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「ちゃんと臭いを嗅いで、誰の靴か答えろよ!」
 少女のぶっきらぼうな言葉使いと、同じく、ぶっきらぼうに、鼻に押し付けられた蒸れた脱ぎたての靴。
 ツンとした刺激臭と、汗っぽい臭いとが、鼻腔にまとわりついて、離れない。
 さらに熱気と湿気を放つ、靴の履き口で、鼻と口を塞がれてしまっては、この臭い空気以外を吸うことは叶わない。
「ハルカ様ですか?」
 この足の、臭いの主の名前を恐る恐る答える。
「ちげーよ! そんな臭くねーだろ、このバカ鼻」
 バチンと、足の裏で頬を打たれる。
「ひどいよ、マユちゃん。私の足が臭いみたいな言い方して」
「いやいや、ハルカ、そう思ってるのはお前だけだから。結構臭いって。ほら、バカ鼻、間違えた罰な、足指舐めろ、ザーコ」
 罵倒のセリフとともに、細い足指が、唇を割って乱暴に侵入してくる。
 汗蒸れの酸っぱい味が、口に広がってゆく。臭いと味とが口腔を支配してゆくが、肌質は意外にきめ細やかな、柔らかな舐め心地をしている。
「うぅぅ、わぁぁ……んだよ、気持ち悪いなクソザコナメクジ、罰なんだから嬉しそうに舐めてんじゃねーぞ、ご褒美じゃねんだからよ!!」
「ふぎゃっ!」
 ジュポッと、オレの口から足を引き抜くと、真正面から足で顔を踏みつけてきた。
 オレは、したたかに鼻を打ち、仰け反って床に転がる。
「アハハハ、うわー、ウジ虫みたいでキモいキモい」
「マユ、やりすぎじゃ無い?」
「良いんだよ、これくらい。むしろ喜んでんじゃん?」


 少女達の甲高い罵声を浴びながら、社会的生殺与奪の権を握られ、床でのたうち回るオレ。
 どうしてこうなったのか、少し説明が必要だろう。

 元来、人より若干ネジ曲がった性癖を持つオレの、欲望を満たしてくれるのは、女の子の足だけだった。
 街なかでも、ネットの中でも、女の子達の足は溢れていた。
 最初はそれで良かった。
 えも言われない、曲線美と、みずみずしいまでの質感を捉えた写真で、十分に幸せを感じていた。
 そこに臭いという構成要素は無かったけれど、女の子達の足が臭い必要なんて無い、むしろ臭いなどしない、と心に決めて、日々眺めているだけで幸せだった。

 転機が訪れたのは、とある中学校の裏を通りかかった時だった。
 数名の女子生徒が、植え込みを割って出入りしているのを見かけたのだ。
 どうやら、正門が閉まって以降も、出入り出来る抜け道を作っているらしかった。
 先生に秘密の抜け道、実に青春っぽい雰囲気を感じて、微笑ましく思った。

 家に付き、酒とささやかなツマミで、一日をねぎらう。
 テレビでは、よくあるバラエティ番組が流れているが、何も耳に入ってこない。
 好きな酒を口にするも、何も感じない。
 値下げ品の刺し身も、ただ喉を通過するのみ。
 すでにそれは、一連の食事動作に成り下がり、頭の中は、中学校裏の抜け道の事しか考えられなくなっていた。
 
 あんなところに、抜け道があったなんて……な。

 考えれば考えるほど、良からぬ欲望が湧いてくる。
 いけないと、思えば思うほど、行きたくなってくる。
 しかし、行ってどうする?
 中学校の敷地に侵入して、それでどうする?
 女の子達の靴には、並々ならぬ興味があるが、しかし、校舎には鍵がかかっていよう。
 下手を打てば、人生が終わってしまうではないか。
 オレは、なんと馬鹿なことを考えていたのだろう。
 おのれのバカさ加減を戒めるように、缶ビールの最後のひと口をあおった。


 ある日、オレは仕事が遅くなり、深い時間に家路についていた。
 あの日から、妙に気になる中学校の前に差し掛かった時、正門の方から、警備会社の巡回車が出ていくのを見かけた。
 やはり、今どき、警備会社の見回りなど当たり前で、学校のセキュリティはアップしている。
 侵入なんて、百害あって一利ない行為だ。
 
 ……と、思っていたが。
「今のは、警備会社の定期巡回後って事だよな」
 ふと、よこしまな考えがよぎり、すでに足は、裏手の抜け道へと向かっていた。
 そこには、植栽に隠れる形で、柵の切れ目があった。
「これは不用心だなー」
 不用心ですね、などとつぶやきながら、オレは易々と中学校の敷地へ侵入できてしまった。
 生徒達を、周囲の目線から隠す塀が、今はオレを隠してくれる。
 まず、昇降口へ回る。当然鍵が掛かっている。
 ここの鍵が開いているようでは、警備会社の意味がない。
 それにしても、この中に三桁を超える、女の子の上履きが眠っているかと思うだけで、興奮が高まる。
 運動場を回って、2階建てのプレハブ小屋。
 おそらく部室棟だ。
 粗末な作りの扉であり、ひょっとしたら、鍵がうまく掛かっていないものもあるかもしれない。
 一つずつ、確かめる。
 女子ソフトボール部。掛かっている。
 女子バスケットボール部。掛かっている。
 女子卓球部。掛かっている。
 女子陸上部。
 手を掛けた瞬間、意外な程軽い力で、カラカラと音を立てながら、その扉は開いた。
 そのあっけなさに、逆に現実を疑う程だ。
 部室には、部活で使うのであろう、コーンやハードル、様々な用具が、半ば乱雑に閉まってあった。
 オレの心臓は信じられないくらいのスピードで早鐘を打っている。
 恐る恐る、部室に歩みを進める。
 靴底が、打ちっぱなしのコンクリート床と、砂を噛んで、ザリっという音を立てた。

 向かうは、目当ての、シューズロッカー。
 女の子らしい、小振りな靴が並んでいる。
 興奮の為か、集中力のせいなのか、辺りはシーンと静まり返ったようで、ザリザリという、自らの足音すら聞こえない。
 ケータイの明かりを点け、シューズを物色する。
 とくにかかとのすり切れ具合が大きい、ボロめのシューズを手に取った。
 その小ささゆえか、はたまた、陸上競技用シューズがそうであるのか、手にしたソレは、驚くほど軽かった。
 22.5cmのシューズは、履き込まれて、ところどころ小さな穴になっている。
 ベロの部分をめくって、中を覗く。
 途端に、濃い足の臭いが鼻を刺激して、脳に衝撃が伝わった。
「やべぇ……臭いじゃん」
 明かりでつま先部まで照らすと、くっきりと黒い足跡が見て取れた。
 拇指球の辺りは、すでにヘコみを通り越して、穴に近い。
 この中敷きに、持ち主の足由来の汗や、その蒸れが閉じ込められていたのだと思うと、否応なく興奮してくる。
 ここにくるまで、女子の足は臭くないほうが良いなどと思っていた、オレにとって、あまりにもショックな現実だった。
 もちろん、そのショックは、プラスの意味である事は、言うまでもない。

 大量のシューズが、並んでいるのを見ると、早く取って確かめて、と催促しているようにも思える。
 次も、汚れの目立つシューズを手に取る。
 先程より大きいが、23.5cmと女子らしいサイズだ。
 特筆すべきは、黒光りする中敷き。
 足形にこびりついた、足脂が、足汗で湿らされ、踏みならされて、こすられて、テラテラとした、輝きを放つまでになっている。
 こちらは、先程より、脂っぽいような、チーズの臭みのような香りがする。
 同じ汚靴の臭いでも、個人差があるのだ。
 履き口に口と鼻とを一緒に突っ込み、その臭いを思い切り吸い込んだ。
 なんらかの菌が作用したとしか思えない強烈な刺激臭で、頭がクラクラする。
 シューズを顔から離しても、鼻の奥にずっと臭いが残っているようだった。
 成長期のアスリート女子の代謝には、目を見張るものがある。
 次に手に取ったシューズは、男子陸上部員のシューズが紛れ込んだのかと見紛うばかりの巨大さで、デカいというより、長いと言ったほうがしっくりくるようなシューズだった。
 どんな子が履いているんだろう、そう思いながら、靴の臭いを嗅ぐ。
 汗の臭いに混じって、甘い香りがしてくる。
 おそらく、足の臭いを気にして、消臭スプレーを吹いているのだろう。
 そのいじらしさが、興奮を一層高めた。
 その時ふと、思いついた。
 この足臭を気にしている大足の子のシューズを、オレの臭い足で蹂躪したい、と。
「この子、足が大きいし……オレでも履けるかもしれん」
 ひとりごちて、オレは自らのスニーカーを脱いだ。興奮と緊張で、オレの足もじっとりと汗をかいている。
 スニーカーソックスを脱ぎ、素足になって、デカ足女子中学生のシューズに足を通す。
「よいしょっと」
 また、新たな衝撃が走る。
 オレと、デカ足女子中学生とが、足裏を通じてつながっている感覚。
 何物にも代えがたいが、足裏に、デカ足女子中学生の足裏の凹凸が刺激として伝わって、さらに興奮が高まる。
「なんだよ、オレより足でけーじゃん」
 横幅はキツいが、つま先は全然届いていない。同じ26cmだと思ったが、足長に大きな違いがあるようだった。
「すはぁ、すはぁ、すはぁ、すはぁ……」
 オレは、足の大きさで、女子中学生に負けているうえに、その靴の臭いで興奮し、その興奮で股間をしごいているという、惨めを通り越して、新しい清々しささえある感覚で、足の臭いを嗅ぎ、サイズで負けた大きなシューズに、オレの足汗をじわりと滲ませながら、一心不乱に股間をこすった。
 敗北感と、征服感の両方が満たされてゆく。
 我ながら変態だと思うが、これほど気持ちのいい射精感は、未だかつて無いものだった。


 数日の間、様子を見ながら、警備のすきをつくように、オレは事あるごとに学校に忍び込んだ。
 別の部室が開いている事もあったが、たいてい、女子陸上部の扉は開いていた。
 顔も見たことが無い女子の、しかし、個性ある足の臭いだけは、しっかり把握して、その日の気分で使い分けていた。

 そんなある日、すっかり、侵入も慣れた頃、その日は大会があったのだろう、いつも以上に臭いも味も濃く、都度都度、大量射精を果たしたオレは、ついうっかり、部室で寝落ちしてしまった。
 寝落ちしてしまった事実すら記憶にないほどに。


 翌朝、まろみのある、こってりとしたハルカの足の臭いと、眩しい朝日に照らされ、オレは目を覚ました。
 鼻先には、ハルカのシューズ、手にはオレの精を受け止めたティッシュ。

 そして、ガチャガチャと、鍵を開けようとする音……

 オレは一瞬で、オレの血の気が引く音を聞いた。



◇◇◇



「朝練だりぃよなー」
 マユがあくびを噛み殺しながら言った。
「そうだねー、もっと遅くが良いよね、夜中とかが良いよねー」
 ハルカが賛同の意を表した。
「涼しくて良いですが、それだとハルカさんはいつ寝るんですか」
「もー、レイカちゃんー」
 私が少しイジワルを言うと、ハルカはかわいい顔で困惑した。

 ただ走るだけ。
 そう思う人も多いが、陸上部も色々と準備が必要で、朝練のある日は特に早起きが必要になる。
 いつもの三人で待ち合わせ、部室に向かう。
 内緒だが、鍵は掛けていない。
 いちいち面倒だし、盗られるような貴重品も無い。
 泥棒が、ハードルを持って走っていたら、すぐに御用となるだろう。
「……?!」
 いつもの軽い扉に手をかけるも、びくともしない。
 夜中に、警備員が締めたのであろうか?
 そうだとしたら、鍵締め担当の私は、顧問にこってりと、絞られる事だろう。
「まずいですね」
 一応鍵は持っている。
 持っているが、この部室の鍵はとにかく開けにくい。
 開けるのにちょっとコツがいるのだ。
 それが面倒で、開け放しにしているのではあるが。
「早くあけろよー」
「結構難しいんですよ、コレ」
 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
 少し、扉を持ち上げるようにして、鍵をひねる。
 ガチャリ。
 決してスムーズではない音を立てて、鍵が開いた。
 カラカラカラカラ
 軽やかな音を立てて、扉が開く。

 そこに、見ず知らずの若い男が半裸で立っていた。
「きゃーーーーーーーーーーーーーー」
 ハルカが叫ぶ。
 あー、変態。そのパターンがあったかー。私は天を仰ぐ。
 マユは、ケータイを素早く取り出して、証拠の写真を撮りまくった。
 三者三様の反応を示しながら、後ろ手で、扉を締めた。
 密室に女子中学生三人と、変態一人。
 その時は、反撃されたらどうしようなどとは、露も思わなかった。
 ただ、逃がすか! という気持ちが強かった。
 練習着や、ユニフォームなど、そういうものは、部室に置かないようにしていた。
 もちろん変態対策の為だ。
 しかし、この変態はいったい……
 私は、床に転がる私のシューズと中敷き、そして、犯人の足に履かれている"私の"シューズを見咎めて、頭がクラクラする思いがした。
 まさか、練習で使う、シューズに欲上する変態がいたとは、そして、その変態が、まさに私の靴を何らか使い、そして汚い素足で履いているという事実を認めたく無かった。
「へ、変態だー!」
 ハルカが叫ぶ。
「ちちち、違うんだ、コレはその、コレは」
 言いよどんで、後退る犯人。
「違くねーだろ。おい」
 マユが凄んだ声を出す。
「それ、私の靴なんですけど、どういう事ですか」
 私の靴は、変態犯人のクソ汚い足に履かれ、幅がこれでもかと広がってしまっている。
 正直あれに足を通すのはイヤだ。
「あ、あの、あの、すごく、素敵な靴だったので」
 変態犯人は、池の鯉みたく、口をパクパクさせて言った。
「あぁん? だったとして、なんで、この部室にいんだよ? 言ってみろよ」
 マユがズイと前に出たので、変態犯人が奇声を上げて、同じだけ、後退った。 
「おい、ハルカもなんか言ってやれ」
 顔面蒼白にビビりちらしていたハルカも、マユに促され、精一杯の大声を出す。
「変態!! 変態、変態、変態変態大変態っ」
「あいつ、レイカのスパイク履いてんじゃん、え、どういう変態? キモ」
 マユが、心底嫌そうに顔を歪めた。
 マユの言うとおりだ、誰かに靴を貸すのも抵抗あるうえに、変態の男性が、臭そうな素足で履いているのだ、もう、素足同士で触れ合っているのと変わらないではないか?
 考えただけでもゾッとする。
 そのうえ、大人の男性が、やすやすと私の靴を履けているというのにも、乙女心が傷ついた。
「ねえねえ、マユちゃん、レイカちゃん、もうすぐ朝練始まっちゃうよ。先生に言わなきゃ」
 先生と聞くやいなや、変態がビクッとした。
 こいつ、私らだけなら、なんとかなるとでも、思っていたのか? 腹立たしいな。
「まぁまぁ、ハルカよ。先生に突き出して、こいつの人生を終わらせるのは、簡単だ、だが! あたしの怒りはそんなもんじゃ収まらねぇ。コイツに生まれてきた事を後悔させてやろうぜ」
 くっくっく、とマユが笑った。
「えー、もしかして殺すの? 殺す?」
 明るいハルカの声。どういう感情なのか。
「それはいいとして、他の部員も来てしまうよ、どうするの?」
 私は当然の疑問をマユにぶつけた。
「現行犯写真は、撮ってあるし、コイツの身分証も、ココにあるぜ」
「悪い顔してるよ、マユ」
「とりま、ここら辺のモノを使って、コイツをふん縛っちゃおうかな」
 そう言って、マユは、変態男を後ろ手に結束バンドで縛ると、両手首を粘着テープでグルグル巻きにし、口と、目を粘着テープで塞いだ。
 さらに両足首を巻きながら、変態男が履いていた、私のシューズを脱がせる。
 モワッとした湿気と足臭が漂って、怒りが込み上げる。
 一回、変態男の腹に蹴りを食らわす。
 口を塞がれているので、
「ふぐぅっ」
 と音だけ、鼻から出した。
「うわぁ履きたく無い〜」
「ですね。でも、レイカちゃんのサイズ、他にいないから、替えがないんだよね」
 ハルカの言うとおり、私は女子としては足が大きい方だ。
 残念ながら、替えはない。
「背に腹は代えられないしな」
 私は近くのビニール袋に足を入れ、テーピングでしっかり固定して、蒸れたシューズに足を入れた。
 変態男の足の体温がまだ残っていて、ビニール袋越しでも不快だ。
 さらに、横幅が広がってしまい、紐をキツく締め直した。
 その間に、他の二人は、変態男を不要シューズや、ゴミなどを放り込む箱に詰めて、上からガムテープで封をした。
 張り紙に《○○日ゴミ回収予定、次の箱が準備できるまで、触らぬように》と添えた。
「こっちは準備イイぜー」
「私も大丈夫。ちょっと滑るけど、触れるよりましかな、後で絶対弁償させる」

 そうして、私達は、部活の準備の為、部室を後にした。



◇◇◇



 助かった……のか?

 オレは、人生最大のうっかりで、人生詰むところだった。
 詰むところだったとは言ったが、現在進行系で、詰んでいる。
 手は後ろ手に拘束されて、動かせず、視界も声も出せない。
 声に関しては、よしんば出せたとしても、声を出した途端、終わる。人生が終わる。
 ゾロゾロと、女子陸上部員が入って来て、着替え始めた時は、女子のニオイが満ちてきて、喜びを噛み締めながら、生きた心地がしないという、不思議な体験をした。
 途中、
「あー、ゴミ箱閉まってるー。今から入れても良いよね」
 との声を聞いたときには、もう死ぬかと思ったが、どうやら、開けたてする時間が無かったようで、どこかへ行ってしまった。
 それにしても、あの三人、オレの性癖を知ってか知らずか、このような、廃棄シューズのボックスに閉じ込めるとは……おかげで、さっきからずっと勃起が収まらない。
 なるべく、気配を殺し、動かないようにするため、鼻の前に被さった、劇臭を放つ、おそらく上履きだろうか、それが離れず、頭がおかしくなりそうだ。
 加えて、暑さが体力を奪っていく。
 このまま脱水で死んだら、あの子達にも迷惑がかかる。
 オレは、精一杯、意識を保ち、汗だくになりながら、劇臭上履きに顔を突っ込み続けた。


 どれほどたったであろうか、ガヤガヤとした、女子陸上部員達の、着替えの音がして、三々五々、帰宅していった。

 訪れる静寂。
 まさか、あの三人は、オレの入った箱をそのままに、帰宅してしまったのではないだろうか。
 そうなれば、オレの命と、死んで、なおも汚点を残しまくる事となる。
 コレは本気で脱出せねば。
 オレは、身動きの取れない中で、取りうる限り芋虫のように暴れた。
 暑さと脱水で、頭がぼーっとなっているが、必死で蠢いた。

「動くなって言っただろ、クソザコ」
 ドゴっと、箱を蹴る衝撃。
 乱雑かつ、ゴミのような扱いだったが、最悪死を覚悟していた身では、うれしさに、涙がこぼれた。
 箱が開けられ、ようやく外の空気を吸う。
 消臭スプレーの、華やかな香りが漂っていた。
「汗だくで、きたねーな」
 脇腹に容赦の無い蹴り。
 視界が奪われているため、何をされるか、予想がつかない。
 オレはバランスを崩して、コンクリートの床にへたり込んだ。
「さて、これで、他の部員は帰ったぞ、こっから、じっくり反省の時間を与えてやるからな」
 この声は、おそらく、蹴りの主だ。
 話の中から、マユと呼ばれるリーダー格の女子だ。オレの記憶が確かなら、足のサイズは22.5cmで、濃い汗っぽい、足の臭いらしい臭いを持つ少女だ。
「ねえ、ハァハァ言ってる。でも、まだ死んで無かったね」
 おっとりとした喋りの、この子はハルカだ。23.5cmというど真ん中ストライクみたいなサイズだが、靴は足の脂がすごく、チーズみたいな臭いがする。
「脱水で死なれたら、こっちが困るよ」
 冷静な声。レイカだ。
 女子の靴を履いて、足裏を感じながら、オナニーにするという、新たな開発に貢献した、デカ足女子中学生だ。サイズは26cmだが、履いた感じ、もっとデカいのではと、思っている。
「あー、レイカ、それ良いじゃん」
 マユの声だ。
「うーん、全然気乗りしませんが、制裁的な意味合いなら、少しは気が晴れますかね」
 レイカは、何かを渋っているようだが。
「おら、クソザコ、口開けろ。私達ちょー優しいから、水分補給させてやんよ」
 口のガムテープが、バリッと引き剥がされ、やっと口が自由になる。
 自由と引き換えに、不穏な雰囲気しかないが、このままだと、倒れかねないのも事実。
 オレは、意を決して、口を開けた。
「ちゃんと飲んで下さいね」
 口にビニール袋が突っ込まれるのを感じ、やがて、ぬるい水が流れ込んできた。
 音を立てて飲み干すが、舌の痺れ感と、汗のような、雑巾のような臭いが、後から追い上げてくる。
「うぅおぉぇぇぇぇ、いったい何を?」
 こんなにも体が欲していた水分なのに、体が本能的に拒絶する液体とは……
「ほら、吐きませんでしたよ、全然大丈夫じゃないですか」
 レイカの声。
「ウソ、マジかよ~。筋金入りの変態だな、お前」
 マユが、吐き捨てるように言った。
「ホントだねー。それ、レイカちゃんの足の汗だよ。ふふふ、あなたの汚い足汗に触れたくなくて、レイカちゃんが、ビニール履いてたでしょ。暑かったから、めちゃくちゃ汗出たんだよねー」
「ハルカ、言わないでって言ったのに」
 ハルカがくすくす笑っている。
 そうだったのか、レイカの足汗とわかっていたら、もう少し味わって飲めたのに。
 オレは渇きに抗えず、ただ口を湿すかのように流し込んでしまった。
「あははー、レイカの足汗飲んでやんの、よく吐かないよな、変態。足の汗だぞ」
 マユが、足の汗を強調して言うので、オレの股間は、そのたびに、ムクムクと立ち上がろうとしてしまう。
「え、え? 変態の人、なんか興奮してない? レイカちゃんの足汗なんかが飲めて、うれしかったって事? うあぁぁ……」
 ハルカがイヤそうに言う。
 レイカは、足汗"なんか"と言われた事に、ムッとしたようだが。
「てなわけで、ここで死なれても困るから、水くらいは飲ませてやろうと、優しいアタシは思うわけだ」
「マユちゃん、優しい。良かったね、変態さん、私に殺されないで助かったね」
 ハルカェ……。
「じゃぁ、始めようぜ、命の水を賭けた、足の臭い当てゲーーーム!!」
 ある種、地獄のようなゲームの開始を伝えるマユの声。
「変態にふさわしいゲームだと思わんかね」
 くすくすと笑い声が立つ。
 ゲームが、始まる。


「ちゃんと臭いを嗅いで、誰の靴か答えろよ!」
 マユのぶっきらぼうな言葉使いと、同じく、ぶっきらぼうに、鼻に押し付けられた蒸れた脱ぎたての靴。
 ツンとした刺激臭と、汗っぽい臭いとが、鼻腔にまとわりついて、離れない。
「さっきまで、部活で走り回って来たから、蒸れがすごいぜ〜」
 さらに熱気と湿気を放つ、靴の履き口で、鼻と口を塞がれてしまっては、この臭い空気意外吸うことは叶わない。
「ハルカ様ですか?」
 この足の、臭いの主の名前を恐る恐る答える。
「ちげーよ! そんな臭くねーだろ、このバカ鼻」
 バチンと、足の裏で頬を打たれる。
「ひどいよ、マユちゃん。私の足が臭いみたいな言い方して」
「いやいや、ハルカ、そう思ってるのはお前だけだから。結構臭いって。ほら、バカ鼻、間違えた罰な、足指舐めろ、ザーコ」
 罵倒のセリフとともに、口のガムテが乱暴に剥がされる。
 間髪入れず、細い足指が、唇を割って乱暴に侵入してきた。
「ミネラル補給だぞ、しっかり舐めろよ」
 汗蒸れの酸っぱい味が、口に広がってゆく。
 臭いと味とが口腔を支配してゆくが、肌質は意外にきめ細やかな、柔らかな舐め心地をしている。
 オレは、細い足指に、足指の股にと、何度も何度も舌を這わせた。
「うぅぅ、わぁぁ、ンッふぁぁ、あっぁっあぁぁぁ……ひゃん……く、くぅうぅ、なんだよ、気持ち悪いなクソザコナメクジ、罰なんだから嬉しそうに舐めてんじゃねーぞ、ご褒美じゃねんだからよ!!」
「ふぎゃっ!」
 ジュポッと、乱暴にオレの口から足を引き抜くと、真正面から足で顔を踏みつけてきた。
 オレは、したたかに鼻を打ち、仰け反って床に転がる。
「アハハハ、うわー、ウジ虫みたいでキモいキモい」
「マユ、やりすぎじゃ無い?」
「良いんだよ、これくらい。むしろ喜んでんじゃん?」
「でもまぁ、見た目、でっかいウジ虫ですよね」
「あ、そうそう、さっきの正解は、アタシんだからな、しっかり覚えとけよクソザコウジ虫」
 オレは、少女達に足蹴にされながら、もう一度コンクリートの床に座らせられた。
「さて、第2問だぞー」



◇◇◇



「だーれだ」
 バカバカしい、そのうえ、不潔だ。
 そもそも私はこの変態に関わりたくない。
 私達の足の臭いで、股間を立たせるような、信じられない変態だ。
 わざわざ足の臭いを嗅がせてやるなんて、マユのS性を満たすだけの事なのに、なんで私達まで……
 と、もう少しで、言葉にしてしまいそうだったが、そこをグッと飲み込んで、私は私のデカいシューズで、変態の鼻と口を塞ぐ。
 んーーーっと、濁った声を発して、変態がビクッビクッと震えた。
「さ、答えて?」
 変態に掛ける言葉を持たないので、手短に言った。
 変態男は残り香まで惜しむように鼻を鳴らすと、
「マユ様の酸っぱい臭いがしました」
 と、のたまった。
「ブー、外れ。私です。レイカでした」
 当番として私が答える。
「やっぱバカ鼻じゃねーか。はい、罰ゲームー。レイカ、あんたの足舐めさせてやりな」
 マユが勝手に言う。
 なんなんだ、この罰ゲーム。
 こんな変態に、足を直接舐められるなんて、こっちが罰ゲーム気分だ。
「ほーら、口開けろクソザコ」
 マユが、素足で変態の口をペチペチ叩くと、ニチャァと変態の口が開いた。
「はい、レイカ、行ってみよー。レイカ、ビニールで巻いてたから、足、超ムレムレだぞ、最悪〜」
 私は、恐る恐る、変態の口へ素足を近づけた。
 すでに熱い吐息が掛かって気持ち悪い。

 ペチャリ……

 熱い舌が、足指の裏に柔らかく当たる。
 追って、弾力のある唇で、私の足指が覆われてゆく。
 意外にも、くすぐったいのは、最初だけだった。
 足幅のせいで、全部のつま先が口に入る訳ではなかったが、私の長い足指の間を、まるで意思を持つ生き物のように、舌が這っていく。
「ふえぇぇぇぇぇ、んん~ッ、んあッ、くぅぅうぅうぅうぇっぇぇぇ、んはぁぁ……」
 とめどなく訪れる、熱く柔らかな快楽に、思わず声が出た。
「はぁ、はぁ、ありがとうございます。レイカ様の足、大きくて美味しいです」
 まさか変態男の舌テクで、声が出てしまうとは思わなかったし、いつもデカいだの、男かと思っただの言われ続けていた、自らのデカ足が、こんなにも愛されるだなんて、想像だにし得なかった。
 もっと、舐められても良いかな。
 そんな風に思えて、男の口からつま先を引き抜くと、舌にかかとを擦り付けた。
「いきますよ」
 そのまま、ズズズとスライドさせて、長い足裏全部を強制的に舐めさせてゆく。
 かかとに少し歯が当たって、気持ちがいい。
 土踏まずを通過するときは、背筋がゾクゾクとするのを感じた。
「はぁぁぁ、んはっ、そ、そこぉ……」
 やがて、長大な足裏を縦断するには唾液が足りず、干上がった舌が、足指裏の敏感な部分をザラザラとこすって、再び声を出してしまった。
「なんだよ、レイカ、感じてんじゃん」
 マユが、不躾な言葉を浴びせてくる。
「そ、そんな……こんなこと、初めてですし」
「わかってるって、結構ハマるだろ」
「……別に」
 私は気持ちを、マユに見透かされまいと、視線をそらした。
「ここまで、全問不正解じゃないですか〜。次こそ当てて下さいね」
 ハルカが明るい声で言う。



◇◇◇



 部活を終えた直後の足と靴は、夜中に忍び込んだ時の臭いを遥かに凌駕していて、全然当たらない。
 オレは、足汗の僅かな水分をこそぎ落とすがごとく、足を舐めたが、そもそもの唾液が出にくくなっており、さっきからずっと、マユとレイカ足の臭いが口の中で混ざったまま、口腔から鼻腔までを支配している。
「じゃぁ、第3問ですよ」
 ハルカが言うが早いか、ひどい臭いを発する靴が、鼻に押しあてられた。
 汗も脂もこれでもかと濃く感じる。
 陸上の練習後、恐るべし。
 残るは脂足のハルカだが、一段以上足臭がレベルアップしている。
 オレは、むせながら答えた。
「これが……ハルカ様ですね」
「ブー。ケラケラケラ、違いまーす」
 ハルカが大笑いする。
「ハルカ、お前、ゲラゲラゲラゲラ、ひでーよ。ゲラゲラゲラゲラ、コイツめちゃくちゃチンコ立ってんじゃねーか、かわいそうに」
 マユが下品に笑う。
「早く教えて上げなさいよ、ハルカ」
 レイカの声。
「ホントだ、めちゃくちゃ立ってる。アハハハハハハ、あ、レイカちゃんガムテ貸して〜」
 顔に載せられた靴をガムテープで、固定される。
 強烈な足の臭いがオレを襲う。
「それは〜」
 ハルカの声。勿体ぶるのを楽しんでいる声だ。
「変態さんの靴でしたー!」
「ぎゃはははははははははははは、ハルカひど過ぎ、コイツ頭バグって、チンコビンビンじゃねーか」
 オレは、オレの靴を取ろうと必死にもがくが、全身を縛られていては、モゾモゾ動くより他はなかった。
「自分の足の臭いで、おちんちん立たせるなんて、相当頭おかしいですね。じゃぁ罰ゲームは、こうです!!」
 ハルカが言った直後、熱くプニプニとした足裏が、オレの股間に振り下ろされた。
「このバカチンチンを、踏みしだいてやります」
 そう言って、ハルカは、オレの股間を露わにさせ、脱ぎたての素足で、イチモツを踏みしだいた。
「おぉぉぉぉぉぅぅぅぅううううあっっぁぁぁかかかぁっぁぁかかかかっぁぁぁ」
 元来脂足のハルカの素足は、部活の練習後の汗と蒸れで、ヌルヌルとしていて、ピタッと、オレの股間に張り付くように、しごいていく。
「ほら、変態さん。流石です、自分の足の臭いでも、おちんちん立たせちゃう、クソザコ変態なんですねー」
 ネッチネッチネッチネッチ……
 ハルカが、足裏で、オレのイチモツをこするたび、溢れてくる先走りと、蒸れ足が合わさり、イヤらしい音を立て始める。
「わぁ、硬くなって来ました」
 ヌッチヌッチヌッチヌッチヌッチ……
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい……」
 股間を女子の蒸れ足で弄ばれているという事実と、自分の足臭を嗅いでいるという屈辱で、頭が本当に焼き切れそうだった。
「は、は、ハルカ様ぁぁぁぁぁぁぁぁ、いぐ、いぎますぅぅぅぅぅヤバいヤバいヤバい」
「熱い、すごい熱いです〜……えいっ!!」
 ハルカが、最後、足指で亀頭をギュッと握った。

 ビュルルるるるるるるるるるるるるっっっ

 その途端、頭が真っ白になって、オレは果てた。
 流れた涙が、目を塞いでいるガムテを少しふやかしたようだ。

「ギャハハハハハハ、最高にザコいイキかたしてんな、ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」
 マユの声。
「おーい、変態さん。起きてますかー」
 ハルカが言うやいなや、靴を固定していたガムテを雑に剥ぎ取られる。
「ぶっはぁ」
 オレは新鮮な空気を吸い込んで、いきおいむせた。
「こういうのは、ちゃんとした罰のほうが良いからね」
 そう言うとハルカがさらに、視界を塞いでいたガムテも剥ぎ取った。
「ほら、よく見て。これなーに?」
 ぼやけた視界の先に、ハルカの素足が突きつけられている。
「これ、あなたが汚したんだよ、わかる?」
 視界がはっきりしてくると同時に、ハルカの丸っこい足指に、べったりと白い粘液が掛かっていて、
「もちろん、キレイに出来るよね」
 ズチュっと音を立て、精液にまみれた、ハルカの蒸れ足が、オレの口に突っ込まれる。
「おぉぉぉぉぉぅぅぅぅううううぼえぇぇぇががげげぇえええええっ」
 ハルカの小さめの足は、無遠慮に奥まで入って、足指が口内で暴れた。
 舌で、歯で、精液をこそぎ落とすように、舐め取らせた。
「あー、ちょっとは、キレイになったかなー」
 散々突き上げられて、何度も嚥下中枢を刺激されながら、ようやく解放された。

「おい、変態」
 マユが言った。
「わかってると思うけど、証拠写真も、身分証も撮らせてもらったから、あんたが、今後も無事に社会で生きて行きたければ、私達の足奴隷になるって事で良いよね」
 マユのスマホには、バッチリと、オレがシューズを手に、床に転がって寝ている様子が収められていた。
「呼んだら来てね、すぐに来ないと、ネットに流すからね。事実上死ぬよー」
 ハルカが言う。
「このスパイク、あなたに履かれて気持ち悪いので、1万円で買い取って下さい」
 ……レイカだ。


 こうして、オレと三人の、奇妙で危うい主従関係が、始まった