≪怨念ノ穴≫。
他のオナホールに比べてかなり異様な雰囲気だった。手に触れた感触がオナホというより、「生身」に近い。ただし、芯までひんやりと冷たく、肉が硬く、重たいので、まるで死体の下半身を思わせる。
『「その穴は他のホールとは異なり、今あなたのいる世界で生まれた『財宝』です……」』
おどろおどろしいBGMが後ろで鳴っている。段々演出が凝り始めてきた。
『「明治の中ごろ、ひとりの少女が殺人鬼の手にかかり、死体の腰から下の部分だけを切断されて持ち帰られました。性的な趣向を叶える相手として。
しかし、その少女は生前から強い霊能力を持っていたため、下半身には強力な怨念が宿りました。
そして自らの身体の一部を持ち帰った殺人鬼を逆に、その膣穴で『凄まじい目』に遭わせて殺してしまったそうです。
以来、その下半身は男に対する強い怨念とともに現世に留まり、挿入したあらゆる男根から生気を啜り取ってあの世へ送る、『呪いのオナニーグッズ』になってしまったといいます。
如何でしょうか? このホールはいわば女性の膣そのもの。そのため、ある意味では「童貞を卒業している」と言えるのではないでしょうか?」』
「ひっ♡ ひいいぃぃぃぃ~~~~~~~~~~♡」
怪談話で身の毛がよだつ。話自体は大したことはないが、体験と併せると強い現実感をもって頭の中に入ってくる。
カードに書かれた説明によると、このホールも1日1回は必ず使わなければならず、そうしなければひとりでにカードの中から現れ、夜の間中、金縛りをかけられながら下半身の上で激しく上下し、怨念たっぷりの搾精を受けることになる。青年はもうそれを5回も体験していた。
恐怖のあまり山中に不法投棄した「元所有者」の話もテキストに記載してあった。夜になると下半身だけでなく全身が揃った状態の少女が枕元に立っており、幾日も布団の中で動けず、少女からゴミ捨てルールをペニスへ徹底的に教えられることとなる。最終的にはカラカラの死体――燃えるゴミとなって発見されたという。
――オオオォォン🖤 オオオォォオオォォォ~~~~~~~~~~ン🖤🖤
青年の背中の毛穴が総開きになった。
膣内は、何百万でも払ってお祓いを頼みたくなるような、男根に対する恨み骨髄の念で満ち満ちていた。どんなに霊感が無くてもいわくつきであることが伝わってくる。
陰茎が触れているだけで体の熱が次々と吸い出される。三途の川にペニスを浸すとこのような心地がするのではないか。
膣は霊能力とは関係なく、生前からとてつもない名器だったようだ。ヒダの配置が極上で、冷たい肉がぐちゅぐちゅと絡みつき、天井部分にザラつきもあって、わずかに擦れただけで腰が抜けてしまう。
その構造に加え、気が遠くなるような怨念の力が中で絶えず浴びせられている。ペニスが芯まで祟られている。
オオオォォン🖤 オオオオオオオオォォオオォォォ~~~~~~~~~~ン🖤🖤
ビシバシと、男の象徴へ浴びせられる殺気。
多分この穴で、数えきれないほどの男性の生命を啜り取ってきたのだろうと伝わってくる。
対処法はひとつ。少女の気が鎮まるまで精を注いで祈るしかない。
「う゛……うう゛っ……しっ♡ 『鎮まり給えっ』♡ 『鎮まり給えぇっ』♡ ……す、すごっ♡ う゛ぅっ♡」
パン🖤 パン🖤 パン🖤 パン🖤 パン🖤 パン🖤
床の上に≪怨念ノ穴≫を固定し、鎮魂の詔を唱えながら、ひたすらそこに腰を寄せ続ける。女性と一度も交わったことが無いから、情けないへっぴり腰になってしまう。おまけに今は体力も大きく減衰しており、ヘロヘロだった。
青年の容姿はもう、カードを手に入れた時と比べ、無残に変わり果てていた。
脂肪のたっぷりついた90kgの体が、今では30kgしかない。頬がこけ、あばら骨が即身仏と同じくらい深く突き出ている。
それと引き換え、オナニーばかりしている右腕だけがカチカチに引き締まり、あまりにアンバランスな見た目だった。
「アオオオ♡ アッ♡ アッ♡ しずまっ♡ しずまりた……♡ オオッ♡ オオオォォッ♡♡」
恐怖を動力に下半身を駆動し続けているが、全身全霊をかけないと前後することができない。ペニスを引くたびに怨念マン肉に擦れついて、そのまま冥土へ逝きそうになってしまう。
しかし、少女が満足するまで精を注がないと絶対に抜くことはできない。途中で逃げようとすると膣肉が、ホラー映画の伸びる手のように縋りついてきて引き戻される。平均して3~6時間(「鎮魂の詔」を心を込めて唱えないと、いつまで経っても終わらない)は、休みなく、死体まんこの中で腰を振り続けなければならない。
オオオォォオオォォォオオォォン🖤 オオオォォオオオォォォオオォン🖤
「ひいいいぃぃ~~~~~~~~♡♡」
(死にたくない♡ 死にたくないいぃぃ~~~♡♡ まだ一度も女の子とエッチしたことないのに……
何で……♡ 何でこんなことに……♡
オナニーばっかりの毎日を変えたくて……
転売でちょ、貯金とかできたら、か、彼女とかできるかもって、お、思って……ひいいぃぃ~~~~♡♡)
――パン🖤 パン🖤 パン🖤 パン🖤 パン🖤
最中に胴体がぽきりと折れてしまうのではないかと疑うほど、今の青年の腰回りは弱々しい。それでも、肉が削げ落ちて軽量になっているので何とか振れないことはなかった。
生存本能に突き動かされ、歯を食いしばりながら軽い腰を前に突き出し、そして必死の思いで引く。冷たい死の穴へ、せっせと生気のこもった汁を吐き出し続ける。
びゅっびゅ💛 びゅっびゅっびゅっびゅうぅぅ~~~~~💛💛
……
……………
――――
「ぁ……♡ いや……♡ いやぁ……♡」
青年はほとんど壊れてしまっていた。怯え、泣きながら、「管理室」の隅に縮こまって首を振る。
体重はもう25kgを切っていた。命を保っていられるギリギリの線だ。
机の上で――
がたっ💜 がたがたっ💚 がたがたがた🤍💜 ウニョウニョウニョウニョ💗 ウィィ~~~~~~ン💙 がたがたがたがたごとっごとっごとっごとっ🖤
今日はまだ全て未使用の、6種のオナホールが食欲旺盛に動いていた。

――ねちょっ💜 ねちょねちょ💜 ねちょねちょねちょねちょ💜 ウネウネウネ💜 ウネウネウネウネ💜 ほかっ💜 ほかっ💜
≪ネッチョリ貪るサキュバスホール≫が、入り口をくぱぁ……💜 と開き、その中を見せつけた。決して部屋が寒いわけではないのに濃い湯気が上がっている。
入り口のビラビラが誘うように波打って、奥で粘液を泡立てている。「ネッチャネッチャ💜」という音が立っている。最も使い込まれた穴という自信を覗かせ、主の使用を余裕たっぷりに誘っていた。
油断は一切できない。事前に甘く誘惑する時ほど、挿入後に激しく、粘着質に搾り取ってくるこのホールの「性格」は骨の髄まで身に染みていた。
――ニュルニュルニュルニュル💗 グチュグチュグチュグチュ💗 ネチョネチョネチョネチョ💗 パクパクパク💗 パクパクパクパク💗
≪ミニミズミミズミルミズミミズミニミルミズミミズの筒≫から、待ちきれない様子で、100匹近くのミミズたちが小さな顔を出した。今日もいち早く精子を食べ尽くしたいという意志が感じられ、これを無視するとおちんちんをぐちゃぐちゃのコンポストにされるようなミミズ地獄を何十時間も味わわされる。この筒での数々の体験と見た目のせいで、青年は二度とスパゲッティの類を口に入れることはできなくなった。どうやって突っ込んだらいいかわからないほどの密度だが、いつも賢いミミズたちはペニスを上手に中へ迎え入れ、逃げられなくなった後に壮絶に絡みついてくる。中で繁殖しているのか、最近ではさらに数が多くなって、ペニスを入れることが本当にためらわれる。
――ジュズルルルルルルル🤍💜 ズゾゾ🤍💜 ズゾゾゾゾゾゾゾ🤍💜 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ🤍💜!!!!
≪天上天下卑棒独損≫が排水溝のような吸引音を立てて呼んでいた。青年は愕然とする。昨日は「一定の速度でシゴきがら、耳の中に息を吹きかけられている間に射精すると負け」というオナニーゲームを耳の中の声と行い、案の定ボロ負けしてしまった後、懲罰バキュームで精液も潮も、鈴口から裏返った金玉の皮が僅かに顔を覗かせるくらいの強さで12時間吸われに吸われまくった。それなのに、まだ精液を欲しがっている事に対して恐怖しか感じない。
――ウイイイイイィイィィ~~~~~~~~~~~~~ン💙 ウイイイイィィィイイイイイイイイイイイイイイィィ~~~~~~~~~~~~~ン💙💙
≪CYCLONE DICK KILLER V4≫は身の毛もよだつモーター音を上げて、凹凸で一杯の内部を高速回転している。あまりにハイパワー過ぎて、風が青年の所にまで漂っていた。
一ヶ月くらい前に慌てて停止操作を行っているうちに変なボタンを押してしまったらしく、射精する度に必ず亀頭集中責めモードで潮噴きをさせてくる最悪な状態から戻らなくなってしまった。マニュアルを読んでも解除方法が載っておらず、書いてある電話番号へかけても「ただいま、大変混みあっております」の音声が流れて一度も繋がったことがない。必要な射精回数は前と同じなまま毎回潮噴きを挟むので倍の時間がかかり、本当に地獄中の地獄だった。心の底から使いたくないが、1日使用を休むと潮噴きの回数が40回に増えるディックキルモードに変わるので、どうしても使わざるを得ない。
――オオオオォォ~~~~~~~ン🖤 オオォォ~~~~~~~~~~ン🖤
≪怨念の穴≫が呪気を放っている。最近では青年がどんどん「死」に近づいていることが嬉しいらしく、「早くこのオナニー猿をあの世へ送ってやりたい🖤」と、本当にしつこく、死後の世界に引きずり込もうと穴の中が動きまくるようになった。
「ひぃっ♡ ひいいぃぃ~~~~~~~~~~~~♡♡」
勢ぞろいで並んだオナホール一同を眺めながら、パニックになって青年は頭を抱え、管理室の隅でうずくまった。
『もうこうなっては一巻の終わりです♡
例えこれらのオナホールを廃棄しても、カードを焼いたり破り捨てたとしても、どのオナホールもあなたのチンポの「匂い」を覚えていますから、必ずあなたの元へ戻って来ることでしょう♡
所有者の命を最後の一滴まで吸い尽くすために♡』
「いやぁあぁぁ~~~~~~~!♡」
青年は泣きながら悲鳴を上げた。耳の中の声が冷酷に語りかける。
『本来、購入した商品は責任を持って使用しなければならないものです。
運よく手に入れることができたのですから……どうぞ、それら6つの名品を、最期の一瞬まで、余すところなくお使いになってください♡
……では』
机の一番端から、腹の底まで震えるような、凄まじい唸り声が聞こえてきた。
――ウ゛ウ゛ウウウゥゥウウゥゥゥ~~~~~~💚 ガルルルルルルルルル!💚 グルルルルルルルル!💚 ゴルルァグルルゴルルガルルルッ!!💚💚

昨日≪天上天下卑棒独損≫に吸われまくっていたせいで丸一日使用されていなかった≪モンスターホール -搾精怪筒VS人類-≫が、どんな猛獣も尻尾を巻いて逃げ出すような殺気を放っていた。
入り口からは、でろぉ~~~💚 だらだらだらぁ~~~~💚 と涎のように透明な、ねっちゃねちゃの粘液が漏れ、床まで滴り落ちていた。
筒内は、空腹時の胃が盛んに収縮運動を行うように、ぎゅるぎゅるぐねぐねぐね💚 と音を立てていた。捕食のための牙であるゾリゾリ壁が、筒の中で竜巻みたいに乱回転している。あまりに回転が凶暴すぎて、机から床に震えが伝わっている。
――こんな動きの中に、ペニスを突っ込んで、さらに上下されてしまったら……♡☠
「ひいいいぃいぃぃぃ!!!♡ ひううううぅぅぅぅぅぅ~~~~♡♡ ステイ!♡ ステ~~~~イ!!♡」
必死の哀願は全く聞き入れられなかった。≪モンスターホール≫がシリコンの体をぐぐぐっと縮め、次の瞬間、ミサイルのように青年の股間へ突き刺さった。
ズボンもパンツも一瞬で食い千切られ、ズボボボッ! っと肉棒が穴の奥に飲み込まれる。そして――
「た、助け!!♡♡♡――」
その後24時間、狭い管理室の中で、空腹の怪物と弱った人間が奏でる、迫力満点の戦闘音が響き続けた。
――ガッポガッポガッポガッポ!!!!💚💚 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ!!!!!💚💚 ギュルルルルルルルグチュチュチュチュチュチュチュ💚💚 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポ!!!!💚💚 グチュチュチュチュチュチュチュチュチュモグモグモグモグモグ💚💚 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポガッポ💚💚
「ギャアアァァァァァァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!♡♡♡♡」
部屋中をバウンドする青年の体。何人たりとも止められないパワーとスピードでとんでもない上下を続ける黄緑色の怪筒。
『あ~あ……♡ えっと……うわぁ……♡
おちんちんが……♡ あ~あ……煙が出そう♡ 精液も泡立ってクリームみたいに……♡
これは果たして……「オナニー」と呼べるんでしょうか? どちらにせよ、サポートの必要はありませんね♡ どうか頑張って戦闘を繰り広げてください♡
あなたが最期までオナニーライフを楽しめるよう、私も心から祈っております♡』
今日は24時間、怪筒にペニスを「捕食」され、明日は、1日食事にありつけなかった5つのオナホールたちから、それぞれ酷い目に遭わされる――
青年は自らの身体をもって、手に入れた物を「使う」という責務を果たすことになった。
そのおよそ3週間後――
青年はアパートの自室で、死体として発見された。
体重は10kgほどしかなく、死因は衰弱死と餓死の両方の線で調べられたが、結局不明のままだった。右腕の筋肉だけアスリート並みに引き締まっており、陰茎が鉛筆程度の直径に「ちびて」いて、表面に6種類ほどのおぞましい摩擦痕が残っていたため、まさに「怪死体」だと論じられた。
青年が自室に持っていた在庫のゲーム機やカードは、遺品として親の元に届けられた後、やがて処分のため売りに出されることになる。
そこに6枚のオナホールカードがあったかどうかは定かではない。
🚪👄🦊🚪👄🦊🚪👄🦊🚪👄🦊
『なぁ坊ん🧡 えぇやろぉ?🧡』
――ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄ジュポ🧡👄レロレロ👅🧡👅🧡ジュポジュポジュポ🧡👄🧡👄ジュポジュポジュポ🧡👄🧡👄レロレロレロ👅🧡👅🧡
「あああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~♡♡ おおおぉぉ~~~~~~~~~♡♡ イカせっ♡♡😭 イカせてぇぇ~~~~~~♡♡😭」
男子高校生の陰茎の根元には、真っ黒い輪のような模様が浮き出ていた。
そのせいで一滴も精液が出せない。
ぴゅっ💙 ぴゅっ💙😭 ぴゅっ💙😭 とろぉ~💙😭
延々我慢汁だけ吐き出し続ける。
――昨日のことだった。
「昼食」のフェラチオを3時間味わった後、腰が抜けて立てないのを壁に寄りかかって何とかごまかしながら、父親からの「通信高校へ通わないか」という提案を受けた。
話しながら、自分の変わり果てた姿を見て父親が愕然としていることが伝わってきた。
男子高校生は頬がこけ、目の下に真っ黒いクマが浮いていた。痩せてアバラ骨も見えている。2、3日食事をとっていない、ということだけではこうはならない。明らかに病気の疑いがあった。
そこで、明日母親と一緒に病院へ行くことと、通信高校へ通う話を前向きに考えているという話を≪悪狐≫へ告げた。
通信高校に通えば、スクーリングや試験などの間、≪悪狐≫の口から少しだけでも逃れられるのではないか、と内心では考えていた。
しばし沈黙してから、≪悪狐≫は石壁にくり抜かれた円の中で優しい微笑みを浮かべた。
「勿論ええで! それが坊んの選んだ道なら、うちは尊重するだけや。
……まぁ、『頃合い』やしなぁ🧡
なぁ坊ん🧡
今から少しだけ……うちと『げーむ』で遊んでくれへんか?🧡」
そして男子高校生は、≪封印されし悪狐≫の話に乗ってしまった。
「あ゛あぁっ!♡ あ゛ぁっ!♡ ひいいぃぃぃ~~~~~~♡ 『あっこ』、『あっこ』ぉ~~~~~♡」
悪狐の麗しいピンク色の唇が陰茎を行ったり来たりする。鳴り響く咀嚼音。舌で舐め倒す意地汚い音色。
今まで散々泣かされてきた口淫と同じだったが、状況が絶対的に異なっていた。
男子高校生が話を受諾し、≪悪狐≫が口を嵌めた瞬間、陰茎の根元に黒いリング状の模様が現れた。
その効果は、口淫が始まったらすぐにわかった。いつもなら最初に口を一往復されただけで腰が崩壊し、二往復目であえなく射精してしまうのだが、二往復しても、三往復しても、十往復しても百往復しても、精液が全く出て来なかった。
陰茎の根元に蓋をされてしまったようだった。びくびくっ♡ っと精管が液の汲み上げを行っても、蓋に阻まれ、全て睾丸にUターンしてしまう。ただただ、ぴゅっぴゅ💙 ぴゅっぴゅ💙 と我慢汁だけが口の中へ出続けた。
『なぁ坊ん🧡 辛いやろぉ?🧡 いつもならもう、腰が抜けるほどお口ん中に白いお汁を出しとるところやさかいなぁ🧡
――ほら🧡 きつかったら、言うんやで?🧡 さっき教えたやろ?🧡
「お狐様、其方(そなた)へ参ります」🧡
それさえ言えば、この邪魔な輪っかが消えて、口の中へ、びゅっ🧡 びゅううぅぅ~~~~っ🧡 っと、濃いいのを射精できるんやでぇ?🧡
その代わり……』
声を聞いて、男子高校生の頭の中に、にんまりと笑みを浮かべる悪狐の口元が浮かび上がった。
『坊んの体は「こっち側」……つまり、うちのいる「壁の向こう側」に来てまうんや🧡
――どや?🧡 これがこの遊びの決まり事🧡 簡単やから忘れようが無いやろぉ?🧡』
――「『3時間』、言わずに我慢できたら……坊んも忙しくなるやろから、これからの『お口』は1日1食に減らしたる🧡」という、最初の≪悪狐≫の言葉を信じて始めたフェラチオゲーム。
男子高校生は自分の勉強机の上に置かれた、デジタル式の置時計を見た。自分の記憶が定かであれば、始まってまだ3分も経っていない。あまりに絶望的な気分になった。秒の数字が1つ増えるまでの間に、≪悪狐≫の唇はゆうに5回は股間の前方を往復し、その間肉竿は長い舌によって原形を失うほど舐め尽くされている。
そして、それ以上時計を見つめることはできなかった。せっつくように口がじゅぽっ🧡 じゅぽっ🧡 っとペニスを吸い立て、体を丸めざるを得ない。大量の我慢汁を唇が扱き出した。
「あ゛お゛お゛おおおおぉぉ~~~~~~~~~~~~~♡ あ゛おおお゛おおおぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡」
地獄の苦しみだった。本来起こらなければならない、尿道の中をぷりっぷりの精液が気持ち良く潜り抜ける感触を、この数ヶ月でたっぷり覚え込まされたからこそ、少量の虚しい我慢汁だけ排出させられ続けるのは本当に辛いことだった。
『ほら🧡 ほぉら🧡 「こっち」へおいでぇな🧡 うちも直接、坊んに会いたいわぁ🧡 ほら🧡 怖いことなんもあらへん🧡
おいでやす🧡 おいで🧡 おいで おいで🧡 おいで🧡 おいで🧡』
じゅっぽ🧡👄 じゅっぽ🧡👄 じゅっぽ🧡👄 じゅっぽ🧡👄 じゅっぽ🧡👄 じゅっぽ🧡👄 じゅっぽ🧡👄
心を込めたフェラ説得が行われる。
相変わらず高校生の陰茎の弱所を知り尽くした舌の動き。がっぽがっぽと腰が空中へ持っていかれるような口の前後。
あまりにも力の差がありすぎた。
外へ出て行きたいとのたうつ精液が、ミキサー車の中の生コンクリートのようにぐるんぐるんと渦巻いて止まらない。
射精させてもらえるんだったら何でも捧げたい気持ちになる。自分が大金持ちなら財産の一切を。一国の王なら全ての国土と民を。
『我慢汁でお腹たぷたぷになりそやわ🧡
早くおいでぇな🧡 「お狐様、其方へ参ります」🧡 って言うて、「こっち」においで🧡
カードの中は平和やでぇ🧡 親にやかましいことも言われんし、坊んの心を傷つける輩もおらん🧡 うちとふたりっきりで、楽しうやろうや🧡 な🧡 な🧡』
じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄れろれろ🧡👄じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄じゅっぽ🧡👄
口の動きが速く、そしてねちっこくなる。絶対に射精を我慢させない動き。しかし、絶対に射精をすることはできない。
「だざぜで♡ 『あっこ』♡ 『あっこ』♡ おねがい゛♡ あ゛っ♡ あ゛っ♡ あ゛っ♡ あっ♡ あああぁぁ~~~~~~~~~♡♡」
腰を屈め、地面に膝を突き、懇願のポーズになる。しかし、リングは全く射精を許してくれない。決められた言葉を言わなければならない。
舌と口の動きで頭の中を滅茶苦茶にされているうちに、射精欲だけで口を開きかけ――
一瞬、不吉な予感を覚えて言葉を呑み込み――
「🦊🧡」
ジュルッ🧡👄 ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾォォオオォォォ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~🧡👄🧡👄🧡👄」
何もかもを崩壊させるとどめの「射精乞い」を前に、完全に陥落してしまった。口を開き、切実過ぎる声で発声をしてしまう。
「お♡ お♡ お……『お狐様♡』……
そ、そ、そ……其方(そなた)へ参ります♡ 参りますぅ♡』」
『……よっしゃ🧡』
言った瞬間、何か取り返しのつかない力が体を包んだような気がした。
頭の中に聞こえた≪悪狐≫の声には、これまでと別人のような、残忍な響きがあった。
しかし、違和感を覚える間も無く、陰茎の黒いリングがぱっ、と消失した。
「!」
獲物の息の根を止める時のように、ずずっ🧡 っと≪悪狐≫の口のマズルが伸びた。熱い口の中目がけて、高校生の睾丸から尿道口までを、極太の白濁液が潜り抜ける。
びゅっ💛 びゅるるる💛 びゅぐるるるるるるるるるるるるうぅぅぅぅぅ💛💛
「あ゛ああぁぁ~~~~~~~~~♡♡ あおおおぉぉ~~~~~~~~~~~~~♡♡」
それは間違いなく、男子高校生が人生で味わった中で最大量の射精だった。精通の時の量の10倍はあった。
「お゛お゛お゛♡ お゛オ゛お゛オオオオオオ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡」
頭の中の全てがかき消え、精液色になるほどの放出感を味わいながら……
じゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる🧡🧡 ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞおおおおぉぉぉぉおおおぉぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!🧡🧡
≪悪狐≫の口が、素直になったご褒美を与えるように、有り得ないほどの吸引を浴びせてきた。これまでとは桁が違った。濃厚汁が一瞬で口の中に引き摺りだされていく。
全身が弓のように反る。腰どころではなく、体全体が前へ持って行かれる。
男子高校生は、ふわっと体が浮くのを感じた。重力が消失する。
『ほぉら🧡 くそ坊主🧡 約束通り、こっちの世界に連れ込んだるでぇ~~~~~~~~~~~~?🧡』
「うわあああぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
叫びとともに、高校生は自分の体が前へ移動し、体が小さく折りたたまれるような感覚を味わった。何もわからない。何もかも回転している。世界が圧縮され、点になり、最後にはそれすらもぷつんと消えた。
目の前に暗闇が広がった。
(はぁ……♡ はぁ……♡
ど、どこ……ここ……)
男子高校生は立っていた。
体が元の大きさになっていた。ちゃんと四肢はあるが、衣服は何も身に着けていない。
足の裏に冷たい石床の感触があった。
空気が閉塞している。自分がこれまで閉じこもっていた部屋とは比較にならないほど、深く閉ざされている空間のようだった。
きょろきょろと辺りを見回す。
(え!?)
暗闇の中に明るい点が見えた。
そこから僅かに覗いているのは、間違いない。見慣れた自分の居室の、壁の一点。
(ど、どうして? こ、ここどこ? 一体何が、何で……)
男子高校生はそこで思い出した。≪悪狐≫が言っていた言葉を。
――『坊んの体は「こっち側」……つまり、うちのいる「壁の向こう側」に来てまうんや』
ぼっ……!
高校生はびくっ! っと体を震わせた。
空間に青白い炎が浮かんでいた。何もない空中でゆらゆらと燃えている。
「狐火」という言葉が頭の中に浮かんだ。
「ちゃんとした姿では初めましてやなぁ、『坊ん』🧡」
至近距離で女の声が聞こえた。狭い部屋に反響しているが、聞き覚えがある声だった。
男子高校生は振り返って――
「!!!!!♡♡♡♡♡♡」
ぴーんと全身が伸びた。脚も腕も背も。「その者」の姿を、正面からもろに視てしまったからだった。
「うわ♡ うわああぁぁぁぁあぁあぁ~~~~~~~~~~♡♡♡」
青白い狐火に照らされ、高校生の瞳に映し出されたその体は、一糸も纏っていなかった。
どたぷん🧡 と垂れて揺れる「何か」の大きさと、下側にあるどっちりとした「何か」の雄大さは、瞳の中に収まりきらないほどだった。
肌はどこもかしこも白い。一歩歩いただけで、たぷん🧡 たぷん🧡 とたぷん🧡 と、体の様々な部分がとろけるように揺れた。
「何や、恥ずかしなぁ🧡 でも、うちと坊んの仲や🧡 もっとじっくり、視てくれてもええんやでぇ?🧡」
顔がずい、と、男子高校生の近くに差し出された。
その口元は、まさしく、何度も見たカードイラストの、穴から覗いていた物と同一で相違無かった。
「全体」を始めて見て、男子高校生は言葉を発することができなかった。呼吸をすることも忘れていた。目がとろけ、口元がとろけ、涎がたらっと唇の端から筋を成した。
がっくりと膝をつく。腰を抜かしてしまった。それでもその「顔」と「体」から目が離せない。二つの「何か」をぷらん、ぷらん🧡 とわずかに揺らし、突き出した顔はニヤニヤと意地悪く嗤っていた。
……ぴゅっ💛 ぴゅるるっ💛 とろぉ~💛
男子高校生は半分白目になり、まるで失禁するように、ペニスから精液を漏らした。石の上に撒かれた白濁を、「その者」が呆れたように眺める。
「あ~あ🧡
……まぁ、うちの姿をこないな青臭いガキが直視してもうたら、こうなるやろ🧡」
「『あっこ』……しゃまぁ……♡」
神の名前を呟くように高校生が声を出した。放心状態が続いている。口が開いたままだった。もう二度と閉じないかもしれない。
「しょうもないガキやなぁ🧡 そんなアホみたいな名前でもう呼ぶなや🧡
まったく、何て名前やねん。≪悪狐≫て。悪者なんがバレバレやんけ!
……まぁええわ。
それじゃあ『坊ん』🧡」
その者が顔を高校生の横に持ってきた。とろとろの匂いが鼻に流れ込んできて、陰茎からまた精液が少量漏れ出た。口を近づけた主は嘲りの笑みを浮かべ、今までとは違って本当に、直接耳の中へ言葉を囁いた。
「うちの本当の名前は■■や🧡 これからは、ちゃんとこっちの名前で呼ぶんやで?
今回はな、お前の命をぜぇ~んぶ平らげるために、ここへ呼んだんよ🧡 10日くらいかかるんやけど……ま、構わへんやろぉ?🧡
ただ……」
囁きながら、白い手を男子高校生の肩に置いた。長い指がぴとりと触れた。
「!?!?!?!?!?~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
触れられたほうの肩ががくっと下に下がり、その代わりに背筋がまたぴーんと伸びた。
指先の感触がなめらかすぎて、瞬間的に肩の骨が溶けた心地がした。先にちゃんと腕がついているかどうかもわからなくなる。
「ぁへ……♡ ぁへぁ~……♡」
腰が崩れ、恍惚としている高校生を無視して、■■が囁いた。
「うちはお前の精液吸ってたお陰でなかなか力も戻ってきとるし、今からの時間は『直接』吸うことになるさかい……
色々と、だいぶ大変なことになると思うんやけど……🧡
まぁ、『友達』やさかい、何もかも許してな🧡 ほんで、さっぱりした心であの世に逝こ🧡 な?🧡」
男子高校生はもう、自分が何を言われているかもわかっていない。しかし、とろとろになった意識の中、すぐ横の足元に和布団が一枚敷いてあることだけはわかった。
「ぁ……♡ ぁ……♡」
「さ🧡 横になりぃな🧡
楽しい楽しい『珍々遊び』の始まりや🧡」
「ど、どこに行ったんだ!?」
朝になって母親と父親が、予備の鍵で扉を開け、息子の部屋に立ち入ってきた。
中に息子の姿は無く――
ベッドの下のほうに1枚、「マクガフィン」のカードが裏向きに置いてあった。

よく見れば、そのカードはパタパタ♡ パタパタパタパタ♡ と細かく震えていた。
しかし両親ともにそのカードへは注意を向けず、父親は玄関の靴を確かめようと外に出て、母親はどこかに書置きが無いかと机の上や引き出しの中を必死で探し始めた。
裏向きのカードはずっと放置されることになった。
穴も塞がって、暗く淀んだ空気の部屋の中――
パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊 パン🧡🦊
布団が凶暴なリズムで上下に揺れる。
「『お船に帆かけて す~いすい♪🧡
風吹いて 山見て 海回る♪🧡』
……あははは🧡 どや? 楽しいやろ? あぁ……今喋れんのんやったなぁ🧡」
みっちりと白い双肉に飲まれて、男子高校生の頭部はすっぽり、みっちり、たっぽりと世界から見えなくなってしまっていた。
「ん~~~~~♡ ん~~~~~~♡」
全てが自分の許容範囲を超えており、どろんどろんになった。そのことを、悲鳴と鼻息と、腰の震えが示していた。
布団の下から、腰を打ちつける音と同時に、ぐぽっ🧡 ぐじゅるっ🧡 ぐぽぽっ🧡 っと聞いたことのない摩擦音が鳴っていた。3回ほど「ぱんぱんぱん🧡」とされるごとに男子高校生の腰が「びくびくっ💛」と跳ね、その後で布団の下から、「ぐぢゅるるるるっ!!🧡🧡」っと何かを吸い上げる音が響いた。
高校生の双眸からぶわっと熱い涙が溢れた。
「なんや、イジメとるみたいやなぁ🧡
ま、ええやろ🧡 だってお前も、イジメられるのには慣れとるわけやさかいなぁ🧡
オラ🧡 オラ🧡 もっと泣けや🧡」
上から高校生の体を抱き、のしかかったまま、下半身をダイナミックに上下させた。歌のテンポが速くなる。「巣穴に潜った鼠さん🧡 狐に騙され食べられる🧡 ぱくぱくぱく🧡 ぱくぱくぱくぱく🧡♪」布団の中の、叩きつける音が、拍子を刻むように高速に、そして力強くなる。ぱん!🧡🦊ぱん!🧡🦊ぱん!🧡🦊ぱん!🧡🦊ぱん!🧡🦊ぱん!🧡🦊ぱん!🧡🦊ぱん!🧡🦊
男子高校生は泣いて、泣いて、泣いて、泣き尽くして、全てを悟った。
これまで自分が周りの人間たちに受けていたものなど、「いじめ」の内には当てはまらない。
そして自分は、きっと――
これまで、この「お方」に、この布団の中で虐め抜いていただくため、ただそのためだけに生まれてきたのだ……♡
17歳の眼窩から流れる洪水のような涙は、苦悶と、絶望の念が大量に混ざっていたが、確かにそれは「感涙」と呼ぶ種類のものだった。
「……ふぅ🧡」
その存在が腰を持ち上げた。
ほかほか♡ と湯気を立ち上らせながら、高校生の陰茎がくてんと「どこか恐ろしい場所」から解放され、横倒れになった。
ほぼ丸二日の間死ぬほど発射し通しだったのに、陰茎には一滴の精液も付着していない。全て「どこか」の奥へ食べられてしまった。
かぱっ🧡 っと、顔を塞いでいた2つの肉毬が外された。
ねとぉ~~~~♡ と、涙と鼻水が透明な綱となって上へ伸びていく。男子高校生はもう叫ぶ気力もなかった。その存在の美しい顔を見ながら、うわごとのように呟き続けるだけだった。
「■■しゃま……♡ ■■しゃま……♡ ■■しゃまぁ……♡」
「くっく🧡」
侮蔑の笑みを漏らしながら、その存在は体勢を変えた。体を上下逆にして、顔がペニスの前にやってくる。頭が下がると、むわっ🧡 っとペニスに暖かい吐息がかかった。
その濃霧を浴びただけで、高校生の背筋にびりびりびりっ♡ っと電気が走った。
「ぁ……♡ ぁ……♡」
そして、必然的に高校生の面前には、頭とは逆の位置にある部分がやってくる。途方もない大きさ。視界が全て、そのどっちりした膨らみに覆い隠される。ぷぅ~ん🧡 と、濃厚で甘い獣臭が漂ってきて、男子高校生は成すすべなく、陰茎から精液を漏らした。とろとろとろとろ……💛 と、白くて熱い物が溢れて止まらなくなる。
「何嗅いだだけで漏らしとるんや🧡 おしめでもつけといたろか?🧡
……まぁええ🧡 好きなだけ堪能しとけや🧡 これから、とんでもないことになるんやさかいなぁ🧡
向こうで『穴越し』に味わうのと、こっちで直接味わうのとでは、まさに雲泥の差やさかい🧡
……あー、今までやりにくかったわ🧡」
■■が、べろべろべろべろ🧡 と、陰茎の近くで舌を動かしたのが伝わって来た。不吉な風が、精液が止まらなくなった陰茎に浴びせられる。
「これからお前が味わうのは、本当の『本気』や🧡 多重世界の支配者を数多堕としてきたうちのフェラチオ、ガキチンポで受け止めてみぃ🧡
ほな、行っくでぇ~~~~~🧡」
ぴと……!🧡
舌先が亀頭に触れた瞬間、男子高校生の腰から下の骨が全て外れてしまうほど、下半身がビククククククウゥゥ~~~♡♡ と震えた。何が、どれだけ「今までと違う」のかが一瞬で伝わってきた。
「あ゛ア゛ッ!?!?!♡♡ ご、ごれ゛!!♡♡ ほン゛どにヤバ♡♡♡……」
ズシィ!!🧡🧡 と上から巨大な肉塊が降ってきて、高校生の叫びは寸断された。
にゅるるるるるるる🧡 がぽっ🧡
……がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊 れろれろれろれろれろ🧡👅🦊 がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊 がぽっ!🧡👄🦊がぽっ!🧡👄🦊
「!!!?!?!?!?!?!?!??!?♡♡♡」
獣臭が濃厚に薫る肉塊の下、高校生の自我が粉々に崩壊した。ミクロの世界で粉になった自我とペニスが何億回もかき混ぜられる。世界新記録のバタ足をするように脚を激しく布団の中で上下した。腰をよじって、下半身を千切って逃げたいが、極悪な狐舌を前に腰がとろけ力が入らない。
宙に浮いたカードではなく、確かな首の力で上下に動く口。本当に無理だった。陰茎にぴったり合った唇の輪。卑劣な舌の動き。ペニスからあらゆるものが誘い出される。びゅっびゅ💛がぽがぽ🧡びゅっびゅ💛がぽがぽ🧡びゅっびゅ💛 のリズム。尿道が異常なダイヤの山手線ホームのようになる。
『くっくっく🧡 どや?🧡 もう二度と外に出ることは無いし、傷つくことも無いんやで?🧡 良かったなぁ🧡
3ヵ月分の、「友達代」の一括徴収や🧡 利子つけて、きっちり払うてもらうでぇ~?🧡』
がっぽがっぽがっぽがっぽ🧡👄🦊 がっぽがっぽがっぽがっぽがっぽがっぽ🧡👄🦊 がっぽがっぽがっぽがっぽ🧡👄🦊
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡」
末期の声も出せない。ぐりぐり🧡 ぐりぐり🧡 と巨肉を、嘲るように左右に振られ、重みと臭気を顔面に押し付けられる。
その巨肉からは、豊かで、あまりにも滑らかな9本の尾が垂れ下がっていた。
――――
「ひっ!? な、何だこれは!!」
2週間後。
行方不明になった男子高校生の部屋を捜索していた警官が声を上げた。ベッドの下にあった裏返しのカードを見つけたのだ。
それを表に返して絵柄を目にし、絶句した。

イラストには、紐状に細くなった死体のようなものが描かれていた。
カード名は≪精気を吸い尽くされし引きこもり高校生の死体≫。
それは従者カードでも、魔術カードでも、財宝カードでもない。
収戯で使用することのできない単なる「物体」のカード。
「な、何なんだこれは。悪趣味すぎる……」
「手作り……の感じではないし……どこで売られてるんでしょうね、こんなの……」
結局高校生の行方は全くわからず、捜査は打ち切りとなった。部屋は扉も窓も鍵がかかった密室状態だった。
両親はビラを配ったり聞き込みを行ったりして、生涯行方を捜し続けたという。
石壁に囲まれた暗黒の中で、声が響いた。
「ふぅ🧡 食った食った🧡
まぁ、今のガキみたいなのを10人くらい吸い殺せば外に出られるやろ。
その後はどうしよかなぁ……まぁ、昔の縁でも頼ってみよか……🧡」
🚸🍑👨⚖️🚸🍑👨⚖️🚸🍑👨⚖️🚸🍑👨⚖️
「ウ゛ワああ゛ああぁ゛あああああああああああああああ゛アアアァァァァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!♡♡♡」
隣町まで響くサイレンのような悲鳴だが、「魔の公園」フィールドはせいぜい1km四方で区切られた空間で、空や遠くに見える山は見かけだけのものだ。
ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛
穴の中のヒダの一つ一つが、激烈な懲罰のオーラを纏って動き続けている。
生まれ落ちてからずっと自らとともにあった「男性器」という器官を、これほどまでに恨めしく思ったのは過去に一度も無い。
それは通常であれば、少し弄るだけで手軽に快感を覚えることができる、たった一人の友のような存在だった筈だ。
しかしそれは今では、この世の物とは思えない刺激を延々受け取らされるための、最悪のアンテナとなってしまっていた。
腰を左右に振り、少しでも散らしたいが、巨大な褐色の臀部をみっちり落とされ、全く動かせない。
「快楽」というのは、行くところまで行き着けば、たった今性器で受け取っているほどの物になる。男はそのことを世界に向けて発表し、世の男性全てへ、今のうちに性器を切除したほうが安心して暮らせるという事実を宣伝したい気持ちになっていた。
首都高に1兆台の車が乗り入れた時と同じように、快感を伝える神経が崩壊を起こしてしまっている。地球上の車を全て集めても15億台だ。実際にそんな常識外の事が起きると、高架が崩れ、地面がぐしゃぐしゃになり、ともすれば東京自体が海の底に沈んでしまう。それと同じことが今、自分のペニスで起きていた。
びゅっ💛 びゅるるるるるるるるるるるるるるっ💛
もう、射精しているのかどうかすらもわからない。それでも射精の勢いで腰が跳ねようとして、お尻が重すぎてねじ伏せられる。
「さらに1回射精。1万年追加」
剣を地面に突き立てたままで、≪断罪の男根処刑戦乙女(オーガンパニッシュ・ヴァルキュリア)≫が冷たく宣告した。
ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛
「ウ゛エ゛エエエエエエェェェェエエエエエエエエエエエエ♡♡ ぢぬ♡♡ ぢぬううぅううぅぅううううぅぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡」
みちみち咥え込まれている。ペニスの逃げ場は全く無い状態だった。枷を嵌めた罪人に刑罰を加えるように、最大限のウネウネが容赦なく浴びせられる。雷に打たれ続けている体に、ミサイルを何本も撃ち込まれているようなものだった。何万枚もあるヒダの全ての動きが激しく、そして無情だった。射精させるという目的に比べてあまりに強大すぎる刺激だ。その凄まじさたるや、ペニスから伝わって、男の尻の下に広がる砂場がすり鉢型に変えられていくほどだった。その外の公園の地面もビリビリ振動している。多分その振動は、100mくらい地中まで伝播していると思う。
「お前の心が真に清らかであれば、耐えられる筈だ。
浅ましく射精を続けるようであれば容赦はない。このまま、地獄を越えた地獄へ連れていってやる🤎💛」
冷然とした笑みを浮かべた≪戦乙女≫には、もはや、男の従者であった頃の面影は残っていなかった。
ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛
「だ♡ じ♡ げ♡ で♡ えぇぇぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡」
言われていることの訳が分からなかった。お願いだから、誰でもいいから弁護士を呼んでほしい。
どんな清らかな心を持っていれば、この中で射精を我慢できるというのだろう。
例えペニスの代わりに石柱を挿入したとしても、10秒も経てば命が芽生え、射精してしまうはずだと男は泣いて訴えたかった。
男の眼球は自分の視神経の付け根辺りを向いていた。ペニスも心も崩壊する、お尻の穴からずっと変な液が漏れ続けている。
ぴゅっぴゅ💛 ぴゅううぅぅぅぅ~~~~~~~~~~~~~~💛💛
「さらに1万年追加」
ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛ニ゛ュル゛ニ゛ュル゛ニ゛ュル゛ニ゛ュル゛ニ゛ュル゛ニ゛ュル゛🤎💛
穴内部の音が外まではっきりと聞こえる。入り口がこんな、防音室並みに密閉されていることと併せて考えれば、中で起きていることの凄まじさが察せられた。その恐怖の内部に満ちた、男根を審査するための力は、精液を放てば放つほどに疑り深く、徹底的になっていった。
神話レベルの体験だった。男は自分のペニスも、体も、お尻の下にある公園も、全てがバラバラになっているのだと思った。情けも容赦も無い。茶色に染めていた髪は、毛根が死んで抜けてしまい、今はもう2~30本くらいしか頭に残っていなかった。
むちむちの太腿はまるで罪人を押さえつける嵌め具のようで、尻はずっと、絶対的な重石のように不動のままだった。穴の中ではずっと、グチュチュ🤎💛 ズポポ🤎💛 と、残酷な音が鳴り響いていた。この音を世の男性に聞かせると性犯罪率が限りなくゼロに近づきそうだった。

断罪の女陰に精液を注ぎまくり、処刑の力でミルつきのミキサーのように練り上げられる。ぴったりと貼り付いて気密性が高いが、それでも中の攪拌が異常なほどの頻度と速度なので、しっかりと練られ、出したタンパク質のほとんどが、まろやかなペースト状にされて陰茎の根元へ付着する。
「~~~~~~~~~~♡♡♡」
砂場の周りのベンチの上、「陪審員席」から声が聞こえる。
「え~ん🤎 え~ん🤎 この『ごーかんま』を、じごくにおくってくださぁ~い🤎」
「でないとあたしたち、こわくて、よるもねむれませぇ~ん🤎」
ベンチの上にその大きな尻を乗せ、3体の≪お尻振り振りリャナンシー≫たちが「意見陳述」を行っていた。
それに対して男は、何の弁明も、釈明もできない。強力にざわめくヒダの動きを受けながら、ただただ有罪の証拠を≪戦乙女≫の審判の穴の中へ注ぎ続けた。
ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛 びゅっびゅ💛 ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛 びゅるるるるる💛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛ウ゛ネ゛🤎💛……
「では、判決を言い渡す」
24時間の審判が終わった後で≪断罪の男根処刑戦乙女(オーガンパニッシュ・ヴァルキュリア)≫は言い放った。
元主人である男は、涙と鼻水でぐじゅぐじゅになった顔を横に傾けている。砂場の土に液体の全てが沁み込んでいった。四肢がヒック♡ ヒック♡ と震え、体のどこにも力が入っていない。
「24時間で18701回の射精。
よって、7万年に18701回×1万年を追加し、1億8708万年間、『男根処刑ヴァルハラ』にて『男根処刑』に処し、そののちに斬首する。
何か言い残すことはあるか?」
かつての男のエースモンスターは、何もかも白状させたペニスを咥え込んだまま、一切の申し開きの通用しない重々しい声で告げてきた。
≪お尻振り振り魔妖精(リャナンシー)≫は3人とも残忍な笑みを浮かべ、「やったー🤎」「いぎなーし🤎」「じごくへおちろー🤎」と声を上げたり、「しょうそ」と書いた画用紙を掲げたりしている。
……ぱく♡ ……ぱく♡ ……ぱく♡ ……ぱく♡ ……ぱく♡
恐らくこの世へ言葉を残すことのできる最後の機会だが、男は度重なる男根尋問で体力の全てを使い果たし、声を外に出すことはできなかった。
「弁明の余地無し。よって刑は確定とする。
ちなみに……これからの『男根処刑』は、今行った責めなど比較にならん🤎💛 覚悟するがいい🤎💛
呼吸する回数より多く、男として生まれてきたことを後悔する日々が待っている🤎💛 処刑は主にこの私が執り行うが、『ヴァルハラ』には、私よりよっぽど酷薄な拷問補佐戦乙女(ヴァルキュリア)が何十人といるし、今ここで口にすることははばかられるような、エゲつない拷問聖具も数多くあるから、楽しみにしておけよ?🤎💛
では、これにて閉廷! 罪人を連行する!!」
≪断罪の男根処刑戦乙女(オーガンパニッシュ・ヴァルキュリア)≫の宣言によって、空から一筋の光が降って来た。
鎖が四肢から外れ、挿入したままの体勢で男と≪戦乙女≫が空へ昇っていく。
「きゃははは!🤎 じゃあねぇ~🤎 ばいば~~~~い🤎」
「たくさんくるしんで、おちんぽころされて、はんせいしてしんでねぇ~🤎」
リャナンシーたちが満足げな笑みを浮かべ、見送った。
男と≪戦乙女≫の体は雲に吸い込まれ、見えなくなった。
数日後。
現実世界の公園で、男の「首」だけが見つかった。植込みの中に、まるで空から降ってきたかのように埋まっていた。
首は鋭利な刃物で切断されており、その顔貌は、歯の治療痕でしか身元判別ができないほどおぞましく変形し尽くしていた。
それは外傷ではなく、男自らが「想像を絶する何か」を長い時間体験し、顔の筋肉や関節を常識外の力で激しく稼働させ続けたことで生じた変化だと結論付けられた。
目玉は落ち窪み、涙の出し過ぎで眼窩が下に20cmも削れていた。口の部分は開きすぎて、頭蓋骨全体が下に長く伸びた三角錐のようになっていた。
そして額には、刻印のような文字で、
「累計20京2745兆6154億8891万21回射精 及び 17京5987兆561億9821万3452回懲罰潮」
という謎の言葉が深く記されていた。
🃏💎⚜️🃏💎⚜️🃏💎⚜️🃏💎⚜️
「何これ……」
那韋斗は呟いた。
「マクガフィン」が関わって人が死んだニュースや、失踪したニュースがいくつも紙面に並んでいる。
北海道から沖縄まで、範囲は日本中の至る場所に及んでいた。
ある日を境にAI音声のような奇妙な喋り方になった男性たちの話。大量にオークションへ出品されている妖女のカード。妖女のカードの購入者たちはほぼ全員が怪死体で見つかるか行方不明になっている。≪クイーンマーメイド≫のカードを買った20代男性はびしょ濡れのミイラとなって部屋で発見され、≪おいしいミルクのサキュバスママ≫のカードを買った40代男性は下腹が土座衛門のように母乳で膨れ上がった状態で発見された。精神が幼児退行しており、永遠に正気へ戻る見込みが無い。そういった記事が小さい物も含めると30以上も並んでいた。あとは「呪いの山札」についての噂――
(何だこれ……本当にちゃんとした新聞か!? スポーツ新聞でも有り得ない記事ばかり……)
一応確認すると、紛れもなく有名な全国紙の銘が記されていた。
「あ、これ知ってるー! 『呪いの山札』の話。学校でめっちゃ流行ってるわ」
優哉が声を出した。
「なんか、道端に落ちてて、拾うとどこかへいなくなっちゃうマクガフィンの山札があるんだって」
店長が目を閉じ、昔を懐かしむような声を出した。
「へぇ、そういうの、今またブームになってるんだねぇ。僕の子供の頃もあったなぁ。『学校の怪談』とか、『ムラサキババア』とか……」
「ああ、それ俺見たことある! 頭が紫色の婆さん!!」
「いや、それじゃなくて……」
店長と優哉が話している間、那韋斗は強い違和感を持っていた。
(どの事件も「マクガフィン」が関系してるのに、全然、どこにも「マクガフィン」への批判が無い。
それぞれの事件はちゃんと重大なものとして扱われてて、警察もしっかり動いてるのに、まるで「マクガフィン」が関わっていることを全員が無視してるみたいだ……
一体……)
――――
「あれ? あ、あれ? え?」
男は困惑して辺りを見回した。
視界に広がる鬱蒼とした森。遠くから鳥の鳴き声が聞こえる。
頭の中で出来事を整理する。
午前中3件の営業先を回って、コンビニで休憩を取った。
食べた後のゴミを店内へ捨てに行こうとすると、駐車場の隅に「マクガフィン」の山札があったのだ。
(え? な、何で?)
それが「マクガフィン」のカードであることは、子供の頃にやっていた経験があったのでよくわかったし、積み上げられた枚数からしてちゃんと組まれた「山札」であることもわかった。スリーブが無く、剥き出しだったのは気になったが……
(子供の落とし物……か?
どんな中身だろう。今ごろのカードは全然知らないな……)
興味本位で腕を伸ばし、指先が触れた。
その瞬間男は、青と白の看板が掲げられたコンビニの軒下ではなく、周囲に緑の樹木しか見えない「森林」の中に立っていた。
革靴の裏の感触も、アスファルトから腐葉土の上に変わった。
(な、何だこれ。「マクガフィン」の中か? でも、収戯する相手もいないのに、そんなこと……)
男は暑さに耐えかね、ワイシャツの首もとを指でつまみ、動かして微風を送った。クールビズでも顔を顰めてしまうほど暑い。
「お兄さんお兄さん! ちょっとちょっと!」
突然快活に呼ばれた。若い女の声だった。
「え……ちょ……うわっ♡」
目を向けた瞬間、男は飛び込んできた姿にたじろいでしまった。

≪お水絞りのドリアード≫
「な、何? え??」
(最近のカード?? 知らない……)
そして思わず、視線を「そこ」へ向けてしまう。
たゆんっ……💚
「うわぁっ……♡」
胸もとが大きく開いたドレスを身につけていた。豊かな白い胸の谷間が大開きに見せつけられている。
これ、Jカップくらいあるんじゃ……♡ と男は頭の中にあったグラビアアイドルのプロファイルから瞬時に導き出した。
(こ、こんなの……え? だ、だめだろ……♡
最近の「マクガフィン」だと「有り」になってるのか……?♡)
「もー💚 見すぎだってばー💚
おっぱい好きなのはわかったからさー💚」
腰を屈め、おっぱいと視線の間に笑顔を割り込ませてきた。
「う、うわっ!」
たじろいだ後に、その顔も凝視してしまう。
(か、可愛っ!♡)
どの人種に当てはまるかというのは曖昧だが、欠点は見つからず美点しか有していない。男の妄想を形にしたような若い女性の顔。さらに輝くような笑顔を浮かべているので、男心に放射される威力は凄まじいものがあった。
こっそりと視線を下げると長い乳が≪ドリアード≫の顔の下で豊かに揺れていた。
男の顔がでれっと緩んだ。
(こ、こんな感じになってるなら……ぜ、絶対買う♡ ま、また「マクガフィン」始めよ……♡)
男がまた胸に目線を向けているのはバレバレで、呆れ笑いを浮かべると、≪ドリアード≫は上体を上げた。
「ねーねー! キミ、偶然『入って来た』って感じでしょ?
だって、自分の山札出してないもんね? キミは『魔術師』じゃないんでしょ?」
明るく、目を見て話しかけてくる。一瞬で距離が詰まり、警戒しようにもできない。男は、もしこの≪ドリアード≫が同僚の営業社員にでもなったら、男たちの心を全て掌握し、一瞬で自分の成績など抜かされるだろうと思った。
しかし、言われている言葉の意味は見当がつかなかった。
「え? ごめん……何?」
≪ドリアード≫は安心したように胸をなでおろした。
「良かったー!💚 じゃあ今回も楽ちんだ💚
ねーねー💚 一個お願いがあるんだけど、いい?💚」
太陽のような笑顔のまま、ほがらかに尋ねてくる。どんな面倒事でも聞いてあげたいと思った。重い物を運んだり、PCのトラブルを解決したり、休んだ時に代理で仕事をしてあげたり……
「私とエッチしてほしいんだけど💚」
金属が水を吸い込まないように、言われた意味が脳に入ってこなかった。
「え?」
――
「ほ、ほんとにいいの??♡ え?♡ え?♡」
「いいのいいのー💚 そりゃそうでしょ💚 私がお願いしたんだもん💚 ありがとー💚」
ひとしきり動揺が済むと、どんなに唐突で脈絡が無くても、その「お願い」に抗しきることは男としてとても無理だった。
木の幹を背にして≪ドリアード≫が立ったまま股を開く。下半身の布はいつのまにか、緑が地面を露出させるように分かれ、女性器をはっきりと露出していた。
毛は無い。陰唇がひく💚 ひく💚 と誘導するように動いている。
男はごくっ♡ っと唾を飲み込んだ。意識に伝わってくる。目の前にいるのは「魔物」なのだ。
「こ、こんな……外で……♡」
「え~?💚 嫌い?💚」
「き、嫌いじゃない! 嫌いじゃない、ですぅ~♡」
体が勝手に、こんな機会を逃してなるものかと積極的に動いてしまう。ノータイムでズボンとパンツを脱ぎ、勃起したペニスを≪ドリアード≫へ向けた。
午後に訪問する顧客のことや、コンビニに残してきた営業車のこと、この森からどうやって出るのかということは一旦全て頭の中から抜け出ていた。
女の体に近づくと、樹木の爽やかな匂いと女体の臭いが同時に香った。膣口からとろっと、黄色がかった樹液のような粘液が一筋垂れた。
「おっぱいに顔うずめて、ガンガン腰振っていいからね~💚 キツツキになったと思って、いっぱい私の身体を『コンコン』して💚」
≪ドリアード≫の甘い言葉で男の理性が吹き飛んだ。
「うぅ~~♡ するぅ~~~♡ 穴コンコンするぅ~~~♡」
男は≪お水絞りのドリアード≫の体にしがみついた。胸の大きさに比べて腰は驚くほど細い。しかし手を回すと、地面にしっかり根を張った樹木のような、どっしりとした安定感だった。
(あぁ~~~~♡ あああぁぁ~~~~~~♡)
繁殖期の鳥と同じくらいの脳みそになって、股間の穴に陰茎を突入させる。
1時間後――
男は言われた通り、腰を「コンコンコンコン♡」と必死に振り立てていた。上下逆さになったキツツキかコゲラのように≪ドリアード≫の下半身に対して「ドラミング」を行っている。
しかし――
「あ゛あ゛ああぁぁぁあ゛ああぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡😭😭♡♡☠☠」
男はひたすら、当てが外れたような苦悶の叫びを上げ続けていた。
「ふわぁ~💚 どう? 気持ちいいでしょ~💚」
地面に立ったまま、≪ドリアード≫は微動だにしていない。森の中で鳥や虫に体を明け渡して悠然といるように、欠伸をして微笑んでいるだけだった。
「なっ!!??♡♡ な゛ん゛でえ゛えぇぇぇぇええぇ~~~~~~~!?!?!?!?!♡♡
出゛っ♡♡ 『出ぜな゛い』~~~~~~~~~!!!!!!!!!😭😭♡♡☠☠」
男は、まるで世界最大の疑問に突き当たったかのように混乱し、愕然としていた。腰を振り続ける。抜こうとしても入り口が狭くて引っかかる。まるで、木の中に巣を作って寝ている間に、樹木が成長して入り口のサイズが変わり、閉じ込められてしまったようだった。
がっつんがっつん腰を振って、体重をかけて前後させているのに、≪ドリアード≫の体はびくともしない。最初と同じ晴れやかな微笑みを続けている。
「逃がさないよ~💚 君は貴重な『水源』なんだもん💚」
≪ドリアード≫は男の胴を巻き締めた。濃厚なハグの形。男はそのことを全く有難く無いというように首をぶんぶんぶんぶんと横に振り続け、涙と鼻水を飛ばす。その飛沫が地面に落ちる。雄大な森の大地は、その汚い汁気も有難い恵みの一部というように吸い取った。
「嫌っ!♡ 嫌っ!♡ 嫌ああぁぁぁ~~~~~~~~~~♡♡
お願い♡ こっ♡ こんなの嫌あぁぁぁ~~~~♡♡ こんな♡ 『水』♡ おちんちんから♡ 『お水』だけえええええぇぇ~~~~~~♡♡♡
も゛う゛やめでえぇぇぇ~~~~~~♡♡ 許じでえ゛えぇぇ~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡😭😭♡♡☠☠」
男の本気の哀願は空と草木と地面に吸い込まれる。そのどれからも助けが入る気配はない。
森というものは、豊かで、広大で、どこまでも冷酷な場所なのだと思い知る。
「無理無理💚
ほら、毎日『ありがとう』って話しかけると花が綺麗に咲くとかはあるけどさー……
木や草の根っこに、『水を吸うのを止めてほしい』って言って、その通りになるなんてあると思う?💚
ま、運が悪かったと思って、『綺麗なお水』だけをずっと、私に捧げ続けて💚
これから長い、長ぁ~い間💚」
男は大泣きした。
「嫌!!♡ 嫌だぁあああぁぁ~~~♡」
「まぁまぁ💚 大好きなおっぱいは、好きなだけ楽しんでいいから💚」
むぎゅぅっ……💚 たぷっ💚 たぷんっ💚
巨大な右乳と左乳がぱっくんと男の頭部を丸ごと飲み込んだ。
「んん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡☠♡😭😭♡♡ ん゛ん゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡☠♡😭😭」
おっぱいで男の頭を完全ロックしながら、≪お水絞りのドリアード≫は幼児をだっこするように男の尻を抱えた。
そのまま満足げに鼻歌を歌いながら、暗い森の中へ消えていった。
男がもし、耳を澄ましてよく聞き分けることができていれば、実は森の中には、ほとんど鳥の声など聞こえていないことがわかっただろう。
そう聞こえていたのは、あらゆる方向から響く、男たちの無残な泣き声だった。
「あ゛ああ゛あ゛あ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!♡♡ ごの゛花♡ 離れ゛な゛い゛いぃぃ~~~~~~!!!!♡♡♡ いや゛っ!!♡ いや゛っ!!! 『水』♡ 『お水』ばっかりぃぃ♡☠♡😭♡♡ あぁぁ~~~~~~~ん!!!☠♡😭♡♡」
「お願い♡ お願い゛いぃ♡ お願゛い゛でしゅう゛ううぅぅ~~~♡♡ もう指の輪っかで♡ 『お水』コキ出されるのいやぁあああぁぁ~~~~~♡ 何でもずる゛がら゛あぁぁ~~~~!!♡ お゛金゛い゛くらでも払うからあああぁぁぁぁぁあぁ~~~~~~♡☠♡😭!!!♡」
「許じでえ゛ぇぇぇえぇぇぇ~~~♡♡ 何でもじまず♡♡ 何でも言うこと聞ぎま゛すうぅぅう゛うぅぅ~~~~~~~~~~~♡♡ 一がい゛♡♡ いっがいだけでいいがらああぁぁぁあぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ だっ♡♡ あ゛っ♡♡ だざぜでえぇぇええ~~~~~~♡♡☠♡😭♡♡」
「も゛う゛『水や゛り゛』いや゛あ゛ああぁぁ~~~~~~~!!!!😭♡♡♡ おぢんぢん壊れぢゃう゛ううぅぅ~~~~~~~~!!!!♡☠♡ お゛水゛で死ぬ゛の゛い゛やあああぁぁぁあ゛あああぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!♡♡ だじゅげでえ゛えええぇぇぇ~~~~~~~~~~~~!!!!!!♡☠♡😭♡♡♡」
腹の底から鳴るような、悲嘆の絶叫ばかりだった。
空から、ポタポタ💙 ポタポタポタ💙 ポタポタポタポタ💙 と「雫」が降ってくる。
透明で、小雨と呼称される程度の量が、しとしとと森の大地へ降り注ぐ。
雨にしか見えないが、なぜかその光景が醸し出すのはとても言葉では言い表せない、巨大な「哀しみ」の感情だった。
木々の隙間から、女たちの声が高らかに聞こえてきた。
「アハハハハハ💛 ほんと、お気の毒様💛」「ほぉ~ら💜 すごいでしょ?💜 この『ラッパスイセン』💜 おちんちん引っこ抜けちゃうくらいバキュームされて💜 脱水症状にならないように気をつけて💜」「ほら💗 この『フェラチオチューリップ』たちにもお水をいっぱいあげてねぇ~~~💗💗 赤は技巧派、白はねっとり、黄色はがっつきが凄いんだよ?💗」「キャハハハハハハ💚 すっごぉ~い💚 水たまりになっちゃってるぅ~💚 ここの土、すっごく水はけいいのに」「ほら🧡 こっちも負けないように、チンポで小川つくろ♪ アハハハハハハハ🧡」
……
――――
「山さん! 積んだっす!」
「よっしゃー!」
「よしゃしゃしゃしゃ!」
2人は奇声を発しながら白の軽箱バンに飛び込んだ。
運転席には那韋斗、助手席には明るい色の茶髪の青年。両方とも制服を着ており、淀みなくシートベルトをつける。青年の肌は浅黒く焼けており、那韋斗よりかなり若い見た目だった。
「鈴木君、はい」
那韋斗が黒い190mlのスチール缶を青年に手渡した。青年、鈴木はうやうやしくそれを両手で受け取る。表面は結露した水滴で一面濡れていた。
「どもっす! マジすんません!」
「いや、いつも準備してくれて助かるよ。リンサー積んだ?」
「え!?」
「いや、積んでるでしょ。目がめっちゃ嘘って感じになってるよ」
「信じてくださいよ! 山さん!! 何でこの俺を疑うんですか!? 見てくださいこのつぶらな瞳を!!」
「何このやり取り」
那韋斗は自分のコーヒーのプルタブを開け、ぐいっと飲んだ。微糖だった。
「そういえば山さん、美人の彼女できたんですよね!?」
ぶはあああぁぁぁぁぁ~~~~!!!! と、那韋斗は喉に入れていたコーヒーを全部吐いた。車内に香ばしい香りが漂う。
自動運転なので問題はないが、那韋斗は必死でハンドルを手で押さえた。エ゛ッホ!! エ゛ッッ!!! と何度も死にそうな咳をする。
「な゛にを゛……な゛ん゛で……」
「いや、月曜の朝礼で支店長が言ってたっすよ。『では今日も安全に! ……あ、そうそう。山田君に、ビビり上がるほど美人な彼女ができとったで』って」
「あの関西弁のオッサン……」
那韋斗は気管の茶色の液体を排出し終わってから、助手席の鈴木をきっと睨んだ。
「葉月さんのことだろ!? 違うわ!!
ていうか有り得んわ!!」
那韋斗は半ギレでまくし立てた後、一呼吸おいた。
「いや、鈴木君も絶対、現物で見たらわかるよ。ほんと、冗談としか思えないから。僕と葉月さんを比べて見ると……」
鈴木は冷静にコーヒーを啜った。
「いやいや、そんなんわかんないじゃないっすか。
じゃあ、『今はまだ友達』って感じっすか? それなら、ガッ! といっといたほうがいいっすよ、絶対。そんな美人なら言うまでもなく」
「何言ってんの? ガッ! といくって何!?」
信号待ちが終わり、車が自動的に発進した。EV車なので出だしがとてもスムーズだ。
「ほんと、男と女のことなんて誰にもわかんないっす。最終的には男がガッ! といくか、どうかっすよ……何ですか? ガッ! といくって?
……まぁとにかく、俺今、山さんだから真剣に言ってるんすよ? シンプル苗字コンビの片割れとして、後悔してほしくないんすよ。山さんマジで、バキバキの童貞なんすから!」
「バキバキって言うな!」
言いながら、那韋斗には完全に聞き捨てることもできなかった。鈴木は21歳だが、ことこういう方面の話については含蓄がないではない。18歳で結婚し、既に離婚してバツイチになっているという破天荒な経歴の持ち主。入社して3年になるが、8回くらい「今の彼女が……」という話を聞かされ、8回とも別のギャルっぽい女性が映ったツーショット写真を見せられている。
でも……
那韋斗は遠い目をした。
(絶対無い……
全然そんな気配を感じないけど、あれだけの容姿なら、もしかしたら今も彼氏とかいるかもしれないし……
葉月さんは「友達」で充分だ。本当に、この年齢になって、あれだけ話が合う友達ができるとは思わなかった。
男と女としては、もはや世界が違いすぎて、そういう感じでは見れない……)
那韋斗は遠い目をした。
――――
駅前にある中華料理店は清潔さの行き渡った内装だった。
窓が広く、机が円い。白い椅子に金糸で細かい刺繍が施されている。店内には、たおやかに二胡のBGMが流れていた。
「女子会イエーーー!!」
ジョッキを前に突き出したのはショートカットの女性だった。ごつ、ごつ、と3つの武骨な中ジョッキがぶつかり合う。
三者三様だった。ショートカットの女性は生ビール、おどおどした若い女性はミルクサワー、葉月はコカ・コーラをそれぞれごくごくと飲んだ。
「ぶはー!!
そして今日のこの場は、『討論会』でもあります」
急激にトーンを落としてショートカットの女性が言った。緊張した面持ちで、若い女性がきょろきょろとあたりを見回した。
「おい。『ゆいゆい』。
テンションの落差のせいで怖がってるじゃないか。
ほら飯田さん。エビチリを食べなさい」
「は、はい……如月リーダー、ありがとうございます……」
おっかなびっくり小皿を受け取ったのは、いつか那韋斗も目にした日本マクガフィン社の女子社員だった。
葉月は机の下でLINEのトーク画面を見た。「那韋斗」のルームは「すみません、今週いっぱいは特訓に集中します……」というメッセージが最後になっていた。
葉月はため息をついて、もう一口コーラを口へ運んだ。
「今日の議題は、『如月 葉月に男ができたのかどうか』!」
ダン!
葉月がジョッキを取り落とした。コーラからシュワァ~と泡が立ち上って、机の上に広がる。
「……失礼」
葉月はおしぼりで机を拭いた。
「証拠1。ここ2か月くらいずっと、私たちの誘いを断って、速攻で家に帰り続けている」
「ゆいゆい」は探るような目でじっとりと葉月の顔を見た。
葉月には劣るがかなり整った面立ちだった。吊り眉で、さっぱりと気が強そうな雰囲気だ。
「……ねぇ飯田ちゃん。前はねぇ、こいつ、私たちには付き合い良かったのよ?
大学で同じ学部だったから知ってるけど、こんな顔だから死ぬほど男が寄ってくるのよね。全部徹底的に遮断してるけど。でも、女だけの飲み会には割とよく参加してたの。
……それが何? 近頃は誘っても、『すまん、用事がある』『すまん、用事がある』『すまん、用事があってな』ばっかりじゃないの! 断り方のパターン少なすぎか!!」
近くのテーブルで、かちゃかちゃと食器が鳴る音が響いていた。
葉月は短くため息をついた。
「こういう集まり以外の場は、ただ単純に、話が合わないことがわかりきっているから行かないだけだ」
葉月は油淋鶏に手を伸ばしながら、言った。
「ただ最近は確かに……趣味の合う友人ができた、と言っておこう」
ぽつりと言って、ねぎとたれのかかった鶏の揚げ物をザクザクと頬張る。
「『言っておこう』じゃないっつうの。
じゃあ証拠2。最近会社で帰りが近づくと、スマホを見てニヤニヤしてる」
ぴたっ、と2個目の油淋鶏へ行こうとした葉月の箸が止まった。
「さっきから何なんだ。探偵か何かみたいに……テンションが異常か?
というか、何でゆいゆいが知ってるんだ? 総務部だろう?」
「あ、わ、私が……」
飯田がおずおずと手を上げた。葉月が冷たく睨みつけた。
「ひっ!? す、すみません!
で、でも……広報企画部の人たちみんな言ってます……
同期の木下君とか、ショックのあまり一週間休んだし……まだ有休もついて無いのに……」
葉月はうんざりした表情で、ネギを多めに乗せた油淋鶏を前歯で真っ二つにした。
「どうせあれでしょ? 『マクガフィン』絡みで仲良くなって付き合ったとかでしょ? あんたが男と繋がりを持ちそうなのって、それくらいだからねー。
知ってる? 飯田ちゃん。こいつ趣味で会社選んだんだから。商品開発部に配属されて、自分の好きなカードが強化されるように猛抗議して、結果3か月で配置変えされたの」
「はい。というかそれ、伝説すぎて社員全員知ってますよ」
「今それ関係ないだろ!」
葉月はジョッキに半分残っていたコーラを一気飲みした。一滴もアルコールが入っていないのに目が据わってきた。
「というか、付き合ってない! 『友人』と言ってるだろ!!」
「え~? ただの友人と週4で会ったりする?」
「違う。多い時は週6で……」
葉月は黙った。ゆいゆいは憐れむような目で、飯田は驚愕の目を向けている。
「週6て……」「週6て……」
葉月は何も言えなくなった。確かに、ほぼ毎日家で夜通しアニメを見たり、カードで遊んでいる状況が普通とは言えない。那韋斗の家にももう何回か遊びに行っている。
「では、質問です。
あなたの『友人』について――」
ゆいゆいは自らの両手の人差し指と中指を、両側のこめかみに当て、目を閉じた。
「その『友人』に対して、友情を超えた何かを感じ始めている……?
『はい』『いいえ』『わからない』『たぶんそう部分的にそう』『たぶん違うそうでもない』の5つの中から答えて」
「何で急にアキネーターみたいになった?」
葉月は嘆息し、箸をテーブルに置いた。沈黙の後で目を開いた。
「『はい』だ」
「!!」
2人が息を呑んだ。
「え!? 『分からない』とか『たぶんそう』じゃなくて!?」
葉月は箸をもう一度取って、油淋鶏に伸ばした。「相変わらずだけど唐揚げ好きすぎじゃない!?」という声を無視して、たれまみれの肉を野性的に頬張る。
「中途半端に答えるのは性に合わん。間違いないことはありのままを正面から言う。それだけだ」
目をまっすぐ2人に向け、顔色ひとつ変えずに言った。
「お、男らしい……流石如月リーダー……」
「いや、飯田ちゃん。こいつ、昔から動揺しても一切顔に出ないけど、変わりに、めっちゃ耳が赤くなるのよ」
葉月がばっ! っと、反射的に耳へ手をやった。指と髪の隙間からでもはっきりわかるほど、赤く、熱を帯びているようだった。葉月が口惜しげにぎりっと唇を噛んだ。
「えっ……如月リーダー……可愛っ!」
思わず飯田が言った。
ゆいゆいは麻婆豆腐をレンゲで口の中に運びながら、三白眼で葉月を眺めた。
「……ま、あんたと同じカード趣味って時点で私的にはどうでもいいわ。あとは自分で解決なさい。
ただ、恋愛偏差値98の私には大体の状況が把握できるんだけど……多分あんたの場合、こっち側からガッ! といかないと碌な結果にならないからね?
ただでさえ見た目がこんななせいで、よっぽど自信家の男しか声かけ辛いんだから」
「……ガッ! といくって何だ?」
飯田は2人の会話をよそに、何も料理に手をつけられず、ぼうっと宙を見つめていた。
「で、でも……こんな人っているんですね。これだけ美人で、スタイル良くて、24年間、その……えっと……」
「バキバキの処女」
「バキバキ言うな!」
「あとこいつ、胸小さいからね。私勝ってるのそこだけだわ。飯田ちゃんも勝ってない?」
「あ、ほんとですね」
「ちょっと待て。お前ら。突然セクハラのラインを大股で踏み越えて来るな」
ガヤガヤとした喧噪に、3人の会話が溶け込んでいく。
葉月はジョッキを置いた。先の空間をどこともなく見つめ、呟いた。
「――ガッ! と行く……」
――――
「≪火炎輪≫発動!」
那韋斗の宣言後、空中へぐるりと炎の輪が出現した。
≪フレアライオン≫とともにそれをくぐると、体の下でたてがみの温度と光度が上がり、青くなる。
「『紅炎(プロミネンス)バイト』!!」
強化状態で≪呪傷の狂戦士≫の喉笛に牙を突き立て、消滅させた。
そのまま獅子を駆って「草原陣営」宝庫の奥へ駆けていく。炎の熱が絡んだ風が顔の横を流れていく。
「“≪王国を守る者≫”が現れました」
メッセージと同時に、何もない平原へ巨大な影が落ちる。那韋斗は首をほぼ直角に上げた。それでも全貌が見えないほどの岩の巨人。
(なんか……
だんだん押せるようになってきた……)
毎日、何時間もこの「課題」に明け暮れている。夕食も、朝食も、睡眠も取らないこともあった。しかしそれも段々、苦にならなくなってきた。
(わかってきた。このAIは『俺』だ)
振り下ろされる圧倒的な拳を避け、≪王国を護る者≫の腕に跳び乗る。
(しかも、俺の思考のさらに先――
これは、「俺がなりたい俺」なんだ。俺が最も理想とする動きを繰り返している)
≪青白き刃≫の閃きが空を裂いた。額の文字を破損させ、最小消費で≪王国を護る者≫を攻略した。膨大な質量を持つ体がゆっくりと倒れ伏す。その前に那韋斗と≪フレアライオン≫は草原に戻ってきた。巨体の背が地面につくまでにまだ時間がかかる。
(俺の望む動きの、「脆さ」がわかる)
『よしよし。いいぞ』
≪赤き王の卵≫の、まるで慣らした動物を褒めるような声が聞こえてきた。
『ここまで2ターンしかかかってねぇ。
これが最後のターンだ』
目の前に現れる。2体の従者は無言のまま威圧感を放っていた。
≪無君の騎士≫とそして――
≪鉄槍竜(ランスドラゴン)≫。

正面から敵プレイヤーとして見ると違和感が凄まじい。しかし、やがてそれも集中によって意識の奥へ消えていく。
そこでようやく≪王国を護る者≫の全身が地に崩れ伏した。轟音と衝撃波が広大に広がっていく。
それと同時に、切り札たちの槍先と光線が那韋斗の体へ殺到した。那韋斗は瞬きもしなかった。
「“全ての財宝カードを収奪しました。あなたの勝利です。テストゲームを終了します”」
メッセージが表示された。同時に草原の光景が消え、那韋斗は「管理室」に戻ってきた。
荒立つ呼吸を整えきれない。頭の奥に鈍い疲労のようなものを感じる。脳をずっと酷使していたからだった。
那韋斗は額に流れる汗を拭うこともなく椅子へ倒れ込むように座った。
机の上に置かれた赤いカードを見つめる。カードもまた那韋斗を見つめ返した。
『この「試練」を突破できたのはお前で3人目だ。4人中3人。
わかるか? 俺様は総ての魔術師の可能性を視ることができる。この無尽の多重世界に在る、過去も、未来も。
魔術師やその資質を宿す者など、塵の数より多く、数えることも能わない。
その中で「問う」に値したのが4人だ』
赤いカードは静かに語り続けた。
『ひとりは辿り着く前に、運命を予見して自ら死を選んだ。
ひとりは「目醒めた」後で、愛しくも挑んできたので、俺様の手で殺してやった。
そしてもうひとりは、生き残った。多分今もまだ、どこかで生きている。
そう遠くない先で、出遭うことになるだろう。俺様とも、お前とも』
語るカードの声はどこか愉しそうだった。
『そして最後の一人がお前だ。
さして何の疑問も抱くことなく、たった28日でこの試練をやりおおせた。俺様がこれまで出会った中で間違いなく、最も才高き者。
お前とかつて遭うことができていれば、優秀な「右腕」に仕立て、俺様は総てを手に入れることができたかもしれない。くく……それこそが今、俺様へ与えられている最大の罰ということだな』
那韋斗は何を言われているのか理解できなかった。≪赤き王の卵≫は笑い、その後で一つの問いを呟いた。
『さぁ……
お前は一体、どんな「破滅」を辿るんだ?』
そこで話が終わったのが那韋斗にもわかった。今日はもう、何を問いかけても答えないようだった。
――――
(ね、ねむい……)
翌日、那韋斗は腫れぼったいまぶたを抱えたまま、バスで駅前に来ていた。
葉月から「“≪人馬一体≫の対価を思いついたので来られたし”」というメッセージが届いていたからだ。
(“来られたし”)? と思いながら約束の場所に着いた時――
一瞬で眠気と他の思考が吹き飛んだ。
「!?!?!?」
エスカレーター横に葉月が立っていた。
口が利けなくなってしまう。
高級感のあるオフショルダーの白のブラウス。下はライトグリーンのマーメイドスカートで、腰のシルエットが美しく出ている。スカートであること自体葉月には珍しいことだった。
靴は複雑なクロスストラップのハイヒールで、表面が黒く光沢を持っている。
耳には真珠のイヤリング。爪は手も足も両方、桃色にネイリングされていた。
髪も毛先にウェーブがかかっている。顔も丁寧にメイクされ、もともと持っていた美貌がさらに輝度を増していた。見ているだけで現実感が失われてしまう。
那韋斗の視界にいる全員が葉月を見ていた。凄い。本当に全員だ、と那韋斗は首を左右に動かした。男も、女も、学生も、お爺さんも、お婆さんも、突然地方都市の駅前に現れた一級芸能人のような美女に意味がわからず唖然としてしまっている。
葉月がこちらに近づいてきた。コツコツというヒールの音。耳の白い真珠が僅かに揺れた。
口を開いたままの那韋斗へ口を開く。
「こ、こんにちは……」
何でそっちが緊張してるの?? と那韋斗は呆然とした。
駅前のイタリア料理店でパスタを食べた後、タクシーで移動していた。
車内で隣同士にいると甘い香水の匂いが漂って来る。万が一にも指先同士、太もも同士などが触れ合ったりしないよう、那韋斗は全身を硬直させて細心の注意を払っていた。背中が脂汗でびっしょりと濡れ尽くしている。
よれよれのTシャツ姿の自分との格差などもはやどうでも良くなるほど、全てが意味不明だった。せめて、「≪人馬一体≫の価格の20万円分おごらされる」という話であってほしい。そうであってくれ。と那韋斗は神にもすがる思いで祈った。イタリア料理店で葉月がおごると言ってきたのを何とか割り勘にまで説き伏せた時点でかなり望み薄だったが。
「あ、は、葉月さん!」
「な、何だ?」
緊張して言えば、さらに緊張して返された。何が何だかわからない。
「え、えっと……り……≪立体幻影ホログラム≫!」
「?」
何もピンと来てない顔だった。那韋斗はめげなかった。
「≪歪んだ時の扉≫! ≪赤鬼青鬼バッテリー≫! ほ、ほら! 葉月さん!」
「……何を言っている?」
真面目に問い返され、那韋斗は涙目になった。
「≪神の一喝≫が対象をとれない下級魔術カードの言い合い勝負ですよ! ほら! 先週、葉月さん、≪神の一笑≫で≪ドラゴンの嘆息≫が出て来なくて僕に負けた時、「≪神の一喝≫なら負けん!!」 ってあんなに息巻いてたじゃないですか!」
葉月は冷たい目を那韋斗へ向け、手を向けて話を遮った。
「すまん。今日はそういうのじゃないんだ」
(「そういうのじゃない」って何!?)
「そ、そういえば……明日が例の『決闘』の日じゃなかったか? あの気持ち悪い男と戦う……」
「……」
那韋斗は言葉を失い立ち尽くしていた。どう考えても、水槽の中で舞っている熱帯の魚たちよりも、青緑色の光に映し出されている葉月の姿のほうが圧倒的に美しかった。
到着したのは水族館だった。最近そういえば、リニューアルしたとかでニュースになっていた気がした。
灰色の真新しい床に水の揺らぎと魚たちの影が投射されている。
「あ! え!? い、いや……そ、そうでひゅね……
あ……えっと……でもまぁ、だ、大丈夫ですよ。何の音沙汰も無いですし!
――あ、そ、そうだ! 僕とうとう、あの赤いカードが出す試練みたいなのをクリアできたんですよ! 特に何か変わった感じは無いですけど……」
「本当か!? いやぁ、やっぱり凄いな、君は!
……い、いや。違うな。そういう話も良く無い……
カード関連の話はちょっと……」
葉月は一人でぶつぶつ言っている。明らかにいつもと様子が違う。那韋斗は不安のあまり泣き出しそうだった。
とはいえ、楽しくないかといえばそうでもなかった。
クラゲが展示されているフロアは床と天井までもがガラス張りになっており、発光しながら何千という数のクラゲが暗い水の中に漂っていた。葉月と2人で未知の時空の宇宙に浮かんでいるようで、思わず時を忘れてしまうほど幻想的だった。
マクガフィン以外の会話も弾むようになって、那韋斗はようやく平静を取り戻し始めた。お互いの学生時代の話、優哉のこと、那韋斗の実家の話、葉月の就職活動の話、那韋斗の職場での話――
「う……うまっ……!」
夕方になると郊外へ移り、瀟洒な佇まいの創作料理店に入った。葉月が予約を取っていた。
和の要素が取り入れられた洋食、あるいは洋の要素が取り入れられた和食などが扱われていた。
1品目のポテトサラダには魚の肝のソースがかかっていた。マヨネーズと卵のまろやかな味に、風味の濃いソースの濃厚な旨味が交じり合っている。頬張ると口の中がマイルドな陶酔感に包まれた。
その後も、とん、とんと料理が並んだ。店員が薦めてくる場合もあったり、自分たちで頼む場合もあった。
「それで、結局ラフテルっていうのは、何か別の世界に行く巨大な船のことだと思うんですよ。考察系YouTuberが言ってるのも見ましたし……連載ももう46年だからかなり佳境ですよ」
「いや私は今週出て来た奴が何の実を食べてるのかのほうが気になるな……って待て! 何でワンピースの話をしてるんだ!? 戻って来てるぞ!! 一旦リセットだ!」
(戻って来てるって何……?)
那韋斗はまた混乱してきた。
いつも葉月と一緒に過ごす時は、「自分と同い年の少年」と脳に認識させて平常心を保つ裏技を活用していた。
しかし今は、一瞬でもそのバイアスが取り払われると、洗練された趣の個室席で話の合う美女と美味しい夕食を共にしているという、到底受け止められない現実が襲ってくる。
とにかく那韋斗は食事を進めていった。味がわからなくなるような状況だったが、それでも貫通してくる豊かな味わいの料理ばかりだった。
明太子としめじのミルクリゾット。カブのソースをかけた鴨肉のポワレ。トリュフのソースと豆腐の和えもの。今日特別に入ったと説明された和牛はしっとりと完璧な火入れがされており、噛むととろとろに柔らかく、舌がしばらく動かせなくなるほどの旨味が広がった。多分人生で口に入れた中で最も美味な物体だと那韋斗は思った。
葉月がグラスを傾けた。赤ワインが口の中へ滑り込んでいく。
「え!? 葉月さん、飲めるんですか!?」
「ま、まぁな。いつもコーラばかりなのは甘くて美味しいからであって、別にアルコールに弱いわけではない」
店内には適度な音量で上質なジャズピアノが流れ続けていた。男子的な会話をやめてから、徐々に雰囲気が変質しているような感覚があった。那韋斗がこれまでの人生で一度も経験してこなかった種類のものだ。
「……あぁ!! ここのお店コーラありますよ。次頼みます?」
上ずったような声で言う那韋斗を前に、葉月はグラスを置いた。
「……あのな、那韋斗君」
少し拗ねたように声を出し、上目で那韋斗の顔を見た。思わず呼吸が止まった。
「私だって、たまには、こういうものに口をつけたい時はあるんだぞ?」
那韋斗は心臓に石をぶつけられたようになり、椅子に背をつけた。
今の葉月の表情と声は、あまりにも致命的な威力を持っていた。
「同い年の少年」のベールが一瞬で吹き飛び、視線を逸らさざるを得ない。
その後に出て来た料理はいよいよ完全に味がわからなくなった。出された黒ごまのアイスクリームも甘さが感じられず、冷たさだけが舌に染み込んできた。
最後に辿り着いたのは夜の「城」だった。
城壁の白の美しさが際立つよう、幻想的にライトアップされている。
「この城はな、姫路城や松本城のように有名と言うわけではないし、かなり小型の城なんだが、国内でもかなり特別な造りになっているんだ。まず、石垣だが、野面積みと打ち込み接ぎを組み合わせた独特の技法で組まれている。ほら。あそこの野面積みの所も、一見ばらばらに見えるが実に計算され尽くされた配置で積み上げられているだろう? あの安土城を手掛けた穴太衆と同じ系譜で、全体としては輪郭式になっているんだ。5層6階のしっかりした造りだ。鉄砲狭間が敵から視認されにくい破風や懸魚の裏側近くに数多く設けられている点が特徴で、壁も一部鉄板張りになっていることからも、同時代に建城された城の中では極めて実戦的なものになっている。廃城令の際に破却を免れたのはまさに奇跡と言えるだろう。ほら、見てくれ。天守閣の造りが犬山城に似ているのはわかるか?」
「わからないです……」
全くついていけない種類の高速詠唱を聞きながら、那韋斗は少しほっとした。ここに着いてから葉月の緊張も解け、少しいつもの雰囲気に戻って来た。
しかし逆に葉月は那韋斗の様子を見て冷静になり、我に返った顔になった。
「す、すまん……違ったよな、『城』は……
夜だったら雰囲気的にも適切だと思ったんだが……」
葉月は諦めたようにため息をついた。
「昼はもう18回くらい来てるからな。自分の宝庫に取り入れようと、構造をノートやスケッチブックに記録しているんだ」
「や、やば過ぎる……」
思わず声に出てしまった。葉月はあきれ顔になった。
「何を言ってるんだ。この前見たあれのほうが引いたぞ。1冊1万円超えの、世界中の建築写真集の山。11歳の時にマクガフィンの構築研究のために最初の1冊を買ったというエピソードがもうおかしい。あの夥しい付箋の量にはぞっとさせられたぞ」
「いや、あれは敵の宝庫の細かい違和感を見分けるにはかなり重要なんですよ。
……見ててくださいね? 純和風の構築はマニアックすぎて今まで研究をおざなりにしてましたけど、この前葉月さんに教えてもらった20巻の全集が昨日届きましたから。勝ち越していられるのも今のうちですよ?」
むきになって言う。葉月は吹きだした。
「……あはははは!
やっぱり、楽しいな」
葉月は濠の周りに立てられた柵の手すりへ、両腕を重ねて寄りかかった。横顔のまま那韋斗へ話しかける。
「……自分語りをしてもいいか?」
「え!? ど、どうぞ……」
葉月は微笑んだ。
「私は君を尊敬するよ。この前2人で戦ったあの収戯でも、言っただろう?
……すまんな、あの時、何か盛り上がって、変な話をしてしまった」
夜の闇が涼しかった。葉月の姿が街燈に照らし出される。
「17歳の時に父親を亡くした。
私が全日本で入賞し、世界大会へ行くはずだった、まさにその頃のことだった。
父はずっと治療のために入院していたから、ある程度の覚悟はしていたんだが……とても大会になど出られる精神状態ではなかった。
まぁ、出なかったのはいいんだが……色んなごたごたが終わった後で、『マクガフィンのプロになって世界で活躍する』という夢まで消えてしまったんだ。ふっ、と、煙みたいにな。
私は自分でもよくわからず、とりあえず、家族のために夢へ見切りをつけたんだ、という形で説明をつけた」
葉月は城を見ながらため息をついた。
「だが私は、最近になって――その決断をしたことで安心していた自分の心の動きに気づいた。そしてそれをずっと恥じていた。
結局私は、その程度の弱い憧れしか持ち合わせていなかったんだ。
それが哀しかった。今もずっと働きながら『マクガフィン』を続けているのは、心の底から愛しているというよりも、自分自身への失望の裏返しのようなものなんだ。
どうだ? こんな私をどうしようもないと思わないか?」
葉月が那韋斗のほうを見て言った。那韋斗はベンチから立ちあがり、葉月と横並びになった。
「葉月さん、俺の事、変だと思いませんでした?」
同じように城を見ながら那韋斗は喋る。
「これだけプロになるとか何とか言っていて、2031年の関東大会から12年間、1度も公認大会に出てないんですよ?
ずっとネットでレート戦したり、小さなカードショップの大会で勝ったり……ネットなんてただ実験や構築の仮回しで潜ってる人間が殆どなんだから、いくら戦っても本当の実力なんてわからないんですよ。
あの、Tシャツがダサい奴と戦った時に、はっきりとわかりました。
俺はずっと、逃げ続けてたんです。関東大会の決勝で負けた12歳の時、相手とあまりにも差がありすぎたから、自分の実力と未来が確定して、全てが終わってしまったような気がしました。
もう一度あの時と同じ気持ちを味わったら、本当に立ち直れないかもしれない。
そのことにずっと怯えながら、気づかない振りをし続けていたんです。
プロになる、プロになるってそればっかり言いながら、実際にはそこから逃げ回ってる……こんな僕こそ、どうしようもない奴ですよ。そう思いませんか?」
葉月はじっと那韋斗の顔を見ていたが、急に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「どうしたんだ? 突然自分語りなんかして」
「ちょ……酷いですよ! 葉月さん!」
「あははははは! すまんすまん」
葉月は優しい目を那韋斗へ向けた。
「でもやっぱり私が君を尊敬するのは変わらないよ。『マクガフィン』で何度も戦っているんだからわかる。逃げても、もがいても、君は求める場所に顔を向け続けている。
あとは……まぁ、真面目な話をするのもいい機会だからこれも言っておくか。優哉のことも本当に感謝している。那韋斗君と会うようになってから、関係が見違えるほど改善された。あいつも父が死んで以降、周りを冷めた目で見ることが多かったが、それもかなり和らいだように思える。まだ危なっかしいが……
……だから、ずっと宙吊りになってる≪人馬一体≫は、その礼の気持ちと、今日付き合ってくれたことへの対価として受け取ってくれ」
葉月が微笑んだ。那韋斗が慌てて口を開いた。
「い、いや。駄目ですよ。
そりゃ、僕だってあんまりぐちゃぐちゃ言うのはよくないって思いますけど……優哉のことだって別に何をしてるわけでもないですし、今日のことも、そんな、対価なんて受け取れるわけないじゃないですか!
葉月さんと一緒にいると、それだけで本当に楽しいんですから」
「……!」
葉月が急に黙った。真顔になってじっと濠の水面を見る。
「……ていうか葉月さん。
体調とか大丈夫ですか? 今日駅で会ってからずっと、耳真っ赤っかじゃないですか。今もめちゃくちゃ赤くなりましたし。どうかしました?」
「!!」
葉月が体をびくっ! っと反応させた。ばっ、と両耳を抑え、そのまま硬直する。
那韋斗が困惑していると、責めるような目つきで那韋斗を見た。
「あのな、那韋斗君。いい加減にしてくれ」
「えぇ!?」
動揺する那韋斗に向けて、耳を隠したまま葉月が詰め寄った。
「あと、これもずっと言いたかったんだが……
いい加減、敬語をやめろ! 何度言ったらわかるんだ!
……よし決まった! ≪人馬一体≫の対価は、強制的に敬語をやめてもらうという内容にする! いいな? わかったか?」
猛然と詰めてくる。耳はまだ真っ赤なままだった。
「い、いや……そんなこと言われても……難しいですよ……」
ぎろっ! っと葉月に睨みつけられ、那韋斗は言葉を失った。
「もう! ……そろそろ帰るが、私はお手洗いに行って来る!
戻ってくるまでに、ちゃんとタメ語で話せるよう、心の準備をしておけ!!」
ずん、ずんと向こうにある公衆トイレの方へ歩き去っていった。曲がり角を折れて姿が見えなくなる。「えぇ……」と那韋斗は呟いた。
那韋斗はしばらく橋の欄干で待っていたが、暇だったのでその辺をぶらぶらと歩いた。
城の門は閉め切られており、閉館時間は大分前に過ぎている。
門からこちら側までの間に一本の橋がかかっていた。最近改築されたのだろう。明らかに城と年代感が合っていない。板を踏んで、何とは無しに橋の上へ進んでいく。
(……ん?)
那韋斗は橋の真ん中に目を凝らした。
欄干から欄干までの距離が丁度均等となる床版の上に、「マクガフィン」の山札が置いてあった。
(……え? え?)
近寄ってもう一度見て見るが、確かに「マクガフィン」の山札だった。スリーブにも入っていない。
(何だこれ……)
忘れ物としても意味不明だった。落としたのなら散らばっているはずだし、置き忘れるにしても、こんな橋のど真ん中にトレーディングカードゲームの山札を置くシチュエーションが思い浮かばない。
(城の管理の事務所……はもう開いてないか。じゃあ、交番か何かに……)
拾おうと手を伸ばした。そこで、那韋斗はふと思い出した。
――「なんか、道端に落ちてて、拾うとどこかへいなくなっちゃうマクガフィンの山札があるんだって」
頭の中に新聞で見た見出しの文字が思い浮かんだ。「呪いの山札」。
しかしその時にはもう、山札の端に指先が触れてしまっていた。
「!?」
目が張り裂けそうになった。夜が一気に昼になる。
実際にはそこまで明るくないのに、光量の差で脳がショックを受けてしまう。
濃い土の臭い。鳥が鳴いている。周囲に、日本とは明らかに異なる植生の木々や植物が溢れかえっていた。
温度も湿度も高く、空気全てが、世界ごと全て入れ替わってしまったように違う。那韋斗はこれまでの経験から瞬時に察知した。
(マクガフィンの「宝庫」だ……!!)
何が何だかわからないが、反射的に手を前にかざした。
定められたモーションに応じて木の板、「ゲームボード」が目の前に現れ、宙に浮いた。上には見慣れたスリーブに包まれた自分の山札が置いてある。
このセットが出たということは、やはり「マクガフィン」の中であることは間違いない。
(でも何だ? これは? 収戯なのか??)
「えぇ~~~! 『魔術師』じゃん! 怖~~~!!」
女の声がして、目を向けると、那韋斗は――
「えぇ!?♡」
愕然とした。
女性型モンスター。美女の容貌をしている。カード名は≪お水絞りのドリアード≫。
しかし、今の姿はあまりにも異様だった。
パンパン💚 パンパンパンパン💚 パンパンパンパンパン💚
「ん゛む~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!☠😭♡♡」
裸の男が≪ドリアード≫の胸に顔を埋めながら、必死に腰を振り続けている。
パンパン💚 パンパンパンパン💚 パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン💚
その腰の振り方は、同じ男として恐怖を覚えざるを得ないほど悲哀に満ちていた。
「ん゛~~~~~~~~💚 ん゛っ💚 ん゛っ💚 ん゛ん゛~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!☠😭♡♡」
胸の中で絶叫を上げ続けている。何を言っているかは全く聞こえないが、本気で号泣していることがわかる。
「え~どうしよっかなぁ~」
パンパンパンパン!💚 パンパンパンパンパンパンパンパン!!💚
「まぁこのフィールドなら、大抵の従者より私たちのほうが有利に……」
「ん゛ん゛~~~~~~~~~~~!!♡☠😭」パンパンパンパン💚
「……あ! しまった! 顕現する姿、間違えた!!」
すぐに≪ドリアード≫と裸の男の姿がぼやけ――
その後で、男の姿が消え、衣服をちゃんと身につけた≪ドリアード≫だけが姿を現した。

「くすくす💚 あっちは『確定済みの運命』の方の姿だった💚
私の寿命の10分の1……1000年くらいの間、おっぱいで森林浴しながらお水を捧げ続けるキツツキ生活💚
一度破滅の道を辿った後は、もう何があっても助からない💚 それが誘惑に負けた獲物の定め……💚」
≪お水絞りのドリアード≫が冷酷な表情を浮かべ、舌なめずりをした。那韋斗はわけがわからないといった顔で突っ立っている。
≪ドリアード≫が視線を向けた。表情は、ぱっ、と明るいものに戻っている。
「あ💚 もしかしてわかってない?💚
……じゃあ、魔術師の中でも新人さんなんだねー💚 ということは、もしかしなくても楽勝じゃーん💚」
にっこりと笑い、自らのおっぱいを腕で持ち上げ、見せてくる。「たぷんっ💚」と服の下で変形する。
「ひっ♡ ひいぃぃっ♡」
那韋斗の視線がそこへ否応なく向かってしまう。
「ねぇ💚 こっち来てぇ💚
キミもおっぱい好きでしょー?💚 このおっきなお胸の間で食べてあげる💚
いぃ~~っぱい腰振って、気持ち良くなれるよぉ~~~?💚 私にお水ちょーだい💚 クスクス💚」
「ひっ♡ ひっ♡」
「ひいいぃぃ~~~~~♡」
那韋斗は戦闘後、何とかその場を後にした。頭の中は≪ドリアード≫のおっぱいでいっぱいになっている。後ろ髪を引かれる思いだったが、いつものように≪プレートラプター≫へ跨って、森の中の道を駆けていった。
残された森の地面。
≪ドリアード≫の体が縦に真っ二つとなり、地面へ仰向けに倒れていた。
双眸は見開かれたまま青空へ向けられ、顔は驚愕と恐怖で溢れきっていた。
「な……なに……あの……魔……術師……
ば……け……も……の……」
その呟きを残した後、≪お水絞りのドリアード≫は跡形も無く消滅した。
かちゃかちゃと鉄が鳴る。
≪プレートラプター≫は体勢を低くし、するすると地面を進んでいった。
那韋斗は高速で流れる景色の、右に左に、ちらちらと視線を向けた。
(森フィールド……いや、空気の閉塞感からして多分違うな。微かに空調の音もする。地面もかなりぬかるんでる……)
「≪増加の魔法陣≫発動。≪兵站≫を使い、山札の中から≪無限の食糧庫≫を発動」
那韋斗は2枚続けてカードを発動し、そのままゲームボードに目を向けた。自分の方の宝庫には動きが全く無い。
(攻め気が無い。高確率で、あの≪王国を護る者≫を使っていたプレイヤーと同じ、迎撃特化型の宝庫だ)
そして、最も気になっている上空の様子に意識を移した。
視界に入っているだけでも十数個、「じょうろ」が木よりも高い上空に浮かび続けている。
赤、ピンク、オレンジ、緑色……プラスチックのような素材で、「ゾウさん」を模したファンシーな形をしている。
ひとりでに動き、傾いて、透明な水のようなものをしゃーっとそこら中に降らせていた。雨と呼ぶには規模が小さいが、それでもじょうろの数が多いので十分な「水やり」になっている。
他にも、よく観察するとそこかしこの土の上に黒いパイプが伸びており、数多くの穴が開いていた。一定の間隔で、そこからぷしゃーっと透明な水が周りに撒かれていた。
(なんか……)
那韋斗は困惑し、思わず顔をしかめた。
(変な臭いするな……何の水だ?)
那韋斗はそこで思考を中断し、≪プレートラプター≫に停止の指示を下した。減速し、完全に静止すると、その足先1cmの土の上に植物の細いツタのようなものが這わせてあった。
「は!? え!?」
「う゛えぇっ!? ひぃ~~~ん! 何でわかったの……!?」

那韋斗が横を見ると、白い素肌を晒す2体の女性型モンスターが立っていた。体には蔦が巻きつき、その先端からはみずみずしい花が咲いている。
(うっ!?♡ こ、こいつらも……♡)
どちらも14歳くらいの見た目だろうか。透明感があり、「美少女」という呼び方では足りないほどの優れた容姿だ。
そのあまりにあけすけに晒された素肌に気を取られて、肝心なカードの情報に気づくのが遅れた。
「こ……こいつら、『ユニット従者カード』か!」
≪アルラウネツインズ 啼泣のアルル&号哭のブルーメ≫。ユニット従者カード。
2体分の効果と攻撃力、体力、2回行動権利を持つ代わりに、1カード分としてしか移動できず、どちらか片方が倒されたら消滅扱いとなる、使いどころを選ぶカード種だ。
「チッ! 転んだらチンポを私の花で包んで滅茶苦茶『雑巾絞り』してやったのに💗! クソムカつく!!」
「えぇ~ん! ぐすっ……ダメだよアルル。この前なんてたった1ヶ月でカラカラになっちゃたんだから……お水は大切にしないと~……」
「おいお前! 降参してさっさとチンポ出せオラッ!」
「お、お願いしますぅ~……! 大人しくしてくれたら、とっても気持ち良くしてあげますから……💙 ね? ね?💙」
2体同時に近づいてくる。
那韋斗は思わず恐怖に駆られ、≪プレートラプター≫を後ろへ跳躍させた。
「え゛ぇ~ん! 哀しいよぉ~!
……抵抗すると、他の人たちみたいに……とっても辛ぁ~い『水やり』をすることになっちゃうのに……💙」
右脇の木々が、まるで生きているかのようにがさりと割れた。那韋斗に奥を見せつけてくる。
「え!? ひいいぃぃ~~~~~~~~~~~!!♡」
那韋斗は悲鳴を上げた。
そこでは……
認められるだけで5、6名、裸に剥かれた人間の男たちが涙と鼻水を混ぜこぜに出しながら悶絶していた。
どの男も両手両脚をツタで縛られていて、股間にもカラフルな異形の「花」が纏わりついている。傍でそれぞれ1体ずつ、美しいアルラウネモンスターたちが嘲笑したり、「応援」したりしていた。
「ほぉ~ら♡ ガンバレガンバレぇ~~~♡ もっとまんべんなく撒かないと、芽が出て来ないよぉ~?♡」
ウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネ♡♡
「い゛や゛っ♡ い゛や゛あぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~!!!!!!♡♡」
ぴしゃぴしゃぴしゃ💙 ぴしゃぴしゃぴしゃぴしゃ💙💙
その男は、那韋斗と同じ年ごろの日本人だった。ピンクに白の斑模様が浮かぶ花に、両側からペニスをサンドイッチされている。
先端からは夥しい量の透明な液体が出続けていた。最初は尿かと思ったが、それよりもかなり「とろみ」があって、ぽたぽたと広範囲に、雫となって降り続けていた。
赤い髪の≪啼泣のアルル≫が那韋斗に顔を近づけ、囁いてきた。
「ほら、よく見ろ💗 あれが『水やり』だ💗
チンポを挟み込んでるのはオーソドックスな『搾精花』。一年生で、肉厚の花ビラはチンポに触れると、ああやって徹底的に搾り出す動きを加える💗 あんな風にされると、並みの男は全く保たない💗 平均5~6秒で、サンドイッチの中にマヨネーズソースがたっぷり出てくる💗
ただし……あれは、品種改良を加えられているがな💗」
ぴしゃぴしゃぴしゃ💙 ぴしゃぴしゃぴしゃぴしゃ💙
10秒経っても、20秒経っても、ペニスからは透明な汁だけが大量に出続けていた。ピンクの花びらと花びらの隙間に水気だけが注がれる。男は本気の泣き声を上げていた。
「お゛ね゛がい゛♡♡ お゛ね゛がい゛い゛い゛い゛い゛いぃぃぃ~~~~~~~~~~♡♡ だじだい゛!!!😭☠ だじだい゛よ゛おおぉぉ~~~~~~~😭☠♡♡ イがぜでえ゛えぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~!!!!!!♡♡ な゛ん゛でも゛ずるっ!!!♡♡♡😭☠ な゛ん゛でも゛ずるがらああ゛あああぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~!!!!!!!♡♡♡😭☠」
花弁の一枚一枚に筋肉があるかのようだった。百を超える指か舌から責められているのと同じだ。滑らかに妖しくざわめき、巧みにペニスをなぞり上げていた。ずりゅっ♡ずりゅっ♡と上下に、隅々まで刺激を耐えている。男なら誰でもわかる。絶対に射精を我慢できない類の動きだ。
しかし男は腰をひきつらせ、透明な汁だけを延々地面に与え続けていた。一回も、起こるべき、「腰がびくっ💛 びくっ💛 っと跳ねて白い液体をペニスから放出する」という動作が起きない。紙の筒の中に牛乳を注ぎ入れ、それが全て水に変わって出て行くマジックを見ている気分だった。
男はうずくまってツタをぴ~ん♡ と引っ張って、号泣している。どんな子供でもここまで泣きじゃくることはないのではないかと思うほど、びしょびしょに濡れ尽くした顔貌だった。
「あれは搾精花と同じ動きでありながら、絶対に射精ができない特別な品種。『搾水花』だ💗 ……ほら、ほかにも珍しい花がわんさとあるから、ゆっくり『お花見』して行けよ💗」
那韋斗は震え上がりながらその横を見た。
仰向けにされた男のペニスに、ランのような白い花の一つが被さっている。それは勢いよく上下に動きまくっていた。
じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡
「お゛っ!☠♡ お゛っ!☠♡ お゛っ!☠♡ お゛おぉぉ~~~~~~~~っ!☠♡ お゛っ!☠♡ お゛っ!……」
ランの先端には薄紫色の唇がついており、行っているのは紛れもない「濃厚フェラ」だった。
じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡ じゅぽっ!♡じゅぽっ!♡
その吸引と舌使いの物凄さは、男の腰が上にぐいっ!♡ ぐいっ!♡ っと浮かされていることからも第三者へ容易に伝わってくる。
ぴゅるっ💙 ぴゅるるるっ💙 ぴゅくぴゅく💙
「おお゛っ!! お゛オお゛おおお゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!♡☠😭」
窄まるランの口の中で、男はずっと自分の期待するものを出せていないようだった。よく見ると、ペニスを咥えているランは、「がく」の部分が膨らみきって後ろに垂れていた。色が白いのでサンタクロースの袋のようだ。たぷんっ💙 と地面の上でたわんでいる。
傍に立っているアルラウネが残忍な笑みを浮かべている。
「1つの花の容量が10リットルだよぉ~~?♡ ほらほら♡ もっとテキパキお水を出さないと♡ 順番待ちは長いんだから♡」
ランに見えた花は、大きなスズランだった。一本の茎に10個の花がぶら下がっているのが見えた。残りの白い9個の花は同じように薄紫の唇を有しており、待ちきれないというように、空中でがぽっ!♡ がぽっ!♡ っと、凶暴なエアフェラチオを繰り返していた。
(ひっ♡ ひっ♡)
その男の横では――
「ん゛~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡ んっ♡♡ んっ♡♡ んん~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡」
こひゅ~~~~💗 こひゅ~~~~💗 こひゅ~~~~~~💗
「はぁい♡ 吸ってぇ♡ 吐いてぇ♡ 吸ってぇ♡ 吐いてぇ♡」
容態が急変した患者のような吸気音と、のんびりとしたアルラウネの声が響き続けている。
男の顔には人工呼吸器とCPAPが合体したような形状の、ごつい桃色の花が吸着していた。
花はアルラウネの股間から伸びていて、何らかの細かい粒子がばふっ💗 ばふっ💗 っと顔の外に漏れ出ている。
男の顔は見えないが、否応なく、顔の花が供給する何かを吸い込み続けているようだった。肺の位置が激しく膨らんだり萎んだりを繰り返し続けている。溺れているように脚をジタバタと動かすが、ツタで捕らえられて逃げられない。
すっかり長くなった両方の乳首にはさっき見たフェラチオ上手なスズランが、ジュッポ♡ ジュッポ♡ と濃厚な乳首フェラを続けている。空中に放り出されているペニスからは、ぴゅるるるる💙 ぴゅるるるるる💙 と、大量の、本当に尿に見えるような量の我慢汁がスプリンクラーのように噴射され続けていた。
「あいつはアルラウネの花粉を吸い続けてるんだ💗 みんなそれぞれ微妙に成分が違うが、この世の物とは思えない、甘~い香りがするんだぜ?💗 それに、尿道の中がむずむずして、緩ぅ~~~くなる『アレルギー性物質』入りだ💗 鼻水が止まらなくなるみたいに、ペニス水がたっぷり出てくる💗 ほら💗 お前も嗅いでみるか?」
アルルが自らの赤い花を那韋斗の顔へ近づけてきた。まだ離れているのに、ふわぁ~~~💗💗 と思わず呆然自失となってしまう濃厚な香りが漂って来る。
それに確かに、ペニスの芯が「むずむずっ♡」となる妙な感覚があった。
「ひっ♡ ひっ♡」
那韋斗は鼻をつまんで塞ぎ、先ほどの男へ視線を戻した。確かに、重度の花粉症に苦しんでいる人の姿が重なる。しかし、違っているのは「くしゃみ」を起こしているのが「腰」であることだった。乳首へのバキュームでとどめを刺され、びくっ♡ びくっ♡ びくびくっ♡ っと何度も何度も、突然跳ねるように腰が上下し、ペニスの先端からとろりとした先走り汁が宙を舞い続けていた。
「んん~~~~~~~~♡ んっ♡ んっ♡ んっ♡ ん~~~~~♡」
「ちゅ……♡ んふっ♡ んっ♡」れろれろ♡ れろれろ♡ れろれろれろれろ♡
その横も悲鳴は控えめだった。アルラウネと男は、裸で抱き合って、延々、口の中で甘く舌を交わし続けている。
かなり巨乳のアルラウネなのでおっぱいが男の胸板に押しつけられて変形している。
一見どんな男も羨ましく思う状況だが、男の顔から滝のように流れる涙と、下半身の様子で差し引きマイナスになっていた。
ぢゅぽっ♡ ぢゅぽっ♡ ぢゅぽっ♡ ぢゅぽっ♡ ぢゅぽっ♡ っとペニスをずっとアルラウネの花が摩擦している。大きな房のような花で、とても力強い往復だった。
しかし、その腰の様子は、快楽に浸っているというよりも、もうこんなことやめてほしい、この状況から逃れたいということを、塞がれている口に代わって必死に表現しているかのようだった。
ひくひくひくっ♡😭 っと腰が度々痙攣する。だが、男の顔に射精で恍惚とした様子は現れない。眉根が極限まで細くなり、瞳が落ち窪み、体中から抽出された苦しみの汁をペニスから吸い上げられているように感じられた。
「え゛えぇ~~ん……ああいうのが好みなのぉ~? お兄さん、不細工だから嫌だなぁ……
でも、しょうがない……」
泣きそうな声で、青髪長髪のアルラウネ、≪ブルーメ≫が言った。
「これも『お水』をもらうためだから……あれよりも凄ぉいの、長い時間してあげるよ……?💙」
れろぉ~💙 と、青い舌が見せつけられた。
「私たちの口から出る蜜は、ほっぺが落ちるほど甘くて、栄養たっぷり……💙 飲めば飲むほど、精液がとぉ~っても濃くなって、出したくてたまらなくなるの💙
……ほら💙 『これ』も被せてあげる💙 私のお花💙」
見せつけられた青い花は、アルルの物とほぼ同じ形で、大きな百合に似ているが、花弁が多く、肉厚だった。爽やかな香りで、鮮やかな発色をしている。そして――
「こうするともぉ~っと綺麗でしょ?💙 ね?💙」
くちゃ……💙 と音がして、花弁の奥の空間が開いていく。
那韋斗は目を疑った。綺麗な花びらの代わりに現れたのは、もっと複雑で肉厚なヒダを持つ穴だった。糖蜜のような粘液で覆われ、何重にも糸を引いている。
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ💙💙
「ひいいぃぃいいぃぃ~~~~~~~~♡♡」
耳の奥に絡みつくようなおぞましい音を立てながら、中のヒダが一斉に運動を始めた。中に入った棒状の「何か」から養分となる液体を誘い出し、吸い上げるという仕組みを容易に頭へ描くことができる。
そして、どこか冷酷な印象も受けた。植物の維管束を思い出す。水を汲み上げ、必要な部位に送り続けるだけの機構。動物の食事とは根本的に異なる冷徹な気配を感じる光景だった。
「私の花はゆっくりおちんちんを絞って、透明なお水をドリップし続ける『メソメソの花』💙 長い間泣き通しで苦しむから、私もいつももらい泣きが大変で……
アルルの凶暴な花はやめて、こっちにおちんちん突っ込んだほうがいいよ……?💙 キスもしてあげるし……ね?💙」
赤い短髪の≪アルル≫が横入りして、自らの赤い花を見せつけて来た。こちらも奥の肉穴が開き、ブルーメの物より狭く、激しく、ギュルギュルとした動きが寒気を憶えさせた。
「やめとけって💗 向こうは『もしかしたら射精できるかも♡』って思わせながらじわじわ甚振られる、すげぇ性格悪い花だから💗 こっちのほうが、ただず~~っと悲鳴上げときゃいいんだから楽だって💗
この『雑巾絞り』の妖花で、尿道の中を馬鹿にしてやるよ💗 ほら💗 思い切って突っ込んじまえ💗」
赤い花と青い花を近づけられる。二輪の美しい妖花を向けられ、甘く陶酔的な香りが鼻腔を満たす。
「ここは『我慢汁』だけを絞り出す、男の人にとっては可哀相な、植物系モンスターの楽園……💙」
「男の精気ってのはサキュバスとかならいざ知らず、私たちみたいな植物の精や搾精植物にはちょっと濃すぎるんだよ。
だから効率よく育てられるように、ここには生気を極端に薄ぅ~~~くして我慢汁だけを搾り出す『従者』や『罠』が集められてるんだ💗 よくできてるだろ?💗
奪われる精気が精液の1000分の1とかだから、その分、サキュバスとかに比べて、死ぬまで長ぁ~~~く、何十年もチンポ弄って貰えるって良さがあるぜ?💗 射精だけは絶対にできないけどな💗」
那韋斗は狂態を演じている男たちの様子を見た。
射精による放出感とオーガズムを一度も味わうことができず、延々我慢汁だけを吸い取られていて、全く幸せを見出すことができない。
「水」だけを排出させられ、重い睾丸の内部で、溶けたチェダーチーズみたいになった精液が粘着力の高い状態ででんぐり回って、切なさと快楽がたっぷりブレンドされ続ける。尿道を駆け抜ける精液の速さと太さ、それだけを頭の中に思い浮かべながら、実際に外へ出続けるのはしゃばしゃばの、何の快感も伴わない透明な、ちょっと温い水だけ。
この森で、生涯を終えるまでずっと――
「う……や、やめ……やめろ!」
那韋斗は困惑しながらカードを1枚突き出した。
「魔術カード、≪突風撃≫発動!」
風が吹いてくる。通常の「突風」と呼べるような度合いではない。
大木をもなぎ倒すほどの巨大な風の塊が、一方向に、苦しんでいる男たちと周りのアルラウネたちに向かう。
「「きゃー!💗💙」」
≪アルル≫と≪ブルーメ≫が可愛らしい動作で髪と花を押さえた。
当然、この≪突風撃≫は男たちを助けるためのものだ。
しかし――
男たちとアルラウネたちの姿は、ぼやぁ~~っと蜃気楼のように揺らぎ、消えてしまった。
「え? え? え?」
那韋斗は混乱して、暗い森の奥を見つめた。
「あはははは!💗 何お前! 魔術師の癖に、こんな基本的な事も知らないのかよ?
『確定』した人間の末路は、その時点で別世界の軸に移るから、何が起きても変えることはできないんだよ!💗
同じアルラウネを倒そうが、この森が消滅しようが、あの人間たちは何十年、何百年とあのまま💗
何カード1枚無駄にしてんだよ💗 バーカ💗」
そこで那韋斗は、数ヶ月前に≪幻魔の案内人≫のカードから聞いた言葉を思い出した。
――「同じ場所にいるように見えていますが、貴方とあの人間とは、全く干渉しあえない並行的な階層にいます。今は一瞬それらが重なって、一時的に姿が見えているだけです」。
「まぁこの森が消滅するなんて有り得ないけどな!
もうこれまで何百人と男を養分にして、どのモンスターも恐ろしく強化されてるから」
「え゛ぇ~~~ん! 可哀相! こっちが泣きそうになっちゃいますぅ……
だから、ここで私たちに投降してください……💙 悪いようにはしませんよ?💙」
2輪の花が、テントを張った那韋斗の股間へ向けて、ぐちゅぐちゅ💗💙 うねうね💗💙 と動いた。
誘惑に負けると、この中で延々、我慢汁を――
「いっ! いやっ! 嫌だあぁぁ~~~!!♡」
那韋斗は慌てて手札からカードを掴んだ。
「≪疾風(はやて)の行軍≫発動!!」
森の奥から風が吹いてきて、那韋斗と≪プレートラプター≫の背中を後押しする。騎乗状態の場合、ターン終了時に追加の移動を可能とする。突風を受けた帆船のように、那韋斗と≪ラプター≫は一直線に駆け去っていった。
「ま、待って~」
「は、速……」
アルラウネたちの声も聞こえなくなった。
那韋斗は一瞬で道の終点に辿り着いた。急ブレーキをかける。≪プレートラプター≫が爪のついた足を地面に噛ませ、ドリフトで急減速するような動きをした。
停止後に目の前をよく見ると、空中に扉の枠線のようなものと、金属のドアノブのようなものがあった。その横にはカードを通すセキュリティロックのような機械もある。
那韋斗はさして驚かず、予想通りといった感じで、宙に浮かんで見える機械を見つめた。
「オォ~~~~~~~~ッホッホッホ!! よく気づいたことですわねぇ!🤍」
けたたましい声とともに、那韋斗の後ろの地面が割れ、巨大な白い花のつぼみが顔を出した。
しゅるしゅると回転しながら花開き、中から身長3mほどの、迫力のある女体が出現した。
たっぽんと揺れる巨乳の、薄緑色の肌をした美女だった。
巨大モンスター特有の、重低音の声で前口上を行う。
「ごきげんよう! 私は≪憂いの種まきアルラウネ≫🤍
……とはいえ、あなたが私に種を撒くことは叶いません🤍 あなたが出せるのは悲しい『お水』のみ🤍
種を撒くのは、残念ながら私のほうでございますわ🤍」
巨大アルラウネが子房のような器官を伸ばすと、コロコロコロっと音がして、黒く小さな種が十粒ほど≪種まきアルラウネ≫の手の上に落ちた。フリスクを出したように見えなくも無かったが、その黒い種は一粒一粒が目に見えてわかるほど濃い、邪悪なオーラを放っていた。
「こちらの種を、あなたの種袋、つまり『睾丸』へ埋め込みます🤍 すると、通常より遥かに大量に、濃厚で、粘っこ~~~い精子が延々、あなた自身の体力を使って大量生産されるようになりますの🤍
ぶら下げた玉の中でぐるぐるぐるぐると精子が秋の運動会みたいに活発に動きまくって、射精したい🤍 射精したい🤍 射精したいと必死におペニスが懇願している間、一滴も出すことは叶わず、執拗に我慢汁だけを搾り取られるのです🤍
皆さんとっても苦しみ抜いて、面白い悲鳴ばかりを上げられますのよぉ~?🤍」
残虐な笑みを浮かべ、今まで見たアルラウネの中でも一際巨大で、強力そうな搾精妖花を動かす。ぎゅぱぎゅぱぎゅぱぎゅぱ🤍 ねとねと🤍 と、聞いたことのない異音がした。
「さぁ🤍 私を倒さねばその扉は開きませんわ🤍
早くこちらへいらして🤍 さぁ早く🤍 私の花で、決して出せない濃厚な精液を、誘って、擦って、吸引して、精子の代わりに、たっぷりとお水だけを搾りまくって差し上げますから……」
がちゃ。
「あ、開いた」
「え!?!?」
≪憂いの種まきアルラウネ≫が愕然とした声を出した。
効果を発揮した≪サイバーピッキング≫のカードが那韋斗の手の中から消えた。
扉が開くと、那韋斗は≪プレートラプター≫とともに外へ駆け去った。
「あ! ちょ……お待ちなさい! 私はこの場から動けないんですわよ!? 根っこがあるから! お、お願い、ま、待って……」
扉を抜けた場所は、さっきまでの森とは比べ物にならないほど開放感があった。
一面の濃い青空に入道雲が浮かんでいる。
そして、那韋斗の背よりも高い「ひまわり」が、元気いっぱいの黄色い花を燦々と開ききって並んでいた。
耳を澄ますと、さっきの森と同じように、上の方から「ごぉぉぉ……」という空調音が聞こえた。
(やっぱりな。
ここはいくつもの人工的な温室が連なったフィールドなんだ。自然からの生命力の恩恵は薄れる代わりに、様々な調整が可能だ)
≪プレートラプター≫に乗っているとひまわりの花より僅かに高く頭を出すことができ、那韋斗はそれで、道が迷路のようになっていることがわかった。
(……かなり一筋縄じゃ行かなそうな構築だ。複雑で徹底的な防御特化。やっぱり、≪王国を護る者≫を手に入れた時の『街』フィールドに近いな)
「23番へ移動」
宣言に伴って≪プレートラプター≫と一緒に移動する。さっきと同じで地面は少し湿っていた。目に見えない壁で区切られているが、土壌は共通しているようだった。
「……」
上下する視界。
那韋斗は考えを巡らせる。さっき見てひまわりの迷路の道順はあらかた分かった。
(収戯に勝てば、この宝庫から脱出できるのか……? 相手プレイヤーはいない。まるでAI戦みたいだ……)
「ばあぁぁぁぁぁ!!!♡♡」
ひまわりの陰から、麦わら帽子、白いワンピースの姿をした4体のアルラウネが飛び出してきた。右に2体。左に2体。ひまわりのように見える妖花は、よく見ると、男のペニスを咥え込めるような穴状になっている。擬態型のモンスターだ。
「≪プレートラプター≫。『急襲頭撃(ブリッツヘッド)』」
那韋斗は思案中の沈んだ目の色のまま、ぽつりと≪プレートラプター≫に指示を出した。
≪ラプター≫は正確に左右1体ずつのアルラウネに攻撃を加えた。腹を鉄兜の頭突きで押されたアルラウネがもう1体ずつのアルラウネを巻きこみ、ひまわり畑の中へ戻っていく。
「ぐえっ!」「うごっ!」
そのまま≪プレートラプター≫は平然と走行を再開した。那韋斗はずっとぶつぶつと言い、表情を変えていない。
(多分途中に擬態系のモンスターが潜んでるから、≪プレートラプター≫の「急襲頭撃」で払いのける……)
「≪隠れ兵≫を召喚。罠を除去」
那韋斗がまた虚ろな顔で宣言した。隠密装束の戦士、≪隠れ兵≫が、那韋斗からは見えない曲がり角の向こうに召喚された。
短剣を2回振り上げ、繊維が断ち切られる音がした。
地面から2本草が伸び、足を取る形で結ばれていが、今はただ地面に垂れた4本の雑草でしか無かった。
「え!?」
「な、何で!?」
近くのひまわりの茎の向こうから、見えない何かが発した驚愕の声が聞こえた。
(恐らく曲がり角を曲がったところに捕縛系のトラップがある。手札に≪隠れ兵≫があるから、前もってそれを除去して……)
切断した草の輪の位置を通り過ぎて、しばらくしてから那韋斗は我に返った。
「え!? え!? な、何!?!?」
手札を見ると、≪隠れ兵≫のカードが無い。コンソールを見ると≪プレートラプター≫の行動権も使用済みになっている。
那韋斗は混乱した。
思いつく前に体が勝手に行動し、展開を前へ進めている。
「……な、何だこれ……」
今まで行ってきた自分の「マクガフィン」のプレイとは全く異なっていた。意識が、意識よりも先に動く行動へ追いつかない。
「――ちょ、ちょっと速すぎでなくて!?
まぁいいわ!💛」
那韋斗はこれも、意識が地面の揺れと声を認識する前に、≪プレートラプター≫後ろへ退かせた。大地から巨大なつぼみが突き出してくる。今度の花は黄色だった。
中から出て来たのは、さっきの巨大アルラウネとそっくりの、巨乳の美女。
「ごきげんよう! 私は≪叫びの耕耘アルラウネ≫💛
私は姉妹たちの中でも、あまり前置きが無いタイプなの!💛 ほら💛 見て、絶望なさい!💛」
花弁の中から突き出してきたのは黒い果実、というより、とんでもない『ドリル』だった。
直径は10cm越え。あまりにも極太だ。長さも50cmくらいある。螺旋状にエグすぎる溝が彫られており、エッジも波打っていて、おまけに色んな形の粒高いイボがボルダリングコースのように立ち並んでいた。
ギュイイイイイイイィィイィィン!!!!💛💛 と悪魔的な音を立ててドリル果実が高速回転を始めた。地下をどこまでも深く掘り進められるような力強い回り方だった。表面から潤滑蜜が分泌されており、遠心力でねっとりとした飛沫が空中に舞った。
「ほぉら💛 このドリルで、あなたの直腸内側の隅から隅まで、掘って掘って掘りまくって、耕し尽くしてさしあげますわぁ💛 ふっかふかの、トロットロの、肥沃なアナルになれますことよぉ?💛
通常なら何度も何度も、精液漏らしてトコロテンイキをするところですが、あなたが漏らせるのは我慢汁だけ💛 好き者娘のように、穴を突かれてペニスの先端から『ぷしゃ💙 ぷしゃあぁ💙』と透明な愛液を流し続けるのです💛
植物の世界においては、『雄期』と『雌期』が入れ替わって、『性転換』することもさして珍しくないんですのよぉ~?💛 『女の子にされたい』という欲求は、どんな男の子も持っているものですよねぇ?💛」
「持ってないわ!!」
凶悪すぎる極太果実の乱回転を見ながら、那韋斗はお尻の穴がきゅっ♡ っとなった。これ以上想像したくもないので、思考の回転に加速がかかる。
「≪プレートラプター≫を『進化(プロモーション)』
進み出よ! ≪城塞豪竜≫!!」
乗っている≪プレートラプター≫にしっかりとしがみついた。
体が光り、一気にどぉん! と膨れ上がった。どっしりと地についた四本の太い脚。巨大な3本の角。
分厚い鋼の突撃鎧に身を包んだ「トリケラトプス」が大地に立ち、≪叫びの耕耘アルラウネ≫に向かい合った。
「は……え……ちょ……」≪耕耘アルラウネ≫が色を失い、狼狽する。
「『大爆進 トライセラタックル』!!!!」
しっかり足を屈めて力を溜めた≪城塞豪竜≫が、巨体を大砲の弾のように突っ込ませた。大質量と3本の角が≪アルラウネ≫に激突する。
「ぐっ! ぐえええぇぇ~~~~!!!」
貫かれた≪アルラウネ≫の体ごと、壁と扉をぶち抜いて、隣の部屋に転がり出た。
そこには一面のラベンダー畑が広がっていた。
その後も、次々と襲い来るアルラウネモンスターや、妖精系モンスターを処理しながら那韋斗は進んでいった。
「≪返す刃≫発動! ≪我慢汁だけ次々コキ出す手コキ上手な花の精≫を対象!」
「ぎゃっ!!」
「≪パルチザンマスター≫で≪我慢汁ゴックンフラワー≫を攻撃!!」
「財宝カード≪伝説のじょうろ≫を収奪!!」
「ごきげんよう!🧡 私は≪惑いの……≫ ぐえ~~~っ!!!」
次から次へ従者カードの奇襲や罠を処理していく。
我慢汁を搾り出すことに特化した恐怖のモンスターたちや、そこかしこで射精を必死に懇願している男たちの姿と絶叫に震えながら、それでも自分の体が意識よりも速く、的確な対処を行っていく感覚に対して違和感を抱かざるを得ない。
「財宝カード≪空間を断つ剪定鋏≫を収奪!」
既に2枚の財宝カードを収奪し終わった。残り1枚だ。
(こんな防御に専念した構築、どうやったって時間がかかるのが普通なのに……
モンスターも決して弱くない。それどころか1体1体がかなり手ごわい部類だ。自然系の構築に多い、強力な従者カードを大量に展開して相手を圧し潰す「ストンピィ」構築。
それを、こんなターン数で攻略できている……
一体何が起きているんだ……)
ぼーっとしていると、目の前に急に、「植物」が現れた。
「うっ! うわっ!?」
≪城塞豪竜≫に跨る自分の、股間の前に浮かんでいた。長いツルが頭上の木に巻きついて、その植物までコードのようにつながっている。
図鑑で見たことがある。これは食虫植物の「ウツボカズラ」だ。
全長30cmほどで、よく見ると、両側を手のひらサイズほどの少女たちが持ち上げていた。背中には薄い翅が生えている。「妖精」だ。
コンソールを見る。カード名は≪嘘つきピクシー≫。
「ねっ♡ ねっ♡ おにーさん♡」
「こんな奥までこんなに早く来れるなんて、すごいねー♡」
透き通った、不思議な調子の声だった。通常のマクガフィンであれば妖精系のモンスターはもっと昆虫チックな見た目をしているはずだが、目の前の2体は美女をそのまま人形サイズに縮小したような可憐さだった。
「それでねー♡ 私たち、おにーさんにごほうびをあげるために来たんだぁ♡」
「ほらほら♡ このウツボカズラにおちんちん、突っ込ませてあげるぅ♡」

説明用のカードに那韋斗は眼を向ける。
≪食肉棒植物(ミートプランツ)「ミルキングカズラ」≫
かぽっ♡ と、あったかいシチューの小鍋の蓋を上げた時のような音を立てて、ウツボカズラの葉が開いた。
大きな穴からほか♡ ほか♡ と湯気が立ち昇る。
「うっ!?♡ ひぃぃぃ~~~~~~~♡♡」
観察しては駄目だと脳が警鐘を鳴らしているのに、目線を注いでしまう。
袋状になっている内部は、一目見ただけであまりにも用途がわかりすぎた。
中は鮮やかなピンク色で、たっぷりの、虫眼鏡が必要なほどの細かい肉突起が立ち並んでいる。
内部は果肉というよりも、かなり温かそうで、生きている「肉」そのものだ。
その証拠に、ひく♡ ひく♡ と一定のリズムで中が微動し続けている。
内部は所どころ狭くなったり、互い違いになっていたりして、さっき見たひまわり畑の迷路よりよっぽど複雑で、男を困らせる構造をしていた。
粘っこい粘液がいくつも白い橋を作っており、ネバネバで、容易には動かせないことを脳が思い描いてしまう。
それでも強力に、執拗に、動かれてしまうだろう。中を見ればそうやって動かして「搾り取る」ことに特化した構造であることが伝わってくるからだ。
内部の見た目が印象的すぎて、そこから目を離すにも強力な意志を必要とした。説明用のカードイラストに目を向ける。「植物属性、罠属性……こ、これ……何だ?」
およそ子供向けトレーディングカードに刻まれたらダメなアイコンを見つける。位置からして多分属性アイコンだが、マクガフィンをやってきてこの14年間、全く見覚えのない形だった。
「おにーさん、安心して♡ このミルキングカズラは『搾精属性』だから♡」
「そうそう♡ これまでの、おちんちんから我慢汁だけ搾って苦しめる、悪~い草花とは全然違うからね♡」
「さ、『搾精属性』!?
な、何なんだその、ふざけた……」
那韋斗は抗議するようにカードの絵柄を見る。
「し、しかもこれ……B級レアじゃないか!」
「すごいよぉ~? この≪ミルキングカズラ≫♡ おちんちんから精子を搾り取るのに特化した『搾精属性』でぇ、しかも希少で強力なカードだから……」
「ほら♡ 見て見てぇ♡」
くぱぁ♡ とウツボカズラの袋の口を2体のピクシーが持ち、広げた
むわぁ……♡♡ と湯気と、甘い香りが中から放散される。そして粘液に濡れた内部がさらに事細かに明らかになった。真ピンクで、山あり谷ありカリ責めリングありの非常に複雑な構造をしており、それが――
うねうね♡♡ ウネウネウネウネウネウネウネウヌエグチョグチョグチョグチョグチョグチョ♡♡♡ グチュチュチュチュチュチュ♡♡ ウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネ♡♡
「うわっ♡ うわああぁぁぁ~~~~~~~~~♡♡♡」
那韋斗は思わず仰け反った。
細かい肉突起が一斉に動き始めた。植物が繰り広げている運動とは思えない。腸の蠕動運動に似ているが、それよりもずっと強力で、複雑だった。たくさんの小さな触指が、一つ一つスピードも方向も微妙に差異を持ちつつタテヨコナナメに動き続けていた。それでいて、肉壁全体としては奥へ奥へ引き摺りこもうとしている。こんな物を受けたら、囚われたモノを外に出すのは容易ではない。多分動けなくなって、腰をひきつらせながら、何度も♡……何度も♡……何度も♡……
狭い肉空間に反響して、粘液を練り合わせるねちょっ♡ ねちょっ♡ という音がずっと響き続けていた。
「ね♡ すっごいでしょぉ~?♡ これねぇ、ほんと、下級サキュバスの膣なんかよりよっぽどすごいんだよ?♡ 3秒も耐えられたら我慢強いほう♡ 試してみてぇ♡」
「難点はねぇ、中の液もネバッネバで、奥への引き込みも凄いから、一度挿入しちゃうと、数年くらいはずっと外せなくなっちゃうところなんだよねぇ♡
まぁでも、それでもいいって思っちゃうくらいの気持ち良さだから、安心していいよ♡ みんな挿れた瞬間腰が抜けて、その場でずぅ~っとうずくまっちゃうの♡
その安全な状態のまま、24時間ペニスを乳搾り(ミルキング)して、漏らしたタンパク質をゆぅ~っくり分解するのがこの植物の仕組みなんだよぉ♡」
恐ろしいながらも思わず勃起してしまう説明とともに、股間へ近づいてくる。ほかほかの穴。
「そのままでいーよ♡ 被せたらズボンやパンツくらいすぐに溶かしちゃうから♡」
「それじゃ、自然の恵みのちんちん天国、たっぷり楽しんでねぇ♡」
「う……う……♡」
那韋斗は身震いし、首を振り、邪な思いを振り切った。
「魔術カード≪地雷探知機≫発動!!」
手をかざすと、ピーッ! ピーッ! と電子音がした。音は≪ミルキングカズラ≫から鳴っている。
「くっ、くそっ!」
那韋斗が≪ミルキングカズラ≫の入り口の脇の、何も無い空間を掴んだ。
手の中でゆっくりとカードとしての見た目を現していく。
イラストはシロツメクサのような植物で編まれた指輪大の花冠で、カード名は≪泣き虫になる花輪≫だった。罠魔術カード。効果は、「プレイヤーのペニスへ強制的に呪いの花輪を装着。どんなに気持ち良くても絶対に射精することはできない。効果:1000年」と書いてある。「どんなカードだよ!」と那韋斗は叫んで花輪のカードを地面に叩きつけた。探知された罠魔術カードはその場で消滅する。
「あーーーー!!」
「な、なんでわかったの~~~!?!?」
(いや、だって名前に≪嘘つき≫って入ってるし……)と那韋斗は頭の中で思うが、実際にはそれだけではなかった。
仄かに、罠の気配のようなものを感じた。
以前まではもっと、視覚情報を頭の中で言語化した後に罠かどうかを判断していたが、そのプロセスが突如として省略されたかのようだった。自分でも戸惑うほど即座に判断をつけることができた。
「もうちょっとだったのに~~!! 射精封じされたまま≪ミルキングカズラ
≫におちんちん突っ込んで、段々激しくなっていく搾り取りの動きでおちんちん溶けて無くなっちゃいそうになりながら、我慢汁しか出せずに『ごれ゛取ってぇぇええぇぇぇぇ~~~~!!!!!♡♡♡ ごの゛輪っか取ってえええぇぇぇぇぇ~~~~~!!!! ♡♡♡♡』ってなってる馬鹿な人間を放置して逃げる遊び……」
「これでちょうど10人目だったのにーー!! ひどーーーい!!」
「どっちが酷いねん!」という言葉を言う気力すら無く、那韋斗は従者を傍らに召喚した。
「≪戦場のジョーカー≫召喚!」

宙返りしながら華麗に降り立った≪ジョーカー≫が、ニッコリとした笑みを見せた。
どこからともなく取り出したチェック柄の布を、≪ピクシー≫達が持っていた≪ミルキングカズラ≫へ被せた。
「えー?」
「どうなるの~!?」
わくわくしながら≪ピクシー≫が見つめる。
軽やかに≪ジョーカー≫が布をめくると、同じ場所へ、重々しい色の手榴弾が代替で置かれていた。ピンは抜かれている。
「「え……」」
爆発音と火薬の臭いがたちこめ、跡形も無く2体の≪ピクシー≫は消滅した。
≪ジョーカー≫は、「楽しんでいただけましたでしょうか?」と言わんばかりに、主に向かって深々とお辞儀をした。
那韋斗は深く息をついた。わかっていた罠なのに内部の光景に見とれ、そのまま受け入れそうになっていた自分の心が恐ろしかった。
(女性型モンスターとか……この搾精系のカードとか……どうしても慣れない……♡
「誘惑戦術(セデュースアタック)」とか言ってたか……多分、こんな風に勝敗の外の選択肢を突然相手に与えることで、判断を誤らせることが目的なんだ。
極小のコストで致命的なミスを生じさせ、運が良ければそのまま必殺の一手になる。知れば知るほどコスト対効果の高い戦術だ……卑怯すぎて受け付けないのは変わらないが……)
ふと、≪城塞豪竜≫の背中に転がっている物体に目を向けた。さっき手榴弾と入れ替わった≪食肉棒植物(ミートプランツ)「ミルキングカズラ」≫だ。
穴の入り口が那韋斗を向いている。偶然そうなったのか、それとも見ないうちに≪ミルキングカズラ≫がひとりでにそう動いたのか、わからない。
入り口が、ピクシーたちが開けた時と同程度の大きさで「くぱぁ……♡」と拡がっていた。
ホカホカと湯気を上げながら、ネッチョネッチョ粘り音を立てている。誘うように、穴内で行われている「乳搾り」の動きを開示している。
ウネウネウネウネ♡♡ ネチョネチョネチョネチョネチョネチョネチョネチョ♡♡
数えきれないほどの肉突起が、入り口から奥へ向けて、どんなものでも逃れられずに搾り尽くされてしまう捕食動作を続けている。
どこからともなく声が聞こえた気がした。『今なら誰も見ていませんよ?♡ 罠も外れました♡ 試しに挿入してみませんか?♡ こんなレアカードにオチンチンを何十年も、ムシャムシャしてもらえる機会なんてそうそうありません♡ 絶対に後悔させませんよ?♡ 貴重なタンパク源になってくれるお礼に、たくさんたくさん、何十年も、丁寧に「乳搾り」してあげます♡』
「ひいいぃぃぃ~~~~~~~~~~!!!♡♡」
那韋斗は拾ってしまいそうになる自分の手の動きに気が付き、恐怖に駆られた。
そのままげしっ! っと靴の先でキックして落とす。ぽよんという感触の後、≪ミルキングカズラ≫が≪城塞豪竜≫の下の地面に落ちて行った。
「す、進め! ≪城塞豪竜≫!」
ずしんずしんと音を立ててトリケラトプスが進む。那韋斗は逃げるように、全速力でその場を後にした。
そこは、一個の芸術品のように美しい空間だった。
水彩絵の具で彩色したような青空が広がり、煌めく羽毛を持つ小鳥たちがその中で遊んでいる。
一面の芝生は思わず頬ずりでもしてしまいたくなるほど綺麗に刈り整えられていた。
鶴翼のような形で広がる植栽。一番外側の層はミリ単位で手入れされた生け垣で、その内側は、まさに至上の花壇となっていた。薔薇、チューリップ、ラベンダー、マーガレット、スイトピー、サクラソウ、カーネーション、ヒヤシンス、アネモネ。それらはごく一部で、他にもこの世に存在しない色、形の花々が美しく、多様に並んでいる。水やりを終えた後のようで、キラキラと露が宝石のように散りばめられていた。
中央には丸くて白い机と、ガーデンチェアが配置されている。アルラウネ、ピクシーといったモンスターたちが優雅に紅茶を啜り、お菓子を頬張っていた。
その空間は、40に分かれた「温室」の中央に位置していた。宝庫の最深部。辿り着くのが最も難しい。
そして、一番中央に置かれた机とガーデンチェアは周りのものより一回りサイズが大きかった。
腰かけているのは花から体を突き出した女性型モンスター。上半身は裸で、日光浴を楽しんでいるように見える。
「嗚呼……なんとお美しい昼下がりなのでしょう💗」
ティーカップを指でつまみ、持ち上げている。白く滑らかな陶磁の表面は塗り薬で濡れたように光っている。金箔で描かれた精緻な紋様が陽光で上品に浮かび上がっていた。
モンスターは澄んだ橙色の紅茶をゆっくりと啜り、ソーサーにカチャリと置いた。
「今日の『水出し紅茶』も、味わい深いですわぁ💗 情けなぁ~~いマゾ水源どもの苦悶が滲み出ているかのよう💗
……そう言えば、さっき引き摺り込んだのは魔術師だったそうねぇ?💗
今はまだお1つ目の温室か……早ければ、お2つ目の温室に辿り着いていることでしょう💗」
高く、鼻にかかった喋り方だった。余裕たっぷりに薄ら笑いを浮かべている。
「今回の獲物はどこまで進んで、どんな悲鳴を上げてお死にになるか、とても楽しみですわぁ💗」
カップを再び唇につけてゆっくりと啜った。
ドカーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!
『庭園』の壁が破壊され、モンスターがブーッ!! っと紅茶を吹き出した。
「え!? もうゴール!?!? 早っ!!」
那韋斗はきょろきょろと辺りを見回し、愕然としながら叫んだ。
ケホッ、ケホッ、っとせき込んだモンスターは、トリケラトプスに乗った那韋斗の姿を見つけた。
那韋斗は、「あ! こいつがボスか!!」と言いながら、ずんずん庭園の芝を踏みつぶし、中央のガーデンチェアの方へ進んでいく。
驚きが過ぎると怒りがやってきたようで、モンスターの体がワナワナと震えた。
強靭な蔦を瞬時に、那韋斗の体へ向けて鋭く伸ばしてきた。先端は身震いするほど鋭利だった。
那韋斗が命じるまでもなく、傍らの≪見習い戦士≫が飛び出して、蔦を切り払った。
モンスターはそれに動揺することもなく、高らかに笑った。脳をつんざくような高い声で、手の甲を頬に当てている。
「んオーーーーーーーーーーーーーーーーッホッホッホ!!!!!💗 なかなかやるみたいですわねぇ💗 お可哀相な魔術師様💗」
那韋斗はポップしたカードを見た。≪嘆きの水やりアルラウネ≫。A級レアカードだ。「花」、「妖精」、「水滴」属性。

他の温室を守っていた巨大アルラウネモンスターたちと似通った姿だが、一回り体が小さく、乳も尻も細身だった。それでも人間として見れば巨乳と言って差し支えない。
しかし、纏っている気配が段違いに強力で、充実していた。花も、これまで見たアルラウネモンスターの中で最も美しく、優雅に咲き誇っている。
ただ――
「最後の財宝カードはどこだ?」
見た感じ間抜けそうな印象だったので、那韋斗は一応聞いてみた。
「まさか、見た感じ間抜けそうな印象だったので一応聞いてみたわけではないでしょうねぇ?
話が性急に過ぎましてよぉ?💗 お可哀相な顔面の魔術師様💗」
「可哀相ってそのこと!? うっさいわ!」
言い立てる那韋斗を無視して、ちらっ、と≪嘆きの水やりアルラウネ≫が自らの背後に目線を向けた。
そこに見えるのは、庭園を眼下に見下ろす、白い宮殿だった。
典型的なバロック建築。屋根は丸く、先のとがったドーム型で、均整の取れた構造をしている。全体が恐ろしいほど白く、言葉を忘れるほどの美しさだった。まさに白亜の王宮と呼ぶにふさわしい。
那韋斗は≪城塞豪竜≫を進ませ、≪嘆きの水やりアルラウネ≫の脇を通って宮殿に向かった。誰がどう見ても、あそこに最後の財宝カードがあるに決まっている。
「……💗」
≪アルラウネ≫が残忍な笑みを浮かべて見ていると、那韋斗がひょいっ、と、トリケラトプスの背から飛び降りた。
「え?」
「≪城塞豪竜≫! 『壊尽突撃 トライセラインパクト』!!!!」
そのまま≪城塞豪竜≫が地を蹴り、巨大なエネルギーを伴って進んでいった。大地が揺れる音が響く。
那韋斗は頭を抱えて地に伏せた。≪城塞豪竜≫の体が宮殿の中央に突き刺さる。
ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!! という、さっき壁を破った時の倍くらいの音がした。空気の振動が庭園の端まで広がる。≪嘆きの水やりアルラウネ≫が「ぎゃーーー!!!」と叫ぶ声が聞こえた。
瓦礫が飛び散り、爆風が広がる。ひらひらと頭の傍にカードが落ちて来て、那韋斗は体を起こして拾った。
「あんないかにも中に財宝がありそうな宮殿、トラップじゃなかったら何なんだよと思ってたが……」
カードを読む。さっきの宮殿のイラストだった。
≪悲劇の宮殿≫罠魔術カード。「“中に入った人間の男は瞬時に両手両足が縛られ、『絶対に射精できない&我慢汁の量が10倍になる呪い』がかけられる。その後、踊り子装束を身に着けた女官妖魔達に『拷問室』へ連れて行かれる。『降伏(リザイン)宣言』するまで責められた後は、命が尽きるまでの長い間、大量に働いている女官妖魔達から、宮殿中にある数えきれないほどの様々な搾精拷問器具を駆使され、1日10トン以上の我慢汁を排出させられる悲劇的な日々が待っている。あまりにも残酷な我慢汁絞りが続けられているので、中はむせ返るようなカウパー臭と、それを隠すための香水の臭いが漂っており、女官達も臭いのでみんな臭いを遮蔽するためにフェイスベールをつけている。窓に耳を近づけると、獣のような男たちの咆哮と、「射精さ゛ぜでえぇぇぇぇ!!!!!!!!♡♡♡」「殺゛じでぐだざい゛~~~~~~~~~!!!♡♡」という大絶叫が僅かに聞こえ、ガラスがビリビリ震えているので、そこが唯一外から見分けるためのポイント。現在33名の哀れな男性たちが中に閉じ込められている。1日のスケジュールは、まず起き抜けに前立腺を死ぬほど責めまくる拷問椅子に座らされ、シルクの手袋をつけた4人の女官妖魔達から乳首と陰茎を――”」
「ひいいぃぃっ!!!!♡♡」
那韋斗は怖すぎてそこで読むのをやめ、こんなものもう触っているのも嫌だというように放り捨てた。≪悲劇の宮殿≫のカードは芝生の上で綺麗に消滅した。
「よ、よく見破りましたわね……」
≪嘆きの水やりアルラウネ≫が何とか不敵な笑みを作りながら言った。
「財宝カードはそこのティーセットだろ?」
≪アルラウネ≫の体がびくっと縦に跳ねた。
「な、な、何で……」
「……
持ち手の指の緊張。敢えて外し続けている視線。それに……
さっき爆風が吹いた時、瓦礫へ万が一にも当たらないように、お前の体が不自然に反応した……ような気がする」
≪アルラウネ≫はぽかんと口を開け、理解不能という表情を浮かべた。
「……は、はぁ? あなた、さっきの攻撃の時は、地面にうつ伏せになっていらしたでしょう!? 何でそんなことが……」
「い、いや……俺にもわからん」
「え……怖……」
那韋斗は自分でも呆然としながら、芝生の上を歩いていく。後ろに、≪見習い戦士≫と≪戦場のジョーカー≫が続く。
レベル2の≪城塞豪竜≫が行動権を使い、もうこのターンは攻撃不能であることに気づき、≪嘆きの水やりアルラウネ≫は落ち着きを取り戻した。
「……そんなお雑魚な従者たちで何ができますの?💗 こちらとそちらとでは、生物としての『力』に圧倒的な差がございましてよ?💗
――ゆけっ! ≪巨樹超獣 クワドラペダルトレント≫!!!」
言い放つや否や、地面を突き破って太い木の根が現れた。それは前脚の爪だった。
地面からさらに巨大な4本の脚と、分厚い樹皮の体と、巨木をくり抜いたような虚ろな頭部が順番に、大地を割り裂いて現れてきた。
レベル2の超重量級モンスター、≪巨樹超獣 クワドラペダルトレント≫が庭園の上へ立った。先ほどの≪悲劇の宮殿≫よりも体躯が大きい。発する迫力で空間が圧される。
「んオ~~~~~~~~~~~~ッホッホッホ!!!💗 どうでして!?💗 この宝庫、『嘆きの植物園』は、捕らえた獲物の精気をたっぷりと吸い取って、生命力でパンッパンになっていますのよぉ~~~??💗 土壌も肥沃で、植物系モンスターのステータスには常に上方補正がかかっておりますの💗 さらに、この中央の『庭園温室』はそのおエネルギーの集約地点で……」
「≪見習い戦士≫に≪叙任式(アコレード)≫を発動!」
那韋斗は手札のカード1枚を掲げた。
「場のレベル1騎士属性従者カード1枚を、山札の中の騎士属性従者カードへ進化(プロモーション)させる!」
「ちょ……話の途中で……何とお無礼な……」
輝きとともに、2本の槍持つ騎士が立ち上がった。
「≪無君の騎士≫!! ≪巨樹超獣 クワドラペダルトレント≫を攻撃!!」

ひと月ぶりに自分の物として使える≪騎士≫。主の命令をすぐに受け入れ、俊足で大地を蹴った。鉄が鳴る音とともに、次の瞬間にはもう≪巨樹超獣 クワドラペダルトレント≫の足元へ辿り着いている。
「右の後ろ脚、真ん中の指!!」
巨獣の認識が追いつく前に、騎士が指定された脚のところで槍を振りかぶった。「七色の槍」の槍先を中央の指へ勢いよく突き立てる。
その瞬間、≪クワドラペダルトレント≫の全体を包んでいた強大な力の漲りが立ち消えたような気がした。巨獣の身の捩りを見るか見ないかで、すかさず那韋斗は宣言を行った。
「≪無君の騎士≫! 『空式槍穿(ブランクスピア・ストラーダ)』!」
≪騎士≫がもう一方の槍を頭上に突き出した。≪クワドラペダルトレント≫の体が腹から背に向けてトンネル状に貫通される。四足獣の目から光が消え、巨木が朽ちて倒れる時のパキパキという音を立てながら、ゆっくりと地面へ沈んでいく。
「ば、馬鹿な……」
地響きまで収まった後で、≪嘆きの水やりアルラウネ≫が呆然と呟いた。
「植物系モンスターとなれば、どんな姿をとっていても、地面から栄養を受けるための『主根』がどこかにあるはずだからな」
言いながら、那韋斗は自らの困惑を強めていた。
あまりにも速すぎる。
今の≪巨樹超獣 クワドラペダルトレント≫は強力なA級レアの上級従者だったし、フィールドによる強化も受け、異常な体力、攻撃力の数値になっていた。
目の前にいる≪嘆きの水やりアルラウネ≫にしても同じくA級レアで、これまでの那韋斗であれば絶望を覚えてしまうステータスをしている。
(防御重視の構築と、タフな従者カードたちを相手に、このターン数で最終盤面に入ってる……どんなゲームスピードだよ。
思考の疲れもほとんどない。何なんだこれは……)
いや。考えつつも、その理由は既に那韋斗にもわかっていた。
(多分これは、あの『赤い卵』の特訓を受けたせいだ……)
那韋斗はおもむろに、自分の財宝カードゾーンへ置かれた赤いカードを見つめた。
(!?)
那韋斗の目は驚きで見開かれた。
「よ、読める……」
文章に一切変化は無い。意味の分からない文字の羅列が記されているままだが、その意味の一部が、眼球を通して頭の中へ投影されるようだった。
「“必要なものは、『進化(プロモーション)の条件を満たした従者カード』。そして、収奪した≪財宝カード≫1枚。”
……え!? ざ、財宝カード!?」
那韋斗は困惑した。
「財宝カード」は「マクガフィン」の中でも特別なカード。収戯全体に影響を及ぼし、無効化するカードもごく限られる。言わば収戯の基盤であり、ある場合ではライフより重要とされるリソースだ。
(財宝カードを「コストにする」なんて聞いたことがない……!)
那韋斗は気づいた。
今この状況は、全ての条件を満たしている。
≪無君の騎士≫は相手の≪巨樹超獣 クワドラペダルトレント≫を倒し、そして自分の手元には収奪した相手の財宝カード、≪伝説のじょうろ≫と≪空間を断つ剪定鋏≫の2枚があった。
レベル2従者カードの「進化(プロモーション)」は、「統合」や「解放」などの特殊条件や、全てS級レアの「レベル3従者カード」を所持していないと発生させられない現象だが――
那韋斗はテキストを何度も読み返した。理解できるのはカードの発動コストまでで、使った末に何が起きるのかはまったくわからなかった。
一体何が――
「……む、≪無君の騎士≫に」
那韋斗は忘我した状態で、騎士に対して手を翳す。
「≪赤き王の卵≫の効果を、はつど……」
その瞬間、世界がしん、と静まり返り、庭園の景色が消え去った。
「!?」
真っ白になった意識の中へ
赤い鮮烈なイメージが、突き刺さるようにもたらされた。
「!!!!」
怯えが全身を流れ、那韋斗の発声が止まった。手が石柱のようになって動かない。
背中一面に粘度の高い汗が湧いた。
『その感覚は正しい』
頭の中に重く、≪赤き王の卵≫の声が響いた。
『お前はそれを行うことで、後戻りのできない地点へ足を踏み入れてしまう。
そこには全てがあり、全てを奪い去るほどの圧倒的な破滅が待っている。
お前の恐怖は、全ての存在が死を恐れるようにあまりにも自然なことだ』
那韋斗は腕をだらりと降ろした。自分が息をしているのかもわからない。
『だが、お前はもうすぐ「到達」する。その地点へと。
それもまた、全ての存在が死へ辿り着くように、あまりにも自然なことだ。
――「覚醒」の時は近い』
視界が張り裂け、もとの庭園が戻ってきた。
「んオ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッホッホッホッホ!💗」
甲高い笑い声が那韋斗の鼓膜を揺らした。
≪無君の騎士≫にぐいっと体を抱え跳ばれ、鋭い蔦先が地面から突き出して来るのを辛うじて避けた。
≪嘆きの水やりアルラウネ≫が攻撃を繰り出してきた。
「何をぼんやりしてらして?💗 もしかして気づかれたのかしら?💗
『実はもうカードが尽きて勝ち目が無くなった』こと。そして――」
≪嘆きの水やりアルラウネ≫は淫靡な笑みを浮かべた。
「――『勝ち目が無いなら、降参して気持ち良くしてもらったほうが得なのではないか』という事実に💗」
しゅるしゅるしゅるしゅる、と花の「つぼみ」が伸びて来た。ラグビーボールくらいの大きさがあった。那韋斗の腰の前方で止まる。
「あたくしは、12株いる姉妹たちの中でも一番の優生種💗 品種改良の最先端ですの💗
あらゆる搾精妖花を掛け合わせた、最高の一輪が『これ』💗」
優雅に花開く。那韋斗の口から、美しい花を目にして漏らす嘆息とは全く別種の声が出た。
「ひええぇぇええぇぇ~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?♡♡」
じゅくじゅくじゅくじゅくじゅじゅくじゅくゅくじゅくじゅくじゅくじゅく💗🌺💗🌺💗🌺💗
幾重にも重なった花びらは極上の薔薇のようで、赤だけではなく青、オレンジ、黄色、ピンクと、色とりどりの「肉花弁」がひしめいていた。一枚一枚が霜降り肉のように湿っており、中央部に行くにつれてすぼまって、最終的には何かを迎え入れることに適した筒状になっていた。
その筒の中がとんでも無かった。入り口は肉厚で、捕まったら逃げ辛そうだった。その先の道筋は見ただけで思わず腰が引けてしまう。極彩色の肉の花びらが本当に細かく、無慈悲に密集している。不気味な「黒い花びら」がカリと裏筋の位置へ集中して並んでおり、嫌な予感を止めることができない。
また、ぷぅ~ん♡ と、濃密な甘い香りも漂っており、意識が一瞬飛んでしまう。複雑な筒の中はどこもかしこも、とろっとろの蜜で塗れていた。粘っこすぎるのか、たらぁ~♡ っと入り口から垂れている透明の蜜は短く、地面まで垂れていかない。
恐ろしいのに、油断するとふらふら近づいていってしまいそうになる。腰に蝶の羽根が生えて羽ばたく準備をしているような心地になる。
「ひっ♡ ひいいぃぃっ!!♡ だめっ!♡ だめぇぇっ!!♡」
那韋斗は半狂乱になって自分の腰を押さえつけた。
≪嘆きの水やりアルラウネ≫が、さっきまでとは別人の、妖しい笑みで那韋斗を見つめていた。
「お可哀相な魔術師様💗 この花は、本当に物凄いんですのよぉ?💗
様々な搾精品種の、優位性質のかけ合わせ💗
『フェラチオチューリップ』から受け継いだ、触れているだけでペニスが快楽で焦げてしまうような唇がむっちり咥えて、じゅっぽじゅっぽ扱いて……💗 内側では上級サキュバスの膣にも負けない『ウネウネダリア』の10倍の搾精花弁がしつこく、ランダムにうねって……💗 それだけでオチンチンがぐちゃみそになっちゃうのに、さらにそこへ、『搾精牡丹』をひどくしたような、誰も抵抗できないような搾り取りの動きがぎゅるぎゅるぎゅる、隅から隅まで与えられて……💗 そして最終的には、『バキュームラッパスイセン』の、すんごい真空吸引でズゾゾゾゾ~~~ッ💗 って吸われて💗 1分も挿入したら、どんなオチンチンも射精し尽くして、情けない『オジギソウ』みたいになってしまいますの💗」
にっこりと笑う。那韋斗は、また前に向かって突き出てしまっていた腰を、慌てて後ろに引いた。
「『最初は』、本当に射精させて差し上げます💗 ずっとずっと、頭の中がお花畑になってしまうこと請け合いですわ💗 是非期待していらして💗
――でも、あまりに射精の要求が凄すぎるせいで、何ヶ月かぶっ通しで続けると、精液を汲み上げる輸精管の機能が完全に壊死して、物理的に二度と射精ができない状態になってしまいますの💗
そうやって出来上がるのが、一生『透明なお水』だけを吐き出し続ける、取り返しのつかない『カウパー水源』ですわ💗」
≪アルラウネ≫の声が際限なしに残忍さを帯びていく。
「――酷いとお思いにならないで💗 人間だって、枝を切り落して挿し木にしたり、不要な花を摘んで果実の生りを良くしたり、草花に対して色々と『改造』を施すでしょう?💗 それと同じですわぁ💗
それにあたくし……一度このお花で楽園が垣間見えるほど射精した後、それを永遠に奪い去られた人間が上げるオネダリの言葉が、たまらなく好きですの💗
どのお馬鹿さんたちもみんな涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら💗 あたくしに『何でもします♡』『何でも捧げます♡』と浅ましく媚びをお売りになられるの💗
あたくしも搾精モンスターの端くれですので、ちゃんと射精の機能を回復させてあげることもできるのですが……哀れなお阿呆共に、『では、射精させて差し上げますわぁ💗』と優しく言って、期待させまくった後で裏切りの我慢汁10リットルを一気にペニスから絞り取ってやった時の顔と泣き声💗 あれは本当にたまりません……💗」
うっとりと目を細める。
≪嘆きの水やりアルラウネ≫の妖花から、脳をとろかす香りが漂ってくる。恐ろしすぎる話への思考が麻痺して、美しい花園へ立っているように錯覚してしまう。ペニスが可憐に咲く花へ狙いを定めてしまい、体重が前に傾いてしまう。
「もし今ここで、きちんと負けを認められるのなら、この庭園で『ガーデンチェア』になる末路を辿らせて差し上げても宜しいんですのよぉ?💗
あたくしのお尻に腰かけられたまま、このお花の中へたっぷりお水を捧げ続ける人生を送りたくなくて?💗 お可哀相な魔術師様💗」
那韋斗の頭に映像が浮かんでしまう。
裸になって、芝生の上へ四つん這いになる那韋斗。その背へ、美味しそうに引き締まった≪嘆きの水やりアルラウネ≫のヒップが乗っている。
細く長い脚を組み、優雅に、上品に紅茶を啜る≪アルラウネ≫。
そして那韋斗の股間では、絶え間なく下品な水音が鳴り続けている。
ぐっちゃぐっちゃぐっちゃぐっちゃ💗 ぐぽぐぽ💗 ぐぽぐぽぐぽぐぽ💗 うねうねぎゅるぎゅる💗 ぢゅっぽぢゅっぽぢゅっぽぢゅっぽ💜 ぢゅるるるるるるううぅぅ~~~~~~~~~~~💗💗💗
びくびく💙 びくびくびくびく💙 ぴしゃぴしゃ💙 ぴしゃぴしゃぴしゃぴしゃ💙 ぢゅるるるるるぅ~~~~~~~~~~~💗💗
そしてその間中、那韋斗の切実な泣き声が響き続ける。
『ああぁぁぁ~~~~~~~~~♡♡ う゛え゛えぇぇ~~~~~~~~~~~~ん♡ う゛ええええぇ~~~~~~~~~~~ん!!!!♡♡ アルラウネしゃまあぁぁぁ~~~~~!!! 射精ざぜでえ゛えぇぇ~~~~~~~~~~!!!♡♡』
我慢汁の出し過ぎで完全に馬鹿になった尿道の感触が、ふっと股間に想像され、那韋斗は思わず内股になり、股間を押さえてしまった。
「ただし……💗 愚かにもお立ち向かいになった場合は……💗
この植物園宝庫の『水源』の一部になっていただきますわぁ💗」
パチン、と指を鳴らすや否や、那韋斗のすぐ横の地面に水が湧き出てきた。
みるみるうちに水たまりとなり、水面に青空が映る。その後すぐ、ぱっとチャンネルが切り替わるように、何かの鮮明な映像が水たまりを画面として再生された。
「!!!」
那韋斗は怖気立ち、言葉を失った。
「ん゛ん゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!♡♡ ん゛っ!♡ ん゛っ!♡ ん゛ん゛~~~~~~~~~~~~~!!!!」
「ん゛ん゛~~~~~~~~~~~!!!♡ んんんっ♡ んっ♡ んっ♡ んん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!♡♡♡」
こひゅー💗 こひゅー💗
「ん~~~~~~~~~~~~~!!♡♡ ん゛ん゛っ♡ ん~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡」
その空間はあまりに悲惨な気配で満ち溢れていた。
薄暗いが、良画質すぎるので状況が微細に確認できた。
土の上に四つん這いになって並ぶ大勢の裸の男たち。全員、切り花のように肘と膝から先を綺麗に切除され、切断面は塞がっていた。
首には蔦の首輪が、そしてペニスには、さっき那韋斗がつけられそうになった≪泣き虫になる花輪≫が全員漏れなく装着されていた。
何名かのアルラウネがクリップボードとボールペンを手に、冷酷な顔で見回りを続けている。
男たちの股間の一つ一つには、禍々しい形状の搾精花が貼りつき、ジュッポジュッポと、何としてでも精液を搾り出そうと一生懸命に陰茎を責めまくっていた。乳首や尻穴にも多種多様な妖花や果実が密集して、大変な音を立てまくっている。
しかし男たちは、≪花輪≫に遮られて一切射精はできない。全員大泣きをしながら許しを乞うているようだった。しかし、その必死の懇願は全く外に漏れていない。
ばふっ💗 ばふっ💗
こひゅー💗 こひゅー💗 こひゅー💗 こひゅー💗
どの男も、序盤に見たアルラウネのガスマスクのような、巨大な妖花を顔にべったりと取りつけられていた。その香りと花粉を全ての呼吸においてふんだんに吸い込み続けている。重度の花粉症患者の頭部のように、腰をガクガク♡ と激しく振動させている。
男たちのペニスから我慢汁を汲み上げている強力無比な搾精花。そこから伸びる茎は、男たちの哀しみの水をぼこっ♡ ぼこっ♡ っとポンプ運動で遠くへ運んでいるようだった。
まさに「生産工場(プラント)」だ。顔を包む妖花は、すべて、男たちの流す大量の涙でぐしょ濡れになっている。那韋斗はよろめき、顔が真っ青になった。
「この『水源』は、ちょうどこの庭園の地下深くに有りますの💗 24時間、年中無休でフル稼働中ですわ💗
汲み上げた我慢汁は、土壌に染み出させている他、パイプで草木の根に直接かけたり、じょうろで空から降り注がせたりしているのですわぁ💗」
そう言っている≪アルラウネ≫の脇の空中を、ふわふわと、カラフルなゾウさんじょうろが10個ほど、隊列を成して進み、壁をすり抜けて他の温室へと向かっていった。
「そんな目に遭うのは、お嫌ですわよねぇ💗
それなら、早く降参なさって……その、とっても水はけの良さそうな棒をこの花にお挿れになって💗
あたくしのお上品なお尻の下で、我慢汁を垂れ流しにする優雅な日々を、過ごさせてあげますわぁ💗」
「……」
那韋斗は無言で≪水やりアルラウネ≫を睨みつけた。ようやく正気を取り戻し、開いた掌を前方に押し出した。
「≪戦場のジョーカー≫を進化(プロモーション)!」
≪ジョーカー≫がうやうやしく退場のお辞儀をした後、宙返りをし、すぽっ、と円形の舞台幕の中に入った。
すぐにそれが開いて、中から長身の男が現れる。
「進み出よ! ≪策動の宮廷魔道士≫!」

レベル2従者カード、≪策動の宮廷魔道士≫は無言のまま、革のブーツで芝生の上を歩いた。不思議と足音は聞こえない。フードを深く被り、目の色はうかがい知れなかった。体中にいくつもの魔術的な道具を身に着けている。
「なるほど💗 では、交渉はお決裂ということですわね💗
地下の『水源』の様子を見て、そちらが羨ましくなってしまわれましたかぁ?💗」
嘲弄する≪嘆きの水やりアルラウネ≫の言葉を無視して、那韋斗はさらに口を開いた。
「≪戦場のジョーカー≫はこいつへ進化させるために入れている。この間は思わぬ形で役に立ったが……
≪策動の宮廷魔道士≫はD級で、今のインフレ環境の中ではさして強力なカードじゃない。
だが、無属性の従者の中で『属性魔法』を操ることができる数少ないカードの一枚だ」
「あら💗 『属性魔法』ですってぇ!?💗」
≪嘆きの水やりアルラウネ≫はわざとらしく驚いたような声を上げた。
「自然系モンスターの共通の弱点は、『火属性』の攻撃だ。
お前は確かにフィールド効果で厄介なほど強化されているが、属性相性で押し切れば活路は見いだせる」
≪策動の宮廷魔道士≫は静かに両手を構え、術式発動の体勢を取った。
「ぷっ……くくく……💗」
こらえきれずに笑みを漏らし、≪嘆きの水やりアルラウネ≫は、ついに大声で笑い出した。
「んオ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッホッホッホッホッホッホ!!!💗💗 このお馬鹿💗 お阿呆💗 お低能💗
そんなものは完ッ璧に💗 対策済みですことよ~~~~~~!?💗」
体をのけぞらせて哄笑している。まさに最高の気分といった様子だった。
「この『植物園』には男どもから汲み上げた『お水』が行き渡っていると言ったでしょう??💗
その湿潤な環境の影響で、ここの植物系モンスターは全て💗 火系統属性の攻撃に強力な耐性を持っているのです💗💗
ほら💗 お見えになりませんか💗 あたくしの属性💗 水系統属性がついているでしょう?💗 火属性なんて全く、問題にならないんですわよ!?💗💗
おまけにあたくしの特殊能力は!💗 この植物園全体から水気を集め!💗 相手の火属性攻撃を完っ全っ無効にすることなのです!!💗
――さぁ!💗 お望み通り、地下の水源行きですわよぉ?💗 楽しみになさってぇ💗
大地に張り巡らされし根を伝わり、集まれ!💗 嘆きの水よ!!💗
『悲嘆の大水防壁(ドラジェディー・ドローウォール)』!!」
≪嘆きの水やりアルラウネ≫が両手を上に上げ、高らかに宣言した。
無音。
「『悲嘆の大水防壁(ドラジェディー・ドローウォール)』!!」
もう一度言ってみたが、何も起きない。
「大地に張り巡らされし根を伝わり、集まれ!! 嘆きの水よ!!!
『悲嘆の大水防壁(ドラジェディー・ドローウォール)』!!」
もう一度しっかり言ってみたが、何も起きなかった。
「え? な、何で……え……」
そこで≪嘆きの水やりアルラウネ≫は、全身を包む違和感を覚えたようだった。
「え? あ……な、何で? か、『乾いてる』。ど、土壌が……
こんなにずっと……し、四六時中『水やり』し続けた土が、乾いてるなんて、有り得るわけ……」
「あ、来た」
那韋斗が背後の空を見上げると、上空に真四角の穴が開いていた。
≪アルラウネ≫もぽかんとそれを見上げた。
宙に浮いた穴の中には5人ほど、兵士風の男が立っていた。リレー方式でせっせと何かを運び、中身を開け、穴の下に「撒いて」いた。
下に撒いたものは何か、宙に描かれた輪のようなものを潜り、一気に、10倍ほどの量に増える。
それは真っ白い粉のようなものだった。空中へ散布されると煙のように広がって、そのまま庭園の芝生の上へ満遍なく降りかかった。
「≪無限の食糧庫≫と≪増加の魔法陣≫のコンボだ」
「『むげんのりょくりょうことぞうかのまほうじんのこんぼ』???」
「炭酸カルシウムだ」
「『たんさんかるしうむ』????」
全く理解できないという様子で≪水やりアルラウネ≫は聞き返した。
「炭酸カルシウム。一般的には『乾燥剤』として知られている。
≪無限の食糧庫≫の在庫は一応全部頭に入れているが、その中に、兵站の防湿やレーションの加熱のために用いる大量の炭酸カルシウムがあった。
この物質は土壌改良の資材としても使われ、湿潤すぎる土地から水分を奪い、乾燥した土壌へ戻すことができる。
上からばら撒くだけでも、一時的に環境影響を止めるくらいのことなら可能だ。広大な大自然のフィールドじゃなく、あくまで『温室』のフィールドだからな」
むわっと熱気が漂った。炭酸カルシウムが空気や土の中の水分と合わさり、反応熱が発生しているのだ。
「1ターン目、やけに空気と土が湿っていたから、何かしらの仕掛けがあるんだろうと思った。
――じゃあ終わりでいいか?」
≪策動の宮廷魔道士≫の予備動作が終わり、属性魔術発動の準備が整った。
「……いいわけ無いじゃないじゃないですの!!! このお間抜け!! おたんちん!!!!
いくらフィールドの水を涸らしたところで、あたくしの火耐性が消えるわけじゃないんですのよおおおおおおおお!!!!!????」
ぼこぼこぼこっ!!! っと、地面を突き破って、数えきれないほどの蔦先が現れた。
「お死になさい!!!」
強靭に捩じれた蔓が伸び、生き物のように那韋斗へ殺到する。
「『突風魔道(ブラスト・ソーサリー)』
那韋斗の宣言とともに、目も開けられないほどの突風が≪嘆きの水やりアルラウネ≫に吹きつけた。
蔦は全て風によって逆方向へ戻って行った。そのまま風にたなびき続ける。
「ほ、ほぉら見なさい!! 火属性魔法食らっても、あたくし、何ともなくてよおおぉぉ~~~?💗
……え? 風? 『風属性』??」
「属性相互効果だ」
那韋斗は言った。
「風属性魔法は味方の火属性攻撃を強化する」
ざっ、ざっ、と、≪嘆きの水やりアルラウネ≫に近づいていく影があった。
≪無君の騎士≫だ。手には「七色の槍」が握られており、みるみるうちにそれは逆巻く炎へ変わっていく。
まさに豪炎という火力だった。炭酸カルシウムの反応熱など比べ物にならない。庭園全体を真っ赤に照らし、那韋斗の薄皮をちりちりと焦がす。
炎は変形し、槍先に赤熱する炎の刃が現れた。
風で身動きの取れなくなっている≪アルラウネ≫に向かって、≪無君の騎士≫が槍をゆっくりと振り上げる。
「『七色の槍』の属性攻撃の中でも、最大威力の攻撃だ。
自然破壊するようで申し訳ないが……まぁ灰になったら土にもいいだろ。多分」
巨大な炎の薙刀を見上げ、≪嘆きの水やりアルラウネ≫は涙を流し、震え上がった。
「おっ! おまっ! お待ちになって!!
あ、そ、そうだ! 我慢汁絞りなんて致しません💗 好きなだけ射精なさって💗 あたくし、ミルクティーも嗜みますから💗
ね? ね?💗 仲良くしましょ??💗 焼畑農法は国際的に批判を……」
「『火式槍道(パイログレイブ・ストラーダ)』!!」
炎の薙刀が叩きつけられ、辺りは爆炎に包まれた。
🐛🔯🐝🐛🔯🐝🐛🔯🐝🐛🔯🐝
「おや」
男が呟いた。
「『植物園』の実験構築が敗れたようだね」
「……それ、何? 『ドクター』」
若い女の声が尋ねた。
親しみはこもっているが、さして興味がある風ではない。別の何かに集中している様子だった。
配管が走る暗い路地に、ババババッ! ババババッ! っと、ゲームの銃声が響く。
「私がこの世界に来て、数多くばら撒いた『自律構築』のひとつでね。
『完全な火耐性を持つ女王級アルラウネモンスター』を作ることをテーマとした実験的構築だったんだ」
「ふーん」
「いやはや。決して弱くはなかったんだが……
少なくとも、未踏世界の『プレイヤー』にはかなり荷が重いと思っていたよ。
儀式が進行したことで、秘めていた才を『花咲かせた』者が現れたかな? ンヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
若い女はひたすらゲームを続けているようだった。装備を忙しなく付け替える音がする。
「面白くなーい。てかずっと言ってるけどさー。そのキモい笑い声、絶対直したほうがいいよ、ドクター」
「辛辣すぎる! ……というか、こら! スマホを弄りながら人と喋るのはやめなさい!」
「はいはーい」
そこで、ジリリリッ! とアラーム音が鳴った。
男の丸眼鏡が光った。かなり度が高いようで、その奥にある目を見ることはできない。
「さて。これで『6ヶ月』か」
男は懐から一枚のカードを取り出し、宣言した。
「≪相対時間の虫かご≫発動」
目の前にぽんっ! と「飼育ケース」が現れた。
透明なプラスチック張りで、蓋が空気を通す網状になっている。子供が夏休みに携えているような、平凡な昆虫飼育箱だ。
一番上の蓋がぱかっ♡ と開いた。
中から……
ウゾウゾ……ガサゴソ♡ ガサゴソ♡ ガサゴソ♡
生き物が蠢く音がして、一番中央部には――
ぢゅっぽ!!♡ ぢゅっぽ!!♡ ぢゅっぽ!!♡ ぢゅっぽ!!♡ ぢゅっぽ!!♡ ぢゅっぽ!!♡ ずぞぞっ!!♡ ずぞぞぞっ!♡ ずぞぞぞっ!!♡ ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞ!!!!♡♡♡
何かをひたすら吸い尽くしているような、物凄い吸引とむしゃぶりの音が鳴り響いていた。
見ると、中には小人サイズに縮んだ裸の若い男と――
その男の股間に貼りついて、尻尾をくねっ♡ くねっ♡ っと激しく振りながら、音を立てて上下に貪りまくっている「虫」の姿があった。
緑と茶色の縞々模様。男とのサイズ比で言うと中型犬くらい。しかし外見は犬とは全く違う。虫嫌いの人間なら誰もが目を背けてしまう、巨大な芋虫の見た目をしている。

≪空腹吸精虫(ハングリーあおむし)≫
虫かごの中には何枚もの青い葉っぱが敷かれており、最も大きな一枚の上に裸の男と、股間を吸いまくっている青虫が乗っていた。
巨大青虫は一匹どころではなかった。よく見ると男の乳首にも「ずちゅうぅぅ~~~~♡ べろべろべろべろ♡」と一匹ずつ吸いついて舐めまくっているし、見えているだけでも10匹以上葉っぱの間から顔を出していて、男の体に対して順番待ちをしていた。
多分、蠢いている音の多さからして葉っぱの下にその3倍は隠れている。
男は完全な白目を剥き、びくっ♡ びくっ♡ っと腰の筋肉を情けなく反応させていた。遥か昔に抵抗を諦めたのだろう。手足にはもう一切力が入っておらず、ふにゃふにゃと葉っぱの上に放り出されていた。
体はもうガリガリに痩せ細っているが、肩にトライバル柄の入れ墨が刻まれている。
それとは別に、左右の玉袋へそれぞれ小さく「魂変換中(現在容量:空)」」「魂変換中(現在容量:空)」という光る文字が浮き出ていた。
ずっぽ!♡ずっぽ!♡ずっぽ!♡ずっぽ!♡ずっぽ!♡ずぽずぽずぽずぽずぽずぽ♡♡
青虫はまだ紫色の唇を窄めて男の股間を吸いまくっているが、男にはもう一切の意識が無いようだった。何も、空気すら出なくなった棒を、それでも延々吸われ続けている。吸引の凄さとパワフルな口の上下によって男の腰と首が葉っぱの上でがくっ♡ がくっ♡ っと揺れ動いていた。
眼鏡の男はため息をついて、懐からまたカードを1枚取り出した。
≪AI搭載≫のカードだった。
「……はぁ。僕は吸魂系のモンスターは得意でないから、手間がかかるよ。
わざわざ変換のカードを併用しなければならないし、全て吸い切るまで半年も必要だ。
まぁ、こちらの時間では6分なわけだが。
彼にとっては本当に、可哀相なことになったね」
ペニスと乳首を青虫に吸われ続ける「抜け殻」に向かって、男は悼むような声を出した。
「何同情してんのよ、ドクター。まったく。変なところがまともなんだからさー。
別にこいつら、憐れむ必要なんて無いでしょ。こんな路地裏に連れ込んで、金とカードを奪ろうとしてきたわけだし。
ドクターが弱っちそうなのがいけないんじゃない? せめて猫背を伸ばせば?」
「ンヒヒヒヒヒヒ。無理だ」
女の言う通り、「ドクター」と呼ばれた男のほうは、背が150cmほどしかなく、おまけに、ほとんど腰が直角に折れ曲がって見えるほどの、恐ろしい猫背だった。
「まったく……
ねぇ、ところで……どう?
お友達は酷い死に方しちゃったわけだけど……自分はラッキーだったと思う?」
ゲーム画面にずっと目を向けたまま、若い女がもう一人の人物に話しかけた。
路地には、若い女と「ドクター」の声、そしてゲームの効果音の他に、もっと大きな別の音も鳴り続けていた。
ズパンッ!💛🖤 ズパンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤
必死に肌と肌を打ちつける、公にはとても聞かせられないようなピストン音。そして――
「も゛!!! モ♡ うイ゛や゛ああ゛あぁぁぁああ!!! ど め゛っ!!!♡♡ ど ベ デえ゛え♡ えぇぇぇ!!!!!!♡♡♡ ご れ゛♡♡ ど う゛♡♡ ど ウ゛な゛ ッで る゛の♡ お゛おおおぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!??!♡♡♡♡」
本当に悲惨な困窮の叫び。激突寸前の暴走列車の、全く効かないブレーキを引き続けているような声だ。
その若い男は、体格も優れ、腕も脚も引き締まっている。色黒で、腕には十字架の入れ墨が入っていた。その入れ墨が、もはや今では自らの辿る運命を暗示しているようにしか見えない。
まるで絶叫マシーンにしがみつくように、若い女の「巨大な腹部」に手と足を貼り付けている。
さぞ女慣れしているだろうという見た目だが、今はとにかく、腰をがっくんがっくん振って、顔から涙と鼻水を撒き散らしていた。首を振り乱しすぎて歯茎が見えているところも絶叫マシーンらしさを際立たせている。
「……ま、頑張ってー。私の『そこ』、一往復するだけでも相当『きつい』んだけど……って、今挿れてるんだからわかるか。
人間の1億倍は皮の厚いドラゴン系の魔物のペニスでも、一擦りで秒殺されて、その場で動けなくなっちゃうくらいだからねー。
人間のじゃ、一ミリ擦れただけでペニスがカンストダメージ受けて、一年くらい足腰立たなくなっちゃうレベル。なのに全然ピストン運動止まんないねー。不思議不思議―。
……お、アイテムゲット」
若い女は、スマホにゲームグリップをつけ、長くしなやかな指で、すいすいと画面をスワイプしている。
びくっ!💛 びくびくっ!💛 びくびくびくびくっ!💛
放出を知らせるように男の腰が激しく震えた。
「あ゛っ♡ お゛♡ ご、『ごども゛』♡ ごどもでぎぢゃ……う゛♡」
泣きながら、取り返しのつかないことをしてしまったという後悔が声に籠る。
女は全く表情を変えない。ゲームに熱中している。
「――そうそう。『ヤバいことしちゃった』ってわかるでしょ? 正解正解。
あんたと私の可愛い『娘』たちが産まれるまで、10日くらいかな? その時には……」
液晶の光に照らされ、美しい顔がぺろり、と舌なめずりをする。それは男に対してなのか、ゲームで好機が訪れたからなのかわからない。
「お友達とは比べ物にならないくらい悲惨な、Z指定でも足りないトラウマエンドが待ってるから……
それを楽しみにしながら、しっかり励んでねー、『パパ』💛🖤」
「ひいいいいいぃぃぃぃ!!!!! おっ……!? おっ……!?♡ おっ!!♡」
怯える暇もなく、自分の腰の動きにうめき声を上げてしまう。完全に男の意志とは無関係に、体重を乗せて激しく前後し続けている。
パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤 パンッ!💛🖤
「だっ!!♡ だずげ!!♡ ゆるじでぐだざっ!!♡ じょ、じょ♡ 『女王ざま゛ああぁぁぁ~~~~~~~~~~~~」
ピクッ、と女の口が一文字に結ばれた。
「その呼び方。嫌いなのよねー」
あまりに冷たい響きの一言だった。男は恐怖のあまり、悲鳴を途切れさせ、心臓が止まってもおかしくないという反応を見せた。
「おばさんみたいでしょ? どう見たって私、『お姫様』のほうが合ってない?
イラっとしたから、お仕置きねー。
……チッ。死んだわ。マジ糞武器じゃん」
その瞬間、腰を打ちつけている「結合部」から、恐ろしすぎる音が鳴った。ずごごごごごごごごごごごごごごごごご!!!!!!!💛🖤💛🖤
路地の外どころか県外にまで聞こえてしまうような音量だったが、路地裏から見える歩行者の誰も気が付いた様子はない。
男の力強い腰振りも、その引っ張り続ける力でしばらく静止してしまうほどだった。
「……♡♡♡」
男は目玉の裏側が見えるような白目を剥き、一切声を出せない。首を脱落しそうなほどのけぞらせ、口をパクパクパクと開閉させた。
「あ。違う違う。いまのはただイラっとしたのが穴の中に伝わっただけね。
『お仕置き』はもっともっと惨くて、辛くて、致命的だから。
次のマッチが終わったら開始。覚悟しててねー」
「お゛っ!!♡ お゛っ!!♡
おゆるじ♡ おゆるじ♡ 『姫』♡ 『姫様』ぁ♡ おっ♡ おっ♡」
男は絶望の中で腰を振る。ヂュポッ!!💛🖤 ヂュポッ!!💛🖤 っと物凄い音が鳴るが、「姫」の耳には懇願も結合部の音も入っていない。始まったマッチへ没頭している。
「姫」はその巨体を細い路地へ折りたたみ、何とか収めていた。
2本の腕でゲームをし、残る2本の腕で悠然と、男の乳首を引っぱり続けている。30cmほどぐいぃぃ~~~♡ と伸ばし、乳頭を左右にクリクリと、巧みに捻りまくる。そして長く美しい2本の脚を、圧倒的な支配者のように足組みさせていた。
男がしがみついている巨大な腹部は、黄色と黒の、危険を一目で知らせるような縞模様をしていた。
眼鏡の男、「ドクター」はその様子にはもう目を向けることもなく、肩を落とし、頭を振った。
「それにしても……」
白衣を纏い、首からは「六芒星」を象った首飾りがぶら下がっている。
「何故『アルパトラ』は、サルファス君とLINE交換してないんだ!?
連絡取れないだろ!
サルファス君もサルファス君だ。単独行動が過ぎる! どいつもこいつも……」
日頃溜めている苦労を漏出させるように、重いため息をついた。
「残りの『3人』がやって来たら、また収拾がつかなくなるぞ……
頭が痛い……」
呟いた言葉は外の喧噪の中に消え、しばらくすると路地裏には、誰の姿も見えなくなっていた。
――――
那韋斗は収戯を終え、元の世界に戻って来た。
橋の上に立つ。
那韋斗が触れた「呪いの山札」は、橋の上から消え去っていた。手の中に3種の財宝カードだけが残っている。≪伝説のじょうろ≫、≪空間を断つ剪定鋏≫、≪白き華≫。
今まで昼日中の庭園にいたため、今度は夜の闇に目が慣れず、全く周囲が見えない。
(は、葉月さん……どこだろう……)
早く終わったとはいえ、山札の中に吸い込まれてから1時間ほどは経過しているはずだった。
連絡を取るため、那韋斗はスマホを取り出した。もしかしたら自分を探しているかもしれない。
しかし、すぐには電話をかけられなかった。体の中に残った熱が手足を渦巻いている。
これまでにない速度に達した自分の思考。収戯の最中によぎった赤いイメージ。≪赤き王の卵≫の効果のこと。
(葉月さん……
俺はこの前、葉月さんに嘘をついた)
那韋斗は夜の闇の中を見た。
(決闘なんて「どうでもいい」って。
違う)
闇の中でぎゅっ、と拳を握る。手の中で血が圧される。
橋の上に立ちながら、一つの思いが胸の中核で、どうしようもなく揺らめいていた。
(俺は戦いたい。
あの「サルファス」っていう奴と。もう一度。
この一ヶ月、ずっとそのことだけを考え続けて来た)
目の前に広がる闇を、貫くように見つめる。
(この前は明らかに本気を出されていなかった。だけど俺も、この一ヶ月であいつのいる領域に少しは近づけたと思う。
明らかに他のプレイヤーとは違う。この世界の枠を大きく超えたカードと技能を持っている。
俺の全てをぶつけたい。全ての力をもって、あいつと戦いたい)
闇の中を睨みつける。
その視線に呼応するように――
1体のモンスターが目の前に現れた。
小型の竜だった。黒い影のような身体。後ろ脚は無い。冷気のような気配を発しながら、橋の上の闇で翼を広げている。
一ヶ月前の引き分けに終わったあの日、サルファスの後ろに見えたドラゴンの従者に似ていた。しかし、大きさと気配が明確に異なる。
『その従者の名は≪死出の竜≫。
まさに今回の使いとして相応しい。
――覚悟はできたかい? ゴブリン君』
今まさに頭の中で思い出していた声がしてきた。出所は竜の尾が巻き締めている石。マクガフィンの魔術カードのイラストで見たことがある。≪通信石≫だ。
『明日が約定の日だ。
一度我々は「引き分け」に終わった。だとすれば、ルールは言わずともわかるだろう?』
那韋斗は呟いた。
「『決戦』……」
にやり、と癇に障る笑みが頭に浮んでくるようだった。
『……ははは。なるほど。こちらの世界でも同じ呼び方をするのか。
時間は明日の夕刻。場所はこれから言う。
万全の用意を整えて来るがいい。この世へ未練を残さないためにな。
逃げることはできない。そのための仕掛けはもう打ってある』
那韋斗は背筋がぞくっとした。姿が見えない。急いで電話をかけてみるが、出ない。
全てを理解した気がした。
「お前まさか、葉月さんを……」
石の向こうで、さらに口端を歪めた気配があった。
『賭ける物は我々の持つ「不可触宝カード」1枚ずつ。
そして、それに劣らぬほど美しく価値のある「財宝」ひとつだ』
闇の中に声が響き渡った。
石と竜を隔てて、2人の青年が向かい合う。
『敗けた者は全てを失い、後には何も残らない。
これこそが魔術師同士の、真なる決闘。
「山田那韋斗」。お前に与えてやろう。
死よりも遥かに美しく、恐ろしい結末をな』
【第5話(第1章最終話)「闇の貴公子と覚醒の騎士」に続く】