を遠ざけていた。
彼にとっては、剣の腕を磨き、鍛錬を重ね、全身全霊をもって主君に仕え、働く事こそが
人生の全てで、色恋事などは全く関心の外にあったのだ。

かくして正臣は、「おんな」という生き物に対して、全く無知なまま今日まで
生きてきていた。その肢体のしなやかさも、その肌の柔らかさも、その吐息の甘やかさ、
その立ち昇るかぐわしき香り、それらの感覚が生み出す甘美な痺れ、欲望を刺激されて
こみ上げてくる身体の疼き、何一つ知らなかった。

「く、ううううう……あぁあああ……あ、あぁっ……。」
見た目の逞しさとは裏腹に、少年のように無垢な身体に、
この上なく濃艶な蜜姫の肢体が絡み付く。
彼女の肉体が与えてくる「おんな」の刺激は、正臣にはあまりにも濃厚過ぎた。
彼女の、妖気さえ漂う程の色香を前に、正臣はあまりにも純粋すぎた。
「ふぁ……あ……あ……あああ……うぁ、はあぁあぁあああああ……!」
「ふふふ、くふふふふ……さあ、そちも脱ぐがよい……。」
そう言いながら、蜜姫は手早く正臣の衣服を脱がし始めた。

いや、彼女の白い指が軽く触れるだけで、するすると帯が解け、着物がはだけ、
袴がずり下げられていく……褌もひとりでに解けて、正臣が着ていた全ての物が、
まるで彼の身体から逃げるように脱げていった。
「うああ、あ、ああ……おやめ下され……蜜姫様……!」
「ほほほ……何を言いやる……脱がねば、続きができぬではないか……。」
「ああっ、そ、そんな……ああ……蜜姫……様……!」
彼の懇願は聞き入れられず、ついに正臣の身体から全ての衣服がはぎ取られてしまった。

そして、一糸まとわぬ姿になった正臣に、蜜姫の生白い裸体が絡み付く。
「うわ、あああ……!ああ、ああ、あああああ……!!」
蜜姫の柔肌の感触が、今度はじかに正臣の身体を包み込んだ。
「ほほ……どうじゃ……さっきよりも、ずっと心地よかろう……?」
「あ、あ、ああ……はぁあああ……み、みつ……ひめ……さま……ふぁ、あああ……。」
しなやかな蜜姫の肢体がねっとりと動き出す。白い腕が正臣の胸板を、脇腹を、背中を
這い回り、悩ましい太股の感触が腰をむっちりと挟み込んでくる……。

「うああああ……ああ、ああ……はああああ……あああああ……。」
成す術もなく喘ぐ正臣。蜜姫の濃艶な肉体が妖しくくねる度に、
豊かな乳房が、甘く薫る柔肌が、彼の身体に擦り付けられる。
肌が触れ合い、こすれあうその度に、甘美な痺れの波が全身を駆けめぐる。
さらに、蜜姫の身体の動きに合わせて、二つの身体を覆う豪奢な打ち掛けが波打ち、
正臣の全身をさわ、さわ、と愛撫する。その動きは偶然のものではなかった。
蜜姫が、身体の微妙な動きで巧みに打ち掛けを操り、愛撫を加えているのだ。
今や、正臣の身体のどこ一つとして、愛撫を受けていない所は無かった。
どこ一つとして、快楽を感じていないところは無かった。
「ふぁああああ、ああ……あひ、いああ……あくっ、うああああ……。」
柔らかな、甘やかな感覚に全身をくるみ込まれて、
正臣は際限なく喘ぎ声を奏でさせられていった。

「ふあぁああああああ……ああ、はぅあああ……。」
「ふふふ、もうすっかり蕩けてしもうたか……?たわいもないのう……。」
「うああ……ああ、くぁっ……あああああ……。」
「崎山一のますらおが、女一人に手も足も出ぬか……?ほほほほほ……。」
まともに抵抗する事もできぬ正臣を、嘲笑する蜜姫。
「う……うああ、くっ……うあ、あああああ……!」
「ほほ、悔しかったら、はねのけてみや……今のそちでは到底かなうまいがのう……。」
「くっ……そ、そんなことは……ふあ、あああ……!」
蜜姫の侮蔑の言葉に、正臣は絡み付く女体を振りほどこうともがく。
しかし、もがけばもがくほど、触れあう肌の感触がもたらす甘美な痺れが、
正臣の身体から抵抗する力を奪い、正臣の意識から抵抗する意志を奪っていった。
力を入れようとしても、入れるそばからどこかに抜けてしまい、そうしているうちに
力を入れようという意志そのものが、とろとろと溶け去っていってしまう……。

「ほほほほほ……ほれ、どうしたのじゃ?はようはねのけてみやれ……。
 ほほほ、できぬか?できまい?ほほほ、ほほほほほ……。」
「ふああああ……ああ、く、くはっ、あふ、うああああ……はああ、あああ……!」
「ほほほほほ、そちの力はその程度か……?この立派な身体は見せかけかえ……?
 おなごの細腕に押さえつけられて、どうにもできぬ男がもののふとは、くふふ、
 片腹痛いことよのぅ……ほほほほほ……ほほほほほほほ……!」
嘲り笑う声が閨中に響きわたる。
「ああ……そんな……うあ、ああ……こ、こんな事が……ぁああああ……!」
いつしか、その嘲罵の声さえも、正臣の身体に甘い疼きをもたらしていた。

崎山でも五指に入る膂力の持ち主が、日の下に出たことも無いような女相手に
子供扱いされている……甘美な誘惑に筋力を封じられ、抱きすくめられている……。
鍛え上げた強靭な肉体も、蜜姫の肉体が与えてくる快楽の前ではまるで無力であった。
幾多の戦場で数々の武功を上げてきた強者も、この未知の『戦場』では、
持てる力を全く発揮できず、蜜姫の細腕に屈してしまう……。
その事が、何か異様な、倒錯的な快感となって、正臣を更なる快楽へと誘う……。
「ああ、あああああ……み、みつひめ、さまぁ……はあ、あああああ……!」
「ほほほ、もうすっかり妾の虜かえ……?この程度で我を失うようでは、この先が
 思いやられるのぅ……これからまだ、もっともっと心地良うなってゆくぞえ……
 ほれ、こんな風に……!」

その声と同時に、蜜姫は一層強く、がっちりと正臣の身体を抱きしめる。
柔らかな女体の感触が、その圧力をさらに強くして、
正臣をむっちりと締め付けて来る……その身体がうねうねと妖しく波打ち、
豊かな乳房を、しなやかにくねる腰を正臣の全身に擦り付けてくる……!
色香の匂い立つ蜜姫の肉体と、焚き締めた伽羅の香りもかぐわしい打ち掛けと、
天上の雲の様な羽二重の夜具が正臣の身体をぴったりと包み込み、
さわさわと、やわやわと、蠢いて全身を撫で回し、舐め回し、しごきたてる……!
「ふああ、あああああ……!あああああ……!!ひ、うああああああああ……!!」
「ほほ、たまらぬであろ……?もっとじゃ……もっと鳴きゃれ……!」
魔性の肉体を妖しくくねらせ、全身を包む打ち掛けを巧みに操って、
蜜姫はさらに激しく正臣を愛撫する。
その動きは、あたかも男根を呑み込んで貪る、女陰のようであった。


「うああっ、ああっ、あああああっ、うあ、あああああああああっ!!」
蜜姫の悩ましく淫らな愛撫に全身を責め嬲られ、その身をこわばらせて喘ぐ正臣。
「くふふふふ……もう、極楽であろ……?」
「ふああああっ、あく、あああっ!!、あひ、いあ、あああああああっ!!」
「ほほほ、良い顔じゃ……じゃが、ここはまだ極楽の入口じゃ……
 もっともっと、この色欲の極楽の奥深くへ引きずり込んでくれようぞ……!」

その声と同時に、二人の身体を覆う打ち掛けが、ぎゅっ、と締め付け、正臣の
身体をくるみ込む。正臣の背中の下にも、打ち掛けの柔らかな感触が入り込み、
二人の全身をぴったりと包み込んで来る。が、それだけではなかった。
「ぐぁ、あああああああああああああああああっ!!」
正臣の絶叫は、彼がさらなる超常の快楽責めにかけられた事を物語っていた。

「あああああっ、ああああああああああっ、ひいぃっ、いぎいいいいいいいっ!!」
身も世もない悲鳴を上げ続ける正臣。彼の全身を、異様な感触が包み込んでいた。
ぬるぬるとした淫蜜のぬめり、くちゅくちゅとしごきたて、絞り上げる蜜壷の感触、
にゅるにゅる、ちろちろと蠢き、撫でくすぐり、舐めしゃぶる無数の肉襞の感触……
そこは、女の中だった。蜜姫の、魔性の女陰の中だった!

正臣の身体をぴったりと包む打ち掛けが、まさしく蜜壷そのものの感触で彼を包み込む。
打ち掛けそのものは、見た目上の変化は無かった。いや、ひとりでに蠢き、ぐねぐね、
やわやわと正臣を揉みしだく様は、まるで男を貪る魔界の生き物の様ではあるが……。
しかし、その中にくるみ込まれた正臣が味わっているのは、まさしく女陰の感触だった。
魔性の打ち掛けが、むにゅむにゅと、やわやわと、全身を揉みしだき、濡れそぼった
淫肉の感触と例えようもない快楽とを、にゅるにゅると塗り付けてくる……!

「くふふふふ……どうじゃ……もう、どうする事もできまい?
 ほほほ……ほほほほほ……ほれ……どうじゃ……?ほほほほほほほほほ……!!」
「ぎぃあああっ、あぎあぁあああああっ!!ああっ、あっ、あっ、あああああ!!」
魔性の打ち掛けに捕らえられて、びくんびくんと全身をわななかせる正臣を、
蜜姫は勝ち誇った眼差しで見つめる。
見つめながら、白蛇の如くしなやかな肢体をうねうねとくねらせて、愛撫を繰り返す……
白い指が背中や脇腹を這いまわる度、絡み付く太股が蠢く度、
そして、たわわな乳房や下腹部が身体に擦りつけられるその度に、
痺れるような快感の電流が正臣の全身を駆けめぐる!

しかも、魔性の打ち掛けがもたらす、幻の女陰の感触の中で、蜜姫の身体もまた
幻の愛液にまみれていた。その指先も、太股も、乳房や下腹部も、すべからく
ぬるぬるの陰蜜をたっぷりとまとい、それを正臣の全身に塗り付けてくる……!
実際には、正臣の汗で僅かに湿る程度の打ち掛けの中に、ぬめる陰蜜の幻覚が溢れ、
その淫らな感触の滴る中で、蜜姫の妖艶な肉体が蠢き、正臣を容赦なく舐めしゃぶる!

ぐちゅ、ぬちゅ……にゅる、るちゅっ……にちゃ、くちゃ、ちゅぷっ……!

「うあああああああああっ、ああっ、あああがあああああ!!」
「ふふふ……あそこも、もう堪らぬであろ……?くふふ、ふふふふふ……!!」
そう言って、妖しく笑う蜜姫。笑いながら、下腹部を正臣のそれに圧し当てる。
正臣の股間に、ぬちゅっ……と、熱くとろけた蜜姫の粘膜が触れた。

「いっ、うああああっ!あああああ、ふあっ、ううあああああああっ!」
蜜姫の腕の中で、大きくのけぞる正臣。彼の男根の根本の部分を、
女の肉の華が咥える。既にたっぷりと蜜を含んだ花びらが正臣の男根を横咥えして、
温かく、柔らかく、ぬめる肉襞の感触で包み込む……!
「うああああああああっ!!ああ、はぁあああああああ……!」
生まれて初めて、直に味わう女の肉の華の感触。正臣の男根をゆっくりと舐め上がり、
そして、ゆっくりと舐め下がる。
その度に、ぬるぬるとした華の蜜が男根に塗り付けられ、ぽってりと柔らかな花びらの
感触が、痺れるような快楽で正臣を責めたてた。
「ううっ、ううあああ、あふぁああっ、ああっ、あああああ……!」
「ほほ、良い声じゃ……もっと鳴いてくりゃれ……。」
言いながら、蜜姫はさらに身をくねらせ、正臣の男根に淫蜜を塗り付けていった。

「くううっ、うああああ……はああ、ああ、あああああ……!」
閨の中に、若い男の喘ぎ声が響きわたる。正臣の男根を蜜壷の入口がぬるり、ぬるりと
舐め回し、熱く蕩けた粘液が絡み付いてくる。
蜜姫の花びらに男根を舐め回される快感に、正臣はただただ喘がされた。
しかも、彼の全身は、ぬるぬるとぬめる淫蜜の感触に、やわやわと蠢く肉襞の感触に
包まれている。二人の身体をくるみ込んだ打ち掛けが、巨大な女陰に包み込まれている
かのような幻覚で正臣を包み込んでいるのだ。
男根のみならず全身をも魔性の肉襞の感触で愛撫されては、
もはや正臣には、顔を上気させて喘ぎ、よがり続ける他に術はなかった。
「はああああ、ああっ、あっ、あはぁああああああ……!ああ、はああああ……!!」

「ほほほ……分かるであろ……?そちの摩羅がどうなっておるか……
 ほぅれ、妾の蜜にしとどに濡れて、入れ易うなっておるわ……。
 ほほ、ひくひくいうて、妾の中に入りたがっておるぞ……ほほほほほ……。」
蜜姫の言うとおり、正臣の男根は根本から先端までたっぷりと淫蜜を塗り付けられ、
陰唇での愛撫を受けて、その快感にわなないている。
「どれ、そろそろ入れてくれようぞ……妾の火所に呑まれて天上へ昇るがよいわ……
 妾の壷は快楽の坩堝、中に入ればこの世に居ながらにして極楽への旅を楽しむ事の
 できる魔法の壷じゃ……ほほほ……もっとも、あまり長居すると、
 帰って来れなくなるがのう……ほほほほほ……。」
そう言って、蜜姫は少し腰を浮かせ、しなやかな白い指を正臣の男根に添える。
先端が、蜜姫の肉体の入口にめりこみ、押し拡げられた女肉の花びらが、
正臣を呑み込もうと左右から挟み込んでくる……!

「おっ、おやめくだされっ……!それだけは、おやめくだされぇっ……!!」
絶叫する正臣。このまま蜜姫の中に侵入すれば、それは明らかな不義である。
蜜姫と肌を合わせ、その愛撫を受けている時点で、既にそれは憲正に対する裏切りでは
あるが、これ以上先へ進めば、その罪の重さは比べようもない。
その事が、快楽に蕩けていた正臣の意識の中に、憲正への忠心を蘇らせた。
「ほほほ、駄目じゃ……どうしても止めさせたくば、そちが止めればよかろう……!
 ほれ、来やれ……妾の中へ……ほほほ……ほほほほほ……!!」
正臣の制止にも耳を貸さず、蜜姫はゆっくりと身を沈めていく……!
熱く、やわらかな肉の壷が、じわり、じわり、と正臣を呑み込んでいく……!!


正臣を魔性の打ち掛けの中に捕らえ、異次元の快楽で弄ぶ蜜姫。
彼女の操る妖しの術の前に、正臣はどうすることもできなかった。
そして今、蜜姫の肉洞が、ゆっくりと正臣の男根を呑み込んでいく……熱くとろけた
生殖器の感触が、正臣の先端を咥え込んで、じわじわと女肉の中へと沈めて行く……!!

「う、あああああああああっ!!」

正臣は、渾身の力を振り絞って蜜姫を突き飛ばした。
魔性の快楽によって骨抜きになっていた身体に、今一度ありったけの気力を込めて、
目の前の女体に双手突きを見舞う。

「あうっ!!」

蜜姫の肢体が宙に舞う。
正臣の必死の突きを受けた女体は、思いの外軽く吹き飛んだ。
しかし。

「ふ、ぐああああああああっ!?」
蜜姫をはねのけたはずの正臣が、悲鳴を上げてのけぞった。
彼の股間を、異様な感触が包んでいた。それは、蕩けるように柔らかな女肉の感触……
ぬるぬるとぬめる陰蜜の感触……そして、やわやわと男を撫で包む肉襞の感触だった。
正臣の男根は、目に見えぬ幻の女陰に、ねっとりと咥え込まれていた!

ぶあさぁっ!!
宙を飛んだ蜜姫が、空中で一回転する。豪華な打ち掛けがくるりと回って
体勢を立て直し、ふわりと畳の上に着地した。

「ああっ、あああああ……、ぅあっ、ああっ、あくっ、うああああああああ!!」
逃れたはずの女陰に、男根を根本まで呑み込まれ、くちゅくちゅと貪られる……!
正臣は、何が起こったかもわからず、ただただ与えられる快楽に悶え狂った。
その正臣の視界の中で、蜜姫がゆっくりと立ち上がる。

「ふふふ……主君の奥方に手を上げるとは、とんだ忠臣じゃのう……
 これは、仕置きをせねばならぬのう……ふふふ……ふふふふふ……!!」
笑いながら正臣を見つめる蜜姫。その目には、欲望の妖しい輝きがともっていた。

「ううっ、あああ、あくっ、うああ、あひいぃいいいいい……!」
びくびくと全身をわななかせながら、喘ぐ正臣。彼の男根から、総毛立つような快感が
ざわざわ、ざわざわと全身に這い上がってくる……!
「くふふふふ……どうじゃ……?妾の火所の味は……ふふふふふ……!」
正臣の足元に、その肢体を見せつけるように仁王立ちする蜜姫。
その、あらわになった股間が動いている……ぱくぱくと口を開閉し、やわやわと肉襞を
蠢かせ、さかんに何かを貪っている……!!
そして蜜姫の淫唇が、咥え込んだ何かをしゃぶる度、蠢く肉襞が目に見えぬ男根を
舐め回す度、正臣の男根は三尺も離れているはずの女陰にしゃぶられ、舐め回された。

「ふふ……たまらぬであろ……ああ……妾も……良いぞえ……硬くて……熱い……
 ……ふふふふふ……熱ぅて、ひくひくわなないておるわ……ほほほほほほほ……!!」
「くあぁっ、あっ、あああああ……!ひぁっ、あぐっ、ううぅぅぁああああ……!!」
「ほほ……まだまだ……もっと、仕置きにかけてやらねばのぅ……ふふふ……
 覚悟しやれ……快楽の仕置きで、妾の忠臣に作り変えてくれるわ……!!」
言いながら、蜜姫は羽織っていた打ち掛けを肩から外す。
蜜姫の足元に、豪奢な打ち掛けが、ふぁさ……と落ちてわだかまった。

「ふふふ……さあ……もっと鳴きゃれ……ふふふ、くふふふふふ……!!」
その声と共に、蜜姫の女陰が、くちゅくちゅと蠢く。
「がぎぃいいいいいっ!!ぎぁあ、あがはああああああ!!」
目をかっと見開き、がくがくと痙攣する正臣。
彼の男根を、蜜姫の女陰の感触がじゅぽじゅぽ、ぐにゅぐにゅと貪る……!
正臣の身体も、男根も、びくん、びくんとわななき、
限界がすぐそこまで来ていることをはっきりと示している……!!

「ふふ……もう駄目かえ……?」
言いながら、蜜姫はゆっくりと正臣に覆い被さる。
まるでそれ自体が性器なのではないかと思えるほど、柔らかく、すべすべとした
蜜姫の肌の感触が、正臣の身体にしっとりと吸い付いてきた。
「うああああ!ああっ、はぁあああ……!ああ、ああ、あふぁああああああ!!」
肌を触れあった所から、ぞくぞくと肌が粟立つような快感が流れ込んできて、
正臣をさらに追いつめていく……!
「さて……そろそろ、直に咥えてやらねばのう……
 そちの精、妾の火所でたっぷりと受けてくれようぞ……!」
そう言いながら、蜜姫はさらに強く正臣を抱きしめた。

「うあっ、あああああ!!あひっ、いいっ、いぎぁああああああっ!!」
成す術もなく悶える正臣。
蜜姫の魔性の肉体に全身を絡め取られ、甘美な女体の感触に痺れさせられる……。
精一杯の気力を振り絞っての抵抗も、蜜姫の妖術の前には無力であった。
もう、彼に抵抗する力は残っていなかった。
そして……今度こそ、正臣の男根は蜜姫の女陰に呑み込まれる……!

ずぶ……ずぶずぶずぶ……にゅるにゅるにゅるるるる……!

「ああ、あぎぃあああああああっ!!や、やめ……!!ぇあああああああああっ!!」
正臣の男根を包む魔性の女陰の感触……それが、一層濃密になる。それまでは幻であった
快楽が、本物のそれにとって変わる。正臣の男根は、ついに蜜姫の女陰に、根本まで
ずっぽりと呑み込まれた!!

「うああああああああっ!!あああああああああっ!!ぐ、がああああっあっあっ!!」
ひときわ大きな絶叫が閨に響きわたる。
正臣は、びくん、びくんと全身をわななかせて悶絶した。
彼の男根は、到底この世のものとは思われぬ異様な感触に包まれていた。
恐ろしく柔らかく、熱く、ぬるぬる、とろとろの、女肉の感触……
妖しく蠢き、淫らにのたうち、男の欲望を刺激する……!


「くふふふふ……どうじゃ?妾の中はたまらぬであろ?ほほほほほ……!」
正臣の脳裏に、蜜姫の嬌笑がこだまする。超常の快楽に包まれ、責め嬲られながら、
同時に正臣は背筋の凍るような戦慄を覚えていた。
蜜姫が、これほどまでに恐ろしい淫女であったとは……!色狂いになってしまうのも
むべなるかな、御館様は毎晩この様な淫獄に捕らわれていたのだ……!!

にゅる……………にゅる……………る……………。
蜜姫の粘膜が、正臣の先端から根本まで、ぴったりと吸い付き、四方八方から
むっちりと圧し包んで来る……包み込んで、欲望に燃える女体の熱を、じんわりと
男根に伝えてくる……!
「……さて……たんまりと味わわせてくりゃろうぞ……くふふ……
 妾の肉体で、極楽へ昇るがよいわ……!」
蜜姫の妖しい笑みに、毒気がこもり、魔性の肉体がゆっくりと動き出す……!!

ぬ……ちゅぅ……っ!
「うぁ……あ、はぁあああああ!!がっ、あああああああああっ!!」
ゆっくりと、実にゆっくりと、肉襞が正臣を舐め上がっていく。
身体の芯を引き抜かれるような快感が、正臣の身体を貫き、彼は大きくのけぞった。
「くふふふふ……ほぅれ、もっと昇りや……ほぅれ……!」
先端まで舐め上がった深紅の肉の華が、再び正臣を呑み込んでいく……!!

にゅ……るるる……る……!!
「いぎいいいいいいい!!あっ、あがっ、がふぅあああああああ!!」
焦らすようにゆっくりと上下する女体に、
しかし正臣は断末魔のような絶叫をあげ続けさせられる。

「ほほほほほ……大げさじゃのう……まだ、昇りはじめたばかりじゃというに……。」
そんな正臣を見下ろして笑う蜜姫。笑いながら、ゆっくり、ゆっくりと腰を上下させ、
じっくり、じっくりと正臣を嬲る。穏やかな春の海のうねりの如く、ゆったりと蜜姫の
生白い肉体がくねる度に、その身体の下に組み伏せられた正臣を快楽の荒波が翻弄した。

じゅ……ぷっ……、にゅ……るる……るる……!くちゃ……ぬちゅる……るる……!!
「ぎぃあああああああああっ、あっ、あがっ、はくっ、あああああああああっ!!」
凄惨な正臣の絶叫が閨に響きわたる。
「ほほほ……さあ……もっと高みに昇らせてくれようぞ……ほぅれ……!」
ぐちゅ、にゅるっ……にちゃ……くちゃ……むちゅぅっ……!!
「がああああああああっ!!あっ、あがあああっ!!がっ、がっ、がぁあああっ!!」
蜜姫の女陰が正臣を吐き出し、そして再び呑み込むその度に、正臣は激しく悶え狂った。

「ほほほほほ……もっとじゃ……もっと昇るのじゃ……ほほほほほ……!!」
「ぎぁっ、あああああっ、が、ぐううぁあああああっ!!は、あがあああああああ!!」
徐々に蜜姫の身体の動きが速くなる。妖しくくねる女体が、容赦なく男根を責め嬲る。

ちゅぷっ……にゅぷっ……にゅる、にゅる、くちゅっ、ぬちゅっ、ぐちゅうぅっ!!
「ぐぎいいいい!!いがっ、がぐ、はがあああああああ!!うごっ、おおおおおっ!!」
「ほほ……もう、堪えられまい?……ほれ、我慢することはない……
 存分に出しゃれ……妾の火所に、たっぷりと注いでくりゃれぇ……。」
がくがくと身をわななかせて悶える正臣にまとわりつき、甘く囁く蜜姫。
「何もかも忘れて、この快楽に身を任せて……妾の中で、頂を極めてたもれ……
 そして、妾にそちの精を……魂を……注いでくりゃれ……ほれ……ほぅれ……!」
「おおおおおおおおおっ!!あっがあっあっあっあああああっ!!!」

甘えるような、熱っぽい睦言とは裏腹に、蜜姫の肉体はこの世ならぬ異次元の快楽を
送り込んでくる。正臣は、次々と襲いかかる快感の波に、そしてそれに反応して体内から
こみ上げてくる身体の疼き……狂おしい射精の欲求に追いつめられていった。
正臣の男根は、彼の意志に反して、蜜姫の与える快楽に屈服し、その証を妖姫の女陰に
放とうと、びく、びく、と脈動を繰り返す。男根の中では白濁液が噴出を待ち焦がれて
細い尿道をじりじりとせりあがって来ていた。
圧倒的な快楽の前に、正臣の手足はもはや言うことを聞かない。今の彼に、絡み付く
女体を振りほどく力は無かった。それはすなわち、男根を包み込む魔性の女陰から
逃れる術も無い、という事でもあった。
正臣は、目をかっと見開き、歯をがちがちと噛み鳴らして射精を堪え続けた。

「ほほほ……人の身でよう堪えるのう……まして、初めての身でのう……
 憲正めなどは、気を遣りっ放しで、枯れ果ててしもうたがのう……ほほほほほ……!」
明らかに限界を迎えている正臣、しかし蜜姫の言葉通り、彼はこの快楽地獄をよく
耐え続けていた。いや、もう限界を超えているのではないかと思われるほどの苛烈な
快楽責めにあいながら、それでも正臣は耐え続けていた。

正臣は、もはや自らの事は覚悟を決めていた。どのような形であれ、主君の奥方と姦通
した罪は万死に値する。連座して罪を問われる親族がいないことが、せめてもの救いだと
さえ彼は思っていた。

しかし、もし今蜜姫に求められるままに精を放ってしまったら……
そして……もしその胤がついてしまったら……!

そうなれば、事は正臣一人の問題ではなくなる。赤城家そのものを揺るがす大事に
発展するのだ。それだけは、それだけはこの身が滅ぼうとも防がねばならぬ。
ただひたすら、その一念だけで、正臣は蜜姫の快楽責めを耐え続けた。

見開いたまなじりに、噛みしめた歯茎に血が滲む。持てる精神力の全てを注いで、
容赦なく送り込まれる快楽の波にかき立てられる甘い疼きを、意志の力で堪える。
彼の男根は濡れそぼった肉襞のさなかで射精寸前のわななきを繰り返している。
もう、あと僅か、あと一押しで堪えようもなく精が迸る、そのぎりぎりの所で、
あやうく耐え続けている。
あまりにも圧倒的な女肉の誘惑を前にして、なお正臣は儚い抵抗を続けていた。

「ほほ……大したものよのぅ……じゃが、くふふ……どこまで保つかのぅ……!」
必死の正臣を余裕たっぷりに見下ろして、蜜姫はその美しい顔に、一層淫らな、そして
一層邪悪な笑みを浮かべた。
「ほぅれ……!」
ぎちゅぅっ……!!
「ひ、ぎいいぃいいいいいいっ!!」
蜜姫の女陰が、正臣の男根を締め上げる。そして……!
ぐちゅっ、じゅぷ、ぬちゃ、ぐちゅぐちゅっ、にゅるにゅるにゅるるるるぅっ!!
さらに激しく、速く、蜜姫の腰が踊った。すでに限界を迎えている正臣にとどめを
刺すべく、情け容赦のない腰使いで正臣の男根をしごき立てる!
ひらめく肉襞の群れが寄ってたかって正臣をしゃぶり、舐め回し、貪り喰った。

「ほれ、ほれ、どうじゃ、これでも堪えられるかぇ……!
 ほほほ、ほほほほほ、ほほほほほほほほほ……我慢しようとも無駄なこと、
 妾の火所に呑まれて、極楽に堕ちるがよいわ……!
 ほほほほほほほ……!ほほほほほ……ほほほほほほほほほ……!!」
蜜姫の嬌笑が閨に響きわたる。
ぬちゅぬちゅにゅるるちゅぷちゅくちゅにゅちゅるちゅるるる……!
「ぎああああああああああああああああああああああああああああ~~~~~っ!!!」
妖しく全身をくねらせる蜜姫の下で、激しく粘膜が擦れあう淫らな音と、
人の身が耐えられる限界を遥かに超えた、人外の快楽に呑み込まれた正臣の悲鳴とが
もつれあった。


「ほほほほほほほほほ!!さあ、そちの全てを吸い尽くしてくれよう、
 妾の中で快楽に溺れ狂うが良いわ!!ほほほ、ほほほほほ、ほほほほほほほ……!!」
「がぎぁああっ、あぐふぁあああああああああ!!!うぎぃあああああああ!!!」
楽しげに笑いながら、なお激しく正臣を陵辱する蜜姫。その下で、貪られるままに
悲鳴を上げ続ける正臣。既に限界を迎えていた彼が、この容赦のない責めを堪えられる
道理はなかった。

びくん、びくん、びく、びく、びく……

蜜姫の女肉の中で、正臣の男根が射精の痙攣を繰り返す。それは、彼の意志が蜜姫の
与える快楽に屈した証であった。
だが……。

激しく上下していた白い女体が、徐々にその動きを緩める。やがて蜜姫は、正臣への
責めを止め、ゆっくりとその顔をのぞき込んできた。
「ほ……これでも、まだ耐えやるか……?
 なるほど、崎山一のますらおというだけの事はあるのう……。」
驚くべき事に、正臣はこの快楽地獄を、それでも耐え続けていたのだ。
彼の男根は、蜜姫の中でびくびくとのたうち回り、熱く蕩けた女肉の中に精を注ぎ込む
動きを繰り返していた。だが、その先端から迸る液体はなかった。
正臣は、堪えようという意志の力だけで、噴出する精液の流れを止めてしまったのだ。
戦場で深手を負うなど、極限状態に陥った場合に、人は時にその精神の働きによって
出血を止めてしまう事がある。今の彼にも、同じ様な現象が起こったのだろうか……?
いずれにせよ、蜜姫の与える快楽が人外の物ならば、それを耐え続ける正臣の精神力も
また、超人的というべきであろう。

「……み……み……みつ、ひめ……さま……。」
びく、びく、と全身をわななかせながら、正臣は苦しげに声を絞り出した。
「ど……どう…か……おゆるし、を……。」
今もなお全身を苛む射精への欲求を抑え込みながら、やっとの思いで訴える。
「くふふ……これは、面白うなってきたわ……。」
そんな正臣を見下ろして、蜜姫はにんまりと笑みを深くした。

「正臣や……よう耐えてくれた……妾は嬉しいぞぇ……。
 ふふ……妾はそちのような我慢強い男が大好きじゃ……。」
「……どうか……どう、か……う……ご勘……弁……く……だ……され……。」
意識が朦朧としているのか、半ばうわごとのように繰り返す正臣。
蜜姫は、愛しくて愛しくて堪らないといった様子で、正臣を見つめる。
「そして、そちのような我慢強い男が妾の与える快楽に、成す術もなくよがり狂う
 様を見るのは、もっと大好きじゃ……ふふふ……これは、狂わせがいがあるわ……。
 よかろう、褒美に妾の本気を見せてくれようぞ……!」
「!!!……ぇ……え……!!?」

「ほほ……何じゃ?今までのが、本気だとでも思うておったかぇ?
 ほほほほほ……愚かな、ここまではほんのお遊びよ……!」
愕然とする正臣を見ながら、蜜姫はころころと笑った。
「あ……あ、あぁ……!!」
正臣の表情が、驚愕から絶望へと塗り替えられていく。
蜜姫は、益々楽しげな、そして淫猥な表情を浮かべた。
「ふふふ……この程度で、妾の全てを見たと思うておったのか……?
 ならば、見せてくれようぞ……妾の真の姿を……ぬしらの御館様が夜ごとまぐわって
 おる相手が何であるか……そして、御館様がどんな極楽に囚われておるのかを……!」

言い終わらないうちに、正臣を組み敷く女の身体に変化が起こった。
生白い肌がさらに白く、乳白色に変化していく……明らかに、人間の肌の色としては
不自然な、本来あり得ない程に白い、艶やかな肌に変わっていく……。
そして、流れるように艶やかな黒髪はざわざわと蠢きながら、その色を変えていく……
漆黒の髪から、輝く白銀の髪へと変わっていく……!
さらに、蜜姫の耳が大きく、尖った耳へと変化していく……その、大きな三角の耳に、
髪と同じ白銀の毛が生え揃っていく……!
そして、正臣の視界の中で、蜜姫の背後から何かがゆらゆらと伸びてきた。
「ふふ……どうじゃ……面白ぅなって来たであろ……?」
楽しげに笑う蜜姫。その後ろから這い出てきたのは、ふさふさの白い毛に覆われた、
九本もの尻尾だった。

「……ぁ……あ……!!」
驚愕から絶望へと塗り替えられた正臣の表情が、再びさらに大きな驚愕の色に
塗り替えられる。彼の目の前には、まさしく信じられない光景が広がっていた。
「ほほほ……驚いたかえ……これが妾の真の姿じゃ……。」
「ば……化け物……!!」
「ほほほほほ……化け物とは無礼な事をいいやる……。」
九本の尻尾をゆらゆらとゆらめかせながら、蜜姫は笑った。

「まあよい、妾が化け物であろうとなかろうと、そちが何もできぬ事には
 変わりはないわ……ふふ……憲正も、鳥羽帝も、殷の紂王も、この尻尾で
 狂わせてやったのじゃ……。
 さあ……正臣や……そちも、同じように狂わせてくれようぞ……!
 ふふふ……ふふふふふ……ふふふふふふふ……ふふふふふふふふふ……!!」
笑う蜜姫の背後でゆらめく尻尾が、あたかも獲物を狙う大蛇のように鎌首をもたげた。
「ひ……!」
身の危険を感じて、身をよじってもがく正臣。しかし……!

しゅるるるるっ……!
「ひ、いひぃああああああっ!」
正臣が逃れようとするより早く、両腕両脚に一本づつ、四本の尻尾が絡み付いた。
両脇の下に差し込まれた尻尾は、二の腕をぐるりとひと巻きして肘の内側を通り、
更に手首に巻き付いて、その先端は手のひらを覆っている。
太股に巻き付いた尻尾は、膝の裏を通ってふくらはぎ、足首と巻き付き、
先端は足の裏を覆った。柔らかな毛先が脚の指の間に入り込む。

そして……正臣の四肢を絡め取った尻尾が、
さわさわ……くしゅくしゅ……さわさわさわ……!
と蠢き、両手両足をくすぐり始めた!

「あ、あひゃひひひひひぃいいいいい!!いひゃひゃははひはははぁっ!!」
柔らかなふさふさの毛にくすぐられて、正臣はたまらず笑い出す。
こちょこちょ……さわさわさわ……しゅるしゅるしゅる……わさわさわさ……!
「ひは、はひゃはひっ、ひあっ、あひあはひひひひひぃっ!!」
真っ白な尻尾が妖しく蠢く度に、正臣の四肢から全身へ、電流が流れるような
くすぐったい感触の波が拡がっていった。
くしゅくしゅくしゅ……さらさらさら……こちょこちょ……こちょこちょこちょ……!!


「ふぎいっ、いひゃっ、あひひゃははははひはぁっ!!」
ふさふさの尻尾に両手両足を絡め取られて、撫でくすぐられる正臣。
「ほほほ……ほれ、妾の尻尾はまだまだあるぞぇ……!」
蜜姫の声に応えるように、二本の尻尾が正臣の脇腹へと這う。
脇腹から背中を通って反対側の肩へ……更に、両側からぐるりと首に絡み付き、
その先端が、ふさっ……、と耳の中に入り込んだ。そして……

さわさわさわさわさわ……しゅるしゅるしゅるしゅるしゅる……!
「いひゃぁぁあああああっ!!あひっ、ひっ、ひひゃはははひひひひぃっ!!」
さらなるくすぐり責めに悶絶する正臣。彼の脇腹を、背中を、首筋を、そして耳を、
柔らかな毛先が容赦なくくすぐった。
「ほほほほほ……もっとじゃ、もっとしてくれよう……!」
更に二本、尻尾が正臣の身体にまとわりついてくる……!

「ひひゃあああああああっ!!ひぁっ、あはひはひひひひゃはあっ!!」
正臣は、新たな刺激に全身をびくん、びくんとわななかせて悶えた。
新たな二本の尻尾は、彼の腰を両側から巻き、尻の谷間を通って、正臣と蜜姫の
太股の付け根の間に滑り込んできた。正臣の陰嚢を、ふさふさの尻尾の毛が撫で上げ、
さらに蜜姫と結合している男根の両脇を、尻尾が這い進む。柔らかな毛先が、
男の根本をさわさわとくすぐりたて、新たな刺激を送り込んでくる!
そして、その尻尾は正臣の下腹部から再び脇腹を通って背中へと回り、その先端を
巧みに動かして背筋を撫でくすぐった。
つつーっ、と毛先が正臣の背筋を撫で上がり、さわさわさわ……と撫で下がる。
「はぎぃいひひひははっ!!ひひゃははああああっ!!はひゃはははひひひひっ!!」
その尻尾の動きにあわせて、正臣の口から笑い声とも悲鳴ともつかない叫び声が迸った。

「あひひゃははっ!ひひゃぁっ!!いひぃあっ!!はひゃひははひははひぃっ!!」
全身に絡み付く蜜姫の尻尾によって、とめどなく笑い狂わされ、悶え狂わされる正臣。
細く柔らかな尻尾の毛が、極上の感触で正臣を包み込む。その心地よい感触と、
全身をくすぐられる苛烈な刺激とが、正臣を翻弄する。
例えるなら、柔らかな筆先でくすぐられるような感触……それも、何千本、何万本もの
筆で、一斉に全身をくすぐられるような……それは、人の精神が耐えられるものでは
なかった。快感とも苦痛とも異なる、いや、その両方が複雑に絡み合い、混ざりあった
濃厚な刺激が、正臣の全身を絶え間なく駆けめぐり続ける。
白い尻尾の群れが蠢く度、正臣は成す術もなく夜具の上をのたうち回った。

そして……半刻が過ぎた。
「ほほほほほ……どうじゃ、たまらぬであろう……?」
妖艶な笑みに淫らな影を濃くして、蜜姫はなおも執拗に正臣を責め嬲った。
「ひひゃぁあああ……は、ひひぃいいいい……いひゃ、は、ひああああああああ……。」
半時の間、ひとときも休むことなく全身をくすぐられ続けて、正臣の表情には
消耗の色が濃く、意識も朦朧としているのが伺える。
にもかかわらず、彼の身体の一点だけは、彼の男根だけは、蜜姫の肉洞の中で
ぎっちりと張りつめ、ひく、ひく、と射精寸前のわななきを繰り返している……

「くふふ……もう、堪えようにも気力があるまい……ほほ、ならばそろそろ搾って
 やろうかのぅ……ほほほ……どうじゃ?今度は耐えられるかのぅ……?
 くふふ、ふふふふふ……ふふふふふふふふふ……!」
勝ち誇った表情で、蜜姫は正臣を見下ろす。
もう、正臣に射精を堪える力が全く無い事を、その力をくすぐり責めで根こそぎ
奪い取ったことを確信しているのだ。実際、蜜姫の下で喘ぐ正臣の目からは完全に
精気が消え失せてしまっていた。もはや、先刻射精を耐え抜いたような鉄の意志は
そこには無かった。
「さあ……覚悟しや……今度こそ、そちの若く精気に溢れる精を、ほほ、たっぷりと
 搾り取ってやるほどにの……ふふふ……ふふふふふ……ほぅれ、出しゃれ!!」

正臣の全身を絡めとった尻尾が、一層激しく正臣の全身をくすぐる。
「い、ひあぁあははひははははっ!!ああっ、ひぁっ、はひゃあああああああっ!!」
閨中に、正臣の悲鳴が響き渡る。その声は、先刻より明らかに喜悦の響きを増していた。
半刻もの間くすぐられ続けるうちに、正臣の身体はくすぐられる事に快感を覚える様に
なってしまったのだ。
柔らかな毛先の心地よい感触で全身を撫でくすぐられる、その感覚に反応して、
正臣の身体の奥底から甘い、熱い疼きが溶岩の如くこみ上げて来ていた。
その熱い疼きは、ゆっくりと正臣の身体の一点に集まっていく……もはや抑えようもなく
じりじり、じわじわと、噴出の時を待ちわびてせりあがっていく……!!

「くふふ……どうじゃ……?もう堪えられまい……?くふふ、ふふふふふ……!」
さわさわさわさわさわさわさわさわ……!!
「ひいぃいひゃひゃはひゃっ、いひゃっ、あひゃひひゃひひひひひぃっ!!」
蜜姫の熱く蕩けた火所に包まれて、正臣の男根がびきびきと限界を超えて張りつめる。
その奥で煮えたぎっている白濁液を、今にも吐きだそうと、蜜姫の胎内に注ぎ込もうと
びくん、びくん、とわなないている……!

「ふふふ……堕ちよ……堕ちるのじゃ……ふふふ、ほほほほほ、ほほほほほ!!」
しゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅる……!!
「いひぃあひゃはぁあああ!!あひいっ、ひっ、ひひゃひぃっ!!ひあああああっ!!」
勝ち誇った蜜姫の笑い声と、悲壮な正臣の笑い声が絡み合い、閨を満たす。
狂気を含んだ笑い声の渦が、正臣を呑み込んでいく……もはや、正臣に抵抗する術は
無かった。全身を激しく痙攣させて笑い狂い、よがり狂う!

「ほほほほほほ!!ほほほほほほほほほ!!ほほほ、ほほほ、ほほほほほほほほほ!!」
くしゅくしゅくしゅくしゅわさわさわさわさこちょこちょこちょこちょこちょ……!!
「ひひゃひひひ、いひゃっ!!はひゃっ!!あひ、あひあぁあああああああああっ!!」
さらに激しく、さらに容赦なく、ふさふさの尻尾が正臣の全身を這い回り、撫で回し、
くすぐりたてた。脇も、肘の内側も、手のひらも、太股も、膝の裏も、ふくらはぎも、
足の裏も、手足の指の間も、脇腹も、背筋も、首筋も、耳も、腰も、尻の谷間も、
蟻の戸渡りも、袋も、根本も、まさしく全身を、一斉にくすぐってきた!
その感触がもたらす、例えようもないくすぐったさ……そして、
気が狂いそうな程の快感!!正臣の男根を、熱い液が昇っていく……!!

「ほほほほほ!!さあ、出しゃれ!!妾の火所に、存分に注ぐがよいわ!!」
嬌笑を放ちながら、蜜姫は身をくねらせる……正臣の男根を深々と呑み込んだ女陰が
妖しく蠢き、無数の肉襞が、正臣の一番感じる所を、とどめとばかりにくすぐった!!

くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅっ、にゅぷにゅぷにゅるにゅるるるる……!

「ひぃっ、ぎぃああああああああああああああああああああああああああ!!」
断末魔のような悲鳴が正臣の喉から迸る。いや、それはまさしく断末魔だった。
正臣の理性の、精神力の断末魔の叫びだった。

どぶどぶどどどどぶりゅびゅるびゅるびゅるびゅる~~~~~~~~~っ!!
ついに、正臣の屈服の証が蜜姫の秘奥へ吸い込まれていった。


「ほほほほほほほほほ!!ついに堕ちたわ!!これでそちは妾のものじゃ!!
 ほほほ、ほほほ、ほほほほほほほほほ!!ほほほほほほほほほ!!」
笑いながら全身をくねらせ、さらに尻尾もくねらせて、蜜姫はさらに正臣を責めたてる。
「あああああっ!!かはっ、がぁっ、はぐぁあああああああっ!!」
一気に精液を吸い上げられる快楽と苦痛に悶絶する正臣。

正臣のその様子を見ながら、そしてその精を搾りながら、蜜姫はその淫らな笑顔に
徐々に陶酔の感情を滲ませていった。
「ほほほほほ……その顔じゃ……妾が観たかったのは、そちの、その苦悶と快楽に
 歪む顔じゃ……屈辱にまみれながら、妾の虜となっておる、その顔じゃ……ほほほ……
 おお……さすがに『初物』じゃ……雑味がのうて、濃くて……実に美味じゃ……
 もっともっと注いでくりゃれ……妾の壷に……おお……これは美味じゃ……
 若い男の熱くたぎる精が……妾の中に……。」
蜜姫は、うっとりとした表情で精を味わいながら、腰を動かしてさらに正臣を嬲る。
「ふあああっ、あ、く、うくぅっ、やめ、えぁああっ!」
とろけるように柔らかい肉襞に翻弄されて、正臣の男根はなおも激しく精を放った。

「あああああっ!!ああ、ああっ、はああああ……!ああ、はぁあああ……。」
びゅくびゅくびゅくびゅくびゅくっ、びゅくっ、びゅく……ぴゅく……ぴゅっ……。
やがて、長い長い射精が終わり、正臣はぐったりと息をついた。
「おお……美味じゃ……これは……素晴らしい精じゃ……。」
恍惚の表情で正臣の精を味わう蜜姫。
「ああ……は、ああ……うあ、あああ……。」
生まれて初めて味わうには、あまりにも強烈な射精。その余韻に全身を満たされて、
正臣は虚ろな眼差しで喘いでいる。……だが。

「ほほ……さあ、まだ宴は始まったばかりじゃ、さらなる快楽の園へとそちを導いて
 くれようぞ……!ほうれ、鳴きゃれ!!」
さわさわさわ……しゃわしゃわしゃわしゃわしゃわ……!
「ひぎっ、いひゃあああっ!!あひゃっ、ひゃひいぃっ!いっいぃっ、いああああ!!」
射精直後の、過敏な身体を柔らかな尻尾の毛が撫でくすぐる。
「ほほほほほ……効くであろ?たまらぬであろ?ほほほほほ……!」
「ぎぃいっ、ひぎゃっ、ああ、あひゃあひいぃいいっ!!」
「ほほほ、これはどうじゃ……?」
「ひ、いひいいいいいいっ!いっいあっ、はぎひいぃいいいいっ!!」
ふさふさの尻尾の毛に埋もれながら、全身を大きくのけぞらせて絶叫する正臣。
その両の乳首を、蜜姫がつまんでいる。白い指先が微妙な動きを繰り返し、
正臣の乳首をくりくりと弄くり回している……十本の指が、激しく、それでいて繊細に
蠢いて、絶え間なく刺激を加え続ける……正臣の乳首から全身に快感の電流が
走り抜けて、正臣を痺れさせていく。

そしてその刺激に、正臣の身体が反応する。蜜姫の体内に収められた正臣の器官に、
再び熱がこもり、失いかけていた硬度を取り戻していく……。
「ほうれ、また固うなってきおったわ……ほほほ……そんなに良いのかえ……?
 なればもっとしてくれよう……くふふ……ほれ……ほうれ……!」
蜜姫のしなやかな指が正臣の二つの突起の上をくるくると踊る。
くりくり……くりくりくり……くりくりくりくりくり……
「ああっ、ふぁ、あひいいい!いい、ひあっ、あああああああ!!」
悶え狂う正臣。射精直後の余韻に痺れている身体を、全身に絡み付くふさふさの尻尾で
よってたかってくすぐられ、さらに両の乳首を弄ばれる……あまりにも強すぎる快感は、
今や苦痛ですらあった。その快楽地獄から逃れようと、正臣は必死に暴れもがくが、
彼の四肢は蜜姫の尻尾に絡め取られて、全く自由がきかなかった。
そして逃れる術もないまま、再び快楽の坂道を昇らされていく……。

「ほほほほほ……さらなる快楽地獄へと引きずり込んでくりゃろうぞ……ほほほほほ……
 そちにはもうどうする事もできまい……ほほほ……ほぅれ、もっと鳴きゃれ!!」
きゅううぅぅっ!!
「ひぎいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
蜜姫の身体を持ち上げて、正臣の身体が大きくのけぞる。蜜姫が指先で乳首を強く搾り、
引っ張っているのだ。蜜姫は更に強く、指先に力を込める。
ぎりぎりぎりぎりぎりぃっ……!
「いい、ぎあぁああああああっ!!」
「ほほほ、良い声じゃ……こっちも搾ってやろうぞ……。」

きゅううぅぅ……!!
「ふあ、はぁぁぁあああああ……!!」
今度は下の突起を、女の器官で絞り上げられる。熱くとろけた粘膜が男根にぴったりと
吸い付き、もにゅもにゅと蠕動して搾ってきた!
既に正臣のものは熱く息づき、ぎっちりと張りつめていた。射精して間もないにも
関わらず、蜜姫の与える異常な快感によって強制的に勃起させられている。
男根の芯からはじんじんと鈍い痛みすら感じられたが、男根を根本まで呑み込み包み込む
蜜姫の肉襞が、そのこの世のものとも思われぬ異様な感触が、圧倒的な刺激で正臣を
快楽の頂へと押し上げていく。
熱く、柔らかく、ぬるぬるしていて、やわやわと妖しく蠢く蜜壷が男根を貪り、
無数の肉襞で撫で上げ、しごき上げる……!!
くちゅ、くちゅ、にゅるにゅるにゅる……ぎちゅうぅうぅうぅぅ……!!
「いひいぃいいいい……いいっ、いひゃあああああああ……!!」
再び射精寸前の状態に追いつめられる正臣。彼の男根は、既にひく、ひく、と痙攣を
繰り返し、今また淫乱な妖姫への屈服の誓いを放とうとしていた。

「ほほほ……どうじゃ?また妾に精を注ぎたくなってきたであろ?ほほほほほ……
 我慢せずともよい、何度でも存分に放ちやれ……何度でも搾ってやる程にのぅ……。
 ほほほほほ……ほほほほほほほ……ほれ、ほうれ、もっとよくしてくれようぞ……!」
笑いながら、蜜姫は再び乳首をくるくるといじくり回し、さらにゆるゆると腰も回し
始めた。正臣の3つの突起が同時にくるくると弄ばれる……!
そして、全身に絡み付く尻尾が、一層いやらしく正臣の全身をくすぐりたてる……!!
さわさわさわさわさわ……くりくりくりくりくり……!
「ひいあっ、ああ、あはあああっ……!はああ、あああああ、あああああああああ!!」
正臣は、果てしなく続く快楽責めに、悶え鳴き続ける他に成す術がなかった。


「遅い……。」
城では、居並ぶ重臣達が正臣と憲正の戻りを今や遅しと待ち続けていた。
正臣が蜜姫御殿に向かってから既に二刻が経っていた。結局、彼が憲正を説得する以外に
解決の手だても見いだせず、ともあれ彼の帰りを待つことにしたのだが……。
「大丈夫でありましょうか……?」
家臣の一人が筆頭家老の前川義照に問う。問うた所で義照にも分かる道理もないのだが、
そう問わずにはいられない、いいしれない不安が座に蔓延していた。
「……わからぬ。だが、今はともかく待て。我らがむやみに動いては、あるいは
 片山の説得を妨げる恐れもある。今はしばし堪えて待つのだ。」
「しかし……。」
その時。

「失礼いたしまする。蜜姫御殿より、侍女頭の露葉様が参られました。」
襖が開き、警護の兵が薄紫の小袖姿の露葉を連れてきた。
無骨な城内に、彼女の容姿がもたらす涼やかで優美な雰囲気が漂う。
だが、同時に蜜姫御殿の侍女頭が参上したという事実が、切迫した事態の到来を告げ、
座には緊張感の方がより色濃く漂った。

「これは……露葉殿、よう参られた。して、ご用件は何であろうかな?」
義照は努めて平静を保ちつつ、露葉に問うた。
「はい……今宵、御殿に突然片山様がおいでになりました。」
露葉の言葉に、一気に座の緊張感が高まる。
そんな一同の様子を、あくまで涼しげな表情で見渡しつつ、露葉は続ける。
「そして、憲正様を城にお返しするよう、蜜姫様に嘆願なさいました。
 姫様はその誠意にうたれ、また、それが国のためでもあり御身のためでもあると
 いうお考えに至り、片山様の希望をかなえて差し上げるご決心をなさいました。」
「……おおっ……!」
居並ぶ家臣達から、誰ともなくどよめきが漏れた。

「それは、御館様をお返し頂ける、という事でございますか?」
義照の問いに、露葉は穏やかな笑みを浮かべて応える。
「はい……、今宵はもう遅うございます故、お二人には御殿にお泊まり頂き、
 明朝、城にお帰り頂く事となりましてございます。
 城で皆様が心配してお待ちであろうという事で、私が皆様の心配を取り除き
 申し上げる為にこうして参上した次第でございます。」
露葉のその言葉に、座の緊張もふっ、とゆるんだ。
「そうか……いや、かたじけのうござる。一同胸のつかえがとれ申した。
 では、我らは明朝のお帰りを心穏やかにお待ち致しましょう。
 御館様と、片山殿によしなにお伝え下され。」
安堵の表情で、義照は露葉に礼を言った。
が、彼らは知らなかった。蜜姫の正体を。
そして、御殿で憲正と正臣がどのような魔界に引きずり込まれているのかを。

その頃……、蜜姫御殿・奥の院の最深部、蜜姫の寝室では、まさしくこの世のものとも
思われぬ凄惨な陵辱絵巻が展開されていた。
さわさわさわ……くしゅくしゅ、さらさらさらさらさら……!
「はぎぃっ、いひゃっ、あっ、あひぃいいぃぃ……!」
全身を撫でくすぐる尻尾の群れの中で、成す術もなく悶え狂う正臣。
そんな正臣の様子を見て、満足げに笑みを浮かべながら、しかし蜜姫は不思議な
問いを投げかけた。
「ほほほ……もう極楽であろ……?だが、何か忘れてはおらぬかえ……?」
「うああっ、あひあぁあ……ああっ、ふぁっ、あひゃはああぁ……!」
正臣は訳も分からず、ただただよがり狂い、悶え乱れる。
「ほほ……分からぬか……?ならば教えてやろう……これは、何じゃ……?」
その言葉と同時に、新たな刺激が正臣の身体に与えられた。
「!!……は、あくぅっ、ま、まさか、うくぁあっ……!!」
一層激しく悶える正臣。
「そうじゃ、妾の尾は九本、今ぬしを捕らえておるのは八本、最後の一本は……ほほ、
 どこにやろうかのぅ……?」
しかし、その答えが既に決まっていることは明らかだった。
正臣の股間、蜜姫の蜜壷に根本まで呑み込まれた男根の、そのさらに下にある小さな
すぼまりから、こちょこちょと筆の先でくすぐられるような快感が伝わってくる。

「ひぁあ、やめ、ぇああっ、お、お願い、いぐっ!やめぇ、ぁああああっ!!」
全身を包み込む快楽に身も世もなくよがり狂いながらも必死に懇願する正臣。
その表情が快楽と恐怖で歪む。
「くふふ……駄目じゃ、他に責める所ももう無いでのう……ほほほ、覚悟しや……。」
「ひ、ひぃいっ、あくっ、いあ、嫌ぁあっ……!」

正臣はなんとか逃れようともがいたが、四肢を絡め取った尻尾が彼の身体を拘束し、
身動きもままならない。さらに、脇腹を、太股の付け根を、背中を、脇の下を、首筋を、
そして耳の中をこちょこちょさわさわと撫でくすぐる四本の尻尾が、正臣の身体に
凄まじい快感を惜しみなく送り込み、代わりにもがく力を容赦なく奪い去ってゆく。
もちろん、四肢に巻き付いた尻尾も正臣の肘の内側や太股の内側、膝の裏側、足の裏
などの性感帯を的確に責め、正臣を快感の泥沼へと引きずり込んでゆく。
そして肛門に迫る最後の一本。尻尾の先を妖しく蠢かせて、正臣の肛門をちろちろと
舐め回す。為す術もなく貫かれるのを待つのみの獲物を前にして、じっくりと嬲り、
余裕たっぷりにいたぶっている。

その感触に怯えながら、全くどうすることもできない正臣。彼に許されているのは、
肛門を犯される危機を前にしながら、全く無防備に、全身に絡み付く異界の快楽に
よがり狂い、悶え狂う事だけだった。
「ほほ……では、そろそろ挿してやろうかの……。」
つぷぅっ。
「くひぃっ……!!」
尻尾の先端が肛門に挿し込まれる。それだけで正臣は全身に電気を流されたかの如く
のけぞって痙攣した。尻尾の毛先一本一本が、実に微細な動きでちょろちょろと肛門の
皺一本一本を余すことなく、くすぐったのだ。

「ほほほ、もうこれだけでたまらぬであろ?しかしのぅ、これはまだまだ序の口よ……
 くふふふふ……ほぅれ……!」
ぞぼっ。
「ひ、いひいいいいいいい!」
絶叫する正臣。尻尾の先が、肛門を押し広げて侵入してきた!
入口を柔らかくふさふさの毛が撫でくすぐりながらくぐり抜ける……!
正臣の男根が、びくん、びくんと悶える。限界ぎりぎりまで張りつめ、もはやいつ精を
迸らせてもおかしくない。
「ふああっ、ああ、あはぁああああああ……!ううっ、くはあああああああ!!」
「ほほほほほ……もう駄目じゃのぅ……もう、我慢もきかぬのぅ……ほほほほほ……
 そうであろ?もう、あと一押しでいってしまうのであろ?ほほ、崎山一のますらおが、
 女に尻穴を犯されていかされるとは、ほほほ、無様な事よのぅ……ほほほほほほほ!」
蜜姫は、正臣を見下ろして嘲り笑った。そして……。

「ほほほ、ならば引導を渡してやろうぞ……ほほほほほ……ほうれ、逝きゃれ!!」
ぞぼぞぼぞぼぞぼぞぼぉっ!!
「ふぎぃいいいいいいいいいいああああああああああああああああああっ!!」
正臣の肛門を限界まで圧し広げて太い尻尾が侵入し、正臣を貫く。
直腸全体をふさふさの尻尾の毛がぞわぞわと撫でくすぐり、肛門は外からも内からも
柔らかな毛先に包み込まれて情け容赦なくくすぐりたてられた!!

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」
既に限界に達していた正臣には、あまりにも過ぎた刺激であった。
どぶどぶどぶどぶどぶびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるるるる……!!
正臣は蜜姫の体内に、堪えようもなく2度目の屈服の証を放った。


「ぐ……あ、はぁ、ああ……はぁ……。」
死んだようにぐったりと横たわる正臣。蜜姫の与える魔界の快楽に、2度までも
大量射精を強いられ、もはや息も絶え絶えといった様子である。
光を失い虚ろな瞳、弛緩しきって全く力が抜けきった身体……蜜姫にごっそりと精液を、
そしてそれと共に生命力そのものを吸い取られた正臣は、実際に死の淵にあった。
もう、抵抗する力も、抵抗しようとする意志も、彼には無かった。
あとはもう、蜜姫に貪られるままによがり、狂い、精を搾り取られていくのみ……
そこには崎山国の次代を担う若武者の姿は無い。
今の正臣は、魔性の美姫の餌食となって精を吸い尽くされ、朽ち果てていく哀れな男
でしかなかった。

「ほほほ……どうじゃ?もっともっとくすぐって欲しいのであろ?ほほ、妾のくすぐりは
 味わえば味わうほどに気持ちようなってゆくでのう……くふふふふ……。」
にんまりと淫猥な笑みを浮かべて、蜜姫は正臣を見下ろす。
そして、正臣の身体を絡め取った尻尾の毛先をさわさわと蠢かした。
「あ……ああ……ぅ……くっ、ぁああ……。」
その刺激が、正臣の全身を包む……柔らかな毛先がちろちろとくすぐる、微かな刺激が
身体中を駆けめぐり、それが甘美な疼きとなって身体の奥底に溜まっていく……
そして、じわじわとこみ上げてくる……甘く熱い痺れが、じわり、じわりと正臣を
満たしていった。精を放ったばかりの男根が、萎える間も与えられずに再びひく、ひく、
と喘ぎ始める。正臣は再び快楽地獄の泥沼へと引きずり込まれていった。
「うぁ……ああ……はぁ、あああああ……!」
「ほほほほほ……ほうれ、もう身体が次の極楽を欲しておるわ……ならば、望み通りに
 してくりゃろうぞ……くふふ、ふふふふふ……ふふふふふふふ……!」

妖しく笑いながら、蜜姫は正臣の腹に両手を添える。その手のひらが、静かに温かな光を
放ち始めた。最初はほのかな光であったのが、徐々に明るさを増していく……。
それと共に、正臣は自分の身体が軽くなったような、何かが抜け落ちたような、そんな
感覚に捕らわれた。わが身に何が起こっているのか、いい知れない不安がこみ上げる。
そんな正臣に、蜜姫は妖艶な笑みを一層深くした。
「くふふふふ……心配するでない、そちのはらわたの中身を消しただけじゃ……
 そのままでは汚いし、邪魔になるでのう……ふふふ……ふふふふふ……!」
「う……ああ……あ……!」
既に快楽の虜になりつつある正臣にも、それが何を意味するのかは想像がついた。
そして、それはすぐに現実のものとなったのだった。

「ほほほ……では、いくぞぇ……ほうれ!!」
その声を合図に、正臣の全身に絡み付く8本の尻尾が、にゅるにゅるにゅるにゅる……
と伸び始めた!そして、より隙間無く螺旋状に巻き付いて、正臣の身体を包み込んで
いく……十重二十重に絡み付いて、ふさふさの白く柔らかな毛で覆い尽くしていく……
「う、うぁっ、あふあぁあああああ……!はああ、ああ、あああああ……!!」
正臣は、なす術もなく白い螺旋の中に埋もれていった。

さわさわさわ……こちょこちょこちょ……くしゅくしゅくしゅくしゅくしゅ……!!

「ひああああ……ああ、あひぁああああああ……はあ、あああああっ……!!」
正臣を再びくすぐり地獄が襲う!それも、先程よりも一層濃密な刺激で、正臣の身体の
全てを包み込んでいく……!今や、正臣の身体で露出しているのは顔ぐらいだった。
首筋も、脇の下も、腕も、脇腹も、背中も、胸元も、脚も、股間も、何もかもが、
純白の柔らかな尻尾の毛に包み込まれ、さわさわとくすぐり撫で回されている。
あたかも、全身を毛皮に包まれているかのような姿の正臣……しかも、その毛皮の毛先が
ぷるぷる、ちろちろといやらしく蠢き、正臣の身体のあらゆる部分に苛烈なくすぐりの
快感を刻み込んでいく……!何十万本、何百万本、いや、もっと、もっとたくさんの、
まさしく無数の白い刺客が、正臣を寄ってたかってくすぐり責める!!

ちょろちょろちょろ……さらさらさらさらさら……こちょこちょこちょこちょ……!!
「あああああっ、あはぁああああああ!!はひっ、ひいっ、いひゃあああああああ!!」
白い毛の海の中で溺れ狂う正臣。びくん、びくんと全身をはげしくわななかせ、この
くすぐり快楽地獄の中でのたうちまわる!!しかし、どんなにもがいても全身をみっしり
と包み込む尻尾からは逃れられなかった。そればかりか、尻尾が妖しく蠕動を始め、
さらに激しい快感で正臣を責めたててきた!!
さわさわさわ……うにうにうにうにうに……ふさふさふさふさふさ……!!
「ひいいっ、いいっ、いああああああああ!!あぎぃっ、いひいいいいいいいい!!」
「ほほほほほ……ほれ、もうたまらぬであろ?もっとじゃ、もっと狂いやれ!!」
蜜姫は笑いながら、さらに全身を激しくくねらせ、正臣の男根を嬲った。
熱く蕩けた蜜壷が正臣を舐めしゃぶり、搾り、肉襞一枚一枚を振るわせてくすぐる!!
「あぎいいいいいいい!!いぎいいっ、いひいいあああああ!!」
正臣は全身を包み込む尻尾の責めに、男根を包み込む肉襞の責めに、たちまち限界まで
追いつめられてしまった。逃れる術もなく、がくがくと全身を痙攣させてよがり狂う。
だが、これだけでは終わらなかった。
「くふふふふ……もう堪えられまい?じゃがのぅ、まだまだこんなものではないぞぇ……
 ほほほ、そちに真の快楽を教えてくれよう、存分に味わって果てるがよいわ!!」
その次の瞬間。

ぞわ。

「はぁあああ、あああああああああああああああああああああああああっ!!!」
白い毛の中に埋もれた正臣の身体が、蜜姫を乗せて跳ね上がる。それまでの快楽地獄さえ
も児戯に等しい、異次元の快楽が彼を貫いたのだ。

ぞわぞわぞわぞわぞわ……!

「があああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
さらなる刺激に、正臣の血を吐くような絶叫が閨中に響きわたった。
新たな快感が、彼の体内に侵入してくる……ふさふさの柔らかな毛の感触が、彼の中に
潜り込んでくる……!そう、最後の一本、彼の肛門を貫いていた尻尾が、他の八本の
尻尾同様ににゅるにゅると伸びて、正臣の腸の中をさらに深く侵入してきたのだ!!
「があああっ、あがぎひいいいいいいいいい!!いいっ、ぎああああああああ!!!」
「ほほほ、どうじゃ?こんな快楽はこの世のどこにもあるまい?」
悶絶する正臣を見下ろして、蜜姫はころころと笑った。
「何しろ、そちのはらわたの中身を消したついでに、中で感じられるようにもしておいた
 からのぅ……ほほ、今そちのはらわたは、おなごの火所と同じように、いや、それより
 ずっと感度が良くなっておるのじゃ……ほほ、それを妾の尻尾で嬲られては、もはや
 極楽も通り越して地獄であろうて……ほうれ、もっと深う挿してやろう、ほほほ、
 鳴きゃれ!もっと鳴きゃれ!!そして、逝って逝って逝き尽くしゃれっ!!!
 ほほほ、ほほほ、ほほほほほ、ほほほほほほほほほ!!!ほほほほほほほほほ!!!」

ぞわぞわぞわぞわぞわ……ぞわぞわぞわぞわぞわ……!!

蜜姫の哄笑と共に、尻尾がどんどん奥へ奥へと潜り込んでくる……
そして、無数の柔らかな毛先が、正臣の腸の内側の襞一枚一枚を、ちろちろ、さわさわと
くすぐり、撫で回す!!さらに奥へ……奥へ……長い長い腸の中を、長い長い尻尾が
みっしりと充たし、正臣の身体を内側からくすぐりたてる!!
そして、正臣の腸は与えられた刺激に敏感に反応し、言語に絶する強烈な快感を正臣の
全身に発信した。

「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
どぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶ!!!!!
三度目の射精が、正臣の尿道を迸る。
それは、人の身で耐えられる刺激ではなかった。それはまさしく、人の身体も精神も
破壊し尽くす、殺人快楽だった。身体の外側も内側も、あますことなく無数の毛先で
くすぐられ、身も心もその快感に塗りつぶされる。
「ほほほ、もっと鳴きゃれ!もっと逝きゃれ!そして妾に全てを捧げて死ぬがよいわ!」
「ぎがあああああああっ!!!あぎあああああああ!!!あああああああああ!!!」
どぶどぶどぶどぶどぶ……どぶどぶどぶどぶどぶ……!!
正臣の精の迸りは、いつまでも止まらなかった。彼の男根は、断末魔の叫びのように
白濁液を吐きだし続けていった。


「……これ、正臣や……起きゃれ……これ……起きゃれ……。」
「ん……。」
闇の中から、意識が引き戻されてくる。正臣は、ゆっくりと目を開いた。
意識が戻って来るにつれて、五感が周囲の状況を知覚する。甘い伽羅の香り、真っ赤な
緋毛氈、豪奢な夜具……蜜姫の寝所だ。どうやら気を失っていたらしい。

「は!!」
がば、と正臣は跳ね起きた。身体は自由が効く。
一瞬、今までの快楽地獄は夢だったのではないかとさえ思えた。
だが。

「ほほほ……ようやく目が覚めた様じゃのぅ……少々待ちくたびれたぞえ……。」
目の前で微笑む蜜姫の姿は……目にも眩しく輝く白銀の髪、両のこめかみの上に大きく
尖った三角形の耳、そして背後にうねうねと、さわさわと、触手のようにのたうつ九本の
尻尾……それは、正臣が堕とされたくすぐり地獄が紛れもなく現実であった事を、雄弁に
物語っていた。そして、これからその続きが待っているであろう事も……。

「ふ、うう……あ、あ、ぁあ……!」
正臣の顔に、絶望の表情が浮かぶ。もはや彼は、蜜姫の贄でしかなかった。
それでも、半ば無駄な努力と知りながらも、必死に起きあがって逃げようと……
逃げようと……

「う……!う、うう……!!」
「ほほほほほ……どうしたのじゃ……?」
蜜姫がその目をにんまりと、逆三日月型に細める。その目の前でもがく正臣の動きは
あまりに緩慢で、あまりに弱々しかった。まるで嬰児のごとくよろよろと立ち上がり、
よろけて倒れ、そして再び起きあがろうともがく。
「ほほほほほ……ほほほほほほほ……なんじゃ、そのざまは……?
 まあ、仕方あるまいのう……その身体ではのぅ……ほほほ……ほほほほほ……!」
蜜姫の言葉に、はっと我が身を見る正臣。その顔が、死人のようにこわばった。

「こ、これ……は……!!」
「ほほほほほ……ほほほほほほほほほ……ほほほ……ほほほほほほほほほ……!!」
哄笑が閨中に響きわたる。
その笑い声を聞きながら、正臣はまさしく奈落に堕ちた気分を味わっていた。

彼の目に映る手足は、異様にか細かった。あたかも、幼い少年のように……。
手足だけではなかった。彼の身体からは、分厚い胸板も、岩肌のような腹筋も、
太い筋肉をまとった首も、消え失せていた。
胸板は僅かにあばらの影さえ浮き出るほど薄かった。
腰回りと首は、少女のように細く、華奢だった。
正臣の肉体は、逞しさを微塵も感じさせない、まるで小姓や稚児の様な、いや、もはや
愛玩動物のような身体になり果てていた。
そして……その見た目以上に、無惨なまでに彼の筋力は奪い去られていた。
もはや、満足にその身を支えることも叶わぬ程に……

「ああ……あ、う、あ、あ……!」
「ほほほほほほほほほ……どうじゃ、新しい身体は……?なかなか良いであろ……?」
驚愕のあまりに我が身を見つめたまま凍り付いた正臣に、蜜姫が嬌笑を浴びせる。
そして、
「ほほ……ほんに愛い姿じゃ……どれ、妾が愛でてやろうぞ……。」
淫らな笑みを向けながら、正臣にいざり寄ってきた!
「ひっ……!」
逞しさの抜け落ちたあどけない顔に恐怖の表情を浮かべて、正臣は後ずさる。
「くふふ……なぜ逃げやる……?愛でてやろうと言うに……。」
「う、うぁああああ!!」
正臣はたまらず、這いずって逃げ出した。だが……。
身体が重い。今の彼の筋力では、四つん這いさえも困難だった。
「う……ふ、うう……くっ……!」
のた、のた、と這いずる様は、あたかも亀か山椒魚の様だった。

無様に這い回る正臣の背中に、蜜姫の声が浴びせられる。
「ほほほほほ……ほれ、ほうれ、早う逃げねば捕らえてしまうぞえ……!」
「……う、ぐぅ……っ!あ、くっ……ふ、うう……!」
屈辱と絶望感が正臣の表情を崩した。泣きそうな顔になりながら、閨から這い出る。
そして、この部屋から逃れるべく、出口の襖へと必死に這い進む。
「ほれ、早う逃げや……そんなにゆっくりでは逃げられぬぞ……ほほほほほほほ!!」
正臣を嘲弄する蜜姫。余裕たっぷりに、正臣の後をゆっくりとついてくる。
その気になれば、彼女はいつでも正臣を捕らえられるのだ。それをわざと捕らえず、
正臣が必死に、そして無様に這いずるさまを見て楽しんでいるのだ。
「うう……う、ううう……!!」
出口の襖は、今の彼には果てしなく遠かった。
一間進むのにも、途方もなく時間と精神力を要した。
そして彼の背後には、邪悪な笑みを浮かべた魔性の美姫。
正臣を嬲るように、ゆっくり、ゆっくりと後を追ってくる。
「ほほ……ほれ、あと少しじゃ、そこから出れば助かるぞえ……ほほほほほ……!」

そして、果てしなく遠く、困難な旅路の末に、正臣はついに出口へと辿り着いた。
「う、う、うう……くっ、うう……!」
しかし、彼の表情には安堵の色はなかった。もう、今すぐにでも彼を襲うであろう運命を
いやと言うほど理解しているからだった。
「ほほほほほ……ようここまで来たのう……ほれ、もうすぐ出られるぞぇ……。」
彼の背後から、蜜姫がしなだれかかってくる。顔をすり寄せるようにしながら、甘く、
そして優しく囁く。
「う、ううううう……ふ、ぐぅっ……!」
ついに正臣の目から涙が溢れた。それは、逃れる術を持たぬまま嬲り殺しにされる獲物の
涙だった。顎をつたった熱い流れが畳にぽた、ぽた、と落ちる。
「ほれ、早う逃げや……早うせねば、狐の化け物にとって喰われてしまうぞぇ……。」
濃厚な伽羅の香りで正臣を抱き包みながら、蜜姫は顎で襖の取っ手を示した。
それは、この逃亡劇に幕を引けという命令に他ならなかった。
「うう……ううううう……!!」
顔を絶望に染め抜いて、正臣は命令に従った。か細い手を、取っ手に伸ばす……。
そして、襖を、この淫ら地獄からの出口を開く……。

「う、うう……ううう……!!」
正臣の喉から、新たな嗚咽が漏れた。
「ほほほほほ……どうしたのじゃ?早う開けや……。」
一層淫らな笑みを浮かべて、笑う蜜姫。
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、正臣は必死に襖を開けようと手に力を込めていた。
だが、目の前の襖はびくともしなかった。
蜜姫の白い手が、そのしなやかな指先が襖に軽く添えられている。
その繊手にはいささかも力がこもっていなかったが、たったそれだけの事で、今の正臣は
襖をほんの僅か開くことさえもできなかった。今の彼はまさしく無力そのものだった。


「うう……!う、う、うう……!!」
「ほほほ、逃げぬのか?ほれ、早くう逃ぎゃれ……それとも、逃げとうないのかぇ……?
 妾ともっとまぐわいたいのかぇ?ほほほ、そうか、もう妾から離れられぬか……。」
正臣を嘲弄する蜜姫。その言葉と、甘い伽羅の香りと、柔らかな女体の感触が正臣を
包み、屈辱感と無力感で浸していく……。

「ならば……ほほ、また抱いてやろうぞ……さあ、閨に戻りやれ……ほほほほほ!」
「ううっ、うあ、あああ、いや、いやあっ、やめてくれえっ!!」
泣き叫ぶ正臣をひょい、と抱き上げる蜜姫。襖の取っ手から手がもぎ放され、そして、
「ああ、あああ……!」
蜜姫は正臣を胸に抱いて閨へと戻る……必死にここまで這い進んできた努力も空しく、
正臣の視界の中で、出口の襖がみるみる遠ざかっていった。
そして、再び彼は蜜姫の閨へと連れ戻される……人外の快楽が渦巻く、妖姫の巣へと……

「!!!」
閨へと連れ戻された正臣を迎えたのは、一体の骸であった。
先程は蜜姫の背後に隠れていて見えなかったが、木乃伊の如く干からびた男の骸が、
夜具の向こうに横たわっていた。
「ほほほ……なんじゃ、そんなに己の昔の身体が恐いのかえ?」
「えっ……!!!」
笑う蜜姫、ますます顔をこわばらせる正臣。
「ほほほほほ……あれはの、そちの骸じゃ……そちの精を一滴残らず搾り取って、
 魂までも妾の胎内に吸い取ってやったのじゃ……今のそちの身体はの、妾が直々に
 産み落とした新しい身体じゃ。その身体にそちの魂を吹き込み、まぐわいができる身体
 にまで成長させてやったのじゃ……ほほほほほ……ほほほほほほほ……!!」
蜜姫はそう言うと、正臣の顔にふぅっ……と吐息を吹きかけた。
甘く薫る吐息の魔力か、ただでさえ無力な正臣の身体から、さらに力が抜けてしまう。
身体の自由が効かなくなった正臣を夜具の上に寝かせて、蜜姫は骸の上に屈み込んだ。

「くふふふふ……では、こちらの身体には新しい命を与えてやろうかの……。」
蜜姫は、骸の口に自らの乳房を含ませた。そして、乳房を搾るように揉み始める……。
「ん……。」
白い液体が、蜜姫の乳房から滴り始めた。妖姫の母乳が、骸の口の中に流し込まれる。
「んん……うぅんん……ん、ふぅんんん……。」
恍惚の表情で、乳房を搾る蜜姫。
プシャアァア……。
朱鷺色の乳首の先から迸る母乳。その魔の乳が、骸の身体に染み渡っていく……そして、
干からびていた骸が、徐々に膨らんできた……徐々に生前の姿を取り戻していく……
鍛え上げられた筋肉をまとった逞しい身体が復元され……

そして、いつしか骸は骸でなくなっていた。
正臣の姿をした「それ」は、自ら蜜姫の乳首を口に含み、赤子が母の乳を求めるように、
無心に妖姫の母乳を吸っていた。
「ああ……良いぞぇ……もっと、もっと吸ってたもれ……ああ、あああ……!」
乳を吸われる快感に妖しく身をくねらせながら、蜜姫は乳を与え続けた。
正臣は、悪夢を見ているかのような気持ちで目の前の光景を……自分の姿をしたものが、
蜜姫の乳を吸っているその光景を見ていた。まるで、自分が自分でなくなってしまった
かのような、そんな気分だった。

やがて……

ちゅぱ……と、「正臣」の唇が、蜜姫の乳首から離れた。
「ほほほ……これでよいわ。」
満足げに、蜜姫は「正臣」から離れる。同時に、「正臣」はゆっくりと身を起こし、
そして、主君に対してするように蜜姫に向かって正座し、頭を垂れた。
「……蜜姫様、どうぞご命令を……。」
「ふふ、今日からはそちが『片山正臣』じゃ。そちには、憲正と共に城に戻り、妾の為に
 よう働いてもらうとしよう。まずは、ふふ、憲正を出してたもれ。」
そう言って蜜姫は押し入れを顎で指し示す。「正臣」が押し入れを開けると、そこには
やはり干からびた男の骸が一体、しまい込まれていた。

「!……お、御館様……!!」
正臣の喉から、嗚咽に似た叫びが漏れる。その骸はもはや生前の姿を留めておらず、
実際には憲正かどうかは判別はつかなかったが、蜜姫の言葉や周囲の状況を考えれば、
あれが正臣の主君の無惨な成れの果てであることに、疑いを差し挟む余地はなかった。
蜜姫は、その骸に対しても「正臣」に対してしたように、乳を与える……
そして、それからしばらくの後には、生前の姿を取り戻した「憲正」が、蜜姫の足元に
恭しく跪いていた。一国の国主が、その奥方に平伏している……今や、崎山国の主は
赤城憲正ではなかった。蜜姫こそが、この国の女主人となっていたのだった。

「さて、妾から最初の命を申しつける。」
平伏する二人の傀儡を前に、蜜姫は小袖と打ち掛けを羽織り、軽く身を整えて、命じた。
その胸元には、正臣がぐったりとした様子で抱き抱えられている。
「城では、赤城の家臣共がそちらの帰りを心配して待っておる。城に戻り、安心させて
 やるがよい。これからは、皆で崎の国をよう支えて栄えさせてたもれ……。」
「ははっ。」
「それからのぅ……憲正が来ぬとなれば、奥の院は女しかおらぬようになる。
 昼間はともかく、夜は心細いでのう……赤城の家臣団から毎晩一人づつ、宿居に来る
 ように頼んでたもれ……夜はやはり、くふふ、男がおらねばのう……。」
「ははっ。」
にんまりと妖しい笑みを浮かべる蜜姫に、「正臣」と「憲正」は恭しく頭を下げる。
「ああっ……あああ……!」
蜜姫の胸に抱かれて、正臣が絶望的な悲鳴を上げる。
これから毎晩一人づつ、赤城の家臣が彼のように蜜姫の餌食となっていくのだ。
憲正と正臣が無事還ったとあれば、家臣達も蜜姫の「ささやかな願い」を叶えぬわけにも
いくまい。まさか、己の主君が傀儡となり果てていようなどと、目の前の二人の姿を見て
誰が思うだろうか。
蜜姫の邪悪な企みを阻止できるのは、それを知っている正臣のみだが、今の彼には、
もはや何をする力もなかった。彼は、自らの同僚が妖姫の餌食となって果てていくのを、
どうすることもできぬまま見ているしかないのだった。

「ほほほ……正臣や、どうしたのじゃ?何が恐いのじゃ……?」
蜜姫が、正臣の顔を覗き込む。艶やかな美貌が、妖しい笑みを浮かべた。
「案ずるでない、贄として飼うはそちだけじゃ……他の者は皆、主君と同じ所に送って
 くれようぞ……くふふ、ふふふふふ……ふふふふふふふふふ……!!」
「!!お、御館様は、御館様をどうしたのだ!!」
はっと我に返る正臣。そう、憲正の抜け殻は今目の前で蜜姫にかしづいているが、憲正の
魂はどこへ行ったのか……?正臣は精一杯の気力を込めて叫んだ。

「んふふふふ……御館様なら……ふふふ、ここじゃ。」
にんまりと笑みを浮かべて、蜜姫は己の下腹部を愛しげに撫でる。
「精も魂も残らず吸い取って、まだ妾の胎内に留めおいてあるのじゃ……妾の胎内は
 妖気と淫気の坩堝じゃ、その中で果てしなくよがり狂いながら、徐々にとろけて妾の
 滋養となっていくのじゃ……完全に溶けて跡形もなくなるまでに、まあ三日はかかろう
 かのう……その間、ずっとよがりっ放しのいきっ放しじゃ、幸せな最期であろ……?」
そう言って、蜜姫はにぃっ、と笑みを深くした。逆三日月に反り返った眼差しは、
端がつり上がった唇は、この上なく邪悪で淫らな、悪魔の笑みであった。


「ほほほ……では、行くがよい……、おお、そうじゃ。正臣や……。」
はた、と手を打って、傀儡の「正臣」に声をかける蜜姫。憲正に続いて寝室を出ようと
していた「正臣」が振り返る。
「は、何でありましょうか?」
「出がけにの、露葉らを呼んできてたもれ……。」
「は、かしこまってござる。」
「ああっ、ああ……や、やめ……ああ、やめて……た、助けて……!」
「正臣」は、正臣の哀願には応えず、一礼して部屋を出ていった。
「ほほほ……今宵は宴じゃ、皆で存分に楽しもうぞ……ほほほ……ほほほほほ……!!」
哄笑する蜜姫。今の正臣は、国や主君や同僚の心配をしている場合ではなかった。

やがて、コン、コン、と出口の襖を叩く音がした。そして間をおかず、コロコロ……と、
襖が開く。閨との間を隔てる屏風の向こうから、涼しげな声が聞こえた。
「蜜姫様……露葉以下、侍女一同参りましてございます。」
「ほほ……待ちかねたぞぇ……皆こちらに来りゃれ……。」
程なく、屏風の脇から露葉を先頭に、十人の侍女達が姿を現した。
「ああ……ううう……!」
すでに絶望と恐怖でぐしゃぐしゃになっている正臣の顔が、さらに大きく歪む。
侍女達の髪は蜜姫と同じ、輝く白銀の髪だった。彼女達の耳は、大きく尖った三角形の
耳だった。そして……彼女達は自らの帯に手をかける。
「ふふ……片山殿、美味しそうですわ……今宵は存分に味わわせて頂きますよ……。」
露葉の言葉と共に、侍女達の小袖が、下衣が、次々と緋毛氈の上に落ち、あたかも花畑の
ように色とりどりの色彩が閨を飾った。
その花畑の上に立つ侍女達……彼女達のお尻には、ゆらゆらと触手のように蠢く白銀の
尻尾が生えていた。露葉の尻尾は三本、他の侍女は一本ずつ、計十二本の尻尾が、正臣の
身体を狙って鎌首をもたげていた。

「う、うあ……ああ……!!」
これから自らの身がよってたかって貪り尽くされる、その恐怖におののく正臣。
必死にもがき、蜜姫の懐から逃れようとするが、今の彼の力は赤子のそれにも及ばぬもの
であった。蜜姫は彼を背後から軽く抱き抱えているだけだったが、たったそれだけの事で
正臣はほとんど身動きが取れないでいた。
「これで皆揃うたの……ふふ、では、もっと楽しめるようにしようかの……。」
そう言って、蜜姫は正臣の股間に手を伸ばす。菊座の後ろ、尾骨の辺りに指を添え……。

「ふんっ……!!」
軽い気合いの声と共に、蜜姫の指先から何か、熱いものが正臣の身体に打ち込まれた!
「ぎっ……!!」
のけぞる正臣。
打ち込まれた「何か」は、正臣の脊髄を貫いて全身に熱い波動を送り込んできた!
そして、正臣の身体に生じた熱が、脊髄を通って尾骨へと戻ってくる……!
「ああ、あああ……あああ、あああああ……!」
「くふふ、熱いであろ……?これは妾からそちへの贈り物じゃ……。
 妾と同じ、九本の尻尾を賜ろうぞ……くふふ……ふふふふふ……!」
正臣の耳元で、蜜姫が熱く囁く……そうしている間にも、正臣の尾骨にはじわじわと
熱が溜まっていく……どんどん、どんどん、熱が溜まり、そして……
「うあ、あああああああああっ!!」

どばあっ!!

正臣の尾骨の部分から、九本の尻尾が迸り出た!
それは、蜜姫達のようなふさふさの尻尾ではなく、無毛の肌色の尻尾だった。
長さは五尺ほど、太さは一寸強ほど、そして、先端は太く丸く、傘状にエラが張っている
……そう、それはただの尻尾ではなかった。
「んっふふふ……どうじゃ?嬉しいであろ?」
「あ、あ……ああ……ま、まさ……か……!」
「ほほほほほ……そのまさかじゃ、その尻尾はの、摩羅じゃ。
 これで、皆と存分に楽しめようて……ほほほほほ……ほほほほほほほ……!!」
正臣は今や、前に一本、後ろに九本、計十本の男根を持つ身体にされたのだった!

「さあ、宴の始まりじゃ。皆で存分に味わうがよい!!」
蜜姫の言葉を号令に、正臣の尻尾がにゅるるるる……と伸びる。
そして、侍女達の身体に絡み付く……!
「うふふ、いらっしゃいまし……とっても気持ちよくして差し上げますわ……。」
「ああ、私ももう我慢できませぬ……早く、早く来て……。」
侍女達も自らその尻尾を誘い、その身に絡ませる。
「うあ、あああ、ああああああっ!!ああっ、あっ、あがああああああっ!!」
蜜姫の腕の中で、正臣がびくん、びくん、と痙攣する。九本の尻尾、いや、男根が、
女の柔肌の感触を敏感に感じ取って、正臣の身体に容赦なく送り込んで来たのだ!
そして、侍女達は正臣の尻尾を股間へと導く。
九本の尻尾は、その持ち主の意志に関係無く、女達の体内へと先端を潜り込ませる!!

じゅぶっ、ずぼぼっ、ぬぷうっ、ずちゅるうぅっ、じゅぶるるる……!!
「ぐっ、ぐぇああああああああっ!!あぎっ、ぎいいっ、いぎぃああああああ!!!」
正臣の凄惨な絶叫が閨に響きわたる。九本の男根が次々と女の肉襞に呑み込まれる……
それも、この世のものとは思われぬ極上の名器の中に……その感触がもたらす快感は、
蜜姫に犯され尽くした正臣をもってしてなお、未知の快楽であった。それも道理、蜜姫と
同様の魔性の肉体をもつ女達九人と同時に交わっているのだ。
九倍に増幅された快感が、容赦なく正臣を貫いた。それは、もはや快楽とは呼べない程に
強烈で、暴力的な刺激だった。九本の尻尾の先端が侍女達の体内深く潜り込むその度に、
槍で串刺しにされたかのような、激痛に近い快感が正臣を貫いた。
「がぎああぁっ、あぎいいいっ、いがっ、がはっ、あぐぁはああああああああ!!!」

じゅぼっ、にゅぶっ、じゅぷっ、ぐちゅぐちゅっ、ぬりゅりゅりゅりゅ……!!
九本の男根は正臣の意志に反して、女達と進んで交わり、その妖しく蠢く肉襞一枚一枚の
感触を、熱く蕩けたぬるぬるの淫蜜の感触を、余すことなく正臣の身体に送り込む。
「はあ、あがあああ、ああっ、あはぁっ、ぎああああああああ!!」
正臣は情け容赦のない快楽責めに成す術もなく悶え狂った。
それ以外の何をする事も彼にはできなかった。全身をびくん、びくんと痙攣させ、半ば
白目をむいてのたうち回る。

「んふふ……どうじゃ……?新しい身体は、感度も良いであろ……?」
背後から正臣の耳元に口を寄せ、蜜姫が囁く。
「ああっ、があっ、あああ、あぎあああああああ……!」
もはや正臣には応える余裕もない。
「ほほほ……そうか、そんなに良いか……じゃが、それだけではないぞぇ……
 その身体はの、快感に対する耐性も高くなっているのじゃ……どうじゃ……それだけ
 気持ち良くなっても、いかぬであろ……?」
確かに蜜姫の言う通り、正臣は強烈な快楽によがり狂いながら、身体に射精の兆しを
感じてはいなかった。本来ならばいきっ放し、下手をすれば快楽のあまりに悶え死ぬ程の
刺激を受けてなお、正臣の男根は先端に透明な液を滲ませてひくひくとわななくのみで、
精の迸りはまだなかった。
「その身体は、もっともっと気持ち良くならねば、決していく事は無い……くふふ……
 分かるかえ……?もっともっと気持ち良うなれる、ということじゃ……ほほほほほ……
 さあ、宴はまだはじまったばかりじゃ、もっともっとよがり狂ってもらうぞぇ……!」
「あがあああっ、ああっ、ぎああああああああっ!!ああっ、あっ、あぐああああ!!」
蜜姫の甘い囁きに、正臣の悲鳴が重なった。


「うああああっ、あぐぁっ、あああ、ぎひぃああああああ!!」
蜜姫の懐の中で、激しく悶え狂い、のたうち回る正臣。
彼の全身を、まさしく地獄の快楽が責め苛んでいた。

正臣の尻尾は、一層激しく侍女達の肉襞の中へと潜り込む……そして、その柔らかく、
ぬるぬるの肉襞の感触を、余すことなく正臣の身体に送り込んで来る……!
じゅぶっじゅぶじゅぶっ、にゅるにゅるにゅるるるる、じゅぷっ、じゅぷぅっ!!
「ああっ、いい、正臣さまっ、いいっ、もっと、もっとぉっ!!」
「はあん、あん、あはぁああっ……おっきい、いい、とっても、ああ、いいのぉっ!!」
侍女達の嬌声が響きあう。彼女達は一様に歓喜の表情を浮かべ、正臣の尻尾を……
熱くたぎる男根の感触を楽しんでいた。そして、さらなる快楽を求めて、尻尾を太股に、
胸の間に挟み込み、身をくねらせてしごき始める……!!

「ぎあああああああああああああああっ、あああああああああああああああああっ!!」
ただでさえ地獄の快楽責めであるのに、その刺激がさらに倍加され、正臣は全身を限界
いっぱいにのけぞらせて絶叫した。九本の尻尾が、女達の太股の感触を、乳房の感触を、
快感に変えて正臣をよってたかって嬲り責める。

「ふふふ……正臣様、ようございますか……?」
よがり狂う正臣の目の前に、露葉の姿があった。彼女も全裸となって、しなやかで艶やか
な肢体を晒している。
「では……ふふ、私はこちらを……。」
涼しげな眼差しにほのかに淫らな期待の色を滲ませ、露葉は正臣の上に腰を下ろす……
最後の一本、彼の股間で限界一杯まで張りつめている男根の上に狙いを付けて、露葉の
肉の華がゆっくりと降下して来た。
「うぎぃっ、いあっ、あああああっ、いやっ、やああああっ!!」
必死にもがく正臣。彼が強制的に味わわされている快楽は既に人体が耐えきれる限界を
遥かに超えてしまっている。今の彼にとって、快楽は苦痛と同義であった。

だが、彼がどれほどもがこうとも、蜜姫の腕はびくともしなかった。
そして、露葉のぬれそぼった花びらが、正臣の先端に触れる……。
「いぎっ、ぎぃいいいいいいいいいっ!!あぎあぁあああああああああ!!」
断末魔のような正臣の絶叫が閨に響く。
「ふふふ……正臣様、謹んで、いただきますわ……。」
にゅる……にゅるる……ぬりゅぬりゅぬりゅ……。
ゆっくり、ゆっくりと露葉は正臣を呑み込んでいく……。
「ああっ、あああああっ、あああああひぃいいっ!!ひぎゃああああああああっ!!」
露葉の身体が沈み込むほどに、正臣の悲鳴が一層高く跳ね上がっていった。

ぐちゅっ、ぬちゅっ、じゅぽっ、じゅぽっ、ぐちゅぐちゅぐちゅぅっ!!
「ぎああっ、あぎあっ、あああああっ、がはっ、は、ああああああああああっ!!」
「ううん……ああ、いい……大きくて、固い……びくびく震えてる……ああ……!!
 正臣様ぁ……もっと、もっと味わわせてくださいませぇ……!!」
対面座位で正臣を貪る露葉。正臣は、圧倒的な快楽に呑み込まれて、半ば白目を剥いて
全身をがくがくと痙攣させている。

「ほほほほほ……もう気絶してしまいそうじゃのう……じゃが、そうはいかぬぞぇ……
 さあ、皆で正臣をさらなる高みへと引き込んでやりゃれ……!!」
蜜姫の声を合図に、侍女達の尻尾が蠢き出す。にゅるにゅると長く伸びて……
正臣の尻尾にくるくると巻き付き、さわさわとしごき始めた!!

「ああっ、があああああああああああああああああああああああっ!!!」
血を吐くような絶叫が閨の空気を振るわせる。
男根の尻尾にふさふさの尻尾を巻き付けられ、その柔らかな毛先でしゃわしゃわと、
くしゅくしゅとくすぐりしごかれる……!!
長い長い尻尾はそれ全体が男根同様の性感帯となっていた。
九本の尻尾は柔らかな毛の感触を敏感に感じとり、その何百万本、何千万本もの毛先が
もたらす快感を余すことなく正臣の身体に送り込んできた!!
「がはあああっ、ああああああぎぎひいぃいいいいい!!」
正臣は目をかっと見開いたまま、ぼろぼろと涙をこぼす。
「ほほほ……では妾も……。」
その言葉を合図に、正臣の全身に再度、蜜姫の尻尾が絡み付いてくる!!
そして、全身を余すことなく尻尾でくるみ込み、首筋も、脇腹も、乳首も、股間も、
ありとあらゆる性感帯をさわさわとくすぐり責めてきた!!

「ぎひぃいいいいいいいい!!いぎゃぁっ、あぎゃはあああああああああ!!」
蜜姫の懐に抱かれたまま、正臣はびくびくと全身をわななせて悶え狂った。
しかも、彼の身体を、尻尾を包み込む尻尾の感触は、ただ単に新たな快楽をもたらした
だけではなかった。その毛先が彼をくすぐる度に、その刺激が全身を駆けめぐる度に、
正臣の神経が活性化され、意識が覚醒させられていく……快楽のあまりに失神しかけて
いた状態から引き戻され、そして意識がはっきりとした状態で、更なる快楽を無理矢理
味わわされる……気絶することも許されぬまま、どこまでもよがり狂わされる!!
正臣は、この快楽地獄から逃れる術もなく、ただただ喘ぎ鳴くほかなかった。

「いぎゃあああっ、あああ、あぎひいいいいいいい!!いいっ、いあああああああ!!」
「ほほほほほ……良い声じゃ……もっとじゃ、もっと鳴きゃれ……ほほほほほ……!!」
 露葉が鳴かせてくれようほどにのぅ……さあ、露葉も……くふふふふ……。」
蜜姫がにんまりと笑みを浮かべ、そして露葉に目配せする。
「はい、では……くふふ、正臣様……。思いっきり鳴いてくださいましね……!!」
露葉の涼しげな顔に、妖しい笑みが浮かぶ。もとより冷涼とした雰囲気を醸し出す
その美貌に浮かんだその表情は、残忍ささえも感じさせるものであった。

「では……行きますわ……正臣様、お覚悟を……!!」
その言葉と共に、

ずぼぼぼぼぼぉっ!!
「ぎゃああああああああああああああああっ!!」
正臣の身体を露葉の尻尾が貫いた。彼の肛門を、腸内の粘膜を、露葉の尻尾の毛先が
ぞわぞわとこすり上げ、くすぐりたてる!!どこまでも、奥へ、奥へ……遠慮呵責なく
体内へと侵入してくる!!
「あぎいいいいいいいい!!いいっ、ぎひぃぃっ、いぎいいいいいいいいい!!」
限界一杯までのけぞる正臣。腸内の襞一枚一枚をこすり上げながら、露葉の尻尾が彼を
串刺しにしていく……!!
「うふふふふ……いかが?気持ちようございましょう……?」
「ああっ、ああっ、あぎあああああああ!!いやっ、やっ、ああああああああああ!!」
腸内をごしゅごしゅとしごく露葉の尻尾。

「ああっ、いやっ、あぎあああああああっ!!あひぃっ、やめっ、やめてぇえええ!!」
正臣は身も世もなく泣き叫んで悶え狂った。
九本の尻尾を侍女達の乳房に、太股に、ふさふさの尻尾にしごき抜かれ、
さらにその先端をぬるぬるの肉襞でむっちりと挟み込まれて、その快楽を一つの身体に
無理矢理ねじ込まれる……その上彼の本来の男根も露葉の蜜壷に根本まで押し包まれて、
容赦なく貪られる……そのあげくに全身を蜜姫の尻尾にくすぐり嬲られ、露葉の尻尾に
串刺しにされて身体の外側も内側もくまなくねぶり犯される……!!
十一人の妖狐の人外の性戯の前に、正臣は全く成す術を持たなかった。


「ぎああああっ、ああっ、あがあああ、やめぇええっ!!えあっ、あげえぇえええ!!」
人智を超えた魔性の女達に十一人掛かりでよってたかって貪り喰われる正臣。
既に、彼の男根も、そして九本の尻尾も、限界一杯まで張りつめ、そしてひくひくと
痙攣を繰り返している。蜜姫に与えられた新しい身体の、その限界が近づいているのだ。

「ほほほ……そろそろ逝かせてやろうかのう……?正臣や、その身体はいく時の快感も
 また格別じゃぞぇ……十本の摩羅で、存分にいくがよいわ……ほほほほほ……!!」
蜜姫の言葉を合図に、侍女達の愛撫が激しくなる……そして、正臣の尻尾もそれに応える
様にじゅぽじゅぽと激しい出し入れを繰り返す!!
「いぎゃあぁあああああああっ!!やっ、やめてくれぇええっ、ぎぃあああああ!!!」
泣き叫ぶ正臣。だが、彼の身体の一部であるはずの尻尾は、彼の意志を無視してさらに
激しく侍女達の体内へと潜り込み、蠢く肉襞と協力しあうように激しくこすりあい、その
感触を余すことなく正臣の身体に送り込んでくる!!
「うぎぃいいいいいいっ、いいいいいっ、いぎぃあああああああああっ!!」
正臣は無理矢理に体内にねじ込まれる快楽の嵐に、全身をこわばらせて悶え狂った。
彼の男根は、びくん、びくん、と激しくわなないている。前に一本、後ろに九本、
あわせて十本の男根が、全て射精寸前の快楽にのたうち回っている……!

「ほほほほほ……もう限界のようじゃのう……さあ、我慢することなど無い、たっぷりと
 十本の摩羅から精を放ちやれ……もっとも、我慢などできまいがのう……ふふふ……
 ……さあ、皆で快楽の極みに引きずり込んでやりゃれ……ほほほほほほほほ!!!」
「ああんっ、正臣様っ、早く、早く注いでくださいませ、熱い精を……!!」
「はあん、あん、あはあぁあああああん……正臣様ぁ……早く来てぇ……!!」
蜜姫の囁きが、侍女達の嬌声が、正臣の鼓膜を揺する。
「ふふふ……正臣様……では……私が最後のとどめを刺して差し上げますわ……
 何も考えないで、いっぱい出して下さいましね……くふふ、ふふふふふ……!!」
正臣を見下ろしながら、露葉が宣告する。そして、彼女は身体を一層激しくくねらせ、
その体内に潜む花びらの群れを妖しく蠢かせて正臣を貪った!!

ぐじゅ、じゅぶっ、にゅるにゅるにゅる……ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅるるるうっ!!
「ぎいああああああああっ、あぎああああああああ!!ひぎぃいいいいいい!!」
よがり狂い、悶絶し、泣き叫ぶ正臣。彼の身体は限界ぎりぎりまで追いつめられている。
もっとも、彼の精神はとうの昔に限界を超えてしまっている。彼が味わわされているのは
人間には耐えられない、この世では絶対に味わえない地獄の快楽なのだ。
「ふふふふふ……いい顔ですわ……もっといい顔になって、いって下さいませ……!!」
その声と共に、

ぞぼぞぼぞぼぞぼぞぼぞぼ……ずぶずぶずぶずぶずぶ……!!
「ぎひいいいいいいああああああああっ、ああああああああああああああっ!!」
露葉の尻尾が、正臣の腸の中を暴れ回る!!激しい出し入れを繰り返してこすり上げ、
正臣の腸の肉襞一枚一枚を容赦なくくすぐり撫で回す!!
「あぎいいあああああああああああああああっ!!ああっ、あああああああああっ!!」
「んふふふふ……さあ、出しておしまいなさい……ほら、ほらぁっ……!!」
ずぞぞぞぞぞぞぞぞ……ぞずぼぼぼぼぼぼぼ……ずぼずぼずぼずぼずぼ……!!
身体の中を快楽でえぐられていく正臣。限界を超えた刺激に、男根が膨れ上がり……
「ぎいああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
どぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶりゅぶりゅぶりゅりゅりゅうっ!!!
十本の男根が激しくわなないて一斉に白濁液を迸らせた。

「ああっ、ああがあああああああああああっ!!!」
十本の男根による射精は、正臣に一層強烈な快楽の刺激を味あわせた。
「うふふふふ……いかが?とっても気持ちよかったでございましょう……?」
悶絶する正臣を見下ろして妖しく笑う露葉。
「でも……私の尻尾は、あと二本もございますのよ……くふふ、ふふふふふ……!!」
徐々にその美貌に残忍な笑みを色濃くして、露葉が笑う。
その背後で、残り二本の尻尾が大蛇のように鎌首をもたげる……!
「うああっ、あああああっ、ああああああ……や、やめっ……!!」
射精の余韻に悶え狂いながら、必死に逃れようともがく正臣。だが……

どすうううっ、ぞぼぼぼぼぼぼぼぼぉっ!!!
「ぎがああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
正臣の肛門に、さらにもう一本の尻尾が突き刺さる。すでに限界まで拡げられている肛門
が、さらに裂けんばかりに押し拡げられる。そして、拡げられた肛門の皺を尻尾の毛先が
無慈悲に、容赦なくくすぐり犯す!!その奥の腸は二本の尻尾を無理矢理ねじ込まれ、
内部の粘膜の襞をごしゅごしゅとこすられ、その人外の快楽に悲鳴を上げる!!

「う、ぎいぃいいいああああああああああっ!!!あああああああああああああ!!!」
どびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるるるるるるるるるぅううううううううっ!!!
射精の余韻も醒めやらない状態で、もう一度強烈な射精を強制される正臣。

「んっふふふふふふふ……さあ、もう一本いきますわよ……くふふふふふふ……!!」
「いやあっ、やめてぇっ、あああっ、おねがいっ、いああああああっ!!」
露葉の無慈悲な宣告に、泣き叫んで許しを乞う正臣。武士の誇りも、男の誇りも失って、
涙をぼろぼろとこぼしながら、目の前の妖女に懇願する。
……だが、その懇願も露葉の淫虐心をくすぐっただけだった。
正臣を見下ろす露葉の顔が、一層淫らな、残酷な色に染まる。
「くふふふふ……いい顔です事……。
 私は、男の方のそういう顔を見るのが大好きですのよ……うふふふふふふ……!!
 さあ、お覚悟なさいませ……ふふふ、ふふふふふ……ほほほほほほほほ……!!!」

ぞぼおおおっ!ずぶじゅるじゅるるるるうっ……ずぶぶぼぼぼぼぼぼぼぼ……!!
三本目の尻尾が容赦なく突きいれられる。正臣の体内は露葉の尻尾でみっしり充たされ、
その三本の尻尾がびちびちと彼の中で暴れ回り、ぐしゅぐしゅとくすぐり回した!!
「ひぎいああああああああああああああああああ!!あぎあああああああああああ!!」
どびゅるるるるぅうううううう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!

正臣の十本の男根が三度精を噴き上げる。そして、その射精は止まらなかった。

びゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるるううううううう……!!!

「はぎいいあああああああああっ、ああああああああああああっ、ああああああ!!!」
十本の男根がびくんびくんと暴れ狂いながら、大量の精を吐きだし続ける。
人外の快楽によがり狂いながら、正臣は己の生命力が恐ろしい勢いで搾り取られていく
のを感じた。感じながら、しかし彼にはどうすることもできなかった。
際限なく逝かされ続ける正臣の耳元に、蜜姫がそっと唇を寄せる。
「ほほほ……どうじゃ、たまらぬであろ……もう死にそうであろ……?んふふ、そちは
 これから先、ひとときも休むことなくこの世とあの世の間をさまよい続けるのじゃ……
 いくらでもよがりやれ、いくらでもいきゃれ、そしていくらでも精を放ちやれ……!
 その末に命尽き果てたならば、また産んでやるほどに、のう……ほほほほほ!!」
蜜姫の悪夢のような囁きを聞きながら、正臣は白い闇に落ちていった。


「う……。」
正臣の意識が戻ってくる。
崎山国に巣くう妖女達によってたかって犯され尽くして、一度ならず二度までも精を
吸い尽くされて命尽き果て……しかし、彼の地獄は終わらない。
そう、彼の本当の地獄はまだこれから始まったばかりなのであった。

「くふふ……正臣や、どうやら目が覚めたようじゃのう……。」
「うふふふふ……また、おいしい精をたっぷりと頂きますわ……。」
「ああ……私、もう我慢できませぬ……早く下さいませぇ、正臣様ぁ……。」
正臣の視界には、蜜姫の、そして露葉と侍女達の欲望に満ち満ちた妖しい笑顔があった。

「う……うぁ……ああ……!」
正臣の表情が、全てを物語っていた。
彼はこれからまた、目の前の妖女達の淫欲の贄となるのだ。そして、彼女達が容赦なく
与える快楽に成す術もなくよがり狂い、よってたかって精を搾り取られ、その果てに
悶え死ぬのだ。そしてまた新たな生命を与えられ、また一から犯されて……。
それは、まさに無限地獄であった。果てしのない、終わりのない、淫欲と快楽の宴……。
もはや、正臣にはこの淫ら地獄から逃れる術はなかった。耐える術もなかった。
どうすることもできないまま、際限なく餌食となり、永遠に貪られ続けるしかないのだ。

「くふふ……待ちや、これからもっと面白うしてやるでのぅ……ふふふふふ……。」
そう言って、蜜姫は軽くいきむように下腹部に力を込めた。
すると……

ず、ずにゅる、ぬりゅるるるぅ……!
蜜姫の女陰が大きく口を開き、何かを吐き出す……!
「ん……ううぅん……んんんんん……!」
蜜姫のいきむ声と共に、鶏卵大の肉塊が股間から出てきた。一つ……二つ……三つ……
見る見るうちに、九個の肉塊が産み出された。
産み落とされた肉塊は、すぐにむくむくと膨らみ始めた。膨らみながら、徐々に人の形に
なっていく……そして……。

ほどなく、それは九体の男の姿になった。そう、それは九人の正臣だった。
「ほほほ……これはの、そちの分身じゃ……。」
正臣の分身達が一人、また一人と目を覚ます。そこへ、九人の侍女達が群がって行った。
「ああ……正臣様ぁ……早く私の中へお入り下さいませぇ……ああん……!」
「ほら、私、もうこんなになってしまって……もうぐしょぐしょですわぁ……!」
「うわ、あああっ!なっ、やめてぇっ!!うああああああああっ!!」
侍女達は、期待と欲望に満ちた表情で正臣の分身達に襲いかかった。
九人の正臣は逃げようとしてもがく。が、あえなく次々と捕らえられ、魔性の女体に
抱き包まれて閨の上に組み伏せられて行った。
「ううっ、あああああっ、あはぁああああああ!!」
閨を狭しと乱れ絡む男女の群れの中、ひときわ悲痛な悲鳴が上がった。
「ほほほほほ……どうじゃ……?たまらぬであろ……?」
楽しそうに笑う蜜姫。その傍らに、がくがくと全身をわななかせて喘ぎ泣く正臣の姿が
あった。蜜姫と露葉に左右から挟み込まれるように抱きしめられている。
彼こそが本体の正臣であった。彼の尻の後ろから生えている九本の尻尾がその何よりの
証だった。
そして、彼の全身を、身を焼き尽くさんばかりの快楽の刺激が駆けめぐっていた。

背中を、脇腹を、這う何本、何十本もの女の指先、首筋に、唇に、両の乳首に吸い付く
唇、全身を舐め回す何枚もの女の舌。絡み付く太股の感触は、あるものは腰を挟み込み、
あるものは脚にまとわりつき、あるものは顔をむっちりと挟み込む……。
そう、それは九人の侍女達の女体の感触だった。正臣の分身達が味わっている感覚の、
その全てを彼は一身に味わわされているのだ。
「ああっ、ああああああ、あふぁあああああああ……!うぁ、あひあああああああ!!」
「ほほほほほほほほほ……まだじゃ……もっと鳴きゃれ……!」
「うふふふふ……正臣様ぁ、では頂きますわ……んふふふふふ……!」
「ああん……さあ、いらして下さいませぇ……ああっ、あはぁああああ……!!」
じゅぷっ……!ずちゅるぅ……!ずぷずぷずぷ……じゅぶうっ……!!
「いああっ、あああああっ!!あぎぃいいっ、いひぃああああああ!!」
分身の男根が、一本、また一本、侍女達の蜜壷に捉えられていく。
その度に、正臣の悲鳴が高く、大きく、凄惨なものへと変わっていく。彼の男根は、
九つの肉洞の中に呑み込まれ、無数の肉襞に舐めしごかれる感触を味わっていた。

ぐちゅ……ぬりゅりゅりゅりゅ……くちゅっ、くちゅくちゅっ、ぬちゃあぁあっ!!
「ぎああああああああああああああああっ!!あああ、あああああああああああっ!!」
「ほほほほほ……もう、極楽であろ?妾が、更なる快楽の極みへといざのうてやろう……
 くふふ、ふふふふふ……さあ、妾の中で悶え狂いやれ……!!」
蜜姫と露葉は正臣を上下に挟み込むように体位を変えた。露葉が正臣の下になって、
正臣を背後から抱きしめるようにして仰向かせる。その上に蜜姫が馬乗りになる。
そして、ひくひくとわななく男根に狙いをつけて、ゆっくりと腰を下ろしていった。
逃れようともがく正臣。しかし、露葉は正臣をしっかりと抱きしめて放さない。
「うああっ、やめっ、やめてっ、ああ、たすけてえぇええええ!!」
「うふふ……逃げなくとも良いではないですか……蜜姫様のご寵愛を、
 たんとお受けなさいませ……んふふふふ……ふふふふふふふふふ……!!」
「ほほほほほ……ほうれ、もう入ってしまうぞぇ……入ったが最後、ほほほ、生きては
 出られぬぞぇ……さぁ……来やれ……底なしの淫楽地獄に……!!」
ずちゅっ……!「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
股間を捉えた異様な感触に、大きくのけぞる正臣。
「ほほほほほ……妾の中は心地良かろう……?だが、まだじゃ……ほぅれ……!!」
しゅるっ、しゅるるるるるるるる……!
「がはぁああっ、あぎああああああああああああああああああああああああああ!!!」
正臣の尻尾に、蜜姫の尻尾がくるくると巻き付く!九本の尻尾全てが、根本から先端まで
ふさふさの尻尾の柔らかな毛先の感触にみっしりと包み込まれた!!
同時に、露葉の尻尾が正臣の身体にしゅるしゅると絡み付く!三本のうち二本が螺旋状に
正臣の身体を巻き取り、その先端で乳首をくしゅくしゅとくすぐりたてる!!
そして、最後の一本が正臣の肛門を貫いた!!

「うぎいぃひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
正臣は、殺人的な快感に悶絶した。彼の男根は侍女達の九つの蜜壷の感触を味わわされ
ながら、蜜姫の蜜壷に根本まで呑み込まれ、容赦なく貪り喰われている。
そして彼の身体は内外ともに露葉の尻尾に攻め抜かれ、彼の尻尾は蜜姫の尻尾に
絡め取られてふさふさの毛先で撫でくすぐられている。
異次元の快楽に、彼の十本の男根がびくんびくんとのたうつ……快楽への屈服の証を、
精を迸らせようとわなないている……!
そんな正臣を見下ろして、蜜姫は言った。
「くふふ、たまらぬであろ?だがのぅ……まだこれで終わりではないぞぇ……!!」
そして。

ぷちゅっ……!
「いああっ、あああああっ!ああっ、ああっ、あああああっ!!!」
新たな刺激が正臣を襲った。彼の尻尾の一本から、異様な感触が伝わって来る!
異物が侵入してくる感触……尻尾を、男根を貫かれる感触!
そう、彼の尻尾の尿道に、蜜姫の尻尾の先端が挿し込まれたのだ!!
「くふふふふ……良いであろ……?では、もっともっと挿してやろうぞ……!」
「ああっ、やめっ、やっ……!」
ぷちゅっ!つぷうっ、ちゅぷうっ!!くちゅっ、ぷつっ、つぷうぅっ!!
「ぎいいいいああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!」
次々と串刺しにされていく尻尾。敏感な尿道をふさふさの毛の群れが遡り、深く深く
貫いて内側の粘膜をくすぐり犯す!!
「ぎゃあああああああああ!!あああああああああ!!ぐぎがあああああああ!!!」
どぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶどぶうううううううううっ!!!
限界を遥かに超えた刺激に、正臣の尿道を精が走る。尻尾の尿道を塞がれたため、唯一
残った男根の尿道を、膨大な量の精液が一気に迸った。


「あがぎあああああぁぁあああああぁぁあああああああああああああ!!!」
ぶびゅるるるるるるるるるっ、びゅびゅびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるうううっ!!!
悶え狂いながら、激しく精を放つ正臣。十本の男根の精を、一本の男根で無理矢理に放出
させられる。十倍の量の精が、尿道を限界まで押し拡げて迸る、その感触さえもが強烈な
快感であり、責め苦であった。

「ほほほほほ……そうじゃ……もっとたっぷり出してたもれ……くふふ、ふふふふふ……
 おお、美味じゃ……そちの精は、ほんにいくら味わっても飽きることがないのぅ……
 さあ……もっと吸わせてたもれ、一滴残らず搾り取ってくれよう……ほほほほほ!!」
正臣の上で、妖姫の裸体が、そして尻尾が妖しくくねる。

ぬりゅぬりゅぬりゅるりゅりゅ……くちゃ、ぬちゃ、じゅぷじゅぷじゅぷぅっ!!
「いぎひぃいいいいぃぃぃいいいいいぃぃぃいいいいいっ!!!」
びゅびゅっ、どびゅぶぴゅぶりゅりゅりゅびゅるるるるぅぅ……っ!!
「ほほほ……露葉や、正臣はもっとして欲しいそうじゃ、たんと可愛がってやりゃれ。」
「ああっ、そんなっ、あぎひぃいいいいいいいいいいいぃぃいいいいいいいっ!!!」
さわさわさわ……くしゅくしゅくしゅ……ぞぼぞぼぞぼぞぼぞぼぉっ……!!
正臣の全身に絡み付いた露葉の尻尾が、一層激しく妖しく蠢いて、正臣をくすぐり嬲る。
そして、肛門を深々と貫いた尻尾が、左右に捻りながら出し入れを繰り返し、腸の内側に
くまなく柔らかな毛先の感触を刻み込む!

「あがはぁあああああああっ、はぎぃあああああああああああああああっ!!!」
どびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるるるるぅぅっ!!!
「ふふふふふ……正臣様、そんなに良いのですか……?嬉しいですわ……。」
悶絶する正臣の耳元で、露葉が甘く囁く。
「では、皆にも同じ事をさせましょう……ふふふ、皆も正臣様を貫いて差し上げて……」
「はい、露葉様……では……んふふふふ……!」
ぞぼっ、ぞぼぼぉっ、ぼぞぞぞぞぞぞぞぞおおっ……!
「がはああああああああぁぁぁぁぁあああああっ!!」
侍女達の尻尾が一本、また一本と正臣の分身を串刺しにしていく。体内を犯される感触に
悶絶する分身達。むろん、その快楽の全てを本体の正臣は共有している。
女達の下でのたうち回る分身達の中で、正臣はひときわ激しく悶え狂った。
「ほほほ、では妾はこちらを同じようにしてやろう……くふふふふ……!」

ぞわぞわぞわぞわぞわ、ぞぼぼぼぼぼぼぼぼっ……!!
「ぎぎぎぎぎぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
正臣の尻尾に巻き付き、先端を尿道に差し込んでいた蜜姫の尻尾が、外側を激しくしごき
ながら、尿道のさらに奥深くまで侵入してきた!!
そして、敏感な尿道の粘膜を、ごしゅごしゅと内側からもしごき上げる!!
「あああっ、あがはああっ、いぎいぃいいいいいっ!!いっいっ、いひゃああああ!!」
びゅぶびゅぶびゅばびゅぶぶりゅりゅりゅりゅううううううっ!!

どこまでも、どこまでも正臣はいかされ続けた。いって、いって、それでも快楽は尽きる
事がなかった。それどころか、いってもいっても、快楽は際限なく高まり続けた。
快楽の底なし沼へと、正臣はどこまでも深く、深く引きずり込まれていった……。



半年後……

崎山国の赤城氏が突如、隣国への侵攻を開始。国境を接する黒部、橘、高桑を手始めに、
次々と各国大名に戦を仕掛け、そして次々とこれを打ち破っていった。

赤城氏の軍勢は、いつの間にか恐ろしく強大で、恐ろしく精強な軍団と化していた。
数カ月前までは倍の兵力を有していたはずの黒部氏は、さらに倍の軍勢に包囲され、僅か
一夜にして全滅した。
橘氏は、自慢の騎馬隊をもって突撃したが、彼らは兵力ほぼ同数の赤城の足軽隊の前に、
理不尽なまでに一方的な敗退を喫した。両軍がぶつかり合ったその刹那に、橘の騎馬隊は
溶岩に浴びせた水の如くに弾け飛び、霧散した。
高桑氏は策をめぐらせ、鉄砲隊の目の前に赤城勢をおびき出すことに成功。
鉄砲千丁と、援護の弓隊五千とで鉛玉と弓矢の雨あられを浴びせた。が、赤城勢はそれを
ものともせず真っ向から全軍突撃。高桑勢は一瞬にして踏み潰された。

赤城氏の勢力拡大に伴って、大名達の間に不穏な噂が広まっていった。
曰く、赤城の兵は死人の兵だと。
曰く、彼らは斬られても槍で突かれても、鉄砲で撃たれても倒れぬと。
曰く、槍ぶすまに串刺しになった兵がそのまま、槍を持つ足軽達を斬り伏せたと。
曰く、首を落とされた兵がなおも戦い、敵兵五十人を道連れにしたと。
曰く、討たれたはずの武将が次の戦場で何事もなかったように戦っていたと。
曰く、赤城の兵は兵糧を食わぬ、曰く、赤城の兵は眠ることもない、曰く、曰く……

それらは、初めはただの噂だと思われていた。赤城の快進撃に、尾鰭がついて伝わった
ものだと……赤城と戦火を交えて初めて、彼らは真実を知るのだった。
眼前の地獄絵図に、敵軍は恐れをなして潰走し、逃げ遅れた者はことごとく赤城勢の中に
呑み込まれて血の海に沈んでいった。

赤城憲正は一年後には畿内全域を制圧した。それからわずか三年で西は長州、土佐まで、
東は武蔵までを支配下に従えた。そして、足利将軍家を京から追放、朝廷の勅命を受けて
征夷大将軍となり、ここに赤城幕府が成立したのだった。

その頃になると、もう憲正に表立って敵対する大名はいなかった。
しかし、赤城に臣従した大名も、安泰ではいられなかった。憲正は、傘下に下った大名と
その家臣を蜜姫御殿に招いた。女達の歓待を受け、一夜を過ごして御殿を出たときには、
彼らは既に人ではなくなっていた。

赤城憲正が天下統一を果たしたのはその一年後だった。
日の本の民は、それとは知らぬうちに人外の者達の支配下に堕ちたのであった。

天下統一を成し遂げた憲正は、崎山に新たな都を造った。
その中心にそびえる新崎山城の一角に、広大な、そして豪華絢爛たる装飾を施した屋敷が
建てられた。そこには、各国の諸大名からその奥方や寵姫、腰元など、見目麗しい女達が
召し上げられ、住まわされていた。
そう、大奥である。住まわされている女達の数は、実に千二百名を数えた。
いずれも、若く美しい女ばかりであった。
ただし、この女達は将軍の胤を授かるために召し上げられたのではなかった。


「あああ、あはぁああああああ……!ああん、ああっ、あひぁああああああ……!!」
豪奢な閨の中で、若い女が悶え狂っていた。全裸であった。その身体に、ふさふさの尻尾
が絡み付いている。そして、彼女の全身をさわさわと執拗に愛撫していた。
「ああっ、あああああっ、あふぁあああああっ!!あはぁああ、ああああああああ!!」
「ほほほ……かような快楽は初めてであろ……?ほほほ、人として味わう最初で最後の
 快楽じゃ、よう味わいや……ほほほほほ……ほほほほほほほ……!!」
女の腹の上に、もう一人の女が馬乗りになっていた。蜜姫であった。
白銀の髪を揺らめかせ、淫猥な笑みをたたえて女を見下ろす。蜜姫の尻尾の一本は女の
体内に侵入し、内側の粘膜を、襞の一枚一枚を丹念にくすぐり犯していた。
さらにもう一本はその下の肛門から侵入し、ぞぼぞぼと出し入れを繰り返している。

その尻尾の動きが、だんだん激しくなっていった。
「ぎひいぃいい……いぎゃぁああああっ!!ああ、ああ、あはぁああああああっ!!」
女は引き絞られた弓のように反り返って悶絶した。
性器を、肛門を、全身を、蜜姫の尻尾が嬲り犯すその度に、女は全身を振るわせて快楽の
極みに達した。達して、なお一層高まる超常の快楽に再び悶え狂う。
その女の唇に、蜜姫のそれが重なった。女の悲鳴をその唇で吸い取り、そして……
「……!!!!!……!!!!!!!……!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
最期の絶叫と共に、何かが蜜姫の口の中に吸い取られた。すると、女は何かがぷつりと
切れたかのようにぐったりとなった。

ぷ、ふぅうううううぅぅぅ……。
蜜姫は唇を合わせたまま、今度は女の中に何かを吹き込む。
その『何か』が体内に送り込まれると、女はまるで眠りから覚めたかの様に目を開けた。

「くふふふふ……どうじゃ、気分は……?妖しの身も、悪くはあるまい……?」
身を起こした女に蜜姫が問いかけると、女は妖しくも美しい笑みを浮かべて応えた。
「ありがとうございます、蜜姫様……ああ……もう身体が疼いてしまいます……。」
切なげに眉を寄せながら、女は期待を込めた笑みを蜜姫に送る。
「ほほほ……気の早い事じゃ……良い良い、今産んでやろうぞ……。」
そう言って、蜜姫は股を開いた。
そして……

「うああっ、やめてっ、やめてぇえええええ……っ!!」
「んふふふふふ……逃げてはなりませぬ……蜜姫様より直々に授かった可愛いわこ様……
 もう放しませぬ……これから私が、昼も夜も可愛がって差し上げましょうぞ……。」
新たに産み出された正臣の分身に襲いかかる女。既に、女の肌は生白くぬめり、
髪は白銀に輝き、妖気を漂わせる女体の背後には、白い尻尾がゆらゆらと蠢いていた。

「うああっ、ああ、あひぁあああああああっ!!あっ、あっ、あはぁああああああ!!」
「ああ……美味しい……もっと下さいませぇ……ああっ、あはあぁあああん……!!」
早くも正臣の男根を呑み込み、激しく身をくねらせて貪る女。その下で、正臣が全身を
びくんびくんと振るわせてよがり狂う。
結合した器官も、女のそれはやわやわと妖しく、いやらしく蠢き、正臣のそれはびくびく
とわなないて人外の快楽に悶えていた。
「ほほほほほ……よう可愛がってやりゃれ……では、妾も楽しむとしようかの……。」
絡み合う二つの身体に妖しい笑みを送って、蜜姫は部屋を後にした。

「あはぁああああっ、あああああっ、ひいぃいいいいいいい……!!」
「くふふ、うふふふふ……ふふふふふふふ……ああ……あああああぁ……!!」
「ぎひいいいっ、いっ、いぎゃああああああああああっ!!あああああああああっ!!」
「ああん……はあ、ああ……もっと、ああ、もっとぉおお……あああああ……!!」
大奥の廊下を挟んで並ぶ、部屋のそこここから漏れ聞こえてくる声、声、声……
その中を蜜姫は満足気な笑みを浮かべてゆっくりと歩いていく。

そう、この大奥は彼女達妖狐の巣窟なのだった。諸国の大名より召し上げた女達も仲間に
し、その数を増やしていく……国の中枢で、彼女達の傀儡となり果てた男達によって
厳重に守られながら、妖狐達は一層その勢力を拡げようとしていた。いずれは海を渡り、
世界をその手中に収めるために……この大奥は、その準備のための妖狐の城なのだった。

そして、彼女達は妖力を高めるため、こぞって『食事』に耽っていた。
じゅぷっ、じゅぷっ、にゅる、くちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ、ぬちゅるるるうっ!!
「ぎああっ、あひぃいっ、いいっ、いっ、いぎひぃいいいいいいっ!!」
「ほほほほほ……正臣様、美味しゅうございますわ……もっとくださいませぇ……!!」
ぐちゅぐちゅっ、にゅちゅっ、くちゅくちゅくちゅ……にゅりゅりゅりゅりゅ……!!
「ぎいいっ、いひゃああああ、あはああああああああっ!!」
「ああ……大きくて……固いわぁ……びくびくいってる……はぁあああん……!」
千二百の妖狐と化した女達が、一人の男を犯している。昼も、夜も、ひとときも休むこと
なく、大奥のそこかしこで、美しい女達が正臣の分身を組み伏せてその若い身体を貪って
いる……それはまさしく地獄絵図であった。美しく淫らな、女色地獄であった。

……やがて蜜姫は、廊下の突き当たりの部屋の前で足を止めた。
大奥の最深部に位置する、蜜姫自身の部屋である。
襖を開けると……

「お帰りなさいませ、蜜姫様……。」
露葉が恭しく一礼して迎えた。部屋の中央に敷かれた豪華な夜具の上で。
そして彼女の股間の下に、正臣がいた。虚ろな瞳で、ぐったりと横たわっている。
彼の身体は時折ぴくっ、ぴくっ、と痙攣する以外は、完全に弛緩しきっていた。
もう、抵抗する気力も、よがる力さえも失われてしまっているのだった。
「ぅ……………ぅ…………………………ぅぅ…………………………。」
死んだようにぴくりとも動かず、僅かに呻くのみの正臣……しかし、彼の体内には
極限の快楽が充満していた。千二百余の女に愛撫され、犯され、よってたかって精を
搾り取られる……六年前の「あの日」から、彼はずっといかされっ放しだった。

赤城家が勢力を拡げる度、彼を犯す女は増えていった。何十人、何百人という女に犯され
続けて、正臣は何度もよがり殺され、その度に蘇らされた。その度に、正臣の身体はより
強い快楽に耐えられるように、より多く、より濃い精を出すように作り変えられて、
ついにはどんな快楽を味わわされても死ぬことがなく、無尽蔵に精を出せる身体にされて
しまったのだった。

びゅくん、びゅくん、びゅくん、びゅくん、びゅくん……。
そして今も、彼の男根は熱い精を迸らせ続けていた。

「ほほほ……正臣や……どうじゃ、気分は……?」
蜜姫の問いに、正臣の口が僅かに動く。その唇が声にならない声を紡ぐ。
「(……たすけて……たす……け……て……………)。」
終わりのない快楽地獄に心身共に犯し尽くされて、意識も朦朧とした状態で、
うわごとのように救いを求める正臣。しかし、彼の願いが叶えられることはなかった。
「ほほほほほ……そうか、助けて欲しいかぇ……じゃが、そちは我らの大事な贄じゃ……
 食料でもあり、玩具でもある……手放すわけにはいかんのう……ほほほほほ……!
 さあ、露葉や、そろそろ代わってたもれ……正臣の精を、吸わせてたもれ……。」
「はい……私ももうたっぷり頂きましたので、どうぞ……。」
露葉はそう言うと、正臣の男根の付け根を強く握った。尿道が塞がれて、正臣の射精が
止まる。その間に露葉は素早く正臣の上からどき、代わって蜜姫がまたがる。
露葉が手を放すと、

どぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅうううぅぅ……っ!!
再び激しく精が迸り、蜜姫の体内に注がれていく。
もう、正臣の射精はひとときも止まらないのだった。彼の男根は千二百の女陰の感触に
包まれて、果てしなく射精を続けている……。
そのため、蜜姫か露葉のいずれかが常時正臣を抱き、その精を受けているのだった。

「ぅ……うぅぅ……ぁ……ぁ……ぁ……ぁあ……!!」
どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷどぷどぷどぷどぷぅっ……!!
魔性の女達に際限なく犯され続け、際限なく精を搾り取られる正臣……。
そんな正臣を見下ろしながら、蜜姫は淫らな笑みを浮かべて囁く。
「そちは、これからも我らの家畜として生き続けるのじゃ……精を搾り取られる、
 そのためだけに、永遠に……そちには自由は一切ない、死ぬ自由すらも与えてやらぬ。
 代わりに、いやというほど快楽を与えてやろうぞ……光栄に思うがよいわ……
 ほほほ……ほほほほほ……ほほほほほほほ……ほほほほほほほほほ……!!」

正臣は、蜜姫の笑う声を聞きながら、さらなる快楽地獄へと堕ちていった。
そう、彼の地獄はまだ始まったばかり……そして、永遠に終わることもない……。

ずちゅっ、くちゅっ、ちゅぱっ、ぬちゅ、ぬりゅりゅるるるるる……!
「ほほほほほほほ……ほほほほほほほほほ……ほほほほほほほほほ……!!」
「あ……ぁぁ……………ぁ、はぁぁ……………ああ……………!!」
どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どびゅるるる……びゅくびゅくびゅるるるる……!!